フォトアルバム

チョコちょこ

  • あなたにとって、良い日でありますように☆

よく見ていただいている   ページです☆

  • (月間集計)
    ブログパーツ


図書館にあったらいいな☆

2010年3月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

バナーです☆

  • にほんブログ村へ☆

    にほんブログ村 本ブログへ


  • ほんつなへ☆

    hontsuna

よろしければメルマガも☆

時の流れを忘れずに☆

2010年3月16日 (火)

『明るい部屋』と『喪の日記』と…

「温室」の写真。
わたしは狂ったように、明白な意味を語ろうとしている。



ロラン・バルトがカードにそう記したのは1978年7月24日。
この苦しみから生まれたのが『明るい部屋』です。

先日来、ロラン・バルトの2著、みすず書房さんから出ている『明るい部屋』と『喪の日記』とを続けて読んでいます。

プルーストが好きなチョコちょこからすれば、とても共感出来る内容が続きます。

…ですが、このすぐ傍に感じる「これ」は何でしょうか。
傍? …いいえ。
「これ」は、皮膚にピッタリと張り付き、肌を滑り、内部に喰い込もうとますます密着してきます。

死…? いいえ。そんな、はっきりと形あるものではありません。
空隙、空…いえいえ、それそら何かが詰まっているものであり、「これ」ではありません。

ロラン・バルトの文章を読むにつれ、「これ」はますます強く貼りついてきます。
…当て嵌まる言葉が見付かりません。
それは、何でもないもの。何かではないもの。
存在ですらないもの。なのに、確かにそこに存在しているもの。
その不気味な「これ」がいつも、常に、傍らで寄り添うのです。
喪…? いえ、喪ですらない気がします。
…そうですね。「虚」…が、まだ近しいものかも知れません。
無…いえ、「無」は「有」と等しいものです。違いますね。
やはり、虚ろ…それが最も相応しいでしょうか。

そんな温かく、恐ろしい「これ」と共に、もう少し、『喪の日記』を読み終えるには時間がかかりそうです。
…とても、一気には読めませんので。

『喪の日記』の表紙のバルト。
……本書にこれほど相応しい写真は無い気がします。

人間、バルトをもう少し、追い掛けてみましょうか……

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.45

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.45  2010.3.2

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    先日、朝の出勤時に
    懐かしい囀りが聞えてきました。

    遥かな頭上から。
    青空を背にした、小さく黒い羽ばたきから。

    今迄、すっかり忘れていた、愛らしい声。

    ヒバリの囀り。

    ……もうすぐ、春なんですね☆
    

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、2月16日以後の新刊です。

 ☆『魚を水に入れましょう』(P.D.イーストマン 画/すずき出版)
    “英語を楽しむバイリンガル絵本”シリーズの1冊です。
    このシリーズは、英語初級者向けBeginner Books(R)シリーズから
    5冊を選んで日本語を併記したもの。

 ☆『聞き方の技術』(山田一成 著/日本経済新聞出版社)
    調査票の作成を、具体的な事例と共に解説したもの。

 ☆『ドキドキしちゃう』(小学館クリエイティブ)
    岡本太郎が遺した「書」に彼の言葉を添えたもの。
    これは字なのでしょうか。それとも絵なのでしょうか。

 ☆『ウルトライスモ』(坂田幸子 著/国書刊行会)
    スペインの前衛文学運動、ウルトライスモ。
    あまり知られていない、20世紀初頭の文学運動についての本です。

 ☆『農業普及指導論』(藤田康樹 著/東京農業大学出版会)
    農業普及の現場で役立つ実践書。

 ☆『視覚科学』(横澤一彦 著/勁草書房)
    あまり日本では紹介されてこなかった
    視覚の高次過程を重点的に紹介しているもの。

 ☆『まよけの民俗誌』(斎藤たま 著/論創社)
    斎藤たまが集めた各地の魔よけ風習の記録。
    まだ新刊が出るんですね!

 ☆『昆虫食古今東西』(三橋淳 著/工業調査会)
    各国の昆虫食の歴史や調理法をコンパクトに纏めたもの。

 ☆『京大坂の文人 続々々』(管宗次 著/和泉書院)
    もう4作目になりますね。
    残念ながら第1巻(上方文庫11)は品切れになっています。
    幕末から明治にかけて活躍していた文人の姿を取り上げたもの。

 ☆『中世の幽霊』(ジャン・クロード・シュミット 著/みすず書房)
    死者の記憶か、忘却か。どこから、どんな姿で訪れるのか。
    中世における幽霊の歴史とは。

 ☆『摸擬と新製』(前坊洋 著/慶応義塾大学出版会)
    “アカルチュレーションの明治日本”とは副題ですが…
    アカルチュレーションなんて言葉は
    文化人類学でも知らなければ分からないですよね。
    異文化の模擬から、新たな姿への変化を追ったもの。

 ☆『王国と栄光』(ジョルジョ・アガンベン 著/青土社)
    権力による統治と、栄光の意義。
    アガンベンによる政治哲学論です。

 ☆『眼の神殿』(北澤憲昭 著/ブリュッケ)
    1990年度芸術・文学部門のサントリー学芸賞を
    受賞したものの復刊ですね。
    明治期の美術について綴ったもの。
    当時の論評が
    こちら → http://www.suntory.co.jp/sfnd/gakugei/gei_bun0032.html

 ☆『廷臣詩人サー・フィリップ・シドニー』
   (キャサリン・ダンカン・ジョーンズ 著/九州大学出版会)
    豊富な一次資料から読み解く、フィリップ・シドニーの実像とは。

 ☆『ミクロコスモス』(平井浩 編集/月曜社)
    シリーズ「古典転生」の第2回配本で
    別巻1に当たる第1集です。(ややこしいですが(苦笑))
    15-18世紀の精神史に関する研究・学術誌。
    詳細は
    こちら → http://urag.exblog.jp/10022875/
    と
    こちら → http://d.hatena.ne.jp/microcosmos2010/
    にあります。

 ☆『「死の舞踏」への旅』(小池寿子 著/中央公論新社)
    版元のHPを読む限り、1年かけて行った
    新たな旅の模様を書き綴ったもののようです。

 ☆『スターリン』(サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ 著/白水社)
    副題は“青春と革命の時代”です。
    1月に出た『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち 上・下』の続刊。

 ☆『機械仕掛けの歌姫』(フェリシア・ミラー・フランク 著/東洋書林)
    女性と人造とその「声」と。
    ヴェルヌの『カルパチアの城』やホフマンの『砂男』などが
    取り上げられています。

 ☆『老いの心と臨床』(竹中星郎 著/みすず書房)
    老年期の精神的問題に踏み込んだもの。1983年刊の復刊です。

 ☆『歪み真珠』(山尾悠子 著/国書刊行会)
    『ラピスラズリ』の著者による、最新短篇集。

 ☆『フーコー』(ポール・ヴェーヌ 著/筑摩書房)
    友人である歴史学者による、遺されたフーコーの著作の分析。
    そこから見えてくるもの。
    “現代思想の稀有なドキュメント”とは、HPにある言葉。

 ☆『ローマが風景になったとき』(小針由紀隆 著/春秋社)
    西洋各地に広まった油彩スケッチから、印象派へ。
    風景画が戸外の芸術になったいきさつとは。

 ☆『ユイスマンスとオカルティズム』(大野英士 著/新評論)
    ユイスマンスの作品と人生に迫る1冊です。

 ☆『龍となれ雲自ずと来る』(武者小路実篤 画/清流出版)
    単行本未収録の作品を中心とした、実篤の画と画讃を掲載したもの。

 ☆『神話論理 4ー2 裸の人 2』
   (クロード・レヴィ=ストロース 著/みすず書房)
    …漸く、といった感じでしょうか。最終巻です。

 ☆『声と文字』(大黒俊二 著/岩波書店)
    声から文字へ。その歴史を俯瞰したもの。

 ☆『奴隷制を生きた男たち』(ジェームズ・ウォルヴィン 著/水声社)
    奴隷商人、奴隷所有者、奴隷…
    3者の人生を、日記や手紙をもとに描き出すドキュメンタリー。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『ミクロコスモス』(平井浩 編集/月曜社/2月刊行)

    あちらこちらで期待され
    紹介もされているので
    今更ながらなのですが…

    本書は、西洋の近代前史における
    「個人」を中心とした思想、哲学を集めたものです。

    当時の、とりわけ自然哲学は
    「個人」でありながら
    その影響は、時代や社会に及ぼし、及ぼされ
    決して「個人」に収めることができないものです。
    今迄は興味本位で見られることが多かった潮流を
    こうして纏められたことは素晴らしい成果です。
   
    近代の西洋的な理解からは外され
    消えかけているものも
    かつては人々の思想の中心であり
    それは社会が求めていたものでもあったことでしょう。

    日本において、こうした形で
    こうした内容のものが纏められる…
    そのことがとても誇らしくなる
    そんな1冊です。

    前述のリンク以外にも
    こちら → http://steenstrup.blog.so-net.ne.jp/2010-02-11
    でも紹介されていますし
    編者のサイトも
    こちら → http://www.geocities.co.jp/Technopolis/9866/bh.html
    にあります。
    よろしければ、ご一読を☆

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『明るい部屋』(ロラン・バルト 著/みすず書房)
     

    世界中を駆けめぐって、
    今日的問題をとらえることに余念のない、
    あの若い写真家たちは、
    みな、
    自分が「死」の代理人であることを知っていない。
    われわれの時代は、
    そうしたやり方によって「死」を引き受けるのである。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2010年3月15日 (月)

漸く読了です…『春の祭典』のこと

『春の祭典』(モードリス・エクスタインズ 著/みすず書房)。
ここ数週間、チョコちょこの心から離れなかった本です。
本書には副題があります。
「第一次世界大戦とモダン・エイジの誕生」。
この『春の祭典』を読むまで、チョコちょこはまるで第一次世界大戦のことを知りませんでした。
…いえ、勿論、読んだことはあります。
一般的なことであれば、知っていると言ってもいいでしょう。
でも、本当にはどんなものだったのか。西部戦線で「何」が起きていたのかを本当には知っていませんでした。
本書には、戦線からの手紙や日記、詩文も多く引用されています。
その一言一言が、生きた声を届けてくれます。
戦争を取り扱った本で、この『春の祭典』ほど、グイグイと引き込まれ、魅せられたものはありません。
戦争とは。
道徳とは。
社会とは。
個人とは。
目的とは。
義務とは。
赤裸々に伝えられる言葉は、数字や統計とは異なります。
そこには著者の意図もあるかも知れません。
今、某出版社から出てよく売れているニーチェについてなど、ドイツで、ナチスでどう扱われたのか何度も触れられています。
多くの文学者、哲学者がどのように扱われ、どのように振る舞ったのか。
ただ、それもまた事実でしょう。
客観的な歴史が無いように、本書もまた主観的な歴史の書、文化を綴る1冊です。
ですが、そうであったとしても、人の心を打ち、事実の一部を伝えてくれる大切な1冊であることに変わりはありません。
本書を読まなくては知らなかったことがある以上、そこに価値はあります。

…まだ、あまり上手く言葉に出来ません。
この本から得られたものを消化して血肉とするには、まだ暫く時間が必要でしょう。
それは生涯をかけて行うものかも知れません。
更に多くの書物に、記録に触れながら…

2010年3月 2日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.44

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.44  2010.2.16

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    南向きの暖かなお庭では
    もう白梅が陽射しを受けて輝いています。
    タゲリがその奇妙な声を鳴き交わし
    降る雨の冷たさも、心なしか緩んでいるようです。

    …何となく、冬の老婆のその指の隙間から
    春の気配が垣間見えた気がする、今日この頃……

    とは言え、暖かな日和と寒さ厳しい朝とが
    交互に訪れる日々は、もう暫くの間続きそうです。

    皆さんも、体調管理には十分気を付けてくださいね☆
    

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、2月2日以後の新刊です。

 ☆『茶室手づくりハンドブック』(岡本浩一 著/淡交社)
    マンションにも茶の湯空間を、というのは非常に魅力的ですね☆
    淡交社さんのHPには
    「茶室をつくろう!」というメニューもありますので
    ぜひご覧ください。
    (こちら → http://www.tankosha.co.jp/chashitsu/index.html

 ☆『琉球文学の中世・近世』(小峯和明 編/三弥井書店)
    税込み15,750円! ですが、これは貴重な1冊ですね。
    古代に偏った琉球ではない
    知られていない中世から近世に到るまでの琉球文学の歴史。

 ☆『夜 新版』(エリ・ヴィーゼル 著/みすず書房)
    15歳の少年が見たアウシュビッツ…
    新しく訳された、ノーベル平和賞を受賞した著者による
    自伝的小説です。

 ☆『文楽二十世紀後期の輝き』(内山美樹子 著/早稲田大学出版部)
    文楽の「今」を描いた、論考をまとめたもの。

 ☆『細川ガラシャ』(田端泰子 著/みすず書房)
    ガラシャについての本は幾つかあるかも知れませんね。
    “散りぬべき時知りてこそ”…この言葉が副題になっています。

 ☆『近世の僧と文学』(西田耕三 著/ぺりかん社)
    近世の僧について、それも文学からの考察とは珍しいでしょう。

 ☆『西洋の教育の歴史』(山崎英則 編著/ミネルヴァ書房)
    “シリーズ現代の教職”とはなっていますが
    一般の方にも読める内容でしょう。
    古代から現代に至るまでの、西洋の教育について
    分かりやすくまとめたもの。

 ☆『語る老女語られる老女』(倉田容子 著/学芸書林)
    文学作品の中の年老いた女性はどのように描かれてきたのか。

 ☆『王朝摂関期の「妻」たち』(園明美 著/新典社)
    平安時代の正妻とは。多妻の中の序列とは。

 ☆『文学全集を立ちあげる』(丸谷才一 著/文藝春秋)
    文庫になりましたね。
    日本と世界、合わせて300篇を取り上げています。

 ☆『「お客様」がやかましい』(森真一 著/筑摩書房)
    お客さまは神様か? 増大するばかりの要求とその問題点。
    …それにしても、ちくまプリマー新書の対象年齢は上がる一方ですね。

 ☆『近代大阪の出版』(吉川登 編集/創元社)
    江戸時代から近代にいたるまでの大阪の出版史。
    在阪の創元社さんならではですね!

 ☆『言論の自由』(エリック・バレント 著/雄松堂出版)
    言論について、多国間を比較研究したもの。
    …いいものだとは思いますが、いつもの通り
    高額ですね…雄松堂出版さん(苦笑)

 ☆『ラディカル構成主義』
   (エルンスト・フォン・グレーザーズフェルド 著/エヌティティ出版)
    まだ殆ど日本では知られていないのではないでしょうか。
    ピアジェの再解釈も踏まえた
    ラディカル構造主義の本格的なテキストです。

 ☆『呪術意識と現代社会』(竹内郁郎 編著/青弓社)
    東京23区民と呪術との組み合わせはユニークですね。
    現代の都心における、呪術行為の意識とは。

 ☆『中世への旅騎士と城』(ハインリヒ・プレティヒャ 著/白水社)
    Uブックスになりましたね。
    生き生きとした中世への旅の始まりです。

 ☆『貧者の領域』(西澤晃彦 著/河出書房新社)
    貧者とは。その現実とは。その排除と隠蔽の実際とは。

 ☆『杉村顕道怪談全集』(杉村顕道 著/荒蝦夷)
    出版社さんは「あらえみし」と読みます。
    仙台の文人による怪談話。あちこちで紹介されているようですね。

 ☆『「象徴天皇」の戦後史』(河西秀哉 著/講談社)
    戦後、天皇像はどのように造り上げられてきたのか。

 ☆『日本砕石業史研究』(石田真人 著/出版文化社)
    業種のイメージは、その実態を知らずに
    推測と想像で成り立っていることが多いものです。
    その意味で、本書のようなものは貴重でしょうね。

 ☆『経済戦争の理論』(中山智香子 著/勁草書房)
    経済戦争とは、平時の戦争であり
    常に臨戦態勢でいなくてはならないもの。
    本書では、そんな経済思想と戦争との結びつきを考察しています。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『近代大阪の出版』(吉川登 編集/創元社/2月刊行)

    創元社さんを検索した時に表示される文章は
    次のようなものです。

    “カーネギーシリーズ、「知の再発見」シリーズをはじめ、
     主に心理学、歴史学を中心に出版。
     大阪、関西にかかわる書籍も手がける。
     ベストセラーよりロングセラーを。
     関西から文化の香り高い出版を目指しています。”

    公平に見れば、もともと東京の支店であり、後に独立した
    東京創元社さんの方が、今では有名になっているでしょうね。
    
    ですが、今でも大阪のど真ん中。
    本町を拠点にしている関西の出版社さんとして
    活躍しておられます。

    創元社さんのホームページには
    創業時からのエピソードが「創元社の歩み」と題されて
    掲載されています。
    (こちら → http://www.sogensha.co.jp/com_history/index.html
    とても面白いので、是非一度、読んでみてください。

    
    そんな在阪の創元社さんから出る『近代大阪の出版』。
    これはもう、期待せずにはいられません。

    ちなみに、創元社さんのサイトには
    大阪の出版事情や古書について書かれた
    「古書往来」というコラムもあります。
    こちらも、読んで楽しい連載になっていますので
    よろしければ読んでみてくださいね。
    (こちら → http://www.sogensha.co.jp/page03/a_rensai/kosho/kosho_top.html

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『子どもが描く世界』(クリスティーン・アレグザンダー ほか著/彩流社)
     

    わたしのいちばん幼いころの記憶の一つは、
    父の書斎で本を道具にして遊んだことだ。
    たとえば、何冊かの大きな辞書を使って塔や橋を作ったり、
    挿絵を眺めたり、
    読んでいるふりをしたり、
    それからペンか鉛筆を見つけたときは
    いつも空白のページに走り書きをしたりした。
    こういった、初めてもの書きを試みたものの多くが
    いまでもまだ残っている。
    この子どもの遊びがわたしの以後の人生に
    影響を及ぼしたのではないかとよく思う。

                      オールコット

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2010年2月26日 (金)

写真がいいですね☆『星明りの村』のこと

雨が降っていますね。

急に暖かな日が続くと、身体も心も何だか落ち着かず…逆に風邪をひいてしまったようです。


毎年、夏の2ヶ月間を。
約13年もかけて少しずつ。

…そんな旅の記録に憧れもあるでしょう。

ロマネスクの聖堂を33箇所。
フランス国内を少しずつ。

…羨むと同時に感心もしてしまいます。

積み重ねられた歳月の記録は、例え平易な言葉と素朴なスナップで組み上げられていたとしても、それだけで人の心を惹き付ける力を持っています。

『星明りの村』(西出真一郎 著/作品社)は、作者も書いているように“聖堂の見える土地に暮らす人々の点景を描き出そうとした”ものです。
それは本当に、個人的な経験、印象であり、ガイドブックや建築の資料とはまるで異なる朴訥とした旅の記録です。
その旅を切り取る、一枚のスナップ写真。それがとても「その土地」を身近に感じさせてくれます。
飾り気の無い、何処にでもあるような風景。それが、あの有名な聖堂の足下だとは思えないほど、あまりにも親近感の強い点描。
そこにも、当然ながら存在している「普通の生活」を垣間見せてくれるスナップばかりです。
居丈高なものではなく、時にこうした身近で親しみの湧く旅行記をぱらぱらと捲るのもステキな時間です☆

何気無く。
さり気なく。
こつこつと。
少しずつ。

そうして、何かを残し、積み上げ、気楽に誰かの時間に溶け込むことが出来るものを生み出せたら…それはとても素晴らしいことだと思います。

2010年2月21日 (日)

シャルル五世とフランス国立図書館と☆

今日のお昼は、随分と温かい日和でしたね☆
柔らかな陽射しの下で、愛犬とヌクヌクしていました。

先日、イギリスの事例を出したので、次はフランスで…という訳ではありません(笑)
たまたま、白水Uブックスになった『フランス中世歴史散歩』(レジーヌ・ぺルヌー,ジョルジュ・ぺルヌー 著/白水社)を読んでいると、シャルル五世についての記述が出てきたので。

賢明王と名付けられたシャルル五世は、読書家として知られていました。
そんな王が建てたヴァンセンヌ城。
この中に、彼は王立図書館 La bibliothèque du roi を整備しました。
今のフランス国立図書館 Bibliothèque Nationale de France (BnF) は、この王立図書館を起源としています。
BnFのサイトは
こちら

…それにしても思うのですが、海外の国立図書館のサイトはどれも素晴らしい出来栄えですよね。日本のものが、少し恥ずかしくなってしまうくらいです…


さて、本書について。
昨年2009年は、著者のレジーヌ・ぺルヌー生誕百年の年でした。
訳者あとがきでは、彼女のことを“世界に名だたる「中世の貴婦人」”と書いていますね。
彼女はジャンヌ・ダルクの研究者として知られています。
同じくあとがきによれば「あちらの世界の人々に会いに行く。ジャンヌ・ダルクにも」と言って昏睡状態に入り、その三日後に亡くなられたそうです。
フランス中世の第一人者と辿る、歴史散歩。
読みやすく、持ち運びもしやすいUブックスで、ぜひ一度ご一読ください☆

2010年2月16日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.43

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.43  2010.2.2

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    今年に入ってから
    作品で親しんできた方々の
    訃報が次々と目に留まります。

    電子だ、紙だと
    様々な噂と憶測が飛び交う中で…

    …そんな騒動に巻き込まれることの無い

    そんな「作品」が、確かに存在するのだと

    遺されたものを見ながら
    思う…信じる…

    …いいえ。
    
    知る、そんな日が続いています。
    

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、1月19日以後の新刊です。

 ☆『フランス中世歴史散歩』(レジーヌ・ペルヌー 著/白水社)
    7年目にして白水Uブックスになりましたね。
    帯にあるように“中世史の大家とともに巡る歴史の旅”を
    ぜひ手軽なサイズで。

 ☆『明治留守政府』(笠原英彦 著/慶応義塾大学出版会)
    岩倉使節団を派遣していた最中の政府について書かれたもの。

 ☆『考古学のあゆみ』(BRIANM.FAGAN 著/朝倉書店)
    理論だけではない、読みやすい一般向けの概説書です。

 ☆『大聖堂』(パトリック・ドゥムイ 著/白水社)
    文庫クセジュです。
    大聖堂の建築から管理運営、その役割から中の暮らしまでを
    多面的に描いたもの。

 ☆『ストーリー・ガール』(モンゴメリ 著/角川書店)
    角川文庫。
    かつてNHKでも放映された、世界中で大人気のドラマ
    『アヴォンリーへの道』の原作の一つです。

 ☆『ガリレオ』(アンニバレ・ファントリ 著/みすず書房)
    ガリレオ裁判からその名誉回復までを描いたもの。
    12,600円(!)ですが、HPにあるように
    “ガリレオ裁判をめぐる関連書の中でも最も正確にして、
     最も詳細かつバランスのとれた書として
     国際的にきわめて高い評価を得ている”ものでしょう。

 ☆『鳥を探しに』(平出隆 著/双葉社)
    多くの「祖父」と出会う旅へ…
    表紙の絵にも、著者の祖父、平出種作の作品を使用しています。

 ☆『バーチャルリアリティ学』
   (日本バーチャルリアリティ学会 編集/工業調査会)
    バーチャルリアリティのシステムや原理を学べるテキスト。

 ☆『中世の狂気』(ミュリエル・ラアリー 著/人文書院)
    中世の狂気について、社会・文化的側面も含めながら
    精神医学的に分析を試みたもの。

 ☆『孤独の科学』(ジョンT.カシオポ 著/河出書房新社)
    様々な角度から、孤独とは何かを解明しようとするもの。

 ☆『自在置物』(原田一敏 著/マリア書房)
    龍や昆虫などの手足を実際に動かせる、自在置物。
    殆ど観賞されることが無かった作品、およそ70点が載せられています。

 ☆『ナノマテリアルの安全管理』(オーム社)
    ナノ材料の製造における注意や、リスク管理について
    基本的な知識をまとめたもの。

 ☆『明治維新と史料学』(明治維新史学会 編集/吉川弘文館)
    明治維新史研究の9巻目。
    諸史料がどのように蒐集・編纂されたかを論じたもの。
    「『日本史籍協会叢書』稿本の伝存と構成」といった目次には
    惹かれますね☆

 ☆『未完のフィヒテ』(石崎宏平 著/丸善プラネット)
    『イエナの悲劇』の著者による、その続きのフィヒテ
    と言ってもいいでしょうか。

 ☆『クロード・カーアン』(永井敦子 著/水声社)
    シュルレアリスムの25時の1冊。
    Claude Cahunは、仮面や鏡を使ったセルフポートレイトで知られる
    写真家です。

 ☆『とざされた時間のかなた』(ロイス・ダンカン 作/評論社)
    「海外ミステリーBOX」という新しいシリーズが出るようですね。
    その内の1冊。
    かつて「児童図書館・文学の部屋」シリーズにあったものの
    改訂新版ですが、この表紙は…大人を意識しているのでしょうか。

 ☆『コナン・ドイル伝』(ダニエル・スタシャワー 著/東洋書林)
    2000年、MWA(アメリカ探偵作家クラブ賞)の
    幾つか部門で候補になったり、受賞を果たした作品です。

 ☆『デザイン事典|文字・フォント』
   (モリサワ 編集/毎日コミュニケーションズ)
    モリサワのOpenType全書体を完全網羅!
    モリサワについてはこちら → http://www.morisawa.co.jp/

 ☆『オイラーの贈物 新装版』(吉田武 著/東海大学出版会)
    版元を変えて、3度目になりますね。
    オイラーの公式を知るために、一歩ずつ学ぶ数学の基礎。

 ☆『法と経済学』(スティーブン・シャベル 著/日本経済新聞出版社)
    “米国のロースクールのスタンダードテキストを完訳”とはHPから。
    法と経済学を学ぶ上で基本となる教科書です。

 ☆『サンスクリット語・その形と心』(上村勝彦 著/三省堂)
    上村勝彦と言えば、ちくま学芸文庫で未完となっている
    『マハーバーラタ』が思い出されます。
    本書もまた、その上村勝彦の遺稿を柱としたもの。
    帯にある“最新・最高のサンスクリット語入門”という言葉に
    相応しい1冊でしょう。

 ☆『漱石の「猫」とニーチェ』(杉田弘子 著/白水社)
    ニーチェの思想が、日本の近代知識人に与えたその衝撃の大きさ。
    そこに、彼らは何を見たのでしょうか。

 ☆『アガンベン入門』(エファ・ゴイレン 著/岩波書店)
    イタリアの哲学者、アガンベンの初期から現在にいたるまでの
    思索の全貌を解説したもの。

 ☆『異説・日本近代文学』(出原隆俊 著/大阪大学出版会)
    作家どうしの作品の「借用」と「典拠」から見る近代文学史です。

 ☆『ビジュアルで学ぶ動物看護学』(『CAP』編集部 編集/チクサン出版社)
    『CAP』は獣医師の為の総合誌です。
    動物介護師向けのテキストですが
    一般の方も興味はあるのではないでしょうか。

 ☆『読書雑志』(吉川忠夫 著/岩波書店)
    中国文学・思想の第一人者による中国古典世界への招待。

 ☆『現代イスラーム哲学』
   (ムハンマド・アッ=タバータバーイー 著/書肆心水)
    シーア派で、20世紀最高位の哲学者とされる
    タバータバーイーによる、現代イスラーム哲学の成果。

 ☆『超音波技術入門』(宇田川義夫 編著/日刊工業新聞社)
    幅広く、超音波の基礎と応用を解説したもの。

 ☆『天啓を受けた者ども』(マルコス・アギニス 著/作品社)
    『マラーノの武勲』の著者による、現代の南米を舞台とした
    麻薬とカルト集団をテーマとした巨編。

 ☆『イギリスの野の花えほん』(シャーロット・ヴォーク 画/あすなろ書房)
    『ねこのジンジャー』やファージョンの絵本も出している
    シャーロット・ヴォークによる、96種の野の花の絵本☆

 ☆『漬けもの博物誌』(小川敏男 著/八坂書房)
    漬物と言えば、この著者でしょう。
    『つけ物風土記』の改題、復刊です。

 ☆『古代宮廷の知と遊戯』(猪股ときわ 著/森話社)
    古代の楽書から物語、説話までを読み解き
    宮廷の遊戯の現場を考察したもの。

 ☆『フランツ・ローゼンツヴァイク』(佐藤貴史 著/知泉書館)
    ローゼンツヴァイクについては
    去年『救済の星』がみすず書房さんから出ましたね。
    本書はその『救済の星』を中心に彼の思考を読み解いていくもの。

 ☆『オルティス 変奏論』
   (ディエゴ・オルティス 著/アルテスパブリッシング)
    ルネサンス音楽を知るには貴重な邦訳。
    …ですが、本体価格7,600円は辛いかも知れません(苦笑)

 ☆『スターリン 上』(サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ 著/白水社)
    英国文学賞の受賞作品。
    白水社さんからは、若きスターリンを描いた
    続篇も来月に刊行予定です。

 ☆『出版界おもしろ豆事典』(塩澤実信 著/北辰堂出版)
    何かと興味を持たれる事が多くなった出版界。
    塩澤実信の文章は読みやすいですよね。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『現代イスラーム哲学』
   (ムハンマド・アッ=タバータバーイー 著/書肆心水/1月30日刊行)

    今回は書肆心水さん。
    「心水」は「しんすい」と読みます。
    社名からは想像出来ないのですが
    2004年創業のまだまだ新しい出版社さんです。

    …それにしても、いつもいつもあまり売れなさそうなものを(苦笑)
    と思ってしまうのですが

    “新事物よりも、百年後にも意味をもち続ける根本的な本を”

    という理念にはとても共感してしまいます。

    既刊本を眺める限り、この理念を今も持ち続けておられるのでしょう。

    そんな流れの中で選ばれたのが本書。
    イスラームの哲学とは言え
    生きる上で、様々な、幅広い思想・哲学に触れることは
    決して無駄なことではありません。
    恐らく、本書もそんな1冊になることでしょう。

    2004年の創業当時の記事ですが
    訳者の黒田壽郎へのインタビューが書肆心水のHPにあります。
    こちら → http://www.shoshi-shinsui.com/author-kuroda.htm

    また、本書の紹介もこちらになります。
    → http://www.shoshi-shinsui.com/book-hikmah.htm

    これからも見守っていきたい、頑張ってもらいたい
    出版社さんの一つです☆

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『写真的思考』(飯沢耕太郎 著/河出ブックス)
     

    三枚の写真が、
    カメラアングルまでほぼ一致していることを、
    偶然と見るにはあまりにも話ができ過ぎている。
    むしろ優れた写真(たち)には、
    時空を飛び越えて、
    過去・現在・未来を一挙に繋いでしまうような力が
    含まれていると考えた方がいいのではないだろうか。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2010年2月 8日 (月)

ジョージ四世と大英図書館と☆

居間のカーテン越しに、青空が見えています。
疲れ方がひどかったので今迄横になっていましたが、何だか明るい陽射しに心が和みます。
柔らかく優しい光ほど、心を安らかにしてくれるものはありませんね…

近頃は、随分と気ままな更新になってきました。
ずっと読んでくださっている皆さんには申し訳なく思っていますが、どうぞお許しください。


今日は、珍しくジョージ四世を取り上げた本を。
『ジョージ四世の夢のあと』(君塚直隆 著/中央公論新社)。

彼は仕方が無い面はあるものの、歴史上も文学史上もあまりいい印象は持たれていません。
放蕩三昧と離婚騒動。
本書のトップにも、当時の『タイムズ』の酷評から始まっています。



どの目が彼のために涙を流そうか?

……………

わがままな奴に人々は同情など寄せはしない。



…随分とストレートな表現です(笑)

そんな彼は、先王ジョージ三世が集めさせた貴重な蔵書6万5千冊をそっくり大英博物館に寄贈したい、そう政府に申し入れたそうです。
時は1823年。



私はこの書物を国民への贈り物として考えてもらえればと切に望んでいる。
さらにこれが結果的には、国家による業務となってくれることを。



本心かどうかは別として、彼はこのように首相に伝えたそうです。
つまり、国王が本を蒐集するのではなく、政府が国費を投じて大規模に本を集めていくべきだと、そう言っているのです。
イギリスの納本制度や公共の手による国立図書館の建設などの理念が、この瞬間から実際的に流れ始めたといってもいいでしょう。
大英博物館は、当時改築の計画があった部分に新しく図書室を設けることになりました。やがてそれは更に増築され、有名なあの円形の閲覧室(Reading Room)が姿を現します。
その過程については、大英博物館(The British Museum)の
サイトにも載っています。
何度見ても、この閲覧室のパノラマは素晴らしいですね!
画像もWeb上に沢山ありますので、ぜひご覧になってみてください。

一方、ジョージ四世が寄贈した本については、現在、新しい大英図書館(The british Library)に移されています。
こちらは1998年に新設された、まだまだ新しい図書館。

トップページも、あまり気取らない雰囲気です。
そうそう、ここには
オンラインショップまであります!
…日本では考えられませんね(笑)
この大英図書館の中に、吹き抜けの中にタワーとなって国王図書室(The King's Library)の貴重な蔵書は収められています。
これもまた、一度見たら忘れられない光景です。
よろしければ、この画像も検索してみてくださいね☆


ジョージ四世と言えば、国王即位と同時に王立文芸家協会(The Royal Society of Literature)も創設しています。

今迄あまり知らなかったことばかり、本書では教えられています。
知らないことは、特定の人物に対する評価までを誤ってしまう…そんなことも考えさせてくれる1冊でした。

2010年2月 4日 (木)

漸く3巻目です! 『ヘイムスクリングラ』のこと

…寒いですね。
明け方も夕方も、随分と明るくなったと思っているのですが、やはり、まだまだ寒い日が続きます。
その寒さのためもあるのでしょうか、近頃、体のあちこちが軋み始めています。
相変わらず耳の調子も悪く、背や肩、腕の痛みなど、年齢やストレスもあるのでしょうがお仕事の集中も妨げるので困っています。
このブログも、少し控え気味になるかも知れません。
どうぞ、気長にお付き合いくださいね。


待ちに待ったスノッリ・ストゥルルソンの『ヘイムスクリングラ』第3巻が発売されました。
発売日を過ぎても、なかなかオンライン書店で購入が出来ず、苦悩する日々が続きましたが、それも漸く終わりです。
小さな版元さんは、本当に大変ですね。例えHPに掲載されていても、その本が日付どおりに流通するとは限らないのですから。
…まぁ、まさか邦訳されるとは思ってもいなかった名著ですから(笑)、気長に待っています。
最終の第4巻は3月下旬とのこと。年度明けには、全巻が揃うことでしょう。

第3巻は、オーラヴ聖王のサガのクライマックス、『ヘイムスクリングラ』の山場です。
大切に読ませていただきます。

…次は、何を出してくれるのでしょうか。楽しみな版元さんです☆

2010年2月 2日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.42

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.42  2010.1.19

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    寒い日が続きますね。
    関西の平野部でも、先日は雪になりました。
    皆さん、お身体は大丈夫でしょうか。

    海の向こうでは、ハイチが大変な状況になっています。
    関西で震災を体験した一人としては
    我が身のことのように思えて仕方がありません…

    少しでも、少しでも早く、日常が戻りますように……
    

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、1月5日以後の新刊です。

 ☆『漢籍伝来』(静永健 著/勉誠出版)
    漢籍は、『白氏文集』は
    どのように日本や東アジアで読まれてきたのでしょうか。

 ☆『マイケル・ポランニー「暗黙知」と自由の哲学』(佐藤光 著/講談社)
    “本邦初の本格紹介”と帯にはありますが
    少しだけ、違和感を覚えますね。
    科学哲学者ポランニーの全体像を、ということであれば
    確かに出版数は少ないのですが…

 ☆『ヒンドゥー教の〈人間学〉』(マドレーヌ・ビアルドー 著/講談社)
    ヴェーダや、『ラーマーヤナ』に『マハーバーラタ』。
    古代のバラモン教から、現代のヒンドゥー教まで。
    多彩なインドの宗教哲学を見通す1冊です。

 ☆『フォークの歯はなぜ四本になったか』
   (ヘンリー・ペトロスキー 著/平凡社)
    身の回りの実用品は、どのようにして形が決まってきたのでしょうか。
    ペトロスキーと言えば、『本棚の歴史』もすぐに思い出しますね。
    平凡社ライブラリーで復刊です。

 ☆『純粋理性批判 1』(カント 著/光文社)
    中山元による、全7巻の新訳ですね。
    “分かりやすさを徹底した”本書がいいのかどうかは
    意見が分かれるかも知れませんが…
    これを機会に、もっと身近になって欲しい1冊です。

 ☆『叢書グローバル・ディアスポラ 6』(中川文雄 編著/明石書店)
    第4巻の「ヨーロッパ・ロシア・アメリカ」に続いて2回目の配本。
    移民を含めた、人の移動から見た「世界」とは
    どんな姿をしているのでしょうか。

 ☆『立本倫子colobockle apartment』
   (Pooka編集部 編集/学研教育出版)
    立本倫子のサイトがこちら → http://www.colobockle.jp/index.html
    絵本も出しておられましたよね。

 ☆『メフィス』(フロラ・トリスタン 著/水声社)
    作家としてよりも、女性社会主義者として知られているかも知れません。
    19世紀パリの貴族社会を舞台としたプロレタリア文学。

 ☆『切手帖とピンセット』(加藤郁美 著/国書刊行会)
    オールカラーで184ページ!
    “グラシン紙のポケットが切手の背景に写っている、
     ちょっと古くて懐かしい切手帖そのものを思わせる、
     祖父江慎氏によるブックデザイン”
    …これはもう、ぜひ見てみなくては。

 ☆『数学はいかにして創られたか』(Luke Hodgkin 著/共立出版)
    ヨーロッパ以外の原典資料も駆使した広域的な数学史。

 ☆『民主主義がアフリカ経済を殺す』(ポール・コリアー 著/日経BP社)
    民主主義がもたらす深刻な危機。疲弊するアフリカ社会の実態とは。

 ☆『変容する中国の労働法』(山下昇 編著/九州大学出版会)
    「世界の工場」中国の労働事情とは。
    労働者の権益保護が強化された、最新の労働法を解説したもの。

 ☆『アメリカの医療保障』(長谷川千春 著/昭和堂)
    シリーズ「アメリカ・モデル経済社会」全10巻の6巻目です。
    オバマ政権になって再び新聞紙上に見られるようになった
    アメリカの医療保障について知るにはいいものでしょう。

 ☆『現代人口辞典』(人口学研究会 編集/原書房)
    人口問題の言葉や概念を解説したハンディな用語辞典です。

 ☆『ハンナ・アレント』(亀喜信 著/世界思想社教学社)
    つい先日も、勁草書房さんから『公共性への冒険』が出ていましたね。
    彼女の思想は死後35年が過ぎても
    途切れることなく続いていきますね…

 ☆『病院で聞くことば辞典 新版』(浜六郎 著/岩波書店)
    四六版で並製。手軽に持ち運び出来るサイズで
    病院でよく聞く言葉を解説してくれるもの。

 ☆『今すぐ弾けるやさしい大正琴入門 改訂版』
   (泉田由美子 編著/自由現代社)
    まだまだ人気ありますよね、大正琴。
    楽器の教本で知られる自由現代社さんから出ているものです。

 ☆『文化史とは何か 増補改訂版』(ピーター・バーク 著/法政大学出版局)
    増補改訂版の表紙はフェルメールなんですね。
    初版とどちらがいいかは好みが分かれるかも知れません。
    原著第二版の完訳、文化史研究を網羅した格好の入門書です。

 ☆『夜食の文化誌』(西村大志 編著/青弓社)
    夜食…確かに、新しい文化かも知れませんね。

 ☆『集団人間破壊の時代』(サマンサ・パワー 著/ミネルヴァ書房)
    2003年にピューリッツアー賞(ノンフィクション)を受賞した
    “A Problem from Hell”の翻訳です。
    紛争、迫害、虐殺…国家や社会の失敗とこれからと。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『切手帖とピンセット』(加藤郁美 著/国書刊行会)

    副題は
    “1960年代グラフィック切手蒐集の愉しみ”です。

    国書刊行会さんのHPでは
    この1960年代を

    “一般の人々が海外旅行をすることがまだ難しく、
     夢のように思われた1960年代”

    と紹介されていますね。
    

    少しお話は変わりますが
    先日、彰国社さんから
    『Showa Style 再編建築写真文庫』という本が出ました。
    1953年から1970年まで出版された
    北尾春道の写真による『建築写真文庫』を再編集したものです。
    無名の建物。無名の人々。
    1960年代の「リアル」が写し込まれています。

    『切手帖とピンセット』は
    この『Showa Style 再編建築写真文庫』と同じ懐かしい時代の切手を
    1154枚(!)も詰め込んだ
    オールカラー184ページの素晴らしい1冊です。

    どちらの本も
    詰め込まれたその「空気」を
    愛おしく思う方は多いのではないでしょうか…

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『レクイエム』(アントニオ・タブッキ 著/白水Uブックス)
     

    こんな物語を書いてはいけないのだと、
    なんとなく察しはついていた。
    なぜなら、
    虚構を模倣して、
    それを真実に変えてしまうだれかが、
    かならずどこかにいるものだから。

    ……………

    わたしはそのできそこないの物語をもう一度生きなければならなかった。
    ただし、
    今度は、
    ほんとうの意味で。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2010年1月31日 (日)

雨ですね…アジェからシミック、コーネルへ

朝から薄暗く、昼には小雨になりました。
日も射さず、周囲の声も稀な午後…

ふと、思い出したのはチャールズ・シミックの文章です。



六月の日曜の早朝。
真夜中過ぎに雨が降ったが、大気も空も奇跡のように澄みわたった。
大通りに人けはなく、店はどこも閉まっている。
まだ人間に見られる前の、物たちのつかのまの姿。



『コーネルの箱』(チャールズ・シミック 著/文藝春秋)の中の一節。
訳者柴田元幸も書いているように、この言葉はパリの写真家アジェを念頭に置いたも
のでしょう。

コーネルは箱に様々な事物を閉じ込めた芸術家。
彼の作品には、パリの商店のウィンドウを写したアジェの影響があるとする説もあるようです。
また彼はアメリカの詩人エミリー・ディキンソンを最も愛していたとも。
お気に入りの二人と関わるから…ではありませんが、コーネルが創る世界には、惹かれるものがあります。

シミックは書いています。


ディキンソンの詩を読むこと、コーネルの箱を見ることは、アメリカの文学と美術を新しい考え方で考えはじめることだ。


…と。

2010年1月27日 (水)

写真が一杯☆ 『エッフェル塔』のこと

晴れていても、雨が降っていても。
風が吹いていても、雪が舞い降りていても。

その鉄塔は窓の向こう側。
今は暗闇を背に、小さな灯りを瞬かせています。

…いえ、残念ながらエッフェル塔ではありません。
でも、あの鉄塔もまた、何かを表しているのでしょうか。


塔の隠喩の只中で、ロラン・バルトがエッフェル塔に見た、人間への最後の変身は…



この塔は、この姿によって、守護の役割をあらわに示している。
エッフェル塔は、パリを見守る女性、足下に身をよせるパリをいたわる女性なのである。



女性ではありませんが、この『エッフェル塔』(ちくま学芸文庫)の一節を読んだ時に思い出したのは、佐藤さとるの『ジュンと秘密の友だち』です。
あの中のダイちゃんこそ、「守護」でなくて何なのでしょう。
ジュンを見守る、いたわる少年の姿をした鉄の塔……


…我が家の窓から見上げる鉄塔。
いつも見守ってくれるその塔を、我が家ではダイちゃんと呼んでいます。
彼こそ、彼女こそ、我が家の守護を表したもの。


『エッフェル塔』の中には数多くの写真が添えられていますが、うちの一枚にパリの観光絵葉書(99ページ)があります。
エッフェル塔のすぐ足下を写したもの。
重なり合う家並みの間から、立ち上がる美しくしなやかな足首。
こんなにも傍で見守られている…パリの街並みが包み込まれている…その優しさと力強さが感じられる一枚です。

…いつか、我が家のダイちゃんも、我が家と共に、この町と共に、こんな風に写し、残してあげたいものです。

2010年1月26日 (火)

一冊の書物から…ローウェルのエピソード☆

一冊の書物との出会いによって、人生が変わることもある。


そう書いているのは、昨日も触れた『アリの背中に乗った甲虫を探して』(ロブ・ダン 著/ウェッジ)です。
火星観測で知られるローウェルが、フランマリオンの『火星とその居住可能性の諸条件』という本と出会うところ。


どうやらフラマリオンの本は、ローウェルの心の奥底にある何かを呼び覚ましたらしい。


日本や韓国の神秘的な異文化よりも、更に遠方にある、見知らぬ文明の可能性。



ローウェルはそれまでの人生の大半を異文化研究に費やし、それに必要な調査と旅行に生き甲斐を見いだしてきた。
そしていま、新たな可能性ー別の惑星に文明が存在する可能性ーが彼の手のなかにあるのだ。



そして、彼はその瞬間を形に残すのです。


天命が下ったと感じたローウェルは、本の余白に「直ちに行動せよ」と書きこみ、さっそく準備に取りかかった。


一冊の本と出会い、何かが変わり、その変わったことを本に対して宣言する…

結果はどうであれ。

……そんな瞬間に出会えることは、きっと幸せなことでしょうね☆

2010年1月25日 (月)

こんなところに、フェルメールですか…

近頃、更新が滞っているのは、慣れないお仕事ばかりが山のようにある為で…
特定個人をターゲットにした、強気のクレームにうんざりしたりとか、しないとか…
…そんな感じで、厭世的になっている今日この頃だからなのです。

それでも時間は知らずに流れ、あっと言う間にもう1月も最後の週です。
困りましたね(苦笑)
あれやこれやと、課題ばかりが時間に皺寄せられて、壁のように目の前に立ち上がっています。
そんな時でも、面白そうな本には手が伸びてしまいます。
『アリの背中に乗った甲虫を探して』(ロブ・ダン 著/ウェッジ)。
タイトルからして、興味津々でした☆
あのウェッジからの出版でしたし。
…で、実際に読み始めたら、もう止まりません。
リンネから始まって、生物学者達が次々と。

その中に、レーウェンフックが挙げられていました。
自作の顕微鏡で、当時はまだ誰も見たことが無かった微生物の世界を世に知らしめた人。
彼はデルフトに住んでいました。
そして同じ時代、その小さな町にいたのがフェルメールです。
本書によれば、フェルメールの作品『地理学者』は、レーウェンフックをモデルにした説もあるそうだとか。
なら、コンパスと地図ではなく、レンズを手にしていて欲しかったですね。

彼の優れた(恐らく当時、世界一優れた)顕微鏡を、レーウェンフックは死ぬまで自宅から外に出すことはありませんでした。
後には家族にさえ殆ど見せなかった、自分だけの顕微鏡。
自分だけが知る世界。
自分だけが愛した世界。

……オブライエンの『金剛石のレンズ』(創元推理文庫)が思い出されます。

彼はそこに、アニミュラを認めたのでしょうか…
…リンネが湿原で、ヒメシャクナゲに美しいアンドロメダを認めたように。

2010年1月22日 (金)

翻訳3種…

『エミリ・ディキンスン家のネズミ』(エリザベス・スパイアーズ 著/みすず書房)の翻訳は、長田弘でした。
もう一度、“I’m Nobody! Who are you?”の彼の訳を載せましょう。



わたしは誰でもない!-あなたは誰?
あなたも-誰でもない-のね?
二人は、おなじね! でも、話しかけないで!
きっと追いだされるから-わかってるでしょ?

つまらないことよ-誰か-であることなんて!
蛙みたいに-おおっぴらに-
ひっきりなしに-相手の名を呼びつづけたって
耳を傾けてくれるのは-泥の沼だけ!



では、続けて。
岩波文庫の『対訳 ディキンソン詩集』から亀井俊介の訳で。



わたしは誰でもない人! あなたは誰?
あなたも-また-誰でもない人?
それならわたし達お似合いね?
だまってて! ばれちゃうわ-いいこと!

まっぴらね-誰かである-なんてこと!
ひと騒がせね-蛙のように-
聞きほれてくれる沼地に向かって-六月じゅう-
自分の名前を唱えるなんて!



最後に、国文社の『続自然と愛と孤独と』から中島完の訳で。



私は名前なし あなたはだれ?
あなたも名前なし?
じゃ二人は同じね だれにも名前など言わないで!
みんなは私たちを追い出してしまう

有名になるなんてほんとにつまらないこと
讃美者の泥沼に向かって 蛙が六月のあいだながながと
自分の名前を呼んで聞かせている
名を広めるなんてそんなこと!



……随分と違いますよね!
興味を持っていただけたら、ぜひ、原文を探してみてください☆

2010年1月20日 (水)

ジャコメッリとエミリー・ディキンソンと…

…何だか昨日の方が暖かく感じられたのは、陽の光が今日は少なかったからでしょうか。
明日はまた雨だそうです。
陽光に焦がれる冬の日々…


青幻舎から、マリオ・ジャコメッリの写真集が出ましたね。
『MARIO GIACOMELLI』(アレッサンドラ・マウロ 編)。
彼の息子による年表や、各氏による評論も交えながら…白と黒の世界が目の前で躍ります。

その作られた表現から、迫ってくるもの…それはジャコメッリが描く「物語」でしょうか。
彼が伝えたかったもの、語りたかったもの。
その言葉、感情、想い…
それらが写真となって、目の前に広げられています。
何を読み取るのかは、こちらに全て任されたまま…

ジャコメッリは、幾つかの写真のシリーズを詩に捧げていました。
その中の一つが「私は誰でもない!」“IO SONO NESSUNO!”。
…すぐに分かりますね。



わたしは誰でもない!-あなたは誰?
あなたも-誰でもない-のね?
二人は、おなじね! でも、話しかけないで!
きっと追いだされるから-わかってるでしょ?

つまらないことよ-誰か-であることなんて!
蛙みたいに-おおっぴらに-
ひっきりなしに-相手の名を呼びつづけたって
耳を傾けてくれるのは-泥の沼だけ!



緑の地に白抜きで並べられた言葉。
『エミリ・ディキンスン家のネズミ』(エリザベス・スパイアーズ 著/みすず書房)の裏表紙に描かれた言葉です。
作中では白ネズミのエマラインの詩への返事として、取り上げられています。


ジャコメッリが写真のシリーズのタイトルとして選んだのは、このエミリー・ディキンソンの詩でした。
見るものを不安にさせるような…重ねて焼かれた写真が、どれも一斉に問い掛けてきます。

…ここに誰かがいる。
だがそれは、誰でもない。
だが、それはお前だ。
ここにはいない、お前だ。
お前もまた、誰でもない。
追い出されたりはしない。
ただ塗り込められる。
泥の中に埋められたもの、それがお前。
聞こえるだろう、騒がしい声が。
蛙の声が。
お前を呼ぶ声が。
誰でもない、お前を呼ぶ声が……

2010年1月19日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.41

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.41  2010.1.5

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    明けまして
    おめでとうございます。

    2010年、一番最初のお手紙を差し上げますが
    新しい本のお届けものは少なめです。

    お正月の疲れも残る中
    さらさらとでも、目を通していただければ嬉しいです☆
    

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、12月22日以後の新刊です。

 ☆『マネーの進化史』(ニーアル・ファーガソン 著/早川書房)
    現代の金融システムについての、難解な経済書も多いので…
    こんな入門書も必要ですよね。

 ☆『春雨物語論』(高田衛 著/岩波書店)
    著者の専門である上田秋成の作品『春雨物語』についての論考。
    カバーが美しいですね☆

 ☆『科学と価値』(ラリー・ラウダン 著/勁草書房)
    近頃、科学哲学の本が散見しますね。
    科学が哲学を求めているのでしょうか
    それとも哲学が科学を侵食しているのでしょうか…

 ☆『人種主義の歴史』(ジョージ・M.フレドリクソン 著/みすず書房)
    そもそも「人種」とは何なのか。
    その名の下に権力が行使してきた
    人種主義の歴史を簡明に描いたもの。

 ☆『明治国家と雅楽』(塚原康子 著/有志舎)
    ブログによれば、“十数年間、地道に研究されてきた結晶”だそうです。
    近代国家の国づくりと伝統音楽の関係を描いたもの。
    ちなみに、ブログはこちら → http://yushisha.blog.ocn.ne.jp/blog/

 ☆『Scope』(桑原弘明 著/平凡社)
    幻想的な風景を、小さな箱の中に閉じ込めた
    ミニアチュール作品の写真集です。
    装丁に期待大、です☆

 ☆『ロマン語』(W.D.エルコック 著/学術出版会)
    ラテン語から生まれた全ロマン語の生成と進化を
    実例により解説したもの。
    “20世紀中葉における斯界の研究成果の集大成をなすとともに
    西洋中世の言語文化の総覧である”とは、HPにある言葉。

 ☆『喪の日記』(ロラン・バルト 著/みすず書房)
    表紙の写真がいいですね…
    母の死から始まる、カードに書かれた日記。

 ☆『紙の本が亡びるとき?』(前田塁 著/青土社)
    “「めくらない世代」 がやってくる!”とは帯の言葉。
    賛否はともかく、一つの傾向ですよね。

 ☆『中世の書物と学問』(小川剛生 著/山川出版社)
    日本において
    中世の人々はどのように書物を利用していたのでしょうか。

 ☆『赤いゲッベルス』(星乃治彦 著/岩波書店)
    名は知られていながらも、意外に本にはなっていないと思います。

 ☆『フェアトレード』(アレックス・ニコルズ 編著/岩波書店)
    フェアトレードのビジネスとしての実際を、豊富な事例から。

 ☆『海を渡る日本現代美術』(光山清子 著/勁草書房)
    欧米で開催された、主な日本現代美術の展覧会を巡って
    その受容と評価を論じたもの。

 ☆『言葉は社会を動かすか』(松永澄夫 編集/東信堂)
    言葉を取り扱ってきた編者が、言葉と社会の関わりを纏め論じたもの。

 ☆『読書と読者』(京都大学図書館情報学研究会)
    読書とリテラシーについての最新の研究成果です。

 ☆『タロット象徴事典』(井上教子 著/国書刊行会)
    そのシンボルや図像を読み解き、より深くタロットを知るための事典。

 ☆『クルアーン』(小杉泰 著/岩波書店)
    「書物誕生」の1冊。『コーラン』のことです。

 ☆『マドゥモァゼル・ルウルウ』(ジィップ 著/河出書房新社)
    森茉莉初の訳書のようですね。
    初版は1973年、薔薇十字社から出ていたものの新装復刊です。

 ☆『絵具の辞典 新装普及版』
   (ホルベイン工業技術部 編集/中央公論美術出版)
    各種絵の具の定義から歴史、使用上のポイントまで。
    絵の具という製品そのものを解説してくれるもの。

 ☆『子どもが描く世界』(クリスティーン・アレグザンダー 編著/彩流社)
    作家が子ども時代に生み出した
    「子どもによる文学」を取り上げた新しい視点の本。
    子どもの作家による、模倣や創造の過程等を探るもの。

 ☆『廃校のうた』(菅谷誠 著/柏艪舎)
    北海道から消えた4つの学校…
    著者による紹介サイトが
    こちら → http://www009.upp.so-net.ne.jp/makosgy/manabiya.html

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『喪の日記』(ロラン・バルト 著/みすず書房/12月22日発売)

    今年2010年は
    ロラン・バルトが亡くなってから、30年になりますね。

    そんなこともあってか
    彼へと繋がる本が、幾つも目に留まるような気がします。
    (下の「ひとこと」に触れたトドロフも、彼に学んだ1人です)

    本書はその内の1冊。
    ずっとバルトの本を出してきた、みすず書房さんからのもの。

    表紙の写真が、本書をとてもよく表わしていますね…

    母の死が、バルトにもたらした絶望。
    その絶望の中で
    カードに記されていく
    切れ切れの言葉たち…

    それらが集まり
    更にバルト自身により分けられ、形を成したのが本書です。
    
    そして、本書はまた
    彼の『明るい部屋』へと繋がっていくもの…

    時に難解なバルトの思想を
    より身近に感じさせてくれるもの。
    「人間」バルトを感じさせてくれるもの…

    きっと、本書はそんな1冊になっていることでしょう。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『文学が脅かされている』(ツヴェタン・トドロフ 著/法政大学出版局)
     

    文学の対象が人間の条件それ自体である以上、
    文学を読み、それを理解する者は、
    文学分析の専門家になるのではなく、
    人間存在を知る者となるだろう。

    ……………

    来るべき諸世代にこの壊れやすい遺産、
    よりよく生きる手助けをするこれらの言葉を伝えていく義務は
    われわれ大人のものである。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2010年1月18日 (月)

ただ、確かめるだけ…それだけで満足してしまいます『ジェニーの肖像』のこと☆

今日の昼間は、薄着でも大丈夫でしたね。
天気予報では、暫く暖かな日和が続くとか。
ただ、体調管理が難しくなるかも知れません。
お身体には十分、お気を付けくださいね☆

…と書いている本人が、ここ数日、帰宅後も根を詰めて仕事を続けていたので…肩こりからでしょうか、片方の耳の聴力が弱くなってしまいました(苦笑)
今も、お薬を飲み続けています。
低音が聴こえないらしく、人の話し声が高音でリフレインしています(笑)
困ったものです。


トニー・パーカーの『アメリカの小さな町』(晶文社)。
本書には、ある月曜日の午後に行われた、高校生たちの討論会の模様が描かれています。
数人の男女が自分の意見を述べていくのですが、中に彼らが読んだ本から気に入ったものを挙げていく箇所があります。
『かもめのジョナサン』から始まるのですが…そこに、懐かしいタイトルが現れます。
それが『ジョニーの肖像』“PORTRAIT of JENNIE”。
早川文庫や創元推理文庫など、幾つかの翻訳がありますよね。
この手にあるのは、今はもう品切れになっている早川文庫版。
1993年の9刷の表紙は、福山小夜によるカバー絵。
ロマンチックで愛らしく、温かな色合いの少女の立ち姿……
……チョコちょこの少女時代のジェニーのイメージは、この絵のままですね。

福山小夜は、1951年、奈良県に生まれた画家。この表紙の絵とはまるで違う画風も多いので、初めて知る方はビックリするかも知れません。
そうそう、高倉健の版画でも知られています。

冬のある日、画家が出会った一人の少女。



どこから来たのか
だれも知らない
どこに行くのか
みな行くところ
風は吹きすさび
海はめぐる
けれどもだれも知らない



少女の歌です。

ここから、時間を越えた永遠が、真実が紡がれていきます…


とても温かな1冊。
とても美しい1冊。
とても悲しい1冊。

…そんな表現すら、どうでもよくなっていきます。

ただ、ジェニーと出会う。二人の愛情を辿っていく。
ただ、それだけ。
それだけのために、何度も捲っては二人を確かめ、そっと元に戻すのです。
ただ、それだけ。

それだけのために、今もこの文庫をパラパラと読みましょう…

2010年1月14日 (木)

生者と死者、現、夢、空白の時…

昨日は、近畿の平野部でも雪になりましたね。
風も強くて、夕方から既に氷点下。
…で、今朝になってもそのままでしたね。
寒い日が続くのも困りものですが、来週は暖かい日が続くとか。
皆さんも、体調管理には十分、気を付けてくださいね☆


温かなお部屋の中で。
日がな一日、横になって、本を読んでいました。

時にうつらうつらと、夢見に陥り…
目を覚ましては、物語の続きを追いかけ…

麻薬中毒の青年と会話をしては、宝くじ売りと何処かで…そう、別の本の中で出会っていたことを思い出す。


夢を見ている最中なのに、それが現実のようにも思えてくる。


“わたし”と共に記憶の中を彷徨い続けます……

白水Uブックスなので、薄いものです。
こんな疲れた日の読書には…夢と現を往き来する日にはまさにピッタリの1冊。
アントニオ・タブッキの『レクイエム』。
副題は「ある幻覚」。

この本を、この幻覚を、このリスボンの逍遥を、以前にも経験したような、していないような…それすらも曖昧なまま、作中の“わたし”と同じ1日を巡り続けます。

…そして、また、恐らく、次に読む時も思うのでしょう。

この“わたし”に、かつて出会ったことがある。
記憶の中で、夢の中で、共に歩んだことがある……

……と。

2010年1月12日 (火)

『庭園の歓び』より

 収穫の後で

死んだと言われる園に行って眺めるがよい、
遠くに微笑む岸辺の仄かな光と
清らかな雲の思いもかけぬ青さが
池と色とりどりの小道を明るくしているのを。

             シュテファン・ゲオルゲ



『庭園の歓び』(高木昌史 編訳/三交社)

2010年1月11日 (月)

…それでは、庭園など巡りましょうか☆

…世の中は三連休だったんですよね。
今日は、成人式だったとか。


……すっかり、世間の流れから取り残されて、お仕事を
していました(苦笑)


明日はお休み。
ゆっくりと、気になる本を彷徨うことが出来ればいいのですが…絵に描いた何とやらになりそうです。

ですが、今だけでも、気分を切り替えて西欧の庭園を巡ってみましょうか。

…いえいえ、写真や絵画ではありません。
文学作品やエッセイ、詩に描かれている庭園です。

『庭園の歓び』(高木昌史 編訳/三交社)は、そんな詩文が並ぶ1冊です。
200ページばかりのものですが、手軽に各地の、各時代の庭園を散策することが出来ます。

珍しいのは、中に、お気に入りのシュティフターが取り上げられていること。
『晩夏』から、薔薇に触れる部分を抜き出しています。
『晩夏』そのものを味わうものではありませんが、主人公たちが愛する庭園がこのような書物に取り上げれらていることこそが、何だか嬉しくて仕方ありません。

他にもウェルギリウスやゲーテ、フォンターネといった名前が見られます。

どれも、ほんの数頁だけの描写なのですが、だからこそ気軽に、庭の中を彷徨うことが出来てしまいます。


ページが開くところから。
次々と。
蜜蜂が花から花を辿るように。

…いざ、花の香りと美しい風景との出会い求めて。

2010年1月 7日 (木)

お月さまは、こんなお顔です…『月のかぐや』☆

本当に寒いですねぇ…

あまりに冷え込むと、身を縮めてしまうからでしょうか、肩こりや頭痛がヒドクなります。
そんな日は無理をせずに、お薬を飲んで、難しいお話にも目を閉じてしまいましょう。

表紙のクレーターもスゴイですが、扉のピコ山もソフトな感じが名前の印象もあって可愛らしいですね☆
『月のかぐや』(JAXA 編/新潮社)は、衛星「かぐや」が撮ってくれた素晴らしい写真でいっぱいの本。
Web上で見るよりも、キレイですね!
じっと眺めていると、ずっとずっと細かいところまで、見えてくる気がします。

謎だったティコの光条。カルシウムやアルミニウム、ケイ素、酸素で出来た斜長岩の白い欠片が飛んで生まれたんですね。

想像していたよりも、ずっと滑らかな表面が次々と現れます。

アルプス谷も、直線崖も、まるで作り物みたいで…かぐやの写真で見ても、やっぱり不思議。


…見飽きることがありません。


かぐやの写真は勿論、Web上でも見られます。
それが
こちら
ただ、じっくり堪能される方には、やっぱり紙の本がオススメです☆

では、ぬくぬくとしたお家の中で、もう少し、お月さまをお散歩してから眠りましょう……

2010年1月 5日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.40

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.40  2009.12.22

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    今年最後のお手紙を差し上げます。

    少しでも、新刊に興味を持っていただけるような…
    少しでも、幅広い読書に繋げていただけるような…

    この1年間
    そんなお手紙の一つになれたのなら
    嬉しく思います。

    それでは…

    少し早いですが
    どうぞ、よいお年をお迎え下さい☆
    

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、12月8日以後の新刊です。

 ☆『王朝滅亡の予言歌』(串田久治 著/大修館書店)
    “隠喩やブラックユーモアを駆使して権力者を揶揄し呪う歌
     ─それが中国の童謡である”とはHPの言葉。
    歌の中に織り込まれた希望が実現した時
    その童謡は予言の歌として今に残る…
    …では、残らなかった希望はどれ程あったことでしょうね……

 ☆『奇蹟の画家』(後藤正治 著/講談社)
    “絵を見て泣いたことがありますか?”とは帯の言葉。
    画家石井一男の作品について、ではなく
    絵が人を救うということについて描かれたものなら
    それは大切なことかも知れません。

 ☆『医学と芸術』(森美術館 編集/平凡社)
    東京の森美術館で開催している同名展覧会の図録。
    生と死、医と美を大きな視点から総合的に眺める企画です。

 ☆『偽書「東日流外三郡誌」事件』(斉藤光政 著/新人物往来社)
    …いえ、もう忘れられつつあるものかと思われるので。
    文庫化を機に、当時のことを新しい世代に知ってもらうのも
    大切ではないでしょうか。

 ☆『成人の心理学』(丸島令子 著/ナカニシヤ出版)
    “日本の中年は何に悩み、どう乗り越えるのか”とはHPの言葉。
    実証データから読み解く、日本の中年像です。

 ☆『社会貢献する宗教』(稲場圭信 編集/世界思想社教学社)
    宗教の社会貢献を、具体例を交えて紹介、考察したもの。

 ☆『デザインの小さな哲学』(ヴィレム・フルッサ 著/鹿島出版会)
    デザインに関する、哲学エッセイ21篇。

 ☆『自死という生き方』(須原一秀 著/双葉社)
    こちらも哲学者に関するもの。新書になりましたね…
    著者は、自らの哲学的事業として、自死を選びました。
    本書はその遺稿です。

 ☆『ジョージ四世の夢のあと』(君塚直隆 著/中央公論新社)
    英国王ジョージ四世の事績を積極的に見直したもの。

 ☆『賞をとった子どもの本』(ルース・アレン 著/玉川大学出版部)
    副題に“70の賞とその歴史”とありますね。とっても便利かも☆
    …児童書向けだけでも70も賞があるんですねぇ。

 ☆『イギリス詩人伝』(サミュエル・ジョンソン 著/筑摩書房)
    サミュエル・ジョンソンは生誕300年になります。
    本書はその彼の主著。

 ☆『古本綺譚 大増補』(出久根達郎 著/平凡社)
    “大増補”に惹かれてしまいますね(笑)

 ☆『日本SF精神史』(長山靖生 著/河出書房新社)
    幕末からこちら、近代日本で描かれてきた
    未来やもう一つの世界の系譜。

 ☆『写真的思考』(飯沢耕太郎 著/河出書房新社)
    もう1冊、河出ブックスから。
    古今東西のユニークな写真を読み解き
    その魅力に迫る著者初の本格的写真論。

 ☆『流木と災害』(山本晃一 編集/技報堂出版)
    山から海まで。
    それぞれの空間区画で流木による災害の軽減を図るには。

 ☆『戦時金融金庫の研究』(山崎志郎 著/日本経済評論社)
    戦時中、軍需産業への融資を行っていた
    戦時金融金庫についての本ですね。
    その業務から、リスク管理までを明らかにしたもの。

 ☆『キリシタンと翻訳』(米井力也 著/平凡社)
    布教の為の翻訳とは。
    新しい視点ですね☆

 ☆『心的イメージとは何か』(S.M.コスリン 著/北大路書房)
    心的イメージについての最新の知見と理論。

 ☆『〈著者〉の出版史』(浅岡邦雄 著/森話社)
    藤村・天外・泡鳴・鴎外・荷風…
    明治から昭和初期にかけての著者と版元との契約は? 報酬は?

 ☆『働くことの意味』(橘木俊詔 編著/ミネルヴァ書房)
    「叢書・働くということ」全8巻中の1冊。
    第1巻に相応しい題材ですね。“人はなぜ、何のために働くのか。”

 ☆『モノの意味』(ミハイ・チクセントミハイ 著/誠信書房)
    モノが人にもたらす感情や、その関わり方、歴史とは。
    人はモノを除外して生きてはいませんものね。
    著者の一人がチクセントミハイですから
    モノと幸福についての話題が本書でも読めることでしょう。

 ☆『外字管理と文字同定』(長村玄 著/日本加除出版)
    漢字の歴史や概要から
    手書きとパソコンの文字のデザイン差までをまとめたもの。

 ☆『絶滅した日本のオオカミ』(ブレット・ウォーカー 著/北海道大学出版会)
    北海道におけるエゾオオカミ絶滅政策の歴史的背景などは
    あまり知られていないのでは。
    オオカミが絶滅に至るまでの、その過程。

 ☆『世論をさがし求めて』(西平重喜 著/ミネルヴァ書房)
    世論をめぐる歴史や各国比較を踏まえ
    どうやって世論調査が定着していったかを検討するもの。

 ☆『知識人として生きる』(スティーヴ・フラー 著/青土社)
    唯一の真実でなく、真実全体を見極める「知識人」とは。

 ☆『新常用漢字表の文字論』(文字研究会 編/勉誠出版)
    常用漢字表は何故、改訂されるのか。その意味とは。

 ☆『独楽園』(薄田泣菫 著/ウェッジ)
    “人生観照の極致”とは、帯の言葉。
    本書は口述筆記により執筆されたものです。

 ☆『白い城』(オルハン・パムク 著/藤原書店)
    パムクはノーベル文学賞受賞作家。
    「自己とは何か」を問う、著者の出世作。

 ☆『短歌が人を騙すとき』(山田消児 著/彩流社)
    “見てもいない風景、体験してもいない事象を詠む歌…”
    と帯の一部にあるように、短歌創作はとても自由なもの。
    本書はそんな通りすがりの読者の戸惑いにも答えてくれるテキストです。

 ☆『地球生命は自滅するのか?』(ピーターD.ウォード 著/青土社)
    地球における、生命の共存共栄は幻想なのでしょうか。
    むしろ共倒れを繰り返させるこの星は「死を招く母」なのでは…

 ☆『アクシオン・フランセーズ』(ジャック・プレヴォタ 著/白水社)
    ドレフュス事件を契機に組織されたアクシオン・フランセーズ。
    彼らの特徴的な思想と行動、その盛衰をたどる1冊。

 ☆『形而上学レッスン』(アール・コニー 著/春秋社)
    アメリカン・スタイルの、楽しい哲学書のようですね。

 ☆『渤海の歴史と文化』(東北亜歴史財団 編集/明石書店)
    韓国における、渤海国史についての研究成果を訳したもの。

 ☆『アリの背中に乗った甲虫を探して』(ロブ・ダン 著/ウェッジ)
    “実直な生物学者からマッドサイエンティストめいた昆虫学者まで”
    とはHPの言葉。
    著者が描き出すのは、そんな彼らの
    “狂気にも似た情熱とあくなき探求心”です。

 ☆『パリが沈んだ日』(佐川美加 著/白水社)
    パリがセーヌ川に沈む…1910年1月の大洪水から100年。
    なぜ、パリは何度も沈むのか。

 ☆『春の祭典 新版』(モードリス・エクスタインズ 著/みすず書房)
    “壮大かつ読みごたえのある文化史”とHPには書かれています。
    1913年のバレエ「春の祭典」から、ナチス崩壊までを描いたもの。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『賞をとった子どもの本』
  (ルース・アレン 著/玉川大学出版部/12月25日発売)

    プラトンのイデア論。
    恐らくはそこからとった社名でしょうね。
    それがイデア書院さん。
    古書で時折目にする社名ですが
    そこが、本書の玉川大学出版部さんの前身になります。
    (正確にはイデア書院→玉川学園出版部→玉川大学出版部のようです)

    玉川さんといえば
    何と言っても、子ども向けの『児童百科大辞典』でしょう。
    図書館には、なくてはならないものでしたね。
    見やすく、使いやすく、楽しめる辞典でした。
    これを越えたと断言出来るような百科辞典は、今でも無いと思います。

    そんな玉川大学出版部さんから出たのが
    70もの児童図書賞と、その歴史についての本です。
    沿革から受賞作のリスト、賞の背景まで…
    …なんて便利な本でしょう!
    
    残念なのは英語圏だけだということですが…
    巻末にある11,000(!)項目以上の
    原書・日本語訳書タイトルや人名索引(どちらも和文・英文で)は
    素晴らしいレファレンス・ツールになるはずです。

    受賞作が、どれも素晴らしいものばかりとは限りませんが
    読書へと導く「きっかけ」の一つにはなるものでしょう。
    きっと、知らない本ばかりが並んでいるはずです。
    まだ見たことも読んだことも無い本と出逢うために…
    早く本書のページを開いてみたいものです☆

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『いつでも戻ってくる失くした本のこと』
  (種村季弘 著/河出書房新社『箱抜けからくり綺譚』収録)
     

    …いわば道化としての復刻本の効用に気がついたのである。
    「これじゃないんだ」から、
    いまはない「これだ」を呼び出す魔法といってもいい。

    二度と戻ってこない本は、夭折した幼な友だちに似ている。
    若い頃の恋人に再会すれば、いやおうなしに相手の老いと、
    彼女の眼に映ったわが身のそれをも見ないわけにはいかない。
    失われた本は年をとらない。
    ここではないどこかでいつまでもピカピカに輝いている。
    みにくく汚れもしなければ、老いもしない。
    その気になれば、書斎の宮廷道化たる
    復刻本からありし日を呼び戻すこともできなくはない。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2010年1月 4日 (月)

図書館に、たった1冊の芥川…

時々私は廿年の後、或は五十年の後、或は更に百年の後、私の存在さへ知らない時代が来ると云ふ事を想像する。


そう書いているのは、芥川龍之介です。
岩波書店の『芥川龍之介全集 第4巻』に収められている、「後世」の中の一節。


その時私の作品集は、堆い埃に埋もれて、神田あたりの古本屋の棚の隅に、空しく読者を待ってゐる事であらう。


埋もれているだけなら、まだいいのかも知れません。

芥川は続けて図書館を夢想します。


いや、事によったらどこかの図書館に、たった一冊残った儘、無残な紙魚の餌となって、文字さへ読めないやうに破れ果てゝゐるかも知れない。


…随分と、暗い想像ですよね(笑)



しかしー

私はしかしと思ふ。



そう、しかし、です。


しかし誰かゞ偶然私の作品集を見つけ出して、その中の短い一篇を、或は其一篇の中の何行かを読むと云ふ事がないであらうか。


それが、図書館のステキなところ☆


更に虫の好い望みを云へば、その一篇なり何行かなりが、私の知らない未来の読者に、多少にもせよ美しい夢を見せるといふ事がないであらうか。


そんな風に嘯く芥川です。


…えぇえぇ。勿論、美しい夢を見せていただいていますとも。

何人も、何人も。
毎日、毎日。

あなたの知己は百代の後にあってもまだ、沢山、本当に沢山、夢を見せていただいていますよ……

2010年1月 3日 (日)

欲しくなってしまいます…『神話の詩学』のこと☆

でも、定価が7,000円! です…
水声社さん、素晴らしい本だとは勿論分かっていますし、それだけの値打ちがあることも分かりますが…
……でも、高すぎて今は我慢するしかありません(泣)

『神話の詩学』(エレアザール・メレチンスキー 著)は、平成19年度に日本翻訳出版文化賞を受賞しましたね。
チョコちょこが大好きな賞です。
その頃から、ずっとずっと気になっていました。
そこで、近くの図書館から年末年始の為に借りてきたのですが…

ぱらぱらと開いてしまったのがダメでしたね。
どのページを見ても、読み始めてしまうのです。
あちこちに、心惹かれるキーワードが鏤められています。

本書ではまず、第一部として現代に繋がる神話理論の概説を検討しています。
フレイザーやカッシーラー。
ロラン・バルトの名前もありましたね。
当然、レヴィ=ストロースも。
お気に入りのキャンベルに、作家としても好きなエリアーデ。
著者はロシアの方ですので、プロップも取り上げられています。

…もう、これだけで、ページをあちこち彷徨ってしまいます。
本当に、つまみ食いだらけ(笑)

第二部では、神話が具体的に取り上げられ、詩的な雰囲気を帯びてきます。
エッダやカレワラやヴェーダ。
創世、終末、メタファー…
ベーオウルフやゲセルの名も出てきます。
あれもこれも…どの作品も、また読み直したくなってきます。

第三部になると、もっと文学的要素が強くなり、現代の二十世紀文学における神話との関わりが述べられています。
ホフマンもありますね。
当然、ジョイスも。
トーマス・マンやカフカ、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』も。
どのページも知っている作品ばかり。
そのどれもが神話と繋がり、本書の流れにきちんと場所を与えられています。

…本当に、欲しい1冊です。
さすが、水声社さん。いえ、元、書肆風の薔薇さん。
もっと言えば、元、国書刊行会の方でしょうか…
これからも、ぜひ頑張ってもらいたいものです☆

2010年1月 2日 (土)

今日は、本屋さんへ…☆

今日は、近くのお寺へ新年のお参りに。

途中の古書店は、予想通りお休みで。

帰りがけに、本屋さんへと立ち寄りました。


残ったカレンダーを眺めながら。

積み上がる『親鸞』を横目に。

文庫の棚を彷徨って。


沢山の人の間を縫いながら。

集められた龍馬を尻目に。

絵本の表紙を愛でて。


手にとって、パラパラと。

零れる言葉を拾い上げ。

流れる想いに耳傾けて。


今日は、誰も連れて帰らずに。

居並ぶ本の声を背に。

次の本屋さんへと歩き出す…


…そんな正月、二日目でした☆

2009年12月30日 (水)

『エリアのエッセイ』大晦日 より

およそすべての鐘のあらゆる音のうちでー鐘の音は天国に一番近い音楽ですがーもっとも厳かでしみじみ心を打つのは、古い年を送りだすあの大晦日の鐘の音である。
私はそれを聞くと決まって、この過去十二ヶ月に散らばってゐる思ひ出の数々を、一度にわが心に喚び起こしてみるー今や名残惜しいその期間に、自分のしたことや蒙ったこと、成し遂げたことや怠ったことなどを、あれこれと。
すると、人が死んで値打が分かるやうに、この一年の値打が分かりだしてくる。



『エリアのエッセイ』(チャールズ・ラム 著/平凡社ライブラリー)

2009年12月29日 (火)

本が、文学が好きなんですね…

今日はゆっくり、のんびり、薬を飲みながらお休みしています。


年末年始に読むことにしていた本の1つ、それが『文学が脅かされている』(ツヴェタン・トドロフ 著/法政大学出版局)です。

文学作品そのものへの愛情が、本当によく伝わってくるエッセイですね。

それにしても、最近のウニベルシタスは読みやすくなりましたねぇ…
以前は良い本を出されていたものの、翻訳は…といったものが多かったのですが。

本書も、スイスイと読み進めることが出来ます。


…何故、自分が文学が好きなのか。


年の瀬も押し迫ったこの時期、ステキな問い掛けです。


…何故、自分が文学が好きなのか。


トドロフは答えています。


文学は私が生きるのを手助けしてくれる。

現実世界をより意味に満ちたものとし、より美しいものとする。


それが文学。

今、生きている、この世界を、この人生を、より美しいものとするために…
…明日も、その先も。
ずっと、これからも、本を読んでいきましょう……

2009年12月28日 (月)

古書店から始まります…『追想五断章』☆

漸く仕事を納めましたが…途端に気が緩み、喉が痛み始めています(苦笑)
お休みになると風邪をひくパターンばかりで、困ってしまいますね。
読みたい本はいっぱいあるのに…

で、中でも一番読みやすそうな米澤穂信を手にしています。
新刊ですね。『追想五断章』(集英社)。
始まりが古書店なだけで、大好きになってしまいそうです(笑)

まだ、読み始めたばかり。
スムーズに、目が流れていきます。

その作家が肌に合うかどうかの一つの判断に、文章を滑らかに読み進めることが出来るかどうかが、大切なファクターとしてありますよね。
勿論、そんなことを度外視するような作品もありますが、疲れている時や愉しみで本を手にする場合には意外と重要なファクターです。

…さて。
では、続きを読みましょう。

他にも沢山、待ってくれている作品が並んでいます。
明日から、少しずつ、大切に…
…ここにいる皆と、同じ時間を共有していきましょう☆

2009年12月26日 (土)

野尻抱影、新村出、グロリエと…

…体調不全で、なかなか更新が出来ていません。
それでも、本だけはぱらぱらと眺めています。


抱影は星の和名を収集していましたが、そのきっかけを与えたのが新村出の『日本人の眼に映じたる星』という講演を収めた『南蛮更紗』でした。

新村と言えば、『広辞苑』の編纂で知られていますね。
そんな新村の名を、これまた別の本の中で見つけてしまいました。

それが気谷誠の『西洋挿絵見聞録』(アーツアンドクラフツ)。
もともと、
こちらのHPに掲載されていたものを含めて、本にしたものです。

新村は「ぐろりあ そさえて」にも関わっていたようですね。
そしてこの「ぐろりあ」は愛書家ジャン・グロリエのこと。
『西洋挿絵見聞録』には「ジャン・グロリエの旧蔵本について」と題された1節があります。
本書は本を巡るエピソードばかりの、ステキな1冊。

ちなみに、グロリアの名を冠したクラブが、雄松堂書店さんのサイトにあります。
それが
こちら



本を巡るエピソードは、本当に知らず繋がっていくものですよね。

それが不思議で、楽しくて、嬉しくて…
…今夜はまた、別の本を繙いてみましょうか。

次の出逢いを期待して……

2009年12月23日 (水)

『日本瞥見記』第九章 潜戸 より

おもえば、人間の記憶に長くとどまる印象というものは、たしかにそれは刹那的なものが多いようである。
なるほど、われわれは分よりも秒、時よりも分の方を多く記憶している。
誰がまる一日のことを記憶しているものがあろう。
一生のうちに憶えている幸福の総計も、すべてこの秒が積み上げたものなのだ。
微笑ほどはかないものはない。
しかも、いちど消えた微笑のその思い出は、いつになったら消えるだろう。
あるいはその思い出が呼び起す、あの惻々とした愛惜の思い、あれはいつになったら消えるだろう。



『日本瞥見記 上』(小泉八雲 著/平井呈一 訳/恒文社)

2009年12月22日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.39

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.39  2009.12.8

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    いよいよ12月、師走ですね。

    今年の終わり

    と

    新しい年の始まり

    と

    皆さんは、その境目に何を読まれるのでしょうか。

    …今から、わくわくしながら
    その本を選び始めています☆
    

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、11月24日以後の新刊です。

 ☆『動機の修辞学』(ケネス・バーク 著/晶文社)
    『動機の文法』のケネス・バークです。待望の本邦初訳☆
    『動機の文法』については、松岡正剛の千夜千冊にもありましたね。
    こちら → http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0048.html

 ☆『誤診のおこるとき』(山下格 著/みすず書房)
    精神科における誤診例を具体的にまとめた名著の改訂復刊。

 ☆『茶仏』(宝迫典子 著/佼成出版社)
    仏教の伝来を逆に辿りながら
    各地で寺廟と関わるお茶についてのエッセイを綴ったもの。
    著者は中国政府認定評茶員・茶芸師。
    ブログがこちら → http://shinowazuri.cocolog-nifty.com/memo/

 ☆『脳の中の「わたし」』(坂井克之 著/講談社)
    “「わたし」より先に脳は考えている
     「わたし」は脳の作り物にすぎないのか?”
    そんな言葉が帯に書かれた、イラスト付きの科学読み物です。

 ☆『セラミックス博物館』(藤田英一・杉山昌章 著/アグネ技術センター)
    「焼き物」としてのセラミックスと「工業製品」としてのセラミックス。
    その変化と発展を共に並べて述べたもの。
    1冊に、この2面をまとめて示した本は珍しいでしょう。

 ☆『戦争の日々 下』(朝倉喬司 著/現代書館)
    現代書館のHPにも、新刊の背が並んでいますね。
    この表示、どんどんと広がっていくのでしょうか。
    本書の上巻は1月に出たのですが…もう、随分と以前に思います。
    新刊が多くなっている現代
    続刊を見落とす確率は極端に大きくなっていますよね…

 ☆『言語と文化』(南雅彦 著/くろしお出版)
    文化を中心にして、社会と言語と人間の関わりを考察するもの。

 ☆『バナッハ=タルスキの逆説』(レナードM.ワプナー 著/青土社)
    刺激的で不思議な定理、バナッハ=タルスキーのパラドックス。
    岩波科学ライブラリーにある
    『バナッハ・タルスキーのパラドックス』(砂田利一 著)も
    新版がこの12月に出ますね。

 ☆『ホモ・ファーベル』(アドリアーノ・ティルゲル 著/社会評論社)
    ホモ・ファーベルとは、「工作する人」の意味の造語です。
    古代からの労働観の変容を概説したもの。

 ☆『文学が脅かされている』(ツヴェタン・トドロフ 著/法政大学出版局)
    HPによれば
    “読者の人生に豊かさとかけがえのない意味を与える力としての
     文学の伝統と尊厳を擁護する試み”だそうです。
    著者はロラン・バルトの下で指導を受けています…
    近頃、このロラン・バルトの名が散見しているように思いますね。

 ☆『罪と罰の文化誌』(服藤早苗 編集/森話社)
    罪と犯罪の違いは? どこまでなら罰せられない?
    この罪と罰の関係を歴史的・文化的に考察するもの。

 ☆『乱歩・正史・風太郎』(高木彬光 著/出版芸術社)
    高木彬光の作家人生に転機を与えた、3人の巨匠にまつわるエッセイ☆

 ☆『近代日本の政党と社会』(安在邦夫 編著/日本経済評論社)
    政党の果たしてきた役割を、多面的・多角的に考察するもの。

 ☆『善良な町長の物語』(アンドリュー・ニコル 著/日本経済評論社)
    “ジョン・アーヴィングさながらの、新しい物語作家の誕生”
    と帯にはありますね。

 ☆『言葉と死』(ジョルジョ・アガンベン 著/筑摩書房)
    言葉とは、存在とは。
    死と言語活動との関係について論じたもの。

 ☆『江戸時代の土人形』(遠谷茂 著/里文出版)
    保存状態のよい土人形の写真とデータを集め、紹介したもの。

 ☆『日本中小企業政策史』(清成忠男 著/有斐閣)
    中小企業政策に実際に携わり貢献してきた著者による
    歴史的経緯を踏まえた中小企業論です。

 ☆『落語手帖 新版』(矢野誠一 著/講談社)
    1ページ1演目の構成で、274演目!
    新たな書き下ろしもあるようですね☆

 ☆『語彙史』(安部清哉 著/岩波書店)
    シリーズ日本語史、全4巻の第2巻目。
    続いて「音韻」「文法」と続く予定です。

 ☆『鳥類学』(フランクB.ギル 著/新樹社)
    鳥類学の全体像をわかりやすく紹介したもの。

 ☆『子守唄の原像』(鵜野祐介 著/久山社)
    子守唄を歌うことの意味とは。

 ☆『軍艦島 上』(韓水山 著/作品社)
    海底炭鉱で働く男たちの苦悩を描いた、大河小説。

 ☆『幾何公差の使い方・表し方』(小池忠男 著/日刊工業新聞社)
    実務では重要でありながら、分かりにくい幾何公差。
    幾何公差とは、許容される寸法の誤差を示すものです。

 ☆『ゲラシム・ルカ』(鈴木雅雄 著/水声社)
    水声社さんの創立30周年記念出版「シュルレアリスムの25時」。
    全10巻の内、第1回配本の1冊になります。
    シリーズについてはこちら → http://www.suiseisha.net/blog/?p=646

 ☆『翻訳家列伝101』(小谷野敦 編著/新書館)
    明治・大正期から現在まで、主要な翻訳家を選んだもの。
    どのような選び方をしているのでしょうか。
    そこから、まだ知らない何かが見えてくるのでしょうか。

 ☆『科学的管理法』(フレデリックW.テイラー 著/ダイヤモンド社)
    労務管理、生産管理についての名著、教科書の1冊です。
    今、帰るべきところとして、本書のような時代のものが甦るのでしょうか。

 ☆『「百科全書」と世界図絵』(鷲見洋一 著/岩波書店)
    フランスで出版された『百科全書』。
    その作り手たちの人間的な一面から、近代を。

 ☆『江戸時代の遺産 新版』(スーザンB.ハンレー 著/中央公論新社)
    新版になりましたね。
    急速な日本の近代化は
    江戸の生活様式と西欧のそれとの類似性から生まれたものなのか。

 ☆『江戸女人の碑文』(柴田光彦 著/勉誠出版)
    本体価格8000円はなかなかなものですが…(苦笑)。
    大名家の女性から遊女・芸妓にいたるまで
    碑文から浮かび上がる近代の女性像。

 ☆『リュリシーズ』(鈴木龍一郎 著/平凡社)
    『オデッセイ』『ドルック』に続く、写真集三部作の完結編。
    ジェイムス・ジョイスの『ユリシーズ』に触発され
    ダブリンの街を彷徨いながら
    世界をモノクロームに収め、描き出すもの。

 ☆『逐条解説 公文書等の管理に関する法律』(宇賀克也 著/第一法規)
    公文書管理は、今後ますます、その重要度を増すことでしょう。

 ☆『ミドルワールド』(マーク・ホウ 著/紀伊國屋書店)
    ミクロな世界とマクロな世界の間。
    その世界で動き続ける、ブラウン運動への手引書です。

 ☆『マジックグッズ・コレクション』(土屋理義 著/東京堂出版)
    著者はマジックグッズのコレクター。
    本書は年代順に、古今東西のマジシャンの道具等を紹介したものです。

 ☆『老人の歴史』(パット・セイン 編集/東洋書林)
    ヨーロッパを中心に、老年期における多種多様な人々の姿を
    様々な資料から浮き彫りにします。

 ☆『チンドン』(大場ひろみ 著/バジリコ)
    ちんどん屋の生活とその現代史を満載の写真で☆

 ☆『世界的な有名デザイナーたちのアイデア・スケッチ』
   (ティモシー・オドネル 著/グラフィック社)
    創作プロセスを見ることが出来るのは素晴らしいですよね!
    …でも、「有名デザイナー」とは誰なのでしょう(笑)

 ☆『Showa Style』(都築響一 編集/彰国社)
    素晴らしい! 800ページで甦る「昭和」です。
    序文や内容がこちらで見られます。 → http://showastyle.blogspot.com/

 ☆『アリハンドブック』(久保田敏 写真/文一総合出版)
    身近な存在なのに、90種もいたんですね!

 ☆『神道と社会事業の近代史』(藤本頼生 著/弘文堂)
    神道と社会福祉活動と…その関連性は殆ど知られていませんね。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『ゲラシム・ルカ』(鈴木雅雄 著/水声社/11月発売)

    水声社さん。
    社名変更は1991年ですね。

    1981年創業時の名前は、書肆風の薔薇、でした。

    こちらの名前ですぐに思い出すのが
    個人的にお気に入りの『ヴィティコー』全3巻。
    アーダルベルト・シュティフターの傑作です。

    とても小さな版元ですが
    いつも気になる本を出してくれるところです。

    そう言えば、2007年度、第43回日本翻訳出版文化賞を
    『神話の詩学』が受賞していましたね。
    第33回にも『セリーヌ伝』で、水声社さんは同賞を受賞しています。
    この日本翻訳出版文化賞もチョコちょこの大のお気に入り☆
    

    そんな水声社さんが、2011年の3月、創業30周年を目指して
    新たに刊行を始めたのが
    本書を含む「シュルレアリスムの25時」です。
    全10巻。
    その内の2巻が発売され、今後は隔月に1冊ずつが予定されています。

    シュルレアリスム。
    何となく、これがそうなのかな? と分かる程度の芸術形態です。
    20世紀の初頭に現れた、とても難解な主張。
    難解…いえ、そうでないと思われるものもあるでしょうが
    いずれにしても、現実として認識され得ないはずなのに
    「超現実」として
    現実の傍らに存在している
    何となく不安な…そうですね、居心地の悪さを感じてしまう…
    そんな作品群でしょうか。

    blog水声社に鈴木雅雄の言葉として
    「いま、はじめて本当に見渡すことができる。」
    とあるように
    今だからこそ、振り返る価値が見出せるものなのかも知れません。

    初めて触れる人にも、無理の無い
    ページ数(平均250頁)と価格(予価2500円)でしょうか。

    入門書として、語るに重要な詩人から写真家までを含む
    本シリーズに期待しています☆

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『書肆ユリイカの本』(田中栞 著/青土社)
    
   
    署名のある本は、贈り主である著者(または関係者)本人と
    贈られた人物の二人が手にした本だということになる。

    ……………

    双方の人々が触ったのと同じ本を、
    平成の今、
    自分が手にしていると想像するだけでわくわくするではないか。
    書物やスクリーンを通してしか接することのできなかった人の、
    その手もとにあった書物が、
    紆余曲折を経てここにあるという、
    そのことに思いを馳せると、
    書物流転の不思議を感じるのである。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年12月21日 (月)

冬ですね…オリオン、大佛、抱影と

寒い日が続きますねぇ…と書きかけて、二日前と同じ書き出しであることに苦笑しているチョコちょこです。

う~ん…本当に、寒い。

夜空も、すっきりと晴れてはくれません。
冬の王者、オリオンも過ぎる雲の向こう側でした。


オリオン座といえば、そこを生前から墓所に選んでいた方がいましたね☆


…そうそう、第36回大佛次郎賞が石川九楊『近代書史』(名古屋大学出版会)になったようです。
この大佛次郎を弟とする、野尻抱影が、オリオン市のベラトリックス区アマゾン一番地に現在居を構えています。


抱影の墓には美しい女戦士が二重に立ってこれを衛っている。


そう書いたのは種村季弘です。
「星の抱影」以外の抱影をも簡潔にまとめてくれている、『箱抜けする星』の中の一節。
この『箱抜けする星』は『箱抜けからくり綺譚』(河出書房新社)に収められていますが、もともとはそのまま『野尻抱影』と題されていました。

野尻抱影に、星以外の作品があることはあまり知られず…知ってはいても、実際に読んだことがある人も随分と少なくなっていることでしょう。
今はもう手に入りませんが、かつて筑摩書房さんから『野尻抱影の本 1~4』というものも出ていました。
1989年の刊行。…もう、20年も前ですね。まだまだ新しい本だと思っていました(苦笑)
この内の第3巻と第4巻が、それらの作品を収めています。
興味を持たれた方は、大きな図書館ならあるかも知れませんので、一度見てみてください。
ビックリするかも知れませんよ(笑)

2009年12月19日 (土)

挿絵に魅せられて…『ザ・プロフェット』のこと☆

寒い日が続きますねぇ…
今年初めての雪も見ましたし、年末に向けて一気に冬らしくなってしまいました☆

見上げる夜空の昴も美しく、鋭い月の刃が風を引き裂いています。

…夜が、その力を増す季節です。


『ザ・プロフェット』(預言者)の新訳が出ましたね。
著者はカリール・ジブラーン。
装丁といい、挿絵といい…最初はとてもポプラ社さんのものとは思えませんでした。
でも、中の文章を見ると…確かに、フォントやルビにはポプラ社さんの香りがしています。
少し、このフォントはクセがあって…心が寄り添うことを邪魔しているように感じるのは、個人的な好みの範疇のお話です(笑)

本書で気になるのは、やはりその中の挿絵でしょう。
描いているのは宮崎敬介。
アニメーション監督、宮崎駿の次男になります。
1970年生まれ…まだまだお若い方ですね。
でも、その木口木版画はなんて雰囲気があるのでしょう!
『預言者』にぴったりの、幻想的で美しい絵です。

…じっと、見入ってしまいます。

この作品を別の翻訳で読んだことがある方も、ぜひ、本書の挿絵だけでも見てみてください。
それだけの価値はあります。

美しい…本当に美しい絵です。


…美しい……

2009年12月15日 (火)

TRCが…まぁ、予想はしていましたが

個人的にはまるで関係ないのですが(笑)、気になる方も多いでしょうから。
新文化さんのニュースフラッシュに、こんな記事が出ましたね。


TRC、主帳合取次を日販に変更


トーハンから日販へ。
…経営統合を背景に、でしょうね。

それにしても、トーハンと日販の差が次第に大きくなっていく気がしますね。
それで、本当にいいのでしょうか…
一つだけの取次があまりに大きくなるのなら、今の出版業界の特殊な流通はますます「異常」な状況になる気もします。

取り急ぎ、今日はこのお知らせを☆

2009年12月14日 (月)

たのしみは…

たのしみは 人も訪ひこず 事もなく 心をいれて 書を見る時


今日は朝刊すらなく。
誰も訪れず。
電話も無く。
何事も起こらず。

…えぇ、本当に。

本ばかりを読めた、至福の1日でした☆


先に引いた橘曙覧。(『橘曙覧全歌集』(岩波文庫)より)
もっと広く、知られてもいい歌人ですよね。
とっても素朴に心に触れてきます。


ガルシア=マルケス。
串田孫一。
チャールズ・ラム。
トニー・パーカー等々
それぞれを、つまみ食い☆

実はちらっとヴァレリーも。
でも、食傷気味だったのですぐ脇に。



昔さかんに讃めたたえられた人びとで、どれだけ多くの人がすでに忘却に陥ってしまったことであろう。
そしてこの人びとを讃めたたえた人びともどれだけ多く去って行ってしまったことであろう。



そう書いているのはマルクス・アウレーリウス。(『自省録』(岩波文庫)より)

確かに、多くの作品が、人が、忘れ去られてきました。

でも、本になっていれば、こうして読めるのですから。
再評価? いいえ、そんなものは関係ありません。
読書は非常に個人的な経験です。
評価は自分自身で行うもの。

大切なことは、本になっていない、残っていない多くのものがあったということ。
そのものを読むことは最早無理でも、そうであったことを忘れないでいること。

…そして、こうして書いている自分自身も、いつかは去って行ってしまうということ。


でも、それまでは。

今はもう忘れられている作品であっても、優れたもの、ステキなものを探し出しては読んでいきましょう。

その作品のために。
その人のために。
そして何より、自分自身のために…

2009年12月13日 (日)

文化を守る力…

…のんびりと、無理のない更新を続けましょうか(苦笑)

今も、手許に持ち帰った仕事を気にしながら…でも、それだけに囚われたくなくて、ぱらぱらと串田孫一の随筆を捲っています。

仕事上では、多々思うことがあるのですが…日々、ヒルティや『自省録』を身近に置いて、心を宥めています(笑)


時事通信社から出ている『文房具52話』。
装丁も串田によるものです。
使われている版画は16世紀のもの。これがなかなかステキですね☆

本書の最後にあるのが「文化を守る力」です。
その中に、こんな一節がありました。


文化というものは、ある底辺を持った根強さはあるが、その上に築かれている部分は意外に脆いものであって、愚かな権力者が現れて、その文化を無駄なものだと無茶なことを言い出すと、簡単に崩れて、抵抗力がない。


…まるで、事業仕分けを見ているようですね(笑)


みんな落ちるところまで落ちると、却って気分がさっぱりしたような錯覚を抱いてしまう。


う~ん…手を離してしまって、諦めてしまうんですね。
でも…


実は私はそれが恐ろしいと思った。


えぇ、本当にそう思います。

この文章は1970年頃に生まれたもの。
でも…そうですね。このような警告は遥か過去から何度も繰り返して述べられているものです。
それだけ、文化とは脆いもの。
文化は強い意志を持って「守る」必要があるほど、弱いものなのです。
それは、人が人であるために最低限必要なもの。
文化が無いところに、人も社会も存在出来ません。
だからこそ、公的に保護し、育てていくのです。
国際市場は、その舞台から離れても国家は成立します。
でも、文化を失った国家は自滅していくだけです。
そこに残るのは他国に分割された国の名残りだけ。
社会保障すら、文化より優先度が高いとは言えないのです。
少なくとも、独立した個としての国家を存続させるつもりなのであれば…ですが。


……さて。

皆さんは、文化事業は仕分けられても仕方が無いと「諦め」てしまいますか?
それとも、改革しながら、自浄しながら、「守って」いきますか?

2009年12月 9日 (水)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.38

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.38  2009.11.24

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    様々な意見が出ている「事業仕分け」ですが…

    教育分野、その中の読書に関しても
    厳しい結果になりましたね。

    実施されるかどうかは分かりませんが
    歳出削減の目的を忘れて
    今迄の努力や理念までもを「否定」するような発言は
    確かに乱暴な気がします。

    「仕分け」といった要・不要論ではなく
    それぞれの事業の効率化やスリム化を求めていくには
    やはり、議論の時間が足りないのでしょうね。

    将来に現れるであろう効果から
    仕分けの功績を、誇りと共に振り返ることが出来るように…

    「今」に拘らない議論を望みます。
    

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、11月10日以後の新刊です。

 ☆『アーロン・T・ベック』(マージョリーE.ワイスハー 著/創元社)
    アーロン・ベックは認知療法の創始者です。
    認知療法の考案、発展を彼の生い立ちと共に描いていくもの。

 ☆『きのふの東京、けふの東京』(川本三郎 著/平凡社)
    …著作が多いので、図書館によってはどれを選ぶのか
    厳選しなくてはならない方ですね(笑)

 ☆『プロティノス「美について」 大文字版』(講談社)
    新プラトン主義の祖、プロティノスが語る善とは、美とは。
    「大文字版」は、久し振りな気がします。

 ☆『〈神経心理学コレクション〉失われた空間』(石合純夫 著/医学書院)
    脳障害によって、半側の空間が見えなくなる…
    見えなくなったことにすら気付かない「半側空間無視」とは。

 ☆『シチリア歴史紀行』(小森谷慶子 著/白水社)
    Uブックスになりましたね☆
    複雑なシチリアの歴史を、エピソードや人物で辿る歴史読み物。

 ☆『江戸の本屋さん』(今田洋三 著/平凡社)
    NHKブックスだったものの復刊です。
    近世における、出版業界の展開を物語るもの。

 ☆『トマス・アクィナス「神学大全」』(稲垣良典 著/講談社)
    帯にあるように“中世キリスト教思想の最高峰を読み解く”ものです。

 ☆『大正期の絵本・絵雑誌の研究』(三宅興子 編集/翰林書房)
    何といっても、コレクションを全ページ、カラーで
    掲載しているのがスゴイですね☆

 ☆『黒船の行方』(高橋勇二 編著/英宝社)
    日米交流を、アメリカ文学の視点から捉えたもの。

 ☆『メッテルニヒ』(塚本哲也 著/文藝春秋)
    ナポレオン後の国際秩序を打ち立てたメッテルニヒの生涯。

 ☆『パリ人論』(フレデリック・オッフェ 著/未知谷)
    アルザス人から見たパリとは?

 ☆『一箱古本市の歩きかた』(南陀楼綾繁 著/光文社)
    随分と拡がってきていますよね☆
    気軽で新しい、本との付き合い方です。

 ☆『他人と暮らす若者たち』(久保田裕之 著/集英社)
    日本における若者のルームシェアについての論考です。

 ☆『ドイツの民衆文化』(下田淳 著/昭和堂)
    祭り、生死、信仰、巡礼、居酒屋から見る、ドイツの民衆文化。
    広く現代まで含めて述べられているようですね。

 ☆『男たちの仕事場』(岩切正介 著/法政大学出版局)
    17-18世紀ロンドンのコーヒーハウスと、男たちとの関係とは。
    その男たちを虜にしたコーヒーハウスへの
    女性陣の怒りについても触れているようです。

 ☆『建設請負契約のリスクと帰責』(笠井修 著/日本評論社)
    建設物の「未完成」とは? そのリスクの振り分けは?
    そんな、建設請負契約に関して生起する
    様々なリスクについての論考です。

 ☆『配管材料ポケットブック 全面改訂版』(大野光之 編集/工業調査会)
    基本的には実務者向けですが
    ホームセンターで売られているものも多いですし
    1冊はあると便利なものでしょう。

 ☆『若者と社会変容』(アンディ・ファーロング 著/大月書店)
    先進諸国に共通の構造変化がもたらす
    若者の社会経験の変化を国際的な視座で捉えたもの。
    11月13日には法政大学大学院で
    著者アンディ・ファーロング教授による講演会がありましたね。
    チラシのPDFが
    こちら → http://www.otsukishoten.co.jp/ive/furlong_flyer.pdf

 ☆『機能性不織布 普及版』(シーエムシー出版)
    2004年刊の『機能性不織布の新展開』の改題普及版。
    不織布についての総論から、開発、応用までをまとめたもの。
    2004年当時から加筆はされていませんが
    もともと本体価格65,000円(!)でしたからね…
    シーエムシー出版さんのものは、最新技術を取り扱ってくれるので
    注目に値する主題も多いのですが、数年後に出る普及版でしか
    図書館でも購入は難しいでしょう。

 ☆『狙われたキツネ 新装版』(ヘルタ・ミュラー 著/三修社)
    ヘルタ・ミュラーは今年2009年のノーベル文学賞受賞者。
    唯一の邦訳が新装版になりましたね☆

 ☆『ザ・プロフェット』(カリール・ジブラーン 著/ポプラ社)
    ジブラーンの『預言者』ですね。
    神谷美恵子の訳が知られていますが、こちらはどうでしょうか。

 ☆『バラはバラの木に咲く』(坂本公延 著/みすず書房)
    花木に託された人の感情は…
    目次がいいですね。
    “バラの木、桜の木、柳の木、樫の木、月桂樹、いちいの木…”

 ☆『コーラン』(フランソワ・デロッシュ 著/白水社)
    著者は古典文学、古文書の専門家ですね。
    本書は、そんな著者がコーランを
    文献学的研究にもとづいて解説したもの。

 ☆『アメリカCEOのベストビジネス書100』
   (ジャック・コヴァート 著/講談社)
    “デキる人が30歳までに読んでいるビジネス書はこれだ!”
    土井英司が書いている帯の言葉です。

 ☆『虫たちの越冬戦略 新装版』(朝比奈英三 著/北海道大学出版会)
    1991年刊の新装版。
    様々な虫がどのようにして寒さに耐えるのか
    その戦略とメカニズムを記したもの。
    「日本産昆虫の耐寒性」表を収録。

 ☆『韓国演劇史』(徐淵昊 著/朝日出版社)
    古代から2005年までの、韓国における演劇の本格的な通史です。

 ☆『アルベルト・ジャコメッティの椅子』(山口泉 著/芸術新聞社)
    “私は世の狂躁に背を向け、1枚の版画を買った……”とはHPの言葉。
    そこに描かれていたのは素朴な一脚の椅子。
    彼を支える「それ」とは何なのか。

 ☆『西洋挿絵見聞録』(気谷誠 著/アーツアンドクラフツ)
    昨年に亡くなった、美術史家である著者の最後のエッセイ。
    西洋の挿絵・製本・蔵書票の様々なエピソードを綴ったもの。

 ☆『歴史入門』(フェルナン・ブローデル 著/中央公論新社)
    ブルーデルが語る、アナール派歴史学の入門書です。
    1995年刊の文庫化。

 ☆『損害保険数理』(T.ミコシュ 著/シュプリンガー・ジャパン)
    確率論・統計論を始めとする、保険数学を学ぶための入門書。

 ☆『日本赤十字社と人道援助』(黒沢文貴 編集/東京大学出版会)
    「人道」について、近代日本はどのように受容し、展開したのか。
    新たに公開された日赤の原史料をもとに考察するもの。

 ☆『植物分類表』(大場秀章 著/アボック社)
    “47科2619属約10500種類を世界標準の新体系で配列”し
    日本で初めて紹介するものだそうです。
    Aboc社は、草木のネームプレート作りで知られているところ☆

 ☆『ドイツのゴシック小説』(亀井伸治 著/彩流社)
    ドイツ・ゴシック小説についての本格研究、だそうです。
    そう言われると、作品は読んでも
    文学論としてはあまり触れられてこなかったかも知れません。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『機能性不織布 普及版』(シーエムシー出版/11月発売)

    シーエムシー出版さんは1961年の設立。
    もう、48年目になるんですね。

    それを記念して
    この30日まで、毎週発送のDMに
    当たり券(笑)が封入されています。

    勿論、プレゼントは書籍(と、その割引)。

    …まぁ、元の値段が高いですから、毎週1000名に当たる
    1割引券でも有り難いのですが…

    なにしろ、本書も元は本体価格65,000円!
    
    最新の技術が分かるとは言え
    やはり高額ですからねぇ。

    それを分かっていながらも、やはり出版物には注目してしまいます。
    ファインケミカルを中心にしながら
    企業が求める、技術やマーケットを知るには
    外せない版元さんですから。

    技術屋にとって専門雑誌も不可欠なものですが
    それを纏めた冊子もまた、机上にあって欲しいもの。
    そこはやはり、「本」が持つ有り難い特性ですよね。

    本書は、2004年刊の『機能性不織布の新展開』を改題した
    普及版です。
    内容に変更はありません。
    それでも、十分にまだ新しく使えるものでしょう。

    今後もスタンスは変えずにいてもらいたいものですが
    今の時勢では難しいことも多いでしょう。

    公共の図書館向けに「図書館版」のようなものがあれば
    ビジネス支援も言われる今日
    需要があるのかも知れません。

    いずれにしても、頑張ってもらいたい版元さんの一つです。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『郷土愛の夢』(メーザー 著/京都大学学術出版会)
    
   
    偉大な印象を与える美しさを、
    そのように見えさせるように作用する諸部分が
    厳密に観察すると
    非常に醜いものであるからといって、
    否定する人がいるであろうか。

        『郷土愛の夢』第1巻、第16番1767年 より

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年12月 8日 (火)

喜びと慰めを得るには、やっぱり…

…図書館でしょうか(笑)

気が付けば、4日ぶりの更新ですね。
なかなか忙しい日々が続いています。
少しだけ行き先が不安定な状況が続き、気が抜けない毎日ですが…今日はお休み。仕事のことを、ぜひとも忘れたい1日です(でも、無理ですが…)



この私を一番嬉しがらせ慰めを与えるものは、
汝の朽ち果てんとする学問の貯蔵所すなわち汝の書架である。


身を置くのにはなんといい所だろう、古い書庫というものは!


そんなことを書いているのは、エリア(=ラム)。
文章は『エリアのエッセイ』(チャールズ・ラム 著/平凡社ライブラリー)からです。

この書庫とは、オックスフォード大学の「ボドリー文庫」のこと。
Bodleian Libraryは、一般的には「ボドリアン図書館」と呼ばれているでしょうか。

こちらにサイトがあります。
トーマス・ボドリー Thomas Bodley が整え、イギリスの書物は全て納められることになっている古い図書館。



あたかもその労作の数々をこの「ボドリー図書館」へ贈与していったあらゆる作家文人のあらゆる霊魂が、共同の寝所あるいは中有の状態にあるかのごとくに、ここにやすらっているように思える。
それらの経帷子ともいうべき一枚一枚を手で触れて汚したくはない。
そんなことをしたら、亡霊をその蔭から追い出すようなものだ。



そんな図書館を彷徨いたいものです。
…いえ、それとも動かずに眺め続けましょうか。
Dのように。


あまり長くじっと見詰めているので、この人はまるで書物にでもなってしまったようで、古い書棚の傍らに一冊の本よろしく身動きもせずに立っていた。


「書物になってしまう」…理想かも知れません(笑)



書物になることは無理でしょうが、今日は出来るだけ読書の時間を持ちましょうか。
串田孫一のエッセイも1冊、手許にあることですし…

…ぱらぱらと。

亡霊との対話を愉しんで…

2009年12月 4日 (金)

『沼地』のこと…

“傷(いたま)しい芸術家”…彼は、2度、この短い作品の中でそう書いています。

“鋭く自然を摑まうとしてゐる”
“恐しい焦燥と不安とに虐(さいな)まれてゐる”
一人の作家。

展覧会場の片隅。
貧弱な額縁の中。
小さな油絵。

濁った水。
湿った土。
重苦しい黄色で描かれた草木。
「沼地」。

その作家は既に死んでいます。
随分と前から気が違ってしまって…そう、この画を描いた時も。
“画が思ふやうに描けない”と云うので、気が違ったらしい…

“その点だけはまあ買へば買ってやれるのです”


これが無名の芸術家がー我々の一人が、その生命を犠牲にして僅に世間から購ひ得た唯一の報酬だったのである。


画の中。
濡れた黄土色の蘆が、白楊が、無花果が。
“自然それ自身を見るやうな凄じい勢で生きてゐる”……


「傑作です。」


感激し
慄然とし
全身に異様な戦慄を感じて…


「傑作です。」


……そう、繰り返すのです。
世間に対して。
昂然と。



芥川龍之介の『沼地』は、そんな静かで感動的な作品です…

2009年12月 3日 (木)

『雪のひとひら』より

何ゆえに?
すべては何を目あてになされたことなのか?
そして何より、はたしてこれは何者のしわざなのか?

いかなる理由あって、この身は生まれ、地上に送られ、よろこびかつ悲しみ、ある時は幸いを、ある時は憂いを味わったりしたのか。
最後にはこうして涯しないわだつみの水面から太陽のもとへと引きあげられて、無に帰すべきものを?

まことに、神秘のほどはいままでにもまして測り知られず、空しさも大きく思われるのでした。
そうです、こうして死すべくして生まれ、無に還るべくして長らえるにすぎないとすれば、感覚とは、正義とは、また美とは、はたして何ほどの意味をもつのか?

……………

「ごくろうさまだった、小さな雪のひとひら。さあ、ようこそお帰り」



『雪のひとひら』(ポール・ギャリコ 著/矢川澄子 訳/新潮社)

2009年12月 2日 (水)

倦書図…?

うみつつも あだし物には 手もゆかで それとさだめぬ 書を見ちらす


読書に倦みながらも
他のものは手も付けられず…
目的も無く
また本をあれこれと読み散らす…

…本当に、そんな感じでしょうか。
読みたいのですが、集中も出来ず…でも、他のものをする気も無くて、何度も何冊も本に触れては、ぱらぱらと眺め、また戻しています。

書き出しの歌は橘曙覧(たちばなのあけみ)のもの。
『橘曙覧全歌集』(岩波文庫)の794番です。
曙覧は52首の独楽吟(どくらくぎん)が有名でしょう。
「たのしみは」で始まる、とても素朴でステキな歌ばかりが並んでいます。

本についても、幾つかありますね。


たのしみは 珍しき書 人にかり 始め一ひら ひろげたる時


始めの1枚目、1ページ目は楽しみなものですよね!

他にも、こんなものが。


たのしみは そぞろ読みゆく 書の中に 我とひとしき 人をみし時


ぼんやりと広げる書物の中に、自分自身が隠れ潜むのを見付けた時には、やはり嬉しくなりますね。


……そんな楽しみを味わう為に…そうですね。
今夜はこのまま、もう暫く、書を見ちらしましょうか…

2009年12月 1日 (火)

冬の物語…上田敏とシェイクスピアと

とうとう、12月になりましたね☆

あと、1ヵ月で今年も終わり。
少しずつでも…途中になっている、あれやこれやに一区切りをつけたいものです。


…それにしても、年々、1年が早くなっていますね(苦笑)


何か、冬に因んだものを…と直ぐに思い浮かべたのが、シェイクスピアの“The Winter’s Tale”(冬物語)です。
続いて思い浮かんだのは、上田敏の名前。
勿論、『海潮音』です。


『海潮音』の中には、ヰリアム・シェイクスピヤの名で、「花くらべ」と題された詩が収められています。



燕も来ぬに水仙花、
大寒こさむ三月の
風にもめげぬ凛々しさよ。



訳は岩波文庫の『上田敏全訳詩集』から。
水仙から始まり、菫、桜草、九輪草、と花々の名前が続いていきます。

この「花くらべ」ですが、もともとは詩ではなく、先の『冬物語』の中の一場面に出てくる台詞です。
岩波文庫の解説では第4幕第3場となっていますが、白水Uブックスでは第4幕第4場。
恋人フロリゼルの父王ポリクシニーズと忠臣カミロー、変装している二人を、パーディタが主として迎えるところです。



燕もまだ姿を見せぬうちに
早くも咲き出して、その美しさで三月の風を
恋のとりこにする黄水仙。



訳は白水Uブックス、小田島雄志の訳文から。

……ニュアンスが随分と違いますね。


それにしても、上田敏は、何故この部分を詩の形にしてまで、『海潮音』に入れたのでしょう。

次から次へと挙げられる花の名前。

確かに、そこだけ見れば、そこには「詩」が浮かび上がってきます。
ピパの歌と同じように、劇中歌のように。

ただ、シェイクスピア劇では、他にも同じような羅列は見付かるでしょう。

その羅列が、花だから…
恋する乙女が口にする、花々の名だから…

…ただ、それだから…なのかも知れませんね。

2009年11月30日 (月)

古書を巡る、あれこれ☆

『チャリング・クロス街84番地』(へレーン・ハンフ 編著/講談社)に触れたので、その中から古書を巡ってお気に入りの箇所を書き出してみましょうか。


私が古本の中でも特に好きなのは、前に持っていた方がいちばん愛読なさったページのところが自然にパラッと開くような本なのです。
ハズリットの本が着いたとき、おのずから開いたページにはこう書いてありました。
「私は新刊書を読むのが大きらいである」
この本が以前どなたの所有になるものだったかは知る由もありませんが、その方に向かって私は、「同志よ!」と叫んだものです。



古書を挟んでの過去との対話は、とてもステキなものですよね!
別の場所で、彼女はこうも書いています。


まるで、前の所有者の霊が私の読んだことのない詩を教えてくれているようです。


と。
図書館の本でもそうですが、かつての読者からのメッセージを受け取るような気分はとても嬉しくて…本当に嬉しくて、幸せに思うのです。

その本が愛されていること。

その愛情が残されていること。

それを今、受け止めることが出来ること。

重ねられた歴史は、想いは、それを受け止める心さえあれば人を幸せにしてくれます。


彼女はこんなことも書いています。
…が、これについては、図書館でしてはいけませんね(笑)



私は見返しに献辞が書かれていたり、余白に書き込みがあるの大好き。
だれかほかの人がはぐったページをめくったり、ずっと昔に亡くなった方に注意を促されてそのくだりを読んだりしていると、愛書家同志の心の交流が感じられて、とても楽しいのです。



1冊を本を巡る、心のやり取り。

…電子書籍には決して生まれない、モノとしての本だからこその素晴らしいめぐり逢いです☆

2009年11月29日 (日)

翻訳の比較と抄録と…

体力の限界までお仕事をする日々が続いています。
今日は漸く待ち望んでいたお休みの日☆
のんびりと過ごさせていただきましょう…

先日書いたベッケルの翻訳の件。
読まれていない方には例示が必要かとも思いますので、下に引用してみます。



この物語に描いたような眼を、わたしは見たことのある気がする。
夢のなかだったかも知れないが、とにかく見たことがある。
きらきら光って透明で、夏の夕立ちののち、木の葉のうえを転ぶ雨水の玉のような瞳だ。
見たとおりに描きあげかねたかも知れない。



もう一つはこちら。


私はこの伝説の中に描いたような眼をみたことがあると思う。
夢の中だったのかもしれないけれど、私は見た憶えがある。
それはこうこうであったなどとは、はっきりと書き綴れないが、その眼は、まるで夏の嵐のあと木々の葉の上を滑べる雨の滴さながらに光り輝いて澄みきっていた。



岩波文庫版のタイトルにも含まれている“Los ojos verdes”の書き出し、ベッケル本人の言葉(風?)の部分です。

先が『緑の瞳・月影』(高橋正武 訳/岩波文庫)。
次が『スペイン伝説集』(山田眞史 訳/彩流社)。

…さて。皆さんは、どう思われるのでしょうか。


ベッケルが現代語で中世の伝説を語るからといって、日本語訳も現代語にするかどうかには、疑問があります。
現代の日本人にとって、昔話や伝説は、やはり「むかしむかし、あるところに…」といったそれ独特の語り口調がすぐに思い浮かぶことでしょう。
古典に現代語訳はありますが、伝説に現代語訳はそぐわない気もするのです。
原著者に従う意図は間違いではないでしょうが、伝説と聞いて読者が求める雰囲気とは異なる言葉遣いで翻訳する必要性もあまり感じられません。


ただ、この岩波文庫版には訳されていない文章もあるとか。
そのことは非常に残念に思われます。
訳し方はともかく、どんな作品でもやはり全文訳を読みたいと思いますから…

“本を愛する人のための本”と副題がついている『チャリング・クロス街84番地』(へレーン・ハンフ 編著/江藤淳 訳/講談社)にもこんな文章がありましたね。


翰林院ふうのガウンを身にまとい、抄録とか選集とか節だの要約などというレッテルを貼った、長い血まみれの肉切り包丁を携えた巨大な怪物どもも登場する、恐ろしい悪夢をみることでしょう。


そんな悪夢を見ないように、スペイン語でも勉強しましょうか(笑)

2009年11月25日 (水)

『殺人者たちの午後』第一話 過去のない男 より

俺は過去のない男だと言ったよな?
それは本当のことなんだ。
俺の過去なんてみんな夢の中なんだよ。
俺がいつも見る恐ろしい悪夢のね。

……………

悪夢は、毎晩のように見る。
ときどき、それは悪夢についての悪夢を見ているような感じがする。
でも、そうじゃない、違うんだ。
悪夢についての悪夢を見るといったって、あれは夢なんかじゃなくて、現実だったんだ。
俺は人を殺したんだ。

……………

その一部始終が、いまも俺の頭の中でぐるぐる渦を巻いて消えないんだ。



『殺人者たちの午後』(トニー・パーカー 著/沢木耕太郎 訳/飛鳥新社)

2009年11月24日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.37

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.37  2009.11.10

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    国立感染症研究所の
    インフルエンザ流行レベルマップが
    次々と「警報」を示す、赤に染まっていきます。

    (こちら → http://influenza.elan.ne.jp/map_japan/

    大阪と京都も
    注意報を、警報が上回ってしまいましたね。

    昨年の冬場、季節性と同じレベルです。

    …でも、今だからこそ
    インフルエンザ流行に「注意報」や「警報」があるのだと
    多くの方々に知られるようになったのかも知れません。

    あまり体力を過信せずに
    皆さんも十分な予防と休息を心掛けてくださいね。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、10月27日以後の新刊です。

 ☆『「先住民」とはだれか』(窪田幸子 編集/世界思想社教学社)
    国家を越えて世界規模で広がる
    先住民の権利、主張の現状を考察したもの。
    bk1では利用対象が「研究者」となっていますが…
    先住民問題は、もっと身近であるべきでしょうね。

 ☆『「フォーカス・オン・フォーム」を取り入れた新しい英語教育』
   (和泉伸一 著/大修館書店)
    まだまだ新しい英語教育法フォーカス・オン・フォームですが
    その概要を知ることができる1冊。

 ☆『ル・フォール著作集 1』
   (ゲルトルート・フォン・ル・フォール 著/教友社)
    全4巻の第2回配本ですが
    彼女の唯一の長編『ヴェロニカの手巾』を収めたもの。
    ドイツ、カトリック文学を代表する作家です。

 ☆『天皇家の執事』(渡邉允 著/文藝春秋)
    平成19年に退任した著者の回想録。

 ☆『時代小説職業事典』(歴史群像編集部 編集/学研教育出版)
    江戸を舞台とした時代小説に登場する職業の数々。
    読み物としては面白そうですね。

 ☆『英国文化の巨人 サミュエル・ジョンソン』江藤秀一 ほか編著/港の人)
    『英語辞典』のサミュエル・ジョンソンについて
    その魅力と生涯を描いたものです。
    こちらのブログ(→ http://d.hatena.ne.jp/miasiro/20091028
    によれば、装幀は関宙明(せきひろあき)になっていますが…
    今回は随分と落ち着いたお仕事でしたね。

 ☆『「子ども」語りの社会学』(元森絵里子 著/勁草書房)
    「子ども」を語り、為される政策や教育…
    その「子ども」という言葉についての論考。

 ☆『ヒューマンエラーは裁けるか』(シドニー・デッカー 著/東京大学出版会)
    ミスが出ない職業はありませんが
    罰すべきミスとは「何処」からになるのでしょう。
    労働・雇用条件が悪化する現在、非常に大切な問題ですよね。

 ☆『スイス独立史研究』(瀬原義生 著/ミネルヴァ書房)
    16世紀以降のスイスの歴史を読み解き、その原型を探るもの。

 ☆『ダーク・エデン』(デイヴィッドC.ミラー 著/彩流社)
    19世紀アメリカ文学・絵画に見るゴシック文化を
    「沼地」から検証していくもの。
    …「沼地」の視点が妥当かどうかは微妙ですが(笑)
    19世紀のアメリカ文化についての論考は
    幅広く揃えて欲しいところではありますね☆

 ☆『幻想の古代史 上』(ケネスL.フィーダー 著/楽工社)
    …出版社と訳者からすると
    内容はエセ科学に迫るスタンスのものでしょうね。
    読み物として、手に取られた方がいいでしょう。

 ☆『電線のない新しいまちなみづくり』
   (道路空間高度化機構 編著/大成出版社)
    道路空間高度化機構のサイトは
    こちら → http://www.doukuu.or.jp/index.html
    本書は、新設の戸建住宅地の無電柱化について書かれたもの。

 ☆『オセアニア学』(遠藤央 編集/京都大学学術出版会)
    日本オセアニア学会
    (サイトはこちら → http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsos/
    が総力を挙げて描くオセアニアの全て。

 ☆『本瓦葺の技術 復刻版』(井上新太郎 著/彰国社)
    1974年版の復刻です☆
    当時からも、瓦葺は随分と変わりましたから…
    本書は、定期的に復刊されるべきものなのでしょうね。
    …それにしても、彰国社さんも本の背を見せるHPになったんですね。

 ☆『東欧革命1989』(ヴィクター・セベスチェン 著/白水社)
    ベルリンの壁崩壊から20年。
    東欧6ヶ国決壊のドキュメントです。

 ☆『IN THE KITCHEN』(山本祐布子 著/millebooks)
    イラストレーター山本祐布子による、レシピとエッセイ☆
    優しくも大胆な水彩が目を惹きますね。

 ☆『記憶に残る場所』(D.リンドン 著/鹿島出版会)
    1996年刊の新装版。
    180枚余りのスケッチと共に
    2人の著者が交わした書簡で組み立てられた空間論です。

 ☆『原子力の過去・現在・未来』(山地憲治 著/コロナ社)
    今後、原子力はどうなるのか。
    読み手に考えさせる、基礎的な知識を提供してくれるもの。

 ☆『レベッカ・ホルン』(淡交社)
    レベッカ・ホルンはドイツの現代美術家。
    東京都現代美術館における、日本初の個展を記念して刊行されたもの。

 ☆『清く正しい本棚の作り方』
   (戸田プロダクション 著/スタジオタッククリエイティブ)
    本好きのための本棚作りを公開して10年近く。
    こちら → http://www.coara.or.jp/~tt/books/bkshelf/bkfrm.htm
    をもとに書籍化したのが本書です。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『オセアニア学』
  (吉岡 政德 監修/
   遠藤央・印東道子・梅崎昌裕・中澤港・窪田幸子・風間計博 編/
   京都大学学術出版会/10月発売(遅れているようです))

    多くの編者を入れたことにあまり意味はありません(笑)
    ただ、個人研究の積み重ねが本書なのだと…
    そう感じたためです。

    500ページ。7,350円。
    図書館の予算削減の折に、また難しい値段設定を…とは思いますが
    本書があまり描かれてこなかったオセアニアについての
    貴重な1冊となることは間違いないでしょう。

    書影の帯にあるのは、梅棹忠夫の推薦の言葉です。

     “最先端の知見をふまえて、
      オセアニア地域を多用な角度から研究した
      本書の出版を、おおいに歓迎する。”

    …もう少し、購買意欲をかきたてる文言はなかったのでしょうか(苦笑)

    本書は、日本オセアニア学会30周年の記念出版になります。

    居住
    環境
    健康
    政治
    文化

    一通りのことは網羅されていますね。

    地球表面積の3分の1を占める、オセアニア。
    その地域研究の最前線を知る、貴重な資料となることでしょう。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 「永訣の朝」(宮沢賢治)
    
   
    けふのうちに
    とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ
    みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ
      (あめゆぢゆとてちてけんじや)

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年11月23日 (月)

『ベッケル詩集』75 より

 凍りつく冬の
長い夜々に、
窓の木枠を
風がきしませ
そしてガラスを
強いにわか雨が叩く時、
哀れな少女を
ときどき僕は思い出す。

 あそこには雨が
永遠の響きをたてて落ちる、
あそこでは彼女に
冷たい北風が吹きつける。
湿った壁の
洞ろのなかに横たわり、
ひょっとして寒さのために
彼女の骨は凍りつきはしないのか!



『ベッケル詩集』(ベッケル 著/山田眞史 訳/彩流社)

2009年11月22日 (日)

これはこれは…『ベッケル詩集』から

ベッケルの物語を集めた文庫本は、ぜんたいとして、ベッケルの真のことばや意図からも、ベッケルの描き出そうとする雰囲気や時代背景からも、大きくずれてしまっている。


解説でそう書いているのは、今度、彩流社から出た『ベッケル詩集』(山田眞史 訳)です。

ここにある「文庫本」とは、岩波文庫の『緑の瞳・月影』のこと。

チョコちょこの大のお気に入りの1冊です。

本書では、この文庫本の翻訳についての、またその「あとがき」で描かれるベッケルの姿についての苦言が綴られています。

訳語の間違いや、文章・文意の改変。
現代のスペイン語から、古風な言い回しへの翻訳。

…よくある話と言えば、それまでです。
だからこそ、新訳は生まれ、新たな解釈の下で日本語が綴られるのです。

ベッケルの気持ちを代弁するかのような文章には多少の違和感を覚えますが、そんな風に書きたい気持ちも分からなくはありません。

ですが昔からのファンからすれば、例え間違いを指摘されても、『緑の瞳・月影』の素晴らしさは減ずることはありません。
ベッケルと言えば、やはり今後もこの岩波文庫版を思い出し、振り返っては胸を熱くすることでしょう。

読書の体験とは、そのようなものなのです。
良いか悪いかではなく、「それ」か否かなのです。

それが真実とは異なるとしても、読者にとっての真実は、その、目の前にある「それ」なのです。
人生を、生きざまを支えてくれるのに、「正しい」作品である必要はありません。

ですからきっと、チョコちょこはこれからも岩波文庫版をオススメしていくことでしょう。
どうせ読むのなら、美しい日本語で読みたいではないですか。
感動出来る文章で読みたいではないですか。
真実は、その先にあればいいのです。必要であれば、手が届くところにあればいいのです。

読者は学者ではないのですから。


……それでは本書で、新しいベッケルの姿を探しに行きましょうか☆

2009年11月20日 (金)

『十二の恋の物語』プロローグ より

知識とうるわしい雄弁とを、神がお授けになった者は、
口をつぐみも隠れもせず、進んでその身をあらわすべきです。
立派な行ないといえども、人に聞かれて初めて花開くのであり、
さらに、多くの人から賞讃されて、いよいよ花咲きほこるのです。



『十二の恋の物語』(マリー・ド・フランス 作/月村辰雄 訳/岩波文庫)

2009年11月18日 (水)

時雨でしょうか…

まるで気が付いていませんでしたが、仕事を終えて職場を出ると地面が僅かに濡れていました。
屋外に停めていた車にも、雨の跡が見られます。

夕空に既に陽は無く、黒々とした雲の峰に映る残照が余計に寒さを感じさせます。


しぐるゝや南に低き雲峰


几董の句。
『五車反古(ごしゃほうぐ)』の中のものです。(『天明俳諧集』(新日本古典文学大系73)(岩波書店))

職場は南に山を見るので、実際に雲が低いかどうかは残念ながら分かりません。
ですがきっと、京都ではこう見えるのでしょう。(本当に京都で詠んだのかどうかは分かりませんが(笑))


天明俳諧。
18世紀後半に蕪村を中心に興った作品群を指します。
個人的には、そのイメージは、京都や自然、浪漫…といったものでしょうか。
特に几董の句には、自然の息吹きが誰よりも身近なものとして感じられます。


ヨーロッパでは、丁度ロマン主義が胎動を始めている頃。
ゲーテが、シラーが、その名前を時の流れに浮かび上がらせています。


西と東。

同じ時代に、同じような文芸の興り。


…そんな風に見てしまうのは、少し無茶かも知れませんが、少し素敵だとも思うのです。

2009年11月17日 (火)

『航路』を読みながら、カフカを…

コニー・ウィリスの『航路 上・下』(ヴィレッジブックス)は、臨死体験を取り扱った作品ですが、その再読の最中に、ふと思い出したものがあります。

それがカフカのノート。

白水Uブックスのカフカ・コレクションにあった、『万里の長城 ノート1』(池内紀 訳)の中の1篇です。
タイトルは「狩人グラフス」。
三途の川の渡し守が舵を取り間違えたことで、死人でありながら、この世の水辺を彷徨う者のお話。

そのグラフスが、市長にあの世との関わりについて問われる場面があります。



「むやみに大きな階段の上にいるようなものさ」
と、狩人は言った。
「とてつもなく大きな階段を上ったり下ったりしている。右へ行ったり左へ行ったり、のべつ動いている。おりおり思いきりとび上がってみたりする。あの世の門から光がもれてくるところまでいくのだが、とたんに目が覚める。するとどこやら地上の水辺で、オンボロ舟にゆられているというわけさ。



既にグラフスは死んでいるとは言え、この描写は臨死体験に当たるのでしょうか…



『航路』では各章の始まりに、死にまつわるエピソードや最期の言葉が鏤められています。

そのどれもが胸に重く感じるのです。


たったの一文。


ですが、そこに一つの人生があります。
命があるのです。


たったの一文なのです…


…でも、そこには確かに、一人の人間がいます……

2009年11月16日 (月)

『書かれる手』表面が深さになるとき より

「文学」がどういうものか、いまだによくわからない。
しかし、「書く」という能動的な行いが、「書かれる」という来るべき奇蹟への信頼なくして成り立たないことだけは、少し理解できるようになってきた。
いくつもの奇跡的な出会いが地の底の水脈でつながり、言葉と言葉を、人と人を艶やかな表面で結びつけ、誰も見たことのない深さに変貌させていくような瞬間に遭遇したとしたら、感謝をこめて、私はそれを「文学」と呼んでおきたい。


『書かれる手』(堀江敏幸 著/平凡社ライブラリー)

2009年11月14日 (土)

SFマガジンで、コニー・ウィリスを☆

2008年の12月号。
コニー・ウィリスの『もろびと大地に坐して』が掲載されているSFマガジンです。

50ページにも満たない、クリスマス向けの物語。

あっと言う間に、読めてしまいますね。

この作品、2008年のヒューゴー賞ノヴェラ部門を受賞しています。


コニー・ウィリスは、本当に面白いですね。

大森望の訳も読みやすいものですし。


このSFマガジン、創刊50周年を記念して、12月10日にアートブックを刊行します。
その特設サイトが
こちら

アヤカ・ウィルソン主演のARコンテンツも、どんなものになっているのか楽しみです。


コニー・ウィリスに戻ると、例のタイムトラベラーものの翻訳が待ち遠しいところですね。

でも、手元には『航路』の文庫版。

すぐそばに置いてあります。

ぽつりぽつりと、再読を始めているところ。



…時間が、思考が、ぱらぱらと、零れます。

まるで纏まらない、一つ、ではなく、一連、の自分…そんな感じです。


……今日はきっとこのまま、流れて眠りに就くのでしょう…



ポツリ

  ポツリ…

2009年11月12日 (木)

孤独なのでしょうか…サバの詩集から

公私ともに多くのことを抱え込んでしまうと、両極端な感情が胸中に沸き起こり、まるで複数の人物が宿るかのように現れては弾け、消えてはまた生まれてきます。
その内の「数人」でも、誰かに代わってもらえたらいいのでしょうが…なかなか、そうはいきません。
こんな時代です。仕事においても、自分自身が率先して動かなくては終わらないものも多く、待つこと、見守ることで成長が促されることは分かっていても、世間はのんびりと待っていてはくれません。
情報というものも、本当に恐ろしい怪物です。
こちらから捕獲して回らないと、先に怪物に鎖を繋いだ者が行く手を遮り、優位な立場で見下ろしてくることも多いのです。
それら内外の人々に、それぞれの感情が対応し、処理していこうとして…失われたゆとりは、感情を極端にすることで効率を高めようとしています。

太陽と影
陽と雨。
冬と春。
霧と晴天。

…どちらも、この中にあるもの。

この中に、このままの形で共存していること…そのことが、孤独の証なのでしょうか…


……忙しく、疲れている時ほど、人は孤独になってしまいます。



 孤 独

うつろう季節が、太陽と影とが
世界をさまざまに変えている、にぎやかに
いろどり、雲が道をふさぐ。

とりどりの変化を、ぼくの目は
かぎりなくいつくしんできたのだが、今日、
悲嘆に身をまかすべきなのか、わからない。

この事実をまえに降参すべきなのか。
これほど悲しいというのに、すばらしい天気。
ただ、ぼくの胸には、陽が照り、雨がふる。

ぼくは、ながい冬を春に変えることもできる。
陽のあたる道は、金色にのびる一本のすじ、
自分にむかって夜のあいさつをしてみたり。

ぼくの場合は、霧も晴天もぼくのなかだけにある。
あの完璧な愛も、あるのはぼくのなかだけ。
そのために、苦しみはするけれど、泣きはしない。

目と心さえあれば、ぼくはいい。


          『ウンベルト・サバ詩集』(須賀敦子 訳/みすず書房)より

2009年11月11日 (水)

『ボルヘス、文学を語る』1 詩という謎 より

エマソンがその著作のある個所で書いています。
図書館は、死者らで満ちあふれた魔の洞窟である、と。
しかも、これらの死者は甦ることが可能なのです。
われわれがページを開くと、生命を回復することが可能なのです。

……………

そもそも書物とは何でしょうか?
書物は、物理的なモノであふれた世界における、やはり物理的なモノです。
生命なき記号の集合体なのです。
ところがそこへ、まともな読み手が現われる。
すると言葉たちー言葉たち自体は単なる記号ですから、むしろ、それら言葉の陰に潜んでいた詩ーは息を吹き返して、われわれは世界の甦りに立ち会うことになるわけです。


『ボルヘス、文学を語る』(ボルヘス 著/鼓直 訳/岩波書店)

2009年11月10日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.36

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.36  2009.10.27

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    白と黄の
    キクのお花が
    闇夜に
    淡く
    浮かび上がっています。

    仄かに灯る
    小さな光…

    木々も色づき
    葉を落とし…

    ……あと、10日ばかりで冬が立ちます。

    今日から11月9日まで、読書週間ですね。

    忙しい日々が続きますが
    この日を機会に、少しでも読書の時間を増やせたら…

    …そんなことを、願っています。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、10月13日以後の新刊です。

 ☆『インドの科学者』(三上喜貴 著/岩波書店)
    インド人科学者の実像には、興味ありますね。

 ☆『道徳哲学序説』(フランシス・ハチスン 著/京都大学学術出版会)
    メーザー『郷土愛の夢』に続く
    近代社会思想コレクションの3巻目です。
    アダム・スミスに影響を与えた、ハチスンの講義用教科書。

 ☆『Google PageRankの数理』
   (AmyN.Langville 著/共立出版)
    Googleのウェブ検索エンジンの基礎
    PageRankアルゴリズム等を紹介しているもの。
    気になる人も多いのでは。

 ☆『史料で読む日本法史』(村上一博 編集/法律文化社)
    前近代の日本法史から、19のトピックを選んで解説したもの。

 ☆『殺人者たちの午後』(トニー・パーカー 著/飛鳥新社)
    死刑制度の無い国、イギリス。
    その国の殺人者は、終身刑を受けながらどう生きていくのか。
    沢木耕太郎の翻訳で読む、ノンフィクション。

 ☆『数式に憑かれたインドの数学者 上』
   (デイヴィッド・レヴィッド 著/日経BP社)
    数論の分野で輝かしい業績を残しながらも夭折した
    インドの数学者ラマヌジャンの評伝。

 ☆『新世界透明標本』(冨田伊織 著/小学館)
    透明標本の写真集が出ましたね!
    小学館のサイトがこちらに → http://www.shogakukan.co.jp/th/
    抽選で10名に、透明標本の現物をプレゼント! だそうです☆

 ☆『醜の歴史』(ウンベルト・エーコ 編著/東洋書林)
    『美の歴史』の対極である本書がいよいよ出ました。
    皆さんは、どちらを好まれるのでしょうか。

 ☆『朝鮮民譚集 復刻』(孫晋泰 著/勉誠出版)
    朝鮮の昔話と説話を集成した
    東アジアにおける比較文化研究の礎となる名著です。

 ☆『サザビーズ』(石坂泰章 著/講談社)
    サザビーズジャパンの代表取締役社長が語る
    アートとビジネスの世界。

 ☆『インド美術史』(宮治昭 著/吉川弘文館)
    1981年刊の再刊です。
    インド美術の変遷を豊富な図版で☆
    …それにしても、今回はインド本が3冊目??

 ☆『ジョン・マーティン画集 復刻版』
   (ジョン・マーティン 著/エディシオン・トレヴィル)
    19世紀のイギリスの画家、ジョン・マーティン。
    彼が描く壮大な世界の破滅は…美しいですね。

 ☆『科学革命の先駆者シモン・ステヴィン』
   (JOZEFT.DEVREESE 著/朝倉書店)
    数学者ステヴィンの本は珍しいでしょうが…
    7,140円は高いですねぇ(苦笑)

 ☆『袋鼠親爺の手練猫名簿』(T.S.エリオット 著/評論社)
    柳瀬尚紀訳で、ミュージカル「キャッツ」の原作を☆
    初版刊行70周年を記念してのオリジナル・カラーイラスト。

 ☆『日本宗教美術史』(島田裕巳 著/芸術新聞社)
    神話時代の古代から、無宗教時代の現在まで。
    連綿と続く日本の美との接し方とは。

 ☆『貧困の正体』(トーマス・ラインズ 著/青土社)
    農業市場を専門とする著者が、貧困との関わりを論じたもの。

 ☆『ギリシア悲劇ノート』(丹下和彦 著/白水社)
    知っているようで知らない
    ギリシア悲劇の隠れた魅力を教えてくれる1冊です☆

 ☆『神楽と出会う本』(三上敏視 著/アルテスパブリッシング)
    代表的な神楽25ヵ所をレポートした
    総合的な神楽ガイドブックです。

 ☆『ベッケル詩集』(グスターボ・アドルフォ・ベッケル 著/彩流社)
    スペインの詩人ベッケルの詩集、待望の本邦初訳☆

 ☆『医師の過重労働』(江原朗 著/勁草書房)
    現役の小児科医によって検証される、過酷な労働実態。
    データによる論証は、今後を探る第一歩でしょう。

 ☆『数理神学を学ぶ人のために』(落合仁司 著/世界思想社教学社)
    類書は殆ど無いでしょうね。
    限界がある無限とは、神にとって何を意味するものなのか?

 ☆『性格の心理学』(アルフレッド・アドラー 著/アルテ)
    アドラー唯一の性格論。
    アドラーの本は、思い出したかのように世に出ますね。

 ☆『マルベリーボーイズ』(ドナ・ジョー・ナポリ 著/偕成社)
    ニューヨークのスラム街で生きていく、たった9歳の少年の物語。

 ☆『写真の存在論』(荒金直人 著/慶応義塾大学出版会)
    ロラン・バルトの『明るい部屋』についての解説と分析☆
    それにしても、最近、慶応義塾大学出版会さんは
    面白いものばかり出していますね!

 ☆『パリの日本人』(鹿島茂 著/新潮社)
    この著者にして、この内容なら言うことなしでしょう。
    西園寺公望、成島柳北、原敬、林忠正、東久邇宮などなど…

 ☆『あたたかい人』(高杉一郎 著/みすず書房)
    岩波少年文庫『トムは真夜中の庭で』の翻訳者…と紹介した方が
    今は分かるのかも知れません。

 ☆『家の存続戦略と婚姻』(國方敬司 編集/刀水書房)
    家を存続させるための戦略について、具体的、理論的に検証したもの。

 ☆『湿原のアラブ人』(ウィルフレッド・セシジャー 著/白水社)
    英国の探険家が描く、1950年代のイラク南部の湿地帯での生活。

 ☆『雑食動物のジレンマ 上』(マイケル・ポーラン 著/東洋経済新報社)
    “全米100万部突破のベストセラー!”と、帯には謳われていますね。
    何を食べるのか、その食べ物の実体は?

 ☆『わらの犬』(ジョン・グレイ 著/みすず書房)
    人間とは地球にとっての疫病なのか。
    『タイムズ』ほか11紙が「今年の一冊」にあげたものだそうです。

 ☆『仮面の解釈学 新装版』(坂部恵 著/東京大学出版会)
    33年前のUP選書の新装版です。
    …余談ですが、東京大学出版会のHPには
    こんな表示がされていますね。
    “書影を除く書誌情報は、販売・紹介目的に限り利用を認めます。”
    ここまで書きながら、何故、書影だけは除かれるのでしょう(笑)
    HP上では「ほんつな」の書影を使っているので
    まるで意味を成さない文章になっていますね。

 ☆『ドラゴン神話図鑑』(ジョナサン・エヴァンズ 著/柊風舎)
    東洋も含んではいるようですね。
    絵画や彫刻の図版が魅力的な1冊です。

 ☆『からだの一日』(ジェニファー・アッカーマン 著/早川書房)
    目覚めから就寝中まで。「からだ」の活動、24時間。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『ベッケル詩集』
  (グスターボ・アドルフォ・ベッケル 著/彩流社/10月発売)

    彩流社さんは、生まれてからまだ30年も経っていない
    若くて小さな出版社です。
    でも、小さいからこその独特のラインナップが魅力的で
    いつも新刊からは目が離せません。

    しかも、今回はベッケル☆

    岩波文庫の『緑の瞳・月影』は大のお気に入りです。

    同じ内容のものを
    新たに『スペイン伝説集』として出したのが
    ここ、彩流社さんでした。
    この時の翻訳が山田眞史、本書と同じ訳者です。
    他にも彩流社さんからは、訳者は異なりますが
    『赤い手の王』も出ていましたね。

    …本当に、あまり売れないでしょうに(笑)

    でも、素晴らしい詩人、作家の作品を
    こうして翻訳して
    しかもまだ手に入るようにしてくれているのは
    読者としては嬉しい限りです。

    ベッケルは、もっともっと知られてもいい詩人です。

    『プラテーロとわたし』のヒメネスにも影響を与えた
    スペインが誇る詩人の作品。

    ぜひ、読んでみてください☆

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『ザ・リンク』(コリン・タッジ 著/柴田裕之 訳/早川書房)

    この驚くべき化石の写真を初めて見たとき、
    私はふた晩眠れなかった。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年11月 9日 (月)

アンソロジーを愉しんで…

…いえ、ただ単に疲れているだけです(笑)
読書に飢えていながら、短篇すら荷が重い時には、アンソロジーがその代わりになってくれます。

先日来、手元に置いているのは澁澤龍彦の『オブジェを求めて』(河出文庫)。

よく知っているものも、まだ読んでいないものも。
今の気分に合っているものも、まるで合わないものも。

この中には、どんな言葉も詰まっています。


…今日、手が止まったのは…フローベールですね。
『狂人の手記』。


おお、無限なるものよ!
無限なるものよ!
広大な深淵、奈落から未知なる最高の天界にまでおよぶ螺旋よ、われわれすべてがその中で、めくるめきながら旋回している古来の観念よ。



……どんなに頑張っても。
どんなに新しいアイデアだと思っても。

所詮は古来から続く、無限の観念の中のものなのでしょうか。
螺旋から抜け出せる新しい観念など最早無く、閉じ込められた中でしか旋回出来ないのでしょうか。


…そうかも知れませんし、そうではないかも知れません。


自分など、過去の多くの…あまりに多くの人々の積み上げられた観念に比べれば、砂粒にも及ばないほど小さな塵なのですから。

でも、その塵も、螺旋階段を本当に僅かだけですが、無限の先へ伸ばすことの一助になるかも知れないのです。


……答えを決める必要はありません。
疲れているのですから、これ以上難しいことは考えないでおきましょう。


今は、多くの引き出しを開けてみること。


……では、次の言葉をこの標本函から探してみましょうか。

2009年11月 8日 (日)

菊の花が綺麗ですね…

秋悲し白菊の色に染(そま)む事


庭先で、黄と白の菊が素晴らしい勢いで咲き誇っています。

花弁からはまるで光が輝き出しているかのように、美しく眩いその姿。


その菊を見ていて思い出したのが、先の句です。

高井几董(たかいきとう)のもの。

先日まで読んでいた『詩歌遍歴』(木田元 著/平凡社新書)にも載っていましたね。




…あまりに綺麗なので、幾つも花を切って、家の中で挿していました。

やがて、日が経つに連れて、純白だった花弁に朱が混じり、あの眩いばかりの輝きが失せていきます。

でも、朱が入ったその姿もまた、不思議に美しく…

我が家では、挿したまま見守り続けています。


…菊。

…白。



秋悲し白菊の色に染む事

2009年11月 5日 (木)

綺麗な写真が一杯です☆『須賀敦子が歩いた道』

…色づく並木を愛でるのも、朝の時間だけのこと。
疲れ切った夜道には、寒さだけが身に堪えます(苦笑)

今日は、綺麗な写真をパラパラと眺めましょうか。
とんぼの本。『須賀敦子が歩いた道』(新潮社)。

アッシジ。
なんて壮大で綺麗な夕景でしょう!
素朴で、美しくて…
ページから目が離せません。

ミラノ。
コルシア書店の頃のままの内装をした書店。
大聖堂の、純白に輝くその美しい姿。
「美」とは、軽々しく使ってはいけない言葉に思えてきます…


写真の一枚一枚から、須賀敦子の文章が耳に聞えてきます。


…久し振りに、彼女の透明な文章を眺めたくなってきました。

彼女の文章は、そう…囁きに耳を澄ませるようなもの。

溢れては流れる泉の呟きのように、手元から零れては爽やかな感覚を残して消えていきます。

ただ、眺めるだけ。

…そう、本書の写真のように。

2009年11月 4日 (水)

岩波文庫の秋の重版ですね!

11月11日発売ですね。
一覧は
こちら

『十二の恋の物語』が重版になっていますね☆
『マリー・ド・フランスのレー』です。
12世紀後半に活躍した、フランス生まれの詩人、マリー・ド・フランス。
本書は彼女が遺した12の恋の物語詩です。

『アウラ・純な魂』もありますね。
読んだのは、もう随分と昔のことです…


毎回毎回、この重版リストを眺めながら、過去の読書遍歴を思い出すことが楽しくて…
…どれだけ、岩波文庫を読んできたことでしょう。
批判もあるでしょう。
翻訳に不十分なところもあるでしょう。
でも、間違いなく、最も身近な古典は、これら岩波文庫でした。
全ては、やはりここから始まっているのです。
岩波文庫が、今もこうして続いてくれていること…この出版不況の折、これからも末長く続いてくれることを願って止みません。

2009年11月 3日 (火)

モノにも命あるものを…

昨夜から風が強く、今朝は随分と冷え込みましたね。
慌てて暖房器具を取り出してしまっています…


…今日は、文化の日。
祝日などあまり関係が無い日々を過ごしているので、意識しなくては自分の休日と祝日とが重なったことになかなか気が付きません。
文化の日…
そう思いながら、我が家の本棚に並ぶ数々の本を眺めていると、さて…これらの本は、もう命を持っているのだろうか…などと考えてしまいました。

近頃は随筆をよく読むようになりました。
小説に飽きてきたからなのか、長文をじっくり読むほど読書の時間を持てなくなったからなのかは定かではありませんが、もともと小気味よい文章をぱらぱらと捲るだけでも心地いい時間を持てるので、短篇や随筆は繰り返して手にすることがありました。
そう言えば、近頃は随筆やエッセイそのものの広告もあまり見かけない気がします。
…優れた随筆に出会えていない者の、無いものねだりなのかも知れません。

岩本素白の『素白随筆集』(平凡社ライブラリー)の一篇、「守部と弁玉」の中にこんな一文があります。



昭和二十年五月廿五日の夜半、激しい爆撃の為に私の家も禍を蒙って、いさゝか集まって居た図書記録拓本の類ひ、又古人の筆蹟など全部が美しい灰に化して仕舞った。
翌る日の夜も又その次の夜も、あちらこちら本の積んであった場所は何時までも火が消えないで、その火は又妖しくも美しいものであった。
私は今更、人の命のみでは無い、物の命といふ事に就いても深く考へさせられたのである。



遡る明治41年の12月。
焼け跡を前に書物への愛情を吐露したのは内田魯庵でしたか。(「灰燼十万巻(丸善炎上の記)」)
彼は燃えた書物を「霊魂の糧」だったと悔やんでいます。
内田のこの文章を


読むとぞっと身ぶるいが出るほど亡失の書物に愛惜の情を注いであった。


と、岩佐東一郎も『書痴半代記』(ウェッジ文庫)で書いています。(「大震災前後」)
ただ、岩佐はこの内田の文章を関東大震災に際してと記していますが、これは勘違いでしょう。


いずれにしても、燃えて消える書物への愛情があってこその一文ばかり。
そこに見たのは、多かれ少なかれ「命」そのものだったことでしょう。


岩本素白は、この空襲後、最早講義を続ける事は出来無いと、早稲田大学に辞表を提出しています。
疎開した先は信州。
そこで出会ったのが先日引用した文章のタイトルにもある「壺」で、彼はそれを東京へ戻る時に荷物と一緒に送り、最初に荷解きしたと書いています。

……命が宿るのは、書物だけでしょうか。

彼にとってはその壺もまた、命あるものだったことでしょう…

2009年11月 2日 (月)

50年前の記事です…「騒がしい本屋」☆

岩佐東一郎の『書痴半代記』(ウェッジ文庫)を読んでいます。
昭和31年4月から35年12月までの間、『日本古書通信』に連載されていたもの。

…そう言えば、『彷書月刊』が来年10月号、300号で休刊することになりましたね。
残念なことです……

書痴とは、本好きのこと。
「痴」の文字があっても腹があまり立たない珍しい言葉でしょうね。
本書の「徳川夢声」の中で、岩佐もこう書いています。


書痴となると君は書痴だねと云われても怒るどころか、ニヤニヤ笑って、うんまあ、書痴と云われてみると僕なんかも書痴のはしくれに入るかなあ、などと内心うれしそうだ。



そんな書痴が「小島政二郎氏」と題して書いている中に、東京新聞の一文が引かれています。
題は「騒がしい本屋」。
50年前の記事とは思えない内容です(笑)



昔の丸善がなつかしいのは近ごろの本屋さんの空気があまりにひどいからである。
小売店に入ってゆくと、どの本も装幀がケバケバしく、書名もはでで、店一杯の本が一斉に声をあげて「おれを見てくれ」「おれを買ってくれ」と呼びかけて来るような気がする。
熱海の駅におりると宿屋の客引きが旗をひろげて待ちかまえているが、ちょっとあれに似ているのである。



この文章を書いた吉野源三郎が、今の書店を見たらどう思うのでしょう。

呼びかけ…ではなく、鬼気迫る、脅しのようにすら感じてしまうかもしれませんね(苦笑)

2009年11月 1日 (日)

『壺』より

私も亦どんな境地に在っても、この壺の様に動かない静かな姿を示す事が出来るであらうか。
それは仲々難かしい様にも思はれる。
然し又、何とかそれに近いもので有り得る様にも思はれる。
まことに生き難い世ではあるが、如何なる処、如何なる物の中にも美しさと味ひとを見出したい。
然うして又さゝやか乍ら美しいもの、味ひの有るものを創り出したい、物の上にも心の上にも。
ーそんな希望だけでも残って居るうちは、私もまだ打ちひしがれずに生きて行かれるかも知れないーこんな事を考へながら、本を伏せて例の杖をとって表へ出た。


『素白随筆集』(岩本素白 著/平凡社ライブラリー)収録

2009年10月30日 (金)

秋ですね…

今朝は、少し霧が出ていましたね。
まだ葉を落とし切ってはいない、欅の美しい姿が、白い毛布の上に並んでいました。


澄み切った月の光。

途切れることなく続く虫の音。

ほっそりと…楚々と佇む純白のシュウメイギク。


…何処を見ても、秋の気配。


その中でも、そう…秋の夕暮れは特別かも知れません。

秋の夕暮れは、他の季節には無い、複雑で、鮮やかで、寂しくて…色も、煌きも、あまりにも美しいその景色を、ひっそりと見せてくれます。


『素白随筆集』(岩本素白 著/平凡社ライブラリー)の中、「目黒の里」で、素白はこう書いていますね。


秋更けて、町の灯が潤みを持つ頃、読我書屋をめぐって虫声水の如く、何か落ちついて机辺に坐っては居られない様な気のする夕暮


或いは、こんな風に。



すこし霧のかゝった夜空に、秋の灯の色は露を持ってまことに美しい。
遠く物の響が潮の寄せるやうに聞えて、近くの屋敷の木犀がほのかに匂ふ。
どこかで笛の音がする。



…そうですね。


潤み…露…


……秋の夕暮れには、柔らかな水の気配が漂います。

2009年10月29日 (木)

『お墓参りは楽しい』阪神淡路大震災の犠牲者 より

私は呆然として、涙も出なかった。
瓦礫の前に立ち、天を仰ぎ全身をぶるぶる震わせながら心の中で叫んだ。
〈神さま、あなたはなんと不公平で残酷なお方だ。
 よりによって、なぜ神戸なのですか。
 あんなに美しかった街を、なぜめちゃめちゃな廃墟にするのですか……〉
私はどうしても納得がいかなかった。
なぜだ、なぜだ、なぜだ……。
私の友人や知人たちは、なぜこんなひどい目にあわなければいけないのか。




『お墓参りは楽しい』(新井満 写真・文/朝日新聞社)

2009年10月28日 (水)

息遣いが聞こえます…『壁の本』のこと☆

タイトルどおり、壁ばかりを集めた写真集です。
帯には“街中に絵があふれている”とありますね。

でも、これは「絵」なのでしょうか?

絵…確かに、そう見えなくもありません。
著者自身も壁に名画を見ています。

…でも。

どの写真にも、「息遣い」を感じるのです。
どの壁も、生きています。
蠢いています。
呼吸で胸が上下するように、ゆるやかに、動いています…

建物って、やっぱり生きているんですね。

そんなことが見えてくる、素晴らしい写真集です。

サイズも小さく、それがまた身近に感じられて好ましい。


著者のブログが
こちらになります。
壁の写真を集めたサイトは
こちら

チョコちょこ的には、PC上よりも紙上で見る方がより息遣いを感じるのですが…

それでも興味を持ってくださったなら、是非一度、覗いてみてくださいね☆

2009年10月27日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.35

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.35  2009.10.13

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    コルシカ騒動
    kindleの日本展開
    Amazonの西日本初の物流拠点開設・・・

    話題は豊富ですが
    肝心の本で、なかなかお届け出来るものが少なく…

    ……各種メディアも
    本の周辺だけではなく
    その中身にもっと目を向けてもらえたら…

    そんなことを思う、今日この頃です。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、9月29日以後の新刊です。

 ☆『イタリア広場』(アントニオ・タブッキ 著/白水社)
    詩人フェルナンド・ペソアを紹介したタブッキの処女作。
    三世代の一家の運命を描いた円環構造の物語です。

 ☆『生命倫理学の誕生』(アルバートR.ジョンセン 著/勁草書房)
    医学の急激な進歩に伴って生まれた新しい学問、それが生命倫理学です。
    本書は、その成立の歴史を社会的な意義と共に描き出したもの。

 ☆『社会的迷惑の心理学』(ナカニシヤ出版)
    社会的に「迷惑」とされる行為は、何故そう断定出来るのでしょう。
    その「迷惑」の受け止め方の、時代的・社会的な変遷は?
    誰もが身近に思う、社会的迷惑についての
    基礎的な事柄を網羅している1冊です。

 ☆『喋る馬』(バーナード・マラマッド 著/スイッチパブリッシング)
    今迄に訳されていないものもあるようですね。
    マラマッドの短篇集☆

 ☆『漢詩と名蹟』(鷲野正明 著/二玄社)
    漢詩文の名作を、カラーで楽しめる1冊☆

 ☆『人間とは何か』(ノルベルト・ボルツ 著/法政大学出版局)
    メディア学のボルツが、様々な分野の学問を通じて
    人間とメディアの関係を読み解くもの。

 ☆『土をどう教えるか 上巻 新版』
  (日本土壌肥料学会土壌教育委員会 編集/古今書院)
    かつて1冊だったものを、新学習指導要領に準拠して
    事例も増やして2分冊に。

 ☆『写真で知る墨・硯・紙』(為近磨巨登 著/木耳社)
    総計227枚の電子顕微鏡写真は、スゴイですね!
    これらの写真は、どんな真実を教えてくれるのでしょうか。

 ☆『おしゃべり,子供部屋』(ルイ・ルネ・デ・フォレ 著/水声社)
    話すことと、口をつぐむこと。そのことばの「在と不在」とは。
    清水徹は1973年、一度白水社で『おしゃべり』を訳していますね。

 ☆『昔話を語ろうか』(ポルドミンスキイ 著/群像社)
    ロシア民話と言えば、アファナーシエフですね。
    本書は彼の評伝。

 ☆『精神病院の社会史』(金川英雄 著/青弓社)
    民間療養の場所が、精神病院になっていく歴史を描いたもの。

 ☆『ブラックホール戦争』(レオナルド・サスキンド 著/日経BP社)
    ブラックホールに落ちた情報は、失われる? 失われない?
    ホーキングが投げかけた主張は、その後20年続く論争の始まりでした。

 ☆『パフォーマンスの美学』(エリカ・フィッシャー・リヒテ 著/論創社)
    数々の作家と作品から導き出された、パフォーマンスの理論…
    どんなものなのでしょうね。

 ☆『信用リスク入門』(アンソニー・サウンダース 著/日経BP社)
    金融危機から再度注目される信用リスク。
    そのリスクの測定と管理について。

 ☆『変わる世界の小売業』(ブレンダ・スターンクィスト 著/新評論)
    国際市場の主役は、製造業から小売業へ…
    20年以上のフィールドワークから分析された、各国の小売事情。

 ☆『死の考古学 新装版』(A.J.スペンサー 著/法政大学出版局)
    25年ぶりの新装版☆

 ☆『脳科学の真実』(坂井克之 著/河出書房新社)
    創刊されたばかりの河出ブックス。
    これからどうなるのか、楽しみなシリーズです☆
    本書は現在の脳科学ブームを批判的に検証したもの。
    そろそろ、こんな内容が必要でしょうね。

 ☆『精神の自由ということ』
   (アンドレ・コント・スポンヴィル 著/紀伊國屋書店)
    哲学者であり、無神論者である著者が語る
    人生の意味と自由な生き方とは。

 ☆『計算とは何か』(新井紀子 著/東京図書)
    Math Storiesの2冊目。
    著者、新井紀子のブログがあります。
    こちら → http://researchmap.jp/index.php?page_id=67
    …本当に、計算って、何なのでしょうね。

 ☆『「押し紙」という新聞のタブー』(黒薮哲哉 著/宝島社)
    話題ですよね。
    やはり、新聞業界のこのからくり、知っておかなくては…

 ☆『「フランスの美しい村」全踏破の旅』(吉村和敏 著/講談社)
    これは本当に綺麗ですよね!
    講談社の特集サイトは
    こちら → http://shop.kodansha.jp/bc/books/topics/france/
    フランスの美しい村協会(Les plus beaux villages de France)の
    サイトはこちら → http://www.villagesdefrance.free.fr/

 ☆『自由だけではなぜいけないのか』(荒井一博 著/講談社)
    自由経済の欺瞞とは。
    これもまた、そろそろ増えてくる内容の経済書でしょうか。

 ☆『マザーグースのミステリー』(藤野紀男 著/ミネルヴァ書房)
    昨年の『マザーグースイラストレーション事典』(柊風舎)は
    高額でしたから…
    イラストが豊富で、この価格なら安心でしょう(笑)

 ☆『同盟の相剋』(水本義彦 著/千倉書房)
    千倉書房さんにしては珍しい…しかも、シリーズになりそうですね。
    インドシナを巡る英米関係。その協調と不和と関係維持について。

 ☆『時の娘』(ジャック・フィニイ 著/東京創元社)
    本邦初訳を3作含む、時間SFとロマンスの傑作アンソロジー。

 ☆『幼女と煙草』(ブノワ・デュトゥールトゥル 著/早川書房)
    著者はこの秋、東京日仏学院の『読書の秋』で来日(11月24日)します。
    『読書の秋』についてのサイトは
    こちら → http://www.institut.jp/ja/evenements/9190
    その中で、著者の講演会に関しては
    こちら → http://www.institut.jp/ja/evenements/9199

 ☆『書かれる手』(堀江敏幸 著/平凡社)
    2000年に出たものの再刊。
    須賀敦子ほか12名の書き手に寄せる散文集です。

 ☆『空調・衛生技術データブック 第4版』(テクノ菱和 編集/森北出版)
    空調・衛生の設計施工を実際に行っている技術者達が
    そのノウハウと最新データを集約した決定版。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『写真で知る墨・硯・紙』(為近磨巨登 著/木耳社/9月28日発売)

    昭和38年創業の木耳社(もくじしゃ)さん。
    木耳はキクラゲのことですよね。
    何故、この会社名になったのかは
    会社概要 → http://www.mokujisha.co.jp/company/cc140.html
    で読んでみてください。
    …実は、今日まで、知りませんでした(笑)
    
    同じく知らなかったのが、著者、為近磨巨登の読み方。
    タメチカ マコトと読むようです。
    大阪ガスを定年退社後に、師範免許を取得した方。

    そんな経歴の方だから、でしょうか。

    本書は、電子顕微鏡を駆使した写真で
    墨や硯の世界を語るという
    斬新なものになっています。

    このような視点からの墨の研究を
    しかも手軽な本として、楽しめるということ…
    そのことが、とても素晴らしく思えます。

    為近磨巨登は、2003年にも『墨と硯と紙の話』を
    同じ木耳社さんから出していますよね。

    あれから6年。
    本書では顕微鏡写真も227枚(!)になりました。

    墨や硯、紙のことを

    文字だけではなく
    見たこともないミクロな世界と共に

    どうぞ楽しんでみてください☆

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『聖者と学僧の島』(トマス・カヒル 著/森夏樹 訳/青土社)

    わたしは海に注ぐ河口だ。
    わたしは大洋の波だ。
    わたしは海のざわめきだ。
    わたしは力強い雄牛だ。
    わたしは崖の上の鷹だ。
    わたしは陽に照らされた露のしずくだ。
    わたしは美しい草だ。
    わたしは猛々しい雄豚だ。
    わたしは淵を泳ぐ鮭だ。
    わたしは平原のなかの湖だ。
    わたしはわざの力だ……。

              アヴァルギン

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年10月26日 (月)

『オブジェを求めて』玩具のいのち より

大部分の子どもというものは、或る者はしばらくいじくってから、或る者は即座に、とくに玩具のいのちを見たがる。

……………

なにしろこれは最初の形而上学的傾向なのだから。

……………

子どもはその玩具をさんざんひねくりまわし、引っかいたり、揺すぶったり、壁にぶつけたり、地面にたたきつけたりする。

……………

子どもは、チュイルリ宮殿を取りかこんだ暴徒のように、最後の努力をこころみる。
ついにはそれをこじあける。
彼の向うところ敵なしである。
しかし、いのちはどこにあるのだろう。
その点から茫然自失と悲哀とが始まる。

                  ボードレール『玩具のモラル』




『オブジェを求めて』(澁澤龍彦 編/河出文庫)

2009年10月25日 (日)

『水都幻談』策略 より

ああ、親しき窓よ、汝らの、すり切れて、よれよれの、つつましきモスリンをかかぐるは如何ばかり歓ばしきことよ。
わが手に反抗する汝らの落錠を、われ、如何ばかり力を入れて廻さんとするか。
われは唐突に汝らを開くこともあり、汝らがガラスに額を押しあつることもあり、いづれにせよ、いとも厄介なる落錠なり。
ああ、親しき窓よ、そこより見ゆるは常に同じ眺め、われの悉知せる眺めなれど、何時もわが目を楽しませ、わが胸を打つことにかはりなく……。



『水都幻談』(アンリ・ド・レニエ 著/青柳瑞穂 訳/平凡社ライブラリー)

2009年10月23日 (金)

何とはなしに、本を辿って…

始まりは『詩歌遍歴』(木田元 著/平凡社新書)でした。
まさしく「遍歴」の最初に相応しいタイトルですね(笑)

本書の中でも、当然のように上田敏に触れられている箇所があります。
『海潮音』に入っている訳詩。ヴェルレーヌの「落葉」。
これもまた、秋の日に相応しい歌です。


ここで、ふと、思い浮かんだのが何故か樋口一葉でした。
彼女が初めて一葉の筆名を使ったのが秋だったからでしょうか…(明治24年のこと)。

そんな彼女が、上田敏について日記を書いていましたね。

でも、あれはいつの日記だったでしょう?
確か、戸川秋骨が、一葉を前に不意に体を震わせ始めた、よく知られるエピソードが綴られた辺りだったはず…


そこで持ってきたのが、こんなときに便利な『日本文壇史』(伊藤整 著/講談社文芸文庫)の第4巻。
副題は、まさしく「硯友社と一葉の時代」。
この中に無かったら、逆に驚いてしまいます。

…どうやら、明治28年の、丁度今頃の季節。
10月の半ば過ぎのようですね。

坪内逍遥が自らの雑誌『早稲田文学』に連載した、創作史劇の第一作『桐一葉』を巡る、一連の流れの中で。
書評を書くことになった上田敏が、一葉を訪れています。


最後に、一葉の日記ですね。
『全集 樋口一葉 3 日記編』(小学館)。
「水のうへ日記(明28・10・31-11・3)の中です。

…ありました。


此人のは一景色ことなりて、万に学問のにほひある、洒落のけはひなき人なれども、青年の学生なればいとよしかし。


彼女を訪ねる他の男達とは、まるで違う書き方です。
よほどの秀才であり、学問をひたすら志す好青年だったのでしょうね。



遡り、振り返れば秋から始まり、秋で終わる遍歴です。
ただの偶然ですが…でも、本との出逢いは、時に「偶然」とだけでは片付けられないと…そう思うことがあります。

誰が、
何が、
この指先を、思考を呼び寄せるのでしょう…

その問いの答えを求めて、遍歴は終わりなく、続いていくのかも知れません。

2009年10月22日 (木)

『フリードリヒへの旅』あとがき より

では、私は何者だったのか。
人生の後半になって、私はそれを【樫の森の修道院】から見つけた気がする。
私は廃墟の象を、心のどこかから風化できないでいた。
だが、そのことを愛しむことができる。



『フリードリヒへの旅』(小笠原洋子 著/角川学芸出版)

2009年10月21日 (水)

『詩歌遍歴』から秋の詩を☆

難しい本ばかりが続くと、新書や文庫が恋しくなります。

手にしたのは、木田元の『詩歌遍歴』(平凡社新書)。

今日は少し暑かったので、あえてボードレールの「秋の歌」を繙いていました。
朝夕は涼しいのですがねぇ…

この新書に収められているのは村上菊一郎の訳詩。
『悪の華』の1篇です。



われらまもなく冷たき闇に沈むらん。
いざさらば、束の間なりしわれらが夏の強き光よ!
われすでに聞く、中庭の甃石に
悲しき響を立てて枯枝の落つるを。



少なくとも、この「秋の歌」に関しては、岩波文庫の鈴木信太郎の訳よりも好みかもしれません。


夏は昨日にして、いまは秋!


…えぇ。
例え昼間は汗ばむ陽気であったとしても、今はもう秋。

……秋なんですねぇ。


最後に堀口訳のグウルモンを、本書から。


シモオン お前は好きか 落葉ふむ足音を?

2009年10月20日 (火)

『フリードリヒへの旅』のこと…

白く一輪、楚々としたシュウメイギクが風に揺れています。
雲が多い、ぼんやりとした光の世界。
…フリードリヒに触れるには、いい日かも知れません。


若い頃に、カレン・ブリクセンも学んでいたコペンハーゲンの美術アカデミー。
遡る1794年、20歳の時に、同じ美術アカデミーに入学していたのがカスパー・ダーフィット・フリードリヒです。

静かで、翳りが多く、時に冷ややかな絵を描いた、ドイツ・ロマン主義の画家。

彼の足跡を辿りながら、思索をめぐらせた美術評論…それが本書『フリードリヒへの旅』(小笠原洋子 著/角川学芸出版)です。
自らの言葉で語る文章はとても読みやすく、今迄絵を見ながらもその描いた主を知らずにフリードリヒに共感していた人には、待望の1冊ではないでしょうか。
彼の作品を、その生涯を、身近に感じられる好著です。

フリードリヒには、その画風を、生涯を決定付ける一つの悲劇があります。
それは、1789年12月8日に起きたこと。
スケートで遊んでいる時に氷の裂け目に落ちたフリードリヒを、当時12歳の弟が助け出し、代わりにその弟が溺死してしまったのです。
彼がこの時に負うた十字架は、彼を廃墟や翳り、寂寥や氷の世界に引き込みます。
その表れを、本書に多数収録されている(白黒ですが)作品のそこここで見ることが出来るでしょう…



ベルリンの朝は闇のなかにある。


小笠原洋子は、本書の中で書いています。


朝が、夜の色であること


朝が光からではなく闇から始まること



……フリードリヒの作品は、「朝」なのでしょうか。

人は、そこに「朝」を見出せるのでしょうか。

彼の作品への共感は、人々に「朝」をもたらしてくれるのでしょうか……

2009年10月18日 (日)

『アミエルの日記 4』1869年4月24日 より

復讐の女神は摂理の神よりも事実的であり、
嫉妬の神は善意の神よりも真であり、
悲しみは喜びよりも確実であり、
闇は光よりも勝利の確信を持つものであらうか。

悲観が正しいのか楽観が正しいのか。


『アミエルの日記 4』(河野與一 訳/岩波文庫)

2009年10月15日 (木)

『アミエルの日記 5』1871年10月4日 より

歓喜。
何とも云へない天気。
太陽が戻って来た。
何もかも明るくて透き通って爽かで肌触りがいい。
湖は慕はしさうに岸で呟き、黄色くなった木の葉は透明な蔭に露を滴らせてゐる。
空気にも陽気と幸福がある。



『アミエルの日記 5』(河野與一 訳/岩波文庫)

2009年10月14日 (水)

1869年10月14日(木)…『アミエルの日記』から

雷が凄かったですねぇ~

…でも、今は落ち着いたでしょうか。



昨日の水曜日、サントブーヴの死。偉大な損失。


140年前の今日、そう綴っているのはアミエルです。
引用は、岩波文庫『アミエルの日記(4)』(河野與一 訳)から。(現在の4巻ものよりも更に古い版(全8巻)です)

続く16日の日記によれば、サントブーヴは立ったまま亡くなったとのこと。
臨終の前日までペンを離さず(…荷風を思い出してしまいますね)、最後まで教会の秘蹟を拒絶したそうです。

サントブーヴは批評家として有名ですが、プルーストに批判されたことで(特に現代では)より知られるようになったでしょうか。
あの『失われた時を求めて』は、サントブーヴに反論する評論から生まれたものです。


『アミエルの日記』は、今ではなかなか手に入れにくいものですね。
でも、そこに綴られているのは素晴らしい思索であり、その言葉は美しい旋律です。
アミエルを詩人だと言ったのは串田孫一、その意味が本当によく分かります。


……雨はやんだのでしょうか。

今夜はもう少し、アミエルの言葉の海を彷徨いましょう…

2009年10月13日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.34

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.34  2009.9.29

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    少しずつ、少しずつ…

    涼しさの向こう側で
    足音を忍ばせ近付いてくる
    老いた季節を、そこここに感じ始めています。

    その暗がりを
    その寂寥感を

    秋は華やかな色合いで、覆い隠してくれています…

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、9月15日以後の新刊です。

 ☆『万物の歴史 新装版』(ケン・ウィルバー 著/春秋社)
    アメリカの思想家ケン・ウィルバーの大著『進化の構造』の
    要約として書かれたもの。

 ☆『〈トゥーランドット〉と〈妖精〉』(最上英明 著/アルファベータ)
    タイトルのオペラ2つの原典となった『千一日物語』を訳し
    論説を加えたもの。
    著者はこの題材について、ずっと研究していましたね。

 ☆『倦怠の華』(ピエール・ロチ 著/水声社)
    『氷島の漁夫』で知られるピエール・ロティの本邦初訳作品です。
    短篇集。

 ☆『レクチュール』(ポール・リクール 著/みすず書房)
    フランスの哲学者、リクール。
    みすず書房さんのHPにあるように
    彼の“思索の中核”へと誘ってもらえればいいのですが…
    内容的に、周縁的なものであることは否めませんね。
    紹介しているサイトは
    こちら → http://www.msz.co.jp/news/topics/07449.html

 ☆『デザイン学』(向井周太郎 著/武蔵野美術大学出版局)
    表紙がいいですね☆
    デザインに関する言葉を巡る、思索の連鎖。

 ☆『木綿再生』(福井貞子 著/法政大学出版局)
    「ものと人間の文化史」シリーズですが、随分と久し振りですね。
    『木綿口伝』の続編をなす収集と記録。

 ☆『ディーゼルエンジンの機構的特性』(浅妻金平 著/グランプリ出版)
    ディーゼルエンジンについての本は、まだまだ少ないでしょうか。

 ☆『気候と人間の歴史・入門』(E.ル・ロワ・ラデュリ 著/藤原書店)
    別著『気候の歴史』を知らないと難しいでしょうか。
    気候が人間の歴史に与えた影響について
    問いと回答のスタイルで綴られる入門書。

 ☆『技術への問い』(マルティン・ハイデッガー 著/平凡社)
    最近、再び技術と哲学との組み合わせが目に付くようになりました。
    哲学が技術を語る「時」…本当は、「そのこと」を
    哲学は読み解くべきなのかも知れませんね。

 ☆『ノーマン・ボーローグ』(レオン・ヘッサー 著/悠書館)
    1970年、ノーベル平和賞を受賞した農学者、ボーローグ。
    「奇跡の小麦」を手に、「緑の革命」を指導した彼の生涯を描いたもの。

 ☆『グーテンベルクからグーグルへ』
   (ピーター・シリングスバーグ 著/慶応義塾大学出版会)
    文学のデジタル化による問題点と可能性。
    そもそも、文学は「モノ」なのでしょうか、「情報」なのでしょうか。

 ☆『ティナの明日』(A.マルティネス・メンチェン 著/あすなろ書房)
    YA向けのスペイン文学は珍しいのでは。
    「20世紀スペインの100冊の子どもの本」に選ばれているようです。
    その100冊のリストが
    こちら → http://www.geocities.jp/liriolibro/pg44.html

 ☆『チェチェン』(オスネ・セイエルスタッド 著/白水社)
    潜入取材によって明らかにされる言論弾圧と
    人権を無視した恐るべきチェチェンの実態。

 ☆『星雲・星団写真星図』(中西昭雄 著/誠文堂新光社)
    101のエリアを、星図調に仕上げた天体写真です。
    観測よりも、撮影に使えそうですね。

 ☆『艾青という詩人』(宇田禮 著/新読書社)
    中国の現代詩人について書かれた本は珍しいですね。
    …艾青は、まだ見つかる方ですが。

 ☆『アウシュヴィッツ以後の神』(ハンス・ヨーナス 著/法政大学出版局)
    “絶滅収容所という絶対悪を前に、神はなぜ沈黙したのか?”とは
    HPの紹介文。
    なぜ、その後も神は生き延びたのか。現代における神とは?

 ☆『明代郷紳の研究』(寺田隆信 著/京都大学学術出版会)
    社会的・文化的地位を持ちながら、官途をはずれ、郷里に在住する郷紳。
    中国文学では御馴染みですよね。
    その具体的な生き方を検証したものです。

 ☆『エミリー・カー』(ケイト・ブレイド 著/春秋社)
    エミリー・カーは、カナダでは良く知られた芸術家。
    でも、日本では殆ど本になっていませんね。

 ☆『世界探検全史 上』(フェリペ・フェルナンデス・アルメスト 著/青土社)
    フェリペ・フェルナンデス‐アルメストは流石ですね。
    今回もまた、どんな世界史を見せてくれるのでしょうか。

 ☆『宇宙天気』(篠原学 著/誠文堂新光社)
    宇宙空間での生活の様子が身近になってきた昨今。
    宇宙の天気予報は、実際には非常に重要な課題ですよね。

 ☆『かがみ』(フレーベル館)
    「だいすきしぜん」シリーズの「かがく」2巻目です。
    このシリーズは分かりやすくて、いいですよね☆

 ☆『昨日と明日の間』(小尾俊人 著/幻戯書房)
    みすず書房を興した小尾俊人(おびとしと)による、エッセイ。

 ☆『変貌する世界の穀物市場』(農林中金総合研究所 編集/家の光協会)
    農林中金総合研究所は
    農林漁業等に関する情報提供、調査研究をしているところ。
    世界各国・地域の農業動向とその背景をまとめたものです。

 ☆『消えゆく文字中国女文字の世界』(遠藤織枝 編著/三元社)
    中国湖南省江永県を中心に伝えられてきた、女性だけが使う女文字。
    著者、遠藤織枝のサイトが
    こちら → http://homepage3.nifty.com/nushu/homeJ.htm

 ☆『ふしぎな家族』(ペーター・シュタム 著/ユッタ・バウアー 画/長崎出版)
    『色の女王』のユッタ・バウアーが描く絵本です☆

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『グーテンベルクからグーグルへ』
  (ピーター・シリングスバーグ 著/慶応義塾大学出版会/9月25日発売)

    HPのトップには

    “Googleショック”の本質を衝く必読書!

    なんて書いてありますね(笑)

    確かに

    “文学テキストのデジタル化の問題点と可能性”

    とか

    “テキストをめぐるコミュニケーションの変容について”

    と書かれてあると、気になって仕方がありません。

    写本であれ
    木版であれ
    印刷であれ
    写真であれ
    デジタルであれ

    文字は文字でしかありません。

    その伝達や保存の「手段」「目的」が異なるだけであり
    それはコミュニケーションの形態が異なるだけのこと。

    …ではなくなってきている気もします。

    その原因の一つは、コミュニケーションの主体であるはずの
    人間の受け止め方…
    その、主観的、感情的要因によるもの、のようにも思えます。

    もっと身近なことで書けば
    手紙とメールは同じでしょうか。
    綴っているのは「手紙」という「モノ」なのでしょうか。
    それともただの「テキスト」であり
    フォントや字間、空白といったものを無視して
    デジタル化して伝えられるものなのでしょうか。

    例えば、プロジェクト・グーテンベルク。
    単純な電子テキストで書かれていますが
    あの「文学」は果たして「文学」なのでしょうか。

    それで十分、とするコミュニケーションもあります。
    それだけでは不十分、とする関係もあるでしょう。

    最近の動向で気になるのは
    まるで、どちらか一方でなければならないかのような
    そんな言動が目立つことです。

    ネット上に存在しないものは情報ではない
    などといった過言すら存在している時代です。
    愚かしいことですが、愚かしいとは思えない
    そんな風潮が存在していることもまた事実。
    そこに、コミュニケーションの主体である人間の主観が、感情が
    入り込んできている気がします。

    コミュニケーションの手段としては
    どれも成り立つのです。

    
    …なんだか、寿岳文章の向日庵などを思い出しながら
    さて、本書の内容はどんなことを教えてくれるのでしょうか。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『書物の出現 上』(リュシアン・フェーヴル ほか著/ちくま学芸文庫)

    物語また美しき書物を読むは
    優雅な余暇の過し方なるべし。
    されど読書に淫するなかれ、
    淫して身を滅ぼすもの多ければなり。
    商いをなりわいとする者にとりて
    過度に書を愛するは好ましからず。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年10月12日 (月)

こんな人だったのですね…『アキテーヌ公ギヨーム九世』のこと☆

庭先のキンモクセイが、今年は2度目の花をつけています。


最古のトルバドゥール、ギヨーム9世。
本書『アキテーヌ公ギヨーム九世』(中内克昌 著/九州大学出版会)では、彼が残した11編の詩の原文と翻訳、そしてギヨーム9世自身の生涯について知ることが出来ます。

快楽主義者
漁色家
道化者
皮肉屋
挑発者
冒涜者
背徳漢
 ・・・・・・・

…散々な評価ですね(笑)
二面性どころか、知れば知るほど多面性のある人物だったようです。

もっとも、本来人間は多面なもの。
権力があるが故に、その多面性がエピソードとして素直に記録されたのかも知れません。
ただ、あまりにその行動は突出していたようですね。
L.T.トプスフィールドは、こう書いているそうです。



激しやすく、
情熱的かつ直情的で、
同時に超然として、
皮肉屋で教養があり、
日常の事柄において自分自身の利害には敏感であるが、
それらの向こうに新たな冒険と刺激と喜びを求める



…彼の詩よりも、彼の生涯の方に興味が湧いてきます。


女性蔑視の観点から、宮廷風の自己犠牲の恋愛へ。
彼の詩は揺れ動き、道を開き…
やがてその愛は、『神曲』や『カンツォニエーレ』の至高の愛へと繋がっていきます。


その源として。
いえ、彼以前からあった愛の歌の、一つの節目として。

ギヨーム9世の生き様と歌の変遷は、もう少し詳しく知りたいですね☆

2009年10月11日 (日)

『アキテーヌ公ギヨーム九世』第三章作品 より

  新しい小粋な歌を作ってみよう
  風吹き凍てつき雨降らぬ間に。
  愛しい女が私を試し確かめる、
  どんな風に私が愛しているかを。
  だがどう言いがかりを付けられようと
とても私は彼女との絆から離れられまい。



『アキテーヌ公ギヨーム九世』(中内克昌 著/九州大学出版会)

2009年10月10日 (土)

アイルランドが持ち続けた希望の灯火…

それは1843年のこと。
アイルランドの大飢饉が始まる1845年よりも、ほんの少し前。
ケリー地方のある農民の姿が、ドイツ人の旅行者によって記されています。



舟のへさきにケリーの男がすわって、古い写本を読んでいた。
それはアイルランド語やケルトの文字で書かれていた。



家に代々伝わる写本。
彼の父や祖父から受け継いだもの。
それどころか、彼はその中の幾つかを自分で書き加えたそうです。

写本に入っていたのは



「もっとも美しいアイルランドの古詩。
すばらしい出来事の書かれた歴史。
古代の論文などです。
たとえば、アリストテレスが書いた自然史の翻訳など」



このエピソードを引いているトマス・カヒルは本書『聖者と学僧の島』(青土社)で続けています。


読者のみなさんがこれを聞いて、どのように感じられたかわからないが


そう断った上で


残っていることさえまれなアイルランドの写本を、ケリーの一農夫がそのふしくれだった手でもち読んでいる姿に、わたしは背筋がぞくぞくする思いがした。


…えぇ、本当に。
胸元が熱くなってきます。
凄いことですよね。


……彼もまた、2年後には大飢饉に見舞われます。

その写本はどうなったのでしょう。
彼自身もまた、生き延びることが出来たのでしょうか…


未来を知っていることは、時に残酷です。

2009年10月 8日 (木)

蝋燭の明かりの中で…

台風が来る時に気になるものの一つが、停電ですね。
今はもう、電気が無くてはなかなか食事も出来ません。
知人の話では、近くのスーパーでパンが売り切れていたとのこと。
近付く台風の進路を見極めながら、御飯を炊いた方もおられることでしょう。


夜、明かりが消えた書斎。
その中で眺める本は、本当に不思議な気配で満ちています。
闇の中で見る時ほど、本が息衝き、動き出そうと震えている…本が生きていると感じる瞬間はありません。

…でも。
蝋燭の明かりだけの時もまた、何かが生まれてくるようなのです。



私の部屋が私の部屋でなくなる訳ではないが、普段とはまるで表情が変ってしまう。
本の背文字の金がいやに鋭く光る。
輝いている。
十八世紀、十九世紀の本が躍り上るように悦んでいる。
そんな古い本ばかりが並んでいたら、私はどうしていいか判らなくなってしまうかも知れない。



そう綴っているのは、串田孫一。
『串田孫一集 7 向う側の天 随想Ⅲ』(筑摩書房)収録「飛行船の飛ぶ空」の中の「停電」の一節です。


それぞれの本が持つ歴史、時間。経験、想い。
古ければ古いほど、滲み出てくるものは重く、深く…

そんな本ばかりに囲まれた瞬間、恐怖と歓喜が同時に全身を包み込んで、身震いしながら何事かわからぬ叫びを上げているかも知れません。


蝋燭の明かりは、そんな過去を引き出すのに、これ以上ないほど相応しいものでしょう。


揺れる影、瞬く煌き。

…ただ。

立ち昇るのは、本の過去だけではありません。


自分の影が揺れる蝋燭の明りの中にいると、私の古い時代が、何か否応なしに蘇って来るのだった。


……そこは、古い時間が彷徨うところ。

2009年10月 7日 (水)

白い椿、紅い椿…

雨音が酷くなってきていますね…
…どうか、大きな被害がありませんように……


鉄柵で仕切った地面。
一面を埋めるほどの白い椿。

一つでも萎めば、すぐに新しいものを…

その花壇の中には白い大理石。
彫りこまれているのは、女の名前。

彼女の名前は、マルグリット・ゴーチエ…


マルグリットと言えば椿の花。
月の二十五日は白い椿。あとの五日は紅い椿。
ついた名前が「椿姫」。


彼女もまた、カフェ・アングレに縁の高級娼婦。


『三銃士』のアレクサンドル・デュマの息子、私生児のデュマ・フィスが24歳で著した処女作、それが『椿姫』(吉村正一郎 訳/岩波文庫)です。
同名の二人を区別する為に、父親を大デュマ、息子を小デュマと呼ぶこともあります。

『椿夫人』(内田魯庵)
『山茶花夫人』(森鴎外)
『椿御前』(太田三次郎)
などと本書は訳されてきたようですが、『椿姫』が定訳となったのは長田秋濤(おさだしゅうとう)からのようです。(『明治文学全集 7 明治翻訳文学集』(筑摩書房)解題)

明治35年当時、この長田の翻訳が風俗壊乱の理由で発売禁止になり、訴訟となりました。
その時に禁を解くために弁論した者の一人が、現在の首相鳩山由紀夫を曾孫とする鳩山和夫です。
鳩山和夫と縁のある早稲田大学の出版部から、長田の『椿姫』が出版されたのも無関係ではないでしょう。


『椿姫』の下地には、デュマ・フィスの体験があります。
本書の最後、主人公の「私」は書いています。


気高い心をいだきながら不幸に悩む人々がいたるところであげる祈りの声を聞くごとに、私はみずからこだまとなって、それをそのまま世の人に伝えようというのである。


これは若しかすると、彼の本心であり、彼の作家としての方向を自ら宣言したものかも知れません……

2009年10月 6日 (火)

秋雨また霏々たり…

今ではもう、あまり見かけない「霏々」という言葉は、今日のような雨模様に使うのでしょうか。

永井荷風が亡くなって今年で50年。
タイトルの「秋雨また霏々たり」は、丁度この時節の『断腸亭日乗』に幾度か使われている言葉です。

38歳から79歳まで。
42年間にわたって綴られた日記が『断腸亭日乗』です。
岩波文庫には、そこから抜き出した『摘録断腸亭日乗 上・下』がありますね。雰囲気だけでしたら、この文庫版でも味わっていただけるでしょうか。

「文章の練習」のために、荷風は明治二十九年の秋、17歳頃から日記を始めたようです。
そこから、死の前日まで、彼は日記を書き続けていました。


毎日毎日、刻み込まれる東京の風景、日常。

ぱらぱらと捲りながら、ふと一文に目が止まり、その言葉に一人頷く。

日記の読み方は、そんなものですよね。

目を惹く言葉は、その日、その時、その年齢で変わります。



…今日は、どの日付で立ち止まるのでしょうか。

そして、明日はどの日付を見つけることになるのでしょうね……

2009年10月 5日 (月)

こんな状態で怪異を読むなんて…(苦笑)

あまりに疲れ方がヒドク、何もする気がしません。
ぼんやりと、ただ虚ろに座り込んでいます。

手元にあるのは、オブライエンの『金剛石のレンズ』(創元推理文庫)に続いて、大瀧啓裕が訳したクラーク・アシュトン・スミスの『ゾティーク幻妖怪異譚』です。
表紙はまた、お気に入りの東逸子☆
読みごたえのある解説も、相変わらずです(39ページ!)。


文体を本当に楽しむにはその文体を書きこなせる力がなければならず、読書とは定めて高度な技術なのである。


とか…


文体を楽しむ長編小説はおのずから読者を限定してしまう。


とか。

解説もしっかりと読まなくてはいけませんね(笑)


残念ながら文体を気にしながら読むほどの余裕は今はありませんが、まずはぱらぱらと、気ままに読書させていただきましょう。
それこそ、文体が良ければ、恐らく何度も読む機会は訪れるはずです。
文体を楽しむ作品は、読者を限定するかも知れません。
ですが、その読者は、間違いなくその作品によって幸せになれるでしょう。
…今回は怪異譚なので、単語に違和感を覚えますが(苦笑)
それでも、やはり、これといった作品との出逢いは素晴らしいものです。
さて…スミスのゾティークは、どちらの作品になるでしょうか。
その期待もまた、読書の楽しみです。

2009年10月 2日 (金)

『氷島の漁夫』より

もうまったく、秋も、おそ秋で、気のめいりこむような夕暮にでもなると、古い藁家の中は、早くから、何もかも真っ暗になってしまった。
そして、あたりの、古いブルターニュの土地も、おなじように暗くなってしまった。

日中自体が、今ではもう、たそがれのようにしか思われなかった。
巨大な雲が、しずしず通りかかると、昼日なかでも、不意にあたりを暗くしてしまった。
風は、絶えずうめき立てていた。
それは、不吉な、あるいは絶望的な曲をかなでるときの、教会の大きなパイプオルガンの遠い音のようだった。
ときにはまた、その風音が、直接戸口のところまで迫ってきて、野獣のように吠え立てることもあった。

……………

彼女は、ヤンが寄港したかも知れない島のことが忘れられず、ふたたびはかない希望をいだきながら、彼の帰りをまた待ちはじめるのだった……



『氷島の漁夫』(ピエール・ロチ 作/吉江喬松 ほか訳/岩波文庫)

2009年10月 1日 (木)

この本の中にも、アンクーが…

…裏読書日記で沢山書いてしまったので、こちらは簡単に(笑)
何だか、メインのブログではなくなっているような気もするこの頃です。

アナトール・ル=ブラースの『ブルターニュ死の伝承』(藤原書店)を読んでいて、そう言えばこの本にも本書の内容が引かれていたことを、思い出しました。
田辺保の『ブルターニュへの旅』(朝日選書)。
この第七章「地の果てへ、その「かなた」へ」に、低ブルターニュ西部各地で採取された民話として、アンクゥを食事に招く話が出てきます。
これは本書の27話「死が食事に招かれた話」そのもの。
…でも、田辺は特に出典を明記していません。困ったものです。

アンクー、それは「死」そのもの。
この呼び名は、田辺によれば「アンケン(悲しみ)」「アンクーン(忘却)」と通じ、またギリシア語の「アナンケー(必然)」とも無関係ではないらしいとのこと。
少し出来すぎな語源説にも聞こえますが、このようなイメージと繋がりやすいことは事実です。
ただ、アナトール・ル=ブラースの文章を読む限り、ブルターニュの人々は、もっと身近にこの「死」を捉えていた気がします。
どの小教区にも、必ず一人はアンクーがいると言われていたほどに、身近な隣人。
いいえ、それどころか、小教区でその年、最後に死んだ者が、翌年、その教区のアンクーになると。
ここまでくると、文字通り、アンクーは隣人だった存在です。
悲しみや忘却といった、ロマン派が好むようなシチュエーションではなく、若しかすると来年のアンクーは「自分かも知れない」という、そのあまりに身近な状況では、「死」との対応もまるで現在と違っていたことでしょう。

…自分自身が、来年は「死」となって、隣人を死者の国へと連れ去るかも知れない。
それも怨念や恨みからではなく、僕として淡々と。仕事をこなすように……

……なかなか、想像すら難しい感覚です。

2009年9月29日 (火)

丸善とTRC、いよいよですか…

2010年2月1日付けで、丸善と図書館流通センター(TRC)が経営統合するそうです。
ロイターの記事
丸善の発表

…いよいよ、動き出しますね。
図書館もどうなるのでしょう…出版不況の中、図書館も行政機関でありながら、傍観者ではいられなくなるのでしょうね。
ただ、活字文化の継承、発展において、図書館が「行政として」出版業界と協力、育成するような税金の使い方もあっていいのではないでしょうか。
「地元の住民」第一から、「日本の文化」第一へ。
市町村のような地方行政で難しいのであれば、小中学校のように都道府県レベルへの組織の移管すら考えてもいいと思うのです。
国から地方へ、その流れは間違っていないかも知れませんが、国家レベルでしか出来無いものもあるでしょう。

…と言うよりも、この記事、実際に図書館で働いておられる方々はどの程度気にされているのでしょうか。
その方が気になりますね…(苦笑)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.33

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.33  2009.9.15

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    スイフヨウが
    白から紅へと…艶やかな変化を見せてくれています。

    夜には虫の歌声も賑やかに…

    すっかり、秋の気配で辺りは満ち満ちています☆

    見上げる青空は高く、美しく…
    白い月が、うっすらと銀の光を投げ掛けています。

    季節の移ろいは
    その、「変化」そのものが
    心を捉えて放してくれません……

    …今日、みなさんは、どんな小さな秋を見つけられましたか?

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、9月1日以後の新刊です。

 ☆『壁の本』(杉浦貴美子 著/洋泉社)
    “街中に絵があふれている。”とは帯の言葉。
    ありふれた壁に潜む「何か」を写しこんだ写真集☆

 ☆『都市の遊び場 新装版』
   (アレン・オブ・ハートウッド夫人 著/鹿島出版会)
    初版は1973年だったそうです。「冒険遊び場」の実例を集めたもの。

 ☆『小さな生きものたちの不思議なくらし』(甲斐信枝 著/福音館書店)
    「かがくのとも」でお馴染みの画家、甲斐伸枝。
    本書は彼女の絵を添えたエッセイ集です。
    同時に、彼女が描いた草花や虫たちの本が6冊限定で復刊されるそうです。
    (こちら → http://www.fukuinkan.co.jp/bookdetail.php?goods_id=20833

 ☆『取調べ可視化論の現在』(小坂井久 著/現代人文社)
    論文集ですが、まずは知らなくてはならないものでしょう。

 ☆『アキテーヌ公ギヨーム九世』(中内克昌 著/九州大学出版会)
    九州大学出版会さんは、折に触れてチェックしなくてはいけませんね☆
    トルバドゥールとして名高いギヨーム九世についての生涯と
    現存するその作品11編の解説です。

 ☆『カルロス・クライバー 上』
   (アレクサンダー・ヴェルナー 著/音楽之友社)
    20世紀を代表する指揮者の一人と言ってもいいでしょう。
    指揮台に立つ回数が極端に少なく
    正規録音よりも海賊版の方が遥かに多い
    謎に満ちたクライバーの本格的な伝記。

 ☆『傲慢な援助』(ウィリアム・イースタリー 著/東洋経済新報社)
    何故、先進国の援助は現地に届かないのか。
    その検証と改善を模索しているものです。

 ☆『ネズミ』(ミゲル・デリーベス 著/彩流社)
    カスティーリャ地方の貧しい農村の1年間。
    その極貧の生活を通じて、フランコ独裁政権への怒りを描いたもの。

 ☆『フリーターの心理学』(白井利明 著/世界思想社教学社)
    23歳~39歳の8,336人の調査から
    非正規雇用から正社員へと移行するプロセスと条件を探ります。

 ☆『流体機械工学』(小池勝 著/コロナ社)
    機械系教科書シリーズの第24巻ですね。
    揚力の発生原理を始め、翼の空力特性から騒音までを解説しているもの。

 ☆『イラストで学ぶ美術解剖学』
   (アンドラス・スンニョギイ 画/グラフィック社)
    美術解剖学…なかなか珍しいのでは。
    解剖学的な視点から美術制作を行うものです。
    本書はその基本となる1,200点を越えるイラストで形成されています。

 ☆『フリードリヒへの旅』(小笠原洋子 著/角川学芸出版)
    フリードリヒ(Caspar David Friedrich)についての本は珍しいですよね。
    ロマン派を代表するドイツの画家で
    淋しく崇高な風景画をよくしています。

 ☆『ドイモイの誕生』(古田元夫 著/青木書店)
    青木書店さんならではの
    ドイモイについての本になっているのでしょうか。

 ☆『ひとり暮らしの季節ごよみ』(河野真希 著/祥伝社)
    ひとり暮らしのルーティンワークに
    少しだけ行事を取り入れてみませんか?

 ☆『再生名建築』(足立裕司 編著/鹿島出版会)
    甦り、そして名作となった建築の数々…
    シリーズ「時を超えるデザイン」の第1巻目です。

 ☆『「見る」と「書く」との出会い』(麻生武 著/新曜社)
    「見た」ことを、他人に分かるように「書く」って難しいですよね。

 ☆『文学における超自然の恐怖』(H.P.ラヴクラフト 著/学習研究社)
    ラヴクラフトの論文や、評論、詩から小品まで。
    貴重な写真や図版も沢山あるようです☆

 ☆『物理の散歩道 新装版』(ロゲルギスト 著/岩波書店)
    ちくま学芸文庫に続いて、岩波書店も新装版を出してくれましたね!
    大歓迎です。

 ☆『東京骨灰紀行』(小沢信男 著/筑摩書房)
    東京に埋もれる、無数の骨灰…忘れられた首都の記憶を呼び起こす旅。

 ☆『「丸の内」の歴史』(岡本哲志 著/ランダムハウス講談社)
    丸の内オフィス街で1894年に生まれた三菱一号館。
    来年4月に、新たに三菱一号館美術館として生まれかわる
    その竣工記念として出版されるもの。
    三菱一号館美術館についてはこちら → http://www.mimt.jp/japanese.html

 ☆『ファウストとホムンクルス』
   (マンフレート・オステン 著/慶応義塾大学出版会)
    『ファウスト』の中に出てくるホムンクルスから読み解く、ゲーテの思想。
    …それにしても、最近は
    棚差しタイプで新刊を見せるサイトが増えましたね。

 ☆『イギリス王政復古演劇案内』(圓月勝博 編集/松柏社)
    シェイクスピアと現代演劇を繋ぐ時代の、演劇を取り上げたもの。

 ☆『水時計』(ジム・ケリー 著/東京創元社)
    モース警部のシリーズで知られるコリン・デクスターが
    大絶賛した新人のデビュー作。
    2006年に英国推理作家協会(CWA)図書館賞を受賞していますね。
    東京創元社さんの記事があります☆
    (こちら → http://www.webmysteries.jp/topic/0909-03.html

 ☆『北欧神話と伝説』(ヴィルヘルム・グレンベック 著/講談社)
    …大好きな訳者、山室静の名前を
    今の時代に見ることになるとは思いませんでした。
    原本は1971年、新潮社から出ていた北欧神話の入門書です。

 ☆『展示の政治学』(川口幸也 編集/水声社)
    14人もの執筆者がそれぞれの視点で語る
    「見せること」と「見ること」とは。

 ☆『ヒノキノヒコのかくれ家,人形のすきな男の子』
   (佐藤さとる 著/村上勉 画/講談社)
    サブタイトルは“もうひとつのコロボックル物語”。
    コロボックル物語誕生50周年を記念して
    シリーズ未収録の短篇を選んだもの☆

 ☆『精神分析講義』(ルイ・アルチュセール 著/作品社)
    当時学生だったフーコー、ブルデュー、デリダ、ドゥルーズを
    聞き手として行われた講義を収録したもの。

 ☆『オックスフォードヨーロッパ近代史』
   (T.C.W.ブランニング 編集/ミネルヴァ書房)
    19世紀と20世紀に大別し
    更にテーマごとに章立てしたヨーロッパの近代史。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『東京骨灰紀行』(小沢信男 著/筑摩書房/9月10日発売)

    明暦の大火から、震災まで。
    帝都、東京で焼かれた骨は数多く
    その白い粉は今も無数に埋もれたまま……

    本書は、そんな骨灰を
    その記憶を
    掘り起こしていくものです。

    本書については、林哲夫がブログで書いてくれています。
    それがこちら → http://sumus.exblog.jp/11886917/

    その記事によると、本書で鮮やかなのは
    その「音響」のイメージとのこと。
    内容も引用されていますので
    詳しくは先程のリンク先で読んでみてくださいね。
    小沢信男ならではの文章も健在のようです。
    ちなみに、著者の小沢は1927年生まれ。
    もう、82歳になります。

    ブログの主、林哲夫は画家です。装幀も手掛けています。
    最近では、筑摩書房のPR誌『ちくま』の表紙に
    今年の1月から絵を描いていますよね。
    その表紙の裏には「ふるほんのほこり」と題したエッセイも。
    チョコちょこの個人的なイメージでは
    こちらの古書の方が強いですね(笑)

    林も書いていますが、本書のような企画
    京都ならどんなものが出来上がるのでしょうか。
    骨灰の量は、その記憶は、東京の比ではないですものね。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『本棚の歴史』(ヘンリー・ペトロスキー 著/池田栄一 訳/白水社)

    人は、自分たちが図書館の棚に見つけられない本を書く

                   ジョージ・オーウェル

    ……………
 
    人は一冊の本を書くのに、図書館半分にあたる本のページをめくる

                   ボズウェル『ジョンソン伝』

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年9月28日 (月)

『眠られぬ夜のために 第一部』九月二十八日 より

全く気高い、そして同時に一般にいくらか感じやすい性質の人びとに対しては、彼らの宗教的または哲学的信念の、あるいはその道徳的生活のなんらかの欠点を、決してじかに非難してはならない。
それが正当であるかどうかにかかわりなく、彼らはそれをあまりに強く感じるからである。

……………

人が彼らに対する信頼や尊敬をなくしてしまったと思うと、彼ら自らともするとそれらをすてかねない。
そのために、口では言えないほどのひどい損失が生じる。
多くの両親や教育者たちはこのことを十分に理解していない。
そしてあとになって、一人の気高い生命の廃墟の前に暗然と立つことになるのである。

『眠られぬ夜のために 第一部』(ヒルティ 著/岩波文庫)

2009年9月27日 (日)

ハーフィズとゲーテと『西東詩集』☆

たとえ世界が沈みはてようと、
ハーフィスよ、あなたとこそ、あなたひとりとこそ
わたしは競いあいたい! 快楽と苦痛は
われら双生の子らに共通であれ!
あなたのように愛すること、あなたのように酒めでること、
それがわたしの誇り、わたしのいのちであってほしい。

いざ、歌よ、おのれの火によって高鳴れ!
このわが歌は、より古く、また、より新しい。



『西東詩集』(『ゲーテ全集 2』(潮出版社収録)「ハーフィスの書」の中、「際限なく」でゲーテは高らかと歌い上げています。
ゲーテにとって、ハーフィズの詩集の形式は散文であってもなくても、それ程問題では無かったようですね。
その向こう側を、見て、引き寄せ、取り込み、自らの齢と重ねて吐露することが出来たのでしょう。
「解説」によればこの『西東詩集』、もともとのタイトルは「ペルシアの歌びとモハメッド・シェムスエディン・ハーフィズに絶えずかかわるドイツ語の詩集」だったそうです。
どれだけハーフィズの名を歌っているかは読んでいただければ、と思いますが…

ヨーロッパ(西)とオリエント(東)の邂逅。

その結果…



うたびとのことばは
楽園の門の辺をただよい、
ひそやかに戸を敲きつつ
永遠のいのちを常に乞い…

                    (同書「遁走」より)


そして、永遠の命を得たのは…少なくとも、今の日本ではゲーテの方になるのでしょうね。

2009年9月26日 (土)

ハーフィズのこと☆

随分と涼しくなってきたかな? って思っていたのに、日中は暑いですねぇ…
何かと忙しい季節ですが、皆さん、体調管理には十分気を付けて下さいね。

東洋文庫の『ハーフィズ詩集』(平凡社)なんて取り出したのは、野町の写真集『ペルシア』(平凡社)を見ていたからです。
この写真集の71pに、ハーフィズ(ハーフェズと表記されています。最近はこの表記の方が多いでしょうか)の廟に参拝する人々が写されています。
ハーフィズは14世紀の詩人。
イランで最も愛唱され、愛好されている詩人と断言しても、間違いありません。
石棺の上に散る美しい花びらや、周囲の人々を見ても、今なお愛され続けていることがよく分かります。
彼の廟があるのは、生まれ故郷のシーラーズ。
↓こちらです。

大きな地図で見る

抒情詩ガザルの最高峰と言われるハーフィズ。
愛を歌い続けた詩人の墓石には、次の詩が刻まれているそうです。(訳は東洋文庫336番から)



そなたと結ばれる吉報はいずこ、私は生命を
  捧げよう
私は天国の鳥、この世の罠から脱け出そう
そなたへの愛に誓い、私をそなたの奴隷と
  呼んでくれるなら
私は時間と空間の支配から抜け出そう
神よ、私が埃の如く消え去るまえに
導きの雲から雨を降らせたまえ
わが墓の傍に酒を持参し楽師を伴って坐れ
そなたの香りで墓から踊りながら起き上ろう
おお優美な動きの恋人よ、立ってその姿を見せよ
私は立って生命とこの世に別れを告げよう
老いたりとも私を一晩しっかり抱け
翌朝、私は若返りそなたの傍から起き上ろう
私が死ぬ日、そなたを見る一瞬の猶予を与えよ
ハーフィズの如く私は生命とこの世への
  想いを断とう




ゲーテの『西東詩集』は、このハーフィズの詩集の独語訳に深く感銘して生まれました。
ただ、この時のハンマー・プルクシュタル(Purgstall)による独訳は、散文だったようです。

日本では『ルバイヤート』の方がよく知られていますが、このハーフィズ、ゲーテとの読み比べなども含めてもっと親しまれてもいいのでは…そう思います。

2009年9月24日 (木)

『ハーフィズ詩集』476 より

幸福の朝の微風よ、そなたが知る目印で
必要と思う時、かの人の小径を通れ
そなたは秘密の部屋の死者、わが目は道で待つ
命令でなくお願いだからそなたが知ることを
  とく持ち来たれ
恋人に言え「わが貴い生命が消え失せた
後生ゆえそなたの生気を与える唇から
  そなたが知る人に与えよ」と
私は他人に知られぬようにこの文字を書いた
そなたも情を以て知るように読め
そなたの剣への想いはわれらには渇く者と水との話
捕虜を捕えたからには勝手に殺せ
そなたの金襴の腰帯に私がどうして希望を抱けよう
恋人よ、その腰にはそなたが知る繊細さがある
ハーフィズよ、このことではトルコ語も
  アラビア語もみな同じ
そなたが知る言葉で恋の話を語れ



『ハーフィズ詩集』(ハーフィズ 著/黒柳恒男 訳/東洋文庫)

2009年9月23日 (水)

書物って、不思議、不思議…☆

今読んでいるのが、ちくま学芸文庫になっている『書物の出現 上・下』(リュシアン・フェーヴル,アンリ=ジャン・マルタン 著)。
本当は再読な気がしますが、もう随分と前のことなので、内容はまるで覚えていません(笑)

そもそも、当時は文庫化されていなかったはず…

思えば、アナール派を意識し始めた本の一つかも知れません。


この本、本当に読みやすいですよね。
すらすらとページが進んでいきます。

写本から印刷へ。
紙の出現は?
活字は?
挿絵は?

興味深いエピソードが、次々と続きます。

知っているようでいて、実はあまりよく分からない本のこと。

その本を巡る、あれや、これや。

それらが繋がっていることの不思議。
それらを繋げてみせてくれる本書の不思議。

本が大好きな人なら、読んで決して損はない1冊です☆

2009年9月22日 (火)

圧倒されますね…写真集『ペルシア』☆

平凡社さんから出ている、野町和嘉の写真集『ペルシア』。

壮麗な廟。
人々の生活。
祈り。
遥かな過去。

様々なペルシアが1冊の本に凝縮されています。
1枚、1枚の写真に目が留まります。
じっくりと、じっくりと…
…圧倒されるままに、そこに映される「何か」へと心を沈ませていきます。

「ここ」にあるものは、「何」なのでしょうか。

意味を探るのではありません。
これらは、確かに存在しているのです。
既に存在しているものに、意味を与えるのではなく…
…ただ、「何か」を感じるのです。

心で。
体で。

…深い海の底へと、沈み込んで行くような感覚でしょうか。

温かく、全てを包まれて…


……「ここ」には、全てを超えた「何か」があります…




野町和嘉のサイト

2009年9月20日 (日)

世界史の鏡☆

2007年11月に、創業30周年を目前に企画されたのが「世界史の鏡」シリーズです。
企画したのは刀水書房さん。
先日の『ジハードの町タルスース』(太田敬子 著)で8冊目になります。
2年で8冊…
2012年(5年後)に全101巻完成という当初の計画は…流石に難しいでしょうね(苦笑)
今は「毎月刊行」という言葉に変わっています。

現場の歴史家たちが、自らの素材を通じて歴史を語る…そんな切り口の世界史、それが「世界史の鏡」です。
第1期51冊は、「地域」「国家」「都市」「情報」「環境」の5つの切り口から。
第2期50冊は、「宗教」「産業」「戦争」「生活」「歴史」の5つ。

第1期についてはタイトルと著者はもう決まっていますね。

こちらのサイトにあります。

一つ一つのタイトルは、こんな企画でもなければ脚光を浴びないような分野かも知れません。
でも、「個別の事実は、いつも世界史という鏡のなかに像をむすぶものだ」という考え方はとても素敵だと思います。
世界史は、歴史は、人間は、小さな小さな…その欠片が無数に集まって出来た、非常に大きな流れです。
一つ一つに目を向けて、先にある大きな流れさえ見失わなければ、それらを知っていくことは非常に稀有な、そして有意義な経験になるはずです。
それらが自らの中に積み重なって、積み重なって…「私」という個を創り、育み、更には歴史の一部へと変わっていくのでしょう。
大きな流れの中の、小さな泡ですらないかも知れません。でも、それは「無」ではないのです。
どんな事実であれ、事実である以上、或いは事実に近付こうとしたものである以上、それは「有」なのです。
それを残してくれる、今回の企画。
是非、最後まで続けてくださいね!

2009年9月18日 (金)

アルルの女、2つ…

二十歳のジャンが恋したのは、浮気者のアルルの女。


あの女がもらえなければ死んでしまう


そう繰り返し、家族は反対だったものの仕方無く結婚を。
ある日曜日、ジャンの父親のもとに一人の男。
彼は、女が自分の情婦だったこと、彼女の両親もそのことを承知し約束していたことを告げる。
父親は断念させる。
母親は慰める。

それからジャンは、アルルの女の話をしなかった。
だが、いつも彼女を愛していた。
他の男のものだったと聞いて、更に一層。
そしていつも悲しんでいた。

母親は泣きながら、女と添わすことを提案し…
…だが、ジャンは首を横に振って戸外へと出た。

それからジャンは、両親を安心させようと陽気な振りを。

だが、彼は苦しみ続けた…

聖エロアの祭日。
ジャンも楽しそうだった。
皆が浮かれていた。

翌日。

ジャンは窓を開いて、飛び降りた。


『風車小屋だより』(ドーデー 作/岩波文庫)の一篇、「アルルの女」。
文庫で6ページと1行の小品。

後にこの作品は、パリにあるヴォードヴィル座からの頼みで3幕5場の戯曲となり、ジョルジュ・ビゼーによって音楽が付けられました。(『アルルの女』(ドーデー 作/岩波文庫))

この2つの「アルルの女」について触れているのが、『シャンソンはそよ風のように』(三木原浩史 著/彩流社)です。
三木原は本書第1部第2章で書いています。
戯曲版「アルルの女」は、台本としても文学としても失敗作だと。

戯曲「アルルの女」は、登場人物が増え、名も無い人物に名が与えられ、話は重ねられて組み上げられています。
そのため、視点がぼやけてしまったことは否めません。
その意味で、三木原の書いているとおり、小説版と戯曲版とでは、小説版のほうが遥かに優れています。
短い文章だからこそ、直接胸に響いてきたものが、戯曲では失われてしまいました。
ドーデーの『風車小屋だより』は、フィリップの『小さき町にて』同様、短いからこそ名作として生涯の友となりうる作品なのです。

ですから、三木原が続けているように、「アルルの女」という呼称は、ドーデーの戯曲としても小説としても残らず、ビゼーの組曲としてだけ思い出され続けるだろう、とは思いません。
『風車小屋だより』の中でも、「アルルの女」は記憶に残る作品の一つです。
この小品そのものは、決して悪いものではありません。
ましてや『風車小屋だより』が忘れ去られることはないでしょう。


南フランスは、プロヴァンス。
その地の人々の生き様を、小説で、音楽で。
夏の名残りを惜しみながら、輝いていた太陽と共に思い浮かべてみるのも一興かも知れません。

2009年9月16日 (水)

中国の人狼…『子不語』から☆

以前、ベアリング=グールドの『人狼伝説』(人文書院)に少し触れていましたが、人が狼に変身するのはヨーロッパに限りません。
今度、東洋文庫から刊行が始まった『子不語』(袁枚 著/平凡社)の中に、そんなお話があります。
しかも、変身するのは70余歳になる老婆。
…実は、魔女伝説に近いかも知れません(笑)

広東省に住む、孫という名の老婆は、ある日突然両腕に毛が生え出し、次第に腹や背、掌にまで及び、背は曲がり、尾まで生えたかと思うと白い狼になって家を飛び出してしまいました。
でも、子孫が気になるのでしょう。人の心を失わず、一月ないしは半月毎に必ず家に戻ってきては、今迄どおり飲んだり食べたりしたそうです。
でも、近所の人はそれを嫌がって人狼を殺そうとします。
息子の嫁が、そのことを伝えると、以後、狼は二度と戻ってこなくなったそうです。

とても短いお話。
『中国古典文学大系 42』(平凡社)の中の『子不語』で読むことが出来る「40 狼になった老婆」です。

なお『子不語』のタイトルは、『論語』の「子不語怪力乱神」に基づいたもの。孔子が語らなかった怪談話をわざと集めたものの意です。
でも、実際には集めた話だけではなく、創作も混じっているとのこと。
例え創作だとしても、人が狼になる話は中国にもきっと、もっとあるのでしょうね。

2009年9月15日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.32

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.32  2009.9.1

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    いよいよ9月。

    今日は二百十日、春が立ってから210日目になります。
    今年は本当に、台風11号が接近していますね。

    自然災害による被害が頻出している昨今
    今月末にピークが予想されているインフルエンザにもそうですが
    自らをあまり恃まず
    慎重に、謙虚に生きていかなくては…そう思います。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、8月18日以後の新刊です。

 ☆『哲学者たちの死に方』(サイモン・クリッチリー 著/河出書房新社)
    “哲学者たちから死を学ぶ。死に方から哲学を学ぶ”とは帯の言葉。
    190人以上、古今東西の哲学者の臨終を知ることで見えてくる
    本当の哲学です。

 ☆『江戸の庭園』(飛田範夫 著/京都大学学術出版会)
    大名庭園だけではなく
    町民・農民の庭や植木屋にもスポットを当てたもの。

 ☆『反射望遠鏡の作り方 復刻版』(星野次郎 著/恒星社厚生閣)
    著者は非常に精度の高い凹面鏡の製作者として知られています。
    これ1冊で必要なものは全て記され、これ以上のものも出ていない
    最高の名著の復刊です☆

 ☆『百年のチャランケ』
   (「アイヌ民族共有財産裁判の記録」編集委員会 編/緑風出版)
    こんな裁判があったことを
    日本人として知っておく必要があるのではないでしょうか。
    …この裁判は、昔の話ではありません。

 ☆『忘れられない脳』(ジル・プライス 著/ランダムハウス講談社)
    8歳頃からの全ての記憶を、忘れられない人生……
    …ゾッとしてしまいますね。

 ☆『データ同化』(淡路敏之 編/京都大学学術出版会)
    天気予報などで使われる
    観測データと数値モデルとを組み合わせる「データ同化」について
    基礎から具体的な活用までを記したもの。

 ☆『色彩の表記』(アルバートH.マンセル 著/みすず書房)
    マンセルと言えば
    「色相・明度・彩度」の3つで色を表現するシステムで有名ですよね☆

 ☆『流れる山の情景』(浜田優 著/山と溪谷社)
    詩人が語る、新しい形の山岳書になっているのでしょうか。

 ☆『猫の町』(ナリ・ポドリスキイ 著/群像社)
    猫を愛していた人々が、猫インフルエンザのウイルスを見付けた途端…
    30年前の作品ですが
    内容は何だかつい最近の出来事を思い出してしまいます。

 ☆『生と死のコモンセンスブック』
   (エドウィン・シュナイドマン 著/金剛出版)
    シュナイドマンと言えば「自殺」ですが、その彼の遺作が本書になります。
    自殺予防だけではない、より広く「死」そのものまでも見すえた思索の書。

 ☆『もつれた蜘蛛の巣』(モンゴメリ 著/角川書店)
    かつて篠崎書林から出ていたものの復刊でしょうね。
    『青い城』に続く
    “モンゴメリの幻の名作文庫化第2弾”(HPより)です。

 ☆『研究をささえるモデル生物』(吉川寛 編/化学同人)
    生物学の研究に欠かすことのできないモデル生物。
    その研究の歴史と、これからの可能性。

 ☆『技術ブランド戦略』(高井紳二 著/日本経済新聞出版社)
    優れた技術の優位性を維持するための、ブランドの構築について。
    HPによれば“実戦的な技術の育成・管理の書”だそうです。

 ☆『石窯づくり早わかり』(須藤章 著/創森社)
    創森社さんは、表紙を見るだけで分かる版元の一つですね(笑)

 ☆『乱造される心の病』(クリストファー・レーン 著/河出書房新社)
    本書については、HPの紹介文をそのまま引用しましょうか。
    “巧みな広告戦略で普通の人々を精神障害に仕立て上げ
     恐ろしい向精神薬で巨利を貪ろうとする精神病産業の実像に迫る”
    …思わず、唸ってしまう内容ですね。

 ☆『忙しい死体』(ドナルドE.ウェストレイク 著/論創社)
    ドナルド・E・ウェストレイクはアメリカの著名なミステリ作家。
    多作家で、今更な気もしないでもないのですが…初訳だそうなので。

 ☆『図説西欧の修道院建築』
   (ヴォルフガング・ブラウンフェルス 著/八坂書房)
    1974年、鹿島出版会さんから出ていたものの復刊、改題改訂です。
    図版や一次文献を駆使して、修道院の建築だけでなく
    様々な背景までもを語った名著。
 
 ☆『宇宙137億年解読』(吉田直紀 著/東京大学出版会)
    UT Physicsの第6巻。
    宇宙はどのように形成され、将来はどのようになるのか。
    観測結果とシュミレーションによる、宇宙の歴史。

 ☆『ザ・パニック』(ロバートF.ブルナー 著/東洋経済新報社)
    …真相かどうかは、別かも知れません。
    ただ、1907年金融恐慌において
    巨大財閥を築いていたJ・P・モルガンが
    当時どのように行動したのかは興味がありますね。

 ☆『奇想天外な科学実験ファイル』(アレックス・バーザ 著/エクスナレッジ)
    読み物として、楽しめそうですね。
    ただ、この視点は未来から振り返っているからこそ、です。
    真面目になされたのであれば
    奇想天外は決して間違ったものではありません。

 ☆『ゾティーク幻妖怪異譚』(クラーク・アシュトン・スミス 著/東京創元社)
    ラヴクラフト、ブラッドベリ、ムアコック…
    C・A・スミスの周囲には、よく知られた名前が行き交います。
    美と頽廃が鬩ぎあう大陸、ゾティークを巡る物語を全篇収録。

 ☆『冷泉家・蔵番ものがたり』(冷泉為人 著/日本放送出版協会)
    こういった読みやすいものから
    冷泉家について知っていくのは、良いことでは。

 ☆『定本日本浪曲史』(正岡容 著/岩波書店)
    “唯一の浪曲通史であり浪曲研究でもある名著”とはHPから。
    しかし、384ページで、11,550円(税込)とは…(苦笑)

 ☆『消えちゃったドラゴン』(パトリシアC.リーデ 著/東京創元社)
    『囚われちゃったお姫さま』の続篇です☆

 ☆『史上最大の伝染病牛疫』(山内一也 著/岩波書店)
    ペストをしのぎ
    世界の歴史を変えるほどの災厄をもたらした感染症、牛疫。
    4000年にわたる、その牛疫根絶までの歴史を描いたもの。

 ☆『大不況下の世界 改訂増補版』
   (チャールズP.キンドルバーガー 著/岩波書店)
    1982年に東京大学出版会から出ていたものの、改訂増補版。
    大恐慌の発生と長期化について述べた
    経済学者キンドルバーガーによる名著。

 ☆『書肆ユリイカの本』(田中栞 著/青土社)
    現在の青土社さんの雑誌「ユリイカ」へと繋がる出版社、書肆ユリイカ。
    本書の著者のサイトがあります。
    (こちら → http://blogs.yahoo.co.jp/azusa12111
    東京古書会館では10月4日から「書肆ユリイカの本」展も開催されます。    入場無料ですので、よろしければぜひ☆

 ☆『ウォール・デコAtoZ』(トーソー)
    カーテンレールのトーソーが出している本。
    インテリアの実例写真集は、綺麗ですよね♪

 ☆『犯罪の生物学』(D.C.ロウ 著/北大路書房)
    生物学的犯罪学は、なかなか知られる機会がありませんでした。
    本書はその最近の成果を紹介したもの。

 ☆『孤高』(川村二郎 著/東京書籍)
    去年、亡くなられた国語学者大野晋の評伝です。

 ☆『紛争管理論 新版』(レビン小林久子 編訳/日本加除出版)
    裁判外紛争解決手続(ADR)についての本。
    原書37章のうち、16章を抜き出しての翻訳です。
    ちなみに、ADRについては国民生活センターにサイトがあります。
    (こちら → http://www.kokusen.go.jp/adr/index.html

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『反射望遠鏡の作り方 復刻版』
  (星野次郎 著/恒星社厚生閣/8月18日発売)

    恒星社厚生閣さんは
    HPでは1922年(大正11年)の創業になっていますね。
    でも、これは厚生閣さんの創業のようです。
    今の恒星社厚生閣さんになったのは
    国立国会図書館の検索結果からすると
    1944年(昭和19年)でしょうか。
    水産学・自然科学系の厚生閣さんに
    名前そのものからも明らかな、天文学の恒星社さんが加わって
    現在の恒星社厚生閣さんの出版内容が出来上がりました。

    その、得意分野の一つである天文学。
    そこから素晴らしい本が復刻されました。

    それが本書『反射望遠鏡の作り方』です。

    天文界には製作者の名を冠した名鏡が幾つかあります。

    木辺宣慈(成麿)の木辺鏡。
    池谷薫の池谷鏡。(彗星の発見者として有名ですね)
    苗村敬夫の苗村鏡。(こちら → http://www.biwako.ne.jp/~namura/
    遡れば中村要の中村鏡もありますね。

    そして、星野次郎の星野鏡です。    

    星野次郎は12年前の1997年、9月に亡くなられました。
    蒸気機関車や蒸気自動車の製作で、ご存知の方もおられることでしょう。

    帯にある言葉。
    “「星野鏡」復活!”

    この言葉に胸を熱くする人も多いはずです。

    1974年の発行当初からみれば、古くなったデータもあります。
    ですが、自らの手で磨き上げ、その工夫や経験を書き込んだ本書は
    自作だったからこその、今でも基本的で重要な情報の源となっています。

    もう一度、書きましょうか。

    “「星野鏡」復活!”

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『ロンサール詩集』(井上究一郎 訳/岩波文庫)

   マリーへのソネット

    マリー、起きなさい、寝ぼうな子、
    あげひばり、はや空に、声ふるわせて名告り出た、
    うぐいすは、さんざしにきて、もう告げている、
    あまい声で、恋のなげきを。

    さあ、起きるんだ、見にゆこう、玉敷く小草、
    あなたの美しいつるばらのつぼみの宝冠、
    ゆうべ、かいがいしい手から水をもらった
    かわいいあなたのなでしこを。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年9月14日 (月)

「アルクメネ」を読みながら…『冬物語』より

カーレン・ブリクセンの『冬物語』を手にしたのは、朝晩がめっきり涼しくなったから…ではありません。
筑摩書房から渡辺洋美の訳で出ている本書ですが、ふと、その表紙の絵を思い出したからです。

巨木の許で、佇む男と女。
画面の中央に浮かび、男女が共に見つめているのは、月です。
タイトルは「Man and Woman Contemplating the Moon」。

先日、角川学芸出版さんから新刊も出ましたね。
『フリードリヒへの旅』(小笠原洋子 著)。
この絵の作者が、そのフリードリヒ(Caspar David Friedrich)です。
よく知られているものではありますが、この『冬物語』のどこを捜しても表紙の絵については言及されていません。
日本では、恐らく名前よりも絵そのものの方が目にされる機会が多い…ある意味でフリードリヒは不遇な画家かも知れません。


カーレン・ブリクセンは、イサク・ディーネセン(=アイザック・ディネーセン)と同一人物です。
デンマーク語と英語で作品を発表し、それぞれの言語や意味に合わせて書き換えをする為、同一作品でも細かい部分ではそれら二ヶ国語を重ねて読んでみないと著者の意図が汲み切れないという、困った作家です(笑)
本書でも原書はある意味では存在せず、「Vinter-Eventyr」と「Winter’s Tale」の二ヶ国のタイトルが併記されています。

『冬物語』は、そんな彼女の作品でもデンマークでよく親しまれているもの。
作者自身の自伝的要素を色濃く反映している作品です。

運命と自由。
憧れと悲しみ。

中の1篇、『アルクメネ』はそんな作者の少女時代を映したものです。
「あとがき」で訳者は書いています。



自分が自分であるような人生を送ることができなかった場合は死より悪い。
アルクメネのように本来の生き方をはばまれ、運命から身を引いて、安全な生活に埋没してしまうところにはどんな救いもない。



どうして、自分を行かせてくれないのか。
どうして、自分を愛情から解放してくれないのか。
どうして、自分は追い出されないのか。確かに、彼がしたような地獄落ちに値する行為をする度胸はないけれど…

アルクメネはあまりに善良な人々の元で育った為に、孤独の儘、自分が自分であるような人生を送ることは出来ませんでした。


自分が死なないかぎり、逃げ道はなかったのよ


でも、彼女は死ぬことも出来ませんでした。それは、自分を育ててくれた人々に抵抗する行為だったから。
…訳者はそんな人生は、死よりも悪い、と書いています。
どんな救いもない人生だと。

アルクメネは、人生を安全に終えるよりも、自ら死を選んだほうが良かったのでしょうか…

訳者は「あとがき」で続けます。



自分が作られたとおりにのびやかに生きることをはばまれたという、作者の少女時代の思いは、デンマークの片田舎で育つ少女アルクメネに託されている。
『アルクメネ』の物語では心残りを埋め合わせるかわりに、皮肉な意外な末路を用意している。
いわば過去に復讐してやったというべきか。



「皮肉な意外な末路」…それは人里離れた農家で羊を飼って暮らすこと。運命に抗うことをやめた、「安全な生活」への埋没そのものです。

実はこの最後の場面に、アルクメネ本人は出てきません。
ですから、かつての少女がその暮らしをどのように感じているのかは、結局、読者には明かされません。


老いた養母のために、シュミーズも着けずに倹約し続けるアルクメネ。

…皮肉かも知れません。
復讐なのかも知れません。

著者はひょっとすると、訳者が述べているとおりの意図でこの短篇を書いたのかも知れません。


……でも、チョコちょこは思うのです。
アルクメネの生き方の、どこが死よりも悪いのか。どこが、救いが無いのか。
「死よりも悪い」ことなど、それ程多くはないのです。
彼女の生き方の、どこがいけないのでしょう。
死にも悲劇という勝利がある…訳者は別のところで、そうも書いています。
でも、概念としてその存在は認められますが、チョコちょこは少なくとも、アルクメネにそんな死を求めません。
バベットは生き延びず、パリに残って死を待っていた方が良かったのでしょうか。


自分が自分でない人生なんて、ないのです。
どんな生き方をしていても、そこで生きているのは「自分」です。
アルクメネは運命に負けたと感じている…でも、負けた自分も「自分」です。
自分が自分であることと、自分が運命に勝つこととは別のものです。
運命に負けても、自分の人生を送り続ける限り、救いはあります。
チョコちょこは、そう思っています。

2009年9月12日 (土)

棚差し風のサイトを見ながら…

みすず書房さんのように、棚差ししたような画像で本の背を並べて見せるサイトが増えてきましたね。
僅かなスペースに多くのリンクが張ってあるようなものですし、何よりも実際の書架を見るような雰囲気が結構お気に入りだったりします。

でも、かつては背にタイトルも著者も記入されていない時期がありましたし、本に鎖をつけていた頃は小口を外側に向けて並べていたそうです。
どんなに楽しくない棚の面だったことでしょう!

そんな図版も含めて見ることができるのが、『本棚の歴史』(ヘンリー・ペトロスキー 著/白水社)。

色々と、面白いエピソードが並んでいます。

例えば、本がぎっしりと並んでいる時には、表紙が破れることもあるので“指を本の背の上端に引っかけるな”といった警告がなされていたこともありました。
では、どうやって本を取り出すのか。
本の左右を押し分けてから、そっと引き出すのだそうです。
…素直に謝らなくてはいけませんね。普通に、チョコちょこは指を本の上端にかけて引っ張っています(笑)


普段は見えていない、でも必ず見ているはずの本棚。

そんな本棚について、少しだけ親しんでみませんか?
The Book on the Bookshelf はきっと、楽しいお話を聞かせてくれると思いますよ☆

2009年9月10日 (木)

『シャンソンはそよ風のように』第2部第3章 より

  私のノルマンディー


三、
   人生には、年齢がある
   それぞれの夢が終わりをつげねばならぬ年齢が、
   魂が、物思いにふけりながら
   思い出にひたるべき年齢が。
   私の詩神が冷淡になり
   恋の歌をやめてしまったとき、
   私は私のノルマンディーを再訪するだろう、
   ノルマンディーは、私の生まれた故郷なのだ。



『シャンソンはそよ風のように』(三木原浩史 著/彩流社)

2009年9月 9日 (水)

『内面の記録』(抄)より

書いていると、時々、わたしを魔法にかけ、酔わせ、いい気持にさせて、眠りを誘う魅力のある二、三の詩句に出会うことがある。
わたしはすっかり音楽にのってしまい、それ以上考えることも、出てくるはずの言葉を引き出すこともできなくなる。
書くのをやめて、気晴らしをし、わたしが囚われている歌から自由になり、わたしの作品の意味を再び把握するために努力しなければならない。
そうしないと、全てが沈黙のうちに消えてしまう。



『マリー・ノエル詩集』(田口啓子 編・訳/小沢書店)収録

2009年9月 8日 (火)

選書について(3) ~本を選ぶということ~

利用者のニーズを考えて選書していく場合、どんなキーワードが考えられるでしょうか。
今までと同じように、箇条書きにしてみましょうか。

1.その図書館で人気のある(問い合わせのある)著者のもの
  カウンター業務での経験が最も有効なもの
  ベストリーダーや貸出回数といった統計を参照するには
  集計期間を短くし、それでも差が顕著に出るほどの
  総貸出冊数がある図書館でなくてはなりません

2.一定以上の予約者がある作品
  所謂、複本としての購入です

3.世間一般において評判が高い作品
  以下のものが一般的な参考情報でしょうか
   ・新聞広告
    いまだに、利用者にとっては最もポピュラーな情報源です
   ・テレビ番組での紹介
    特定番組での紹介は、驚くほどの効果があります
   ・書評
    以前よりも影響力は少なくなりましたね
   ・書店や取次での売上げランキング
   ・読んでみたい作品のランキング
    Webならでは、ですね
    ライトノベルをはじめとする、子どもから若者までの
    興味が分かります
   ・出版部数
    返本があるので、あまり当てにはなりませんが
    利用者にその理屈は分かりません
    部数が多い=人気が高い という図式で
    その広告効果はまだまだ高いでしょう

4.受賞作品、受賞者
  直木賞や芥川賞は、半年程度の効果は見込めます
  ノーベル賞もまだ大丈夫でしょう
  その他の賞については、図書館側の宣伝が必要ですが
  「受賞」の文字の効果は高いでしょう

5.映画化、ドラマ化される作品とその著者
  期間が限定的ですが、ニーズは意外と高いですよね
  だからこそ、書店でもよくこの手のフェアは常設されています

6.リクエストされた作品
  ただし、直接リクエストする利用者は「積極的」利用者です
  隠された利用者の要求を無視したり圧してまで
  リクエスト作品を優先するのは危険です


課題図書に読書感想文、宿題、卒論、塾が作った本のリスト等々、思いつくものは他にもありますが、大凡はこんなものでしょう。


蔵書を念頭においた選書を5~6割とするのであれば、利用者のニーズに即応して戦略的に投資する本の購入割合は4~5割となります。
一般的には(ある程度の年数を経た図書館では)既刊本がその内の2割を占めているでしょうから、実際に新刊として選書、発注するのは2~3割程度だと思います。

…となってくると問題となるのは、果たして既刊本の選書、発注を図書館ではどの程度行なっているのか、ですよね。
リクエストは恐らく半月や一ヶ月といった特定の期間で集計して、選書しておられることでしょう。
その他については、選書する者がどれだけアンテナを張っているかによりますね。
しかもアンテナに捉えたものを、選書対象として挙げていく必要が出てきます。
戦略的、と書いてきましたが、それだけの気概を持って選書していく職員が既刊本を挙げなくては、この利用者のニーズに応える選書の部分は新刊ばかりになってしまいます。
ところが、新刊には数としての上限があります。(例えば、毎週の選書であれば一週間分の出版数がその上限になりますよね)
限られた中から、それでも選ぼうとした時…そこには、選者自身の好みや趣味が影響してくる可能性があります。

前回から割合を示しているのは、その点で購入計画を立てられるのでは、と思うからです。

分かりやすく毎週の購入予算を10万円とします。
本来は購入冊数から推測した割合ですが、それを金額に置き換えてしまいましょう。
一般書は全資料の7割が目安ですから、7万円の枠になります。
そのうち、リクエストや既刊本に2割、およそ1万5千円(7~8冊程度)、最初に確保しておきます。
基本書など、(2)で挙げた蔵書の基礎となる選書に4万円。
ニーズを見込んだ戦略的投資に1万5千円。
その後、確保していた1万5千円で既刊本の選書に移り、全体を調整します。

実際に金額を当ててみて…どうでしょう? それ程無理のある購入計画には思えないのですが。
利用者として、納税者として、常識として納得出来る程度のものに見えます。


…そうなのです。
忘れがちなのは、これらは「税金」での購入だということです。

つまり、図書館を利用しない住民にも、納得出来る選書や購入でなくてはならないということ。
リクエストや利用者のニーズに応えること…それは確かに、図書館の数値的評価に貢献したり、貸し出しを増やしたりはしてくれるでしょう。
でも、それは住民全体からすれば、ごく限られたニーズへの対応でしかありません。
税金で一部の住民が個人的に欲しがっている物を購入している…そう思われては困るのです。

不景気になればなるほど、利用者の要求は高まります。
限られた予算でその要求に対応出来なくなりそうなのであれば、リクエストを受け付けない、という選択も必要となってきます。
他の行政サービスと比較すれば、リクエストの受付拒否など何も問題ではありません。あちこちの福祉施設が、サービスを停止している昨今です。

この(3)で挙げている戦略的投資は、不景気の時には非常に精査される部門です。金額的に0になっても、実は問題はありません。「貸出」が図書館業務の一部でしかなく、土台となる基本書さえあれば、図書館サービスは続けることが出来るからです。
ニーズがあるから工場の一部レーンのみで機械を増やし、増産する。でも、それは収益の多くを圧迫したり、生産物の価格低下を引き起こしてまでするものではありません。確実に一定量の販売が見込めるレーンだけを故障なく、欠陥品を少なくして生産し続けることが企業の収益増加と信頼性の向上に寄与することも多いのです。
ですから、もう一方の設備投資は、縮小しても決して0には出来ないのです。そんな工場は将来潰れるだけです。図書館も、一度0にしてしまうと、再出発するにはかなりの投資が必要となるでしょう。


図書館は警察や消防といったものと比較すれば、利用が少なくても絶対に必要な部門である、とまでは言い切れません。
ですから、利用を高めようとすること、それ自体は大きな間違いとまでは言えないでしょう。
ただ、では、何故、無料なのか。(有料化した時の貸与権については、置いておきましょう(笑))
つまりは「知る権利」の確保のためであり、図書館が社会教育施設の一つであるということ。公民館の施設利用が減免されるのであれば、図書館の入館や資料の利用も無料であるべきだろう、ということ。
でも実際には、図書館が存在しない市町村もあります。
その地域の住民の「知る権利」はどうなるのでしょう?
基本書を揃えた図書館が存在する、それだけで実は「知る権利」の確保はなされているとも考えられるのです。
たとえ、利用が全く無くても、です。
そのための「無料」なのです。
必要な時に、誰でも利用出来るようになっていればいいのです。
自治会費で管理運営している集会所を、自分は利用しないから自治会費をもっと減らして欲しい…これは論外です。集会所は、自治会にとっては必要なものです。その個人が利用するかどうかは関係がありません。でも、誰であっても使う時には無料なのです。使用する機会も条件も平等なのですから、使えるのに使おうとしないのは、その個人の問題なのであって、自治会費や集会所の存在の有無が問題なのではありません。
図書館も同じです。存在の有無は政策的なものであって、利用そのものは個人の問題であり、大切なのはその利用する機会が平等であるということなのです。
だからこその「無料」なのです。


税金の有効利用として、利用促進を図ることは間違っていません。
ただ、その利用を高める為に税金を投入し続けることは、間違いなのです。
集会所の利用促進のために、自治会費で集会所の設備を豪華にしたり、頻繁に備品を買い換えたりしていたら、それは無駄でしょう。

本来、その地域における図書館の役割は何なのか。
何処までを求められているのか。

その説明が出来なくては、図書館を利用しない住民は利用者のニーズに偏りすぎた選書を是とはしないでしょうね。

2009年9月 7日 (月)

選書について(2) ~本を選ぶということ~

まず本を選ぶにあたって考えることは、今現在の蔵書についてでしょう。


…あれ? と思うかも知れません。

まず考えるのは今現在の利用者のニーズではないのか、と。

でも、公立図書館の場合、使われるのは税金です。水道事業や焼却場、学校等の建設もそうですが、税金は「今現在」のためだけに使われるものではありません。
無料の原則はあるものの、「今現在」のニーズだけに応えるのであれば、受益者負担として利用者に負担を求めることが本来です。
税金の使い方には未来への投資(企業の設備投資と同じ理念ですね)も含まれています。

ですから、考慮する問題としては、その図書館の蔵書の構成に極端な偏りはないのかどうか。基本的な図書は揃っているのかどうか。或いは設立理念としての重点購入分野があるのであれば、その達成度といったものも考えられます。
工場で考えるのなら、次に買い換えるべき機械は何か。増やすべき機械はないか。工具は揃っているのか、といったようなものです。

基本的な素地があってこそ、効率化や利用の促進は図れます。

極端に小説が多ければ、その購入は控えなくてはならないでしょう。
哲学や理数系の蔵書が少ないのなら、重点的に購入することも考えなくてはなりません。
料理本や旅行ガイドといった、破損が多かったりこまめな買い替えが必要なものは、予算さえ許せば定期的に購入が必要でしょう。
極端にペンチが多いのであれば、その購入費は他に回すべきです。
ボルトが足りないのなら、各種サイズのボルトを重点的に購入すべきです。
ゴム製品は劣化が早いので、定期的に新しいものに変えていかなくては危険です。

これらは利用者のニーズ、消費者の動向とは関係のない、もっとその土台となるべき部分です。
購入計画の基本である「選ぶ」という行為も、その土台作りから始まります。戦略的投資はその後のことです。


それでは。

(1)で挙げた選書のための情報を見ながら、実際にはどのように選んでいくか、次に箇条書きにしてみましょう。

1.名著、古典であり、図書館として利用の有無に関わらず
  所蔵していなくてはならない基本書
  司書が選書するのであれば、その知識が最も発揮される部分でしょう
  作品や著者がキーワードであり
  受賞の有無は無視できるレベルでの「基本」

2.今後、恐らく二度と出版されることはないであろう内容のもの
  話題性が問題なのではなく
  レファレンスツールとしての役目が担えるもの

3.復刊されたもので旧版を所蔵していないもの
  復刊されたこと自体
  出版社や読者がその本の保存を求めているという目安になります

4.増補版、改訂版で、旧版の利用度やツールとしての価値が高いもの

5.所蔵数が少ない分野のもので、次のようなもの
   ・著者や出版社が信頼できるもの
   ・信用性の高い賞を受賞しているもの
   ・主題がはっきりと分かるもの
    (所蔵数が少ない=職員に選書する知識や能力が無い
     =購入してもツールとして使えない
     といった図式であれば
     検索して簡単にヒットするような
     或いは、棚で背を見てすぐに内容が分かるような
     そんな主題、タイトルが望ましい)
   ・装丁の質が良いもの(出版社の力の入れようが分かります)

6.破損等の理由で、買い替えの必要性が高いもの

7.シリーズの欠本や続刊
  ただし、これは途中で止める勇気が必要なことも多い

蔵書を念頭におくと、この程度でしょうか。選書で考慮していく順番も大凡こんなものでしょう。

一番難しいのが、この1.の基本書です。
何が、その図書館にとっての基本書なのでしょう?
例えば、『フィネガンズ・ウェイク』は? 『失われた時を求めて』は? 『国史大系』は? 『群書類従』は? 『大日本古文書』は?
これらの本についての知識は、住民を代表して(仕事として)選書するのですから当然あるものとしています。
問題は、どこまでを基本書として扱って選書するか、ですよね。
決め手は住民の数でしょうか。教育のレベルでしょうか。
そうではなくて、実際には蔵書の規模(冊数)によるのではないでしょうか。
5万冊、10万冊規模で『大日本古文書』は必要が無いでしょう。必要が無い、とまで言い切るのが問題であれば、同じ冊数で他の基本書を揃えるべきと言った方がいいでしょうか。
『国史大系』と『大日本古文書』では、基本書の「基本」の重要度が異なります。一般的には『国史大系』の方が重要でしょうから、そちらから優先して選書、購入していきます。
規模によって収蔵能力が定まっているのですから、このように基本書の中での優劣を決めていくと、結局『大日本古文書』まで購入する能力はなくなることになります。
逆に言えば、図書館の規模が基本書の範囲を決めてしまっているのです。

続いての2.ですが、これも難問ですね。
例えば先日の新刊に『飛行機設計入門』(片柳亮二 著/日刊工業新聞社)がありました。
飛行機の設計の本は珍しい。でも、専門的なのでは?
実務や勉強に、ということであれば確かに専門的と言えるかも知れません。問題は、では何故機関車の設計や建物の設計は既に所蔵しているのに、飛行機だけは「専門的」と判断するのか、です。
飛行機を趣味とする人は、鉄道を趣味としている人よりも少ないでしょうが、無ではありません。本としての出版数が少ない分野だと思うのであれば、確かな内容のものであれば1,2冊だけであっても購入しておくべきです。その本に興味を持って手にする利用者が、或いはその本の内容で回答できる質問をする利用者が、10年に1人くらいはいるかも知れないのです。
住民財産としての本、という意味では、所蔵し続けることこそが未来への投資であり、税金としての有効活用でもあるのです。

残りは特に問題のない内容でしょうか。
7.のシリーズの欠本等ですが、全てのシリーズを揃えることは難しいでしょうから、どこかで購入を止める必要が出てきます。これら長期化しそうなシリーズものは、一番最初の選書が肝心でしょうね。


この、土台となる蔵書から考える選書の割合ですが、幾つかの図書館の蔵書構成を見る限り、5~6割程度でしょうか。金額でなのか、購入冊数でなのかは難しいですが、今挙げた感覚的な割合は目で見えるもの、つまり購入冊数での割合です。

ただ、備品として購入する以上、除籍・廃棄を念頭におくのであれば、各自治体によってその割合は増減します。
除籍を否とするところでは、この部分の割合を多くしなくては、ベストセラー本ばかりが書庫に残り続けてしまいます。
逆に除籍が定期的に可能なのであれば、割合は低くても除籍本の選定時に残していけば結局は土台は守られます。

また、一般的に既刊本の購入は全体の2割とされていますが、1.の基本書や5.の蔵書構成の是正、6.の買い替えの一部などは既刊本での選書、発注になるでしょう。
新しい図書館であれば、まだまだ蔵書構成が整っていないでしょうから、当然、既刊本の発注が増えるはずです。ただ、ある程度の年数(5~10年)が経過した図書館では、既刊本の発注は次に考えていく利用者ニーズに即したリクエスト等で占められることになります。



それでは、その利用者のニーズ。それを把握しながらの選書、戦略的投資について次は考えてみましょうか。
それについては、次回の(3)で。

2009年9月 6日 (日)

選書について(1) ~本を選ぶということ~

このテーマは、書きたいことがいっぱいあるので、きっと2,3…と続いていくことでしょう(笑)


図書館での選書について。

ここでは、身近な市町村立図書館を念頭において書いてみます。
大学図書館や専門図書館、都道府県立図書館はそれぞれの役目が一般の利用者からは少し離れてしまうので、省くつもりです。

…でも、そこまで厳密に分けられるかどうかは不安でもあります。

理由は、別ブログの『図書館に、あったらいいな☆』。
このブログでは毎日の新刊からそのタイトルどおり、図書館にあったらいいと思うものをメモしているのですが、これも一つの選書の結果です。
でも実はこのブログで選んだもの、なかなか実際には市町村レベルの図書館では購入してもらえていません。多くは都道府県立図書館のレベルのようです。いえ、そこにすら無いものもありますが…
かと言って、選んだものの多くが悪いものだとは思っていません。
その差は何なのでしょう? それを探るためにも、このテーマで少し書いてみたいと思うのです。

では、始めてみましょうか。


まず、本を選ぶにあたって、前提となるものが幾つかあります。

1.税金で購入するということ

2.利用者の登録条件については各館で異なりますが
  多くはその設立主体である市町村の住民を
  利用者の中心として念頭においているということ

3.消耗品としての購入なのか、備品としての購入なのか
  これも各館で状況は異なりますが
  数が多い中規模から小規模の図書館では
  本の多くは備品扱いとなっていることでしょう

4.郷土資料や視聴覚資料、児童図書といった
  種類・分野によって選び方が異なるものもありますが
  ここでは購入の大半を占める成人向けの一般書を基準とします

5.直営、委託、指定管理に関わらず
  図書館運営に携わる職員(司書に限らず)が選ぶということ
  通常は、複数人が参加する選書会議を開くでしょう

6.見計らいやそれに準ずるもの(TRCのベル等含む)は
  その本の大半の購入を前提としているため
  「選書」の対象とはみなしません

7.予約、相互貸借、リクエスト等のサービスは
  図書館によっては明確な区別を行っていないところも多いのですが
  厳密にはリクエストだけを選書の対象とみなします

8.公立である以上、法律は勿論、条例・規則に従うこと

9.選書基準の有無は各館で状況が異なるでしょうし
  年度毎の策定や修正、変更もあるでしょう
  一般的には抽象的な理念・概念が記されているだけでしょうから
  選書そのものへの実務的な影響は僅かと考えます

…思いつくままに書いていますが、前提となるものだけでも結構ありますね(笑)
書き進めるにつれて条件は増えるかも知れませんが、今はこの程度にして記事を続けましょうか。


実際に本を選ぶには、その対象となる、或いは手助けとなる情報が手元に必要となります。
TRCの『新刊全点案内』ばかりが前提となってはおかしいので、選書時にある情報の一般的なものを下に挙げてみます。

1.タイトル、著者、出版社といった基本的な書誌データ
2.復刊や改訂、新装版といった版についての情報
3.本についての簡単な内容
4.著者についての簡単な情報
5.場合によっては、その本や著者についての受賞の有無
6.新刊としては無理なものもありますが
  
書評の掲載や出版部数、映像化等の情報
7.表紙の画像

これらを手掛かりに選書、発注することになるでしょう。


では、どんなプロセスで本を選んでいくのか。

続きは(2)でシュミレーションしてみることにしましょう。

2009年9月 5日 (土)

Les Très Riches Heures du Duc de Berry を捜して☆

今日は、いただきもののお休みです♪
う~ん…何をすればいいのか戸惑ってしまいます(笑)



先日、ベリー公の時禱書でメリュジーヌを確認しなくては…と書いてから随分と日が過ぎてしまいました。
何だか、いっぱいあったのですが…もう、終わってしまって、忘れてしまうことにします(苦笑)

で、つらつらとWebを彷徨っていると、本当に今は便利ですね。ちゃんと画像が見付かりました。
何度も書いていることですが、ここ数年、個人で集めることが出来る情報は、本当に爆発的に増えていますね。
きちんと扱うことが出来れば、端末の向こう側には素晴らしい図書館や博物館、美術館があるのと同じ状況です。
凄いことですよね…

見ているサイトは、
こちら
そうそう、タイトルに訳文を使わなかったのは、訳語そのものが固定されていない上に、下手な翻訳は別のベリー公の豪華な時禱書を想起されても困るからです。
ちなみに、この絵は岩波書店の『ベリー公のいとも美しき時禱書』にはありません。こちらはこちらで、ヤン・ファン・エイクの絵を目にすることが出来ていいのですが、今の目的からは外れます。

中央に見えるのが、Lusignanの城です。
その右端の塔の上、確かに翼を広げたドラゴンが飛んでいますね。
これがメリュジーヌでしょう。

9月を見てみると…ソミュール城ですね。
青い屋根が美しいお城。
↓こちらです。

大きな地図で見る

 
…googleマップの日本語表記は、みなさん、使いやすいのでしょうか。
チョコちょことしては、逆に読み難くなった気がするのですが…


さて。折角のお休み。
もう少し、Les Très Riches Heures du Duc de Berry の中を散歩していきましょうか。
まだまだ、知らない場面に出会えるでしょう☆

2009年9月 4日 (金)

『晩秋のうた』枯葉のうた より

夕暮のなかの葉、風のなかの葉、
死が連れ去っていき、わたしも続いて……
夕暮は、風は、どこへいったのか?

でも誰が葉っぱの心配なんかする?……



『マリー・ノエル詩集』(田口啓子 編・訳/小沢書店)収録

2009年9月 3日 (木)

『対訳イェイツ詩集』より 2

  クールの野生の白鳥

木々は秋の美のさなかにあり、
森の小道は乾いている。
十月の夕明りの下で、湖水は
静かな空を映している。
岩々のあいだに漲る水面に、
五十九羽の白鳥が浮んでいる。

初めて数を数えてから
十九年目の秋が来た。
まだ数えきらぬうちに、
とつぜん、いっせいに舞い上り、
騒がしい羽音を立て、大きな切れ切れの
輪を作って飛び去るのを見た。

それからも私はこの輝く鳥たちを見てきた。
そうして、いま、この心は痛む。
あれから何もかもが変った。あのときは、
夕暮れに、この湖畔で、初めて
頭上に鳴り響く羽音を聞き、
いまよりも軽い足取りで歩んだのだが。

いまも倦むことなく、愛し合う同士が連れ添い、
鳥たちは冷たい心地よい流れの
水を掻き、あるいは空に舞い昇る。
このものらの心は老いを知らぬ。
いずこをさすらおうと、情熱と征服欲は
つねにこのものたちと共にある。

だが、いま、鳥たちは静かな水の上を漂う、
神秘に満ちて、美しく。
どこの葦間に巣を作るのか、
どの湖のほとりで、どの池で、
人の目を楽しませるのか、ある日、私が目覚め、
鳥たちが飛び去ったのを知るときに?



『対訳イェイツ詩集』(高松雄一 編/岩波文庫)

2009年9月 2日 (水)

勿忘草のこと☆

   ながれのきしのひともとは、
   みそらのいろのみづあさぎ、
   なみ、ことごとく、くちづけし
   はた、ことごとく、わすれゆく。

『海潮音』の中の「わすれなぐさ」。

プロフィールの紹介文に引用させていただいているものですが、先日『新編香りの百花譜』(熊井明子 著/千早書房)を読んでいると…出てきましたね♪
そこには、北原白秋が自選小曲集『わすれなぐさ』の序にこの詩を引用し、更に次のように述べていると書かれています。


瑠璃いろ空のかはたれにわすれなぐさの花咲かばまた、過ぎし夜のはかなき恋もしのぶべし。


また、収録している詩の中に「なわすれぐさ」があるそうです。



面帕のうしろに見えて
その眸にほふごとくも
空いろに透きて葉かげに
今日も咲く、なわすれの花。




……勿忘草って、本当にステキですよね☆

2009年9月 1日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.31

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.31  2009.8.18

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    明後日、20日は新月です。

    見下ろす町の光も感慨深いものですが

    折角の月明かりの無い夜

    時には天文雑誌を片手に
    夜空を見上げてみませんか?

    普段は気付いていないだけで
    本当は
    毎晩、毎晩
    星達は同じように
    瞬いてくれているのですから…

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、8月4日以後の新刊です。

 ☆『不思議のひと触れ』(シオドア・スタージョン 著/河出書房新社)
    2003年に奇想コレクションで出ていたものの文庫化。
    著者は優れた短篇作家です。

 ☆『ムナーリのことば』(ブルーノ・ムナーリ 著/平凡社)
    数多くの著作の中から、ムナーリ自身が言葉を選んで編んだ短文集。

 ☆『Leave me alone』(山崎龍一 著/芸術新聞社)
    白いフードで全身を覆う子どもたち…
    特徴的な石膏の彫刻で知られる、山崎龍一の初の作品集☆

 ☆『サイエンスカフェにようこそ!』
   (滝澤公子 編著/冨山房インターナショナル)
    神保町のサロンド冨山房 Folio
    (フォリオ…マニアックなお名前ですね(笑))で
    2006年から開催されているサイエンスカフェ。
    コーヒー片手に科学についてのお話を聴くイベントです。
    サイトはこちら → http://www.fuzambo-intl.com/folio.html

 ☆『砂漠のゲシュペンスト 上』(フランク・シェッツィング 著/早川書房)
    『深海のYrr』のシェッツィングによる冒険サスペンス☆

 ☆『虫とりのうた』(赤星香一郎 著/講談社)
    第41回メフィスト賞受賞作です。

 ☆『創造するアジア都市』(橋爪紳也 著/エヌティティ出版)
    人口増加に伴って巨大化する都市。
    中国と日本の事例を中心にした、都市文化の創造について。

 ☆『ジハードの町タルスース』(太田敬子 著/刀水書房)
    人口の大半がキリスト教徒と戦う戦士だった
    ジハードのための町、タルスース。
    そのイスラム教とキリスト教の「境界」における町の歴史は
    一体どんなものだったのでしょうか。

 ☆『現代ロシア国家論』(木村汎 著/中央公論新社)
    プーチン、メドベージェフの2人が展開する
    現代ロシアの外交政策・活動についての論考です。

 ☆『教育の費用効果分析』(ヘンリー・レヴィン 著/日本評論社)
    学校・生徒の教育データを使った費用効果分析。
    …良くも悪くも、話題とはなるものでしょう。

 ☆『カール・フィリップ・モーリッツ』(山本淳二 著/鳥影社・ロゴス企画)
    帯にあるままですね。
    “本邦初の本格的モーリッツ研究書”です。
    “ゲーテの芸術論に多大な感化を与え
     他方ヴァッケンローダーたち初期ロマン主義の若者にも
     大きな影響を及ぼした”
    と書かれているモーリッツですが
    殆ど知られていないのではないでしょうか。

 ☆『魚の経済学』(山下東子 著/日本評論社)
    漁業問題のあれこれを、分かりやすく解説したもの。

 ☆『怠惰への讃歌』(バートランド・ラッセル 著/平凡社)
    ラッセルはイギリスの哲学者で、ノーベル文学賞受賞者。
    働くほど過剰生産となり、失業が増えるのなら…
    …働かなければいいのです。

 ☆『飛行機設計入門』(片柳亮二 著/日刊工業新聞社)
    空力設計から操縦性まで、「何故あの形なのか」が分かる1冊です☆
    著者は三菱重工業株式会社で
    Fー2機等の飛行制御系の開発に従事していた方だそうです。

 ☆『媒介言語論を学ぶ人のために』
   (木村護郎クリストフ 編集/世界思想社教学社)
    異なる言語を用いる人が出会った時の媒介言語…
    すぐに思い浮かべるのは英語でしょうか。
    その異言語間コミュニケーションの多様な形態とは。

 ☆『風見鶏謎解きの旅』(広瀬毅彦 著/神戸新聞総合出版センター)
    神戸、異人館の物語。
    …でも、タイトルからは内容が分かり難いですよね。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『Leave me alone』
  (山崎龍一 著/芸術新聞社/8月10日発売)

    芸術新聞社さんと言えば
    何と言っても書道雑誌の『墨』が有名ですよね☆
    創刊は1976年。
    9月1日発売の2009年9・10月号で
    とうとう200号になります。

    そんな芸術新聞社さんから出た新刊が
    1976年生まれ、若手の彫刻家山崎龍一の初の作品集です。

    表紙にもある、この白いフードの子どもの姿。
    一度見たら、もう忘れられないでしょう。

    人見知りや引きこもり…

    心の病と見るかどうかは別にして
    他人とのコミュニケーションが上手く築けない子どもたちの心を
    石膏を用いて、その仕草や瞳で表現しています。

    隠れたい
    離れたい

    …でも

    見ていたい
    見て欲しい

    そんなアンビバレンスな想いが、ひしひしと伝わってきます…

    恐ろしい作品なのか
    愛らしい作品なのか

    見ている側の心もまた、大きく揺らいでしまう瞳です。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『三人の乙女たち』(フランシス・ジャム 著/手塚伸一 訳/青土社)

   クララ・デレブーズに

    いつもそばにいて、ぼくを助けてくれないか。
    打ちひしがれて、
    小さな町の楡の並木の下を、
    夕べの鐘の鳴る青い時刻に、
    疑惑と誇りを引きずってぼくがさまよい歩く時、
    疼くぼくの額におまえの手を、
    おまえの白い手を置いてくれないか……置いてくれないか……

    この小さな本を受けとってくれないか。
    これは技巧をこらさずに書かれた。
    でもぼくは微笑む、おまえをえがいたこの本が好きだからだ。
    そしておまえ、おお蝶を追う少女よ、
    おまえもぼくと同じように、
    どんな言葉で、
    詩のなかで恋をうたえばよいか、
    散文のなかで泣けばよいかを知らなかったからだ。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年8月31日 (月)

『エイルイン物語』のこと☆

『古本探究』(小田光雄 著/論創社)の一章、「鶴田久作と国民文庫刊行会」の中にウォッツ=ダントンの『エイルイン物語』への言及があります。
本書の末尾には『エイルイン物語』を含む『世界名作大観』の案内が資料として添付されていますが、そこには“不思議なヂプシイ民族と作者との交遊から生れた世界に類例ない現代英文学中の逸品。”とありますね。
訳していたのは戸川秋骨(しゅうこつ)。

ウォッツ=ダントン。 Walter Theodore Watts-Dunton と書きます。
1832年生まれの英国の詩人であり、評論家。
小田も書いているように、ラファエル前派の人々と親しく、ダンテ・ガブリエル・ロセッティとも友人でした。
そんな彼の小説が Aylwin 『エイルイン物語』です。
彼について簡単に記したものが MSN encarta にあります。(
こちら)( Wikipedia ではこちら

小田が原書を入手次第、報告するとしている『エイルイン物語』ですが…このサイトは流石ですね。ちゃんとありました。
見付けた先は、 Project Gutenberg
巨大な電子図書館として名を知られるPGですが、その中に3点、ダントンの作品・論評があります。
その最初が『エイルイン物語』。

こちらです。
詩人らしく、いきなりな出だしですが…もし興味を持たれましたら、ぜひ読んでみて下さいね☆

2009年8月30日 (日)

次世代の図書館は…

つらつらと、綴る愚考です。

各市町村を主体とする公共図書館は、少なくとも情報提供の中心とはなり得ないでしょう。インターネット未利用者もいるとはいえ、肥大化したメディアはその良し悪しはともかく、情報の提供元としては図書館など遥かに凌駕しています。情報収集は勿論、各種メディア端末すら設置出来無い公共図書館では情報提供の場としても完成することはないでしょう。

一方、娯楽性を見た場合、所謂無料の貸本屋として特化することは可能でしょうか。著作者や書店業等との兼ね合いもありますが、財政が逼迫している状況で、税金を使って娯楽ばかりを追い続けることは図書館を利用しない大半の住民から同意を得られないでしょう。ましてや官僚主導から政治家主導の行政となると、大義名分で守られてきた教育や福祉も政治家の動き一つで引き継がれず、潰れていきます。芸術や文化は贅沢だと感じる住民や政治家は多く、ただ官僚による保守的な行政組織だからこそ守られてきた部分が多いのも事実です。

公共図書館が、幅広く、裾野を広げ、誰もが利用出来る…そんな姿を保ち続けることは、少なくとも市町村立である限り無理でしょう。

指定管理者? 考慮にも値しませんね。市町村が主体であることに変わりはありません。直営だからこそなされてきた修繕や工事も、指定管理者は行いません。ですが、図書館もまた箱物である以上、修繕箇所は年々増加するだけです。それは、指定管理者への支払いには現われない、「隠された指定管理料」です。指定管理後に閉鎖や取り潰しをする気ならともかく、無料が原則の図書館を指定管理制度で「安く」運営していくことは無理です。直営で職員数(特に管理職)を減らしたり、サービスに制限を設ける方がよほど税金の無駄を省けるでしょう。

では、次世代の図書館とはどのような姿なのでしょうか?

一つは、原点回帰です。
図書館は智の殿堂であり、権力の象徴である、その時代への回帰。
限られた者だけが、優れた知識を理解し扱える者だけが、利用する場。その存在そのものが市町村のステイタスとなるような場。
そもそも、住民の大半の欲望を捌けるだけの貸本屋にもなれないのですから、利用重視では破綻するだけです。
美術館も博物館も本来はそうですが、収蔵品にこそ価値があります。勿論、それは眠らせておくということではありません。利用促進はすべきです。ですが、価値はあっても身近になり得ないものもあるのです。そんなものはない、といった幻想は、次世代を考える時には霧散してしまいます。
例えば絵画で言えばフェルメール。…さて。日本人のどの程度の人々が、「本当に」フェルメールを理解していますか? あの技法を、画材を、パトロンを、時代を、作品の裏側を。
分かる人だけが分かればいいものは、あるのです。
問題はそれを税金でどこまで収集するのか、です。
所蔵している本の価値、それがその市町村の価値。
埋蔵している遺跡の価値こそが、この地域の価値…そう考える奈良県や明日香村のようなものです。
或いは引き継いできた伝統品や文化の価値こそが、この地域の価値と考える京都のようなものです。
そこにしかない、図書館。それは蔵書だけでなく、サービス面にも当てはまります。
税金でその地域の価値を創造していくことは、無駄使いではないのです。

もう一つは、今の図書館の線上にあるものです。
図書館業務のうち、レファレンスや郷土資料に関する部分だけを高度化し、娯楽性の高い部分と分離をする、二極化です。
ハイレベルな情報提供やサービス提供は、その範囲を特化すれば市町村主体の図書館でもまだ運営できるかも知れません。特に地域に密着した情報の提供は、それだけに集約すればまだまだ地方でも可能でしょう。
一方の娯楽性の部分、つまり小説等の貸出部分については、教育よりも福祉的な要素が強くなるかも知れませんね。
図書館が教育委員会部局か首長部局かの二者択一ではなく、図書館が持つ業務内容を分けてしまうのです。
情報センター、郷土資料館。公民館図書室。
イメージとしては、こんな言葉が持つ内容を一つにまとめようとするのではなく、分けてしまうことです。
建物は一つでも構いません。業務と空間さえ分かれればいいのですから。
情報提供重視の部門は、先の「そこにしかない図書館」へと姿を変えるかも知れません。
貸出重視の部門は、財政状況によっては縮小されるでしょう。
併せ持つからこそ、図書館全体の運営が揺らいでいるのですが、分けてしまえば一部への税金の投入は続けることが可能でしょう。地元や地域を疎かにする官僚も政治家も住民も、それ程多くはありません。
財政悪化…でも、税金収入が無いわけではないのですから。

こう書いてくると、電子化やネット配信など、情報の形の変化だけであって、根底を覆すものではない気がしてきます。石版や羊皮紙が形を変えてきただけです。公共性を有する限り、実は図書館そのものの変化は情報の形によるのではなく、財政や権力で生じるのです。
個人による情報発信の場が増え、個人の情報収集能力が増してきたために、その情報の変化に我が身が翻弄されるから公共の図書館もそうだろう…そう考えがちになるのでしょうが、もともと図書館に変化に対する即応性はありません。公共とは、そういったものです。民間とは異なります。民間は一部の客層に的を絞りますが、本来、公共は万人を対象にします。変化は大きなうねりとなってから、漸く影響を及ぼし始めるのです。そして、それで構わないのでしょう。誰もが図書館を必要としているわけではないのですから。
個人の能力を高めれば、その個人にとって図書館は不要になる…それでいいのではないでしょうか。それでも必要な図書館の業務は残り続けるのです。それは今のサービス内容からすれば限定的なものでしょうが、もともと風呂敷を広げすぎているのです。行政に対する点数評価制度がその一翼を担った感もありますが、そろそろ見直すべき時期にきているのでしょう。セーフティネットに点数評価がそぐわないのと同じで、教育や文化にも相応しくない部分は現実として存在するのです。

長々と書いてしまいました。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

2009年8月28日 (金)

再話と完訳、少年時代の読書の記憶…

小学生時代に図書室で「岩波少年文庫」も読んでいたはずなのに、記憶に残っているのは圧倒的に『世界名作全集』なのである。


小田光雄がそう記しているのは『古本探究』(論創社)の中、「講談社版『世界名作全集』について」です。
「世界名作全集」を再話、「岩波少年文庫」を完訳として、小田は続けています。



児童文学の分野において、自分の読書体験に照らしてみても、完訳と再話の功罪を問うことは本当に難しい。
そしてまた読書という行為の多様性と奥深さを思い知らされるのである。



確かに、高い評価は岩波少年文庫の方でしょう。それはいつまでも続く評価です。だからこそ、現在でもまだ刊行が続いています。
対しての世界名作全集は昭和36年に刊行終結後、次第に姿を消していき、後の世代からはすっかり忘れ去られてしまいます。その意味では評価は当然低くなり、名作ばかりだったからこそ、粗悪な翻訳とのレッテルが貼られてしまいました。
でも、再話だからこそ、生き生きとした表現が可能となり、より深い印象を少年時代の読者の心に刻むこともあるのです。
この講談社版「世界名作全集」を“宝の山”と書いたのが池内紀です。
貧しい生活において、小学校の図書室に並ぶ世界名作全集は、それが例え翻案された再話ばかりの名作であったとしても、本当に「宝の山」だったのでしょう。読みたい本が、無料で、180巻もあるのです。我が家には、たったの2冊しかないのに…
これこそ、図書室、図書館の本質的な役割であり、存在意義ではないでしょうか。
小田は書いています。



本との出会いと読むことが「喜びにみちた瞬間」であり、本が「この世の真実を伝える証人」であり、本を買うことが心踊る体験であった時代が確かに存在したのだ。
池内紀は感嘆符を使用する書き手ではない。
想いがつのってしまい、あの少年時代に飛んでしまったのだ。

……………

私たちはそのような時代から何と遠くまできてしまったことであろうか。



……本当に、何処で道は折れ曲がってしまったのでしょうか…

2009年8月27日 (木)

『幸福論』教養とは何か二(二) より

教養の有無を知るための、まったく外的ではあるがしかしまた見わけるにすこぶる便利な特徴的なしるしは、本を持っているか持っていないかということである。
本を買う資力が十二分にある人々においては特にそうである。
瀟洒な貴婦人で不潔な貸本屋の本を読んでいるような者は、せいぜい半教養の人だと見てまちがいはない。
その本に刺繍のあるカヴァをかぶせたりしてもだめである。
それはただ、その人が自分の欠陥を意識していることを示すにすぎない。
わずか一ダースばかりの本が、読みもしないできれいな本だなに置いてあるようなしゃれた家があったら、その家の住人全部をも含めて無教養だと見なしてさしつかえない。
ことにそれが、よくあるように、小説本ばかりででもあればなおさらである。

多読は、ことにこんにちにおいては一般教養のためにどうしても必要である。



『幸福論』(ヒルティ 著/斎藤栄治 編/白水社)

2009年8月26日 (水)

イェイツとロンサールと…

昨日、引用したイェイツの「あなたが年老いるとき When You are Old」ですが、この詩の構想のもとになったのが、フランス詩人ロンサールの「エレーヌへのソネット(老いはてて、ゆうべ、ともしびのかげ)」です。(訳は『ロンサール詩集』(井上究一郎 訳/岩波文庫)より)


老いはてて、ゆうべ、ともしびのかげ、
炉べにすわりて、繰りつ、紡ぎつ、
わが詩をうたい、愕然と汝はも言わん、
「過ぎし日の 美しき吾を讃えしは ロンサール。」

かかるとき、はや疲れたる 重き瞼の、
うつらうつらにききとめて、ロンサールの
ひびきを耳に まなこさめ、朽ちぬほまれの
汝の名を讃えざる はしためありや。

われすでに みまかりて、骨もなき亡霊となり、
天人花のかげ、土深くやすらわん。
汝は炉の辺に くぐまる老婆、

わが愛と 汝が驕慢をくやみつつ。
生きよ、われを信じたまわば、あすをたのむな、
今日よりぞ摘め、いのちのばら。



詩人は既に亡くなり、それでもまだ詩は、詩集は残り続ける。
それを手に取り、歌い、思い出すのは優しく美しかった、かつての我が身。

その後、イェイツは一人の男の愛を、その愛が逃れ隠れた様を歌います。

一方のロンサールは、ただひたすらにエレーヌのことを歌います。
最後の恋愛詩を、老いた指先で、ただひたすら紡ぐのです。
その美貌を、美徳を、彼女の名前エレーヌ・ド・シュルジェールを。
永遠に残す為に。
それは彼自身を、彼の詩を、書物を永遠に残すことでもあるのです。



あなたの名誉が「松」に彫られて空にのびるとともに、
野にひろがってながれてゆくように、
すべての神々に祈り、葡萄酒をそそぎながら、
私はあなたの名にささげる、この美しい泉を。



その泉の名は「エレーヌの泉」。
美しく、涸れることのない永遠の尽きせぬ泉。



行く人は夏ここにきて憩うがよい、
そして木かげの草にすわって、エレーヌのために、
千の歌をつくり、私を思い出さんことを。

この水を飲む人は誰も、恋のとりことなり、
この水をすすりながら、あつい思いを汲まんことを、
私が胸の炎に感じるこのあつい思いを。



泉は後の世の、未来の詩人までも虜にする。
その清らで美しい水は、アイルランドの詩人の喉を潤し、姿を変え、その男の愛を讃える歌となって、イェイツの指先から生まれたのです。

エレーヌのために歌を作り、
ロンサールを思い出すために。

2009年8月25日 (火)

『対訳イェイツ詩集』より

   When You are Old

When you are old and grey and full of sleep,
And nodding by the fire, take down this book,
And slowly read, and dream of the soft look
Your eyes had once, and of their shadows deep;

How many loved your moments of glad grace,
And loved your beauty with love false or true,
But one man loved the pilgrim soul in you,
And loved the sorrows of your changing face;

And bending down beside the glowing bars,
Murmur, a little sadly, how Love fled
And paced upon the mountains overhead
And hid his face amid a crowd of stars.



『対訳イェイツ詩集』(岩波文庫)より

2009年8月23日 (日)

星雲・星団のオンパレード☆『NGC・IC天体写真総カタログ』のこと

…分厚いですね(笑)
719ページもあります。
この中に、NGC(New General Catalogue)とIC(Index  Catalogue)の全て、13,226個の天体の写真が含まれているんですね…

…あまりの数に、圧倒されてしまいます。

勿論、NGCにつきものの、ミスはあることでしょう。
でもこの偉業は、基礎データを備えた「写真カタログ」の出現は、非常に多くの人達が待ち望んでいたのではないでしょうか。
海部宣男は、「NGC・IC天体写真総カタログの刊行に寄せて」の中で本書のことを“日本のみならず世界の天文愛好家にとって大きな刺激とも、座右の資料となるだろう”と書いています。“画期的な天体大図鑑”とも。
そうですね、本当に見ているだけでも十分刺激的で楽しい、あらゆる星雲、星団、銀河、恒星の姿を収めた大図鑑です。

一つ一つの写真は、モノクロで37mm×37mmに統一されています。
画角は、4分角と8分角が多いでしょうか。
一般の方には、若しかすると雑誌等の天体写真をイメージしていて、本書の写真のその小ささに戸惑ってしまうかも知れません。
でも、これでも十分なのです。今迄、これすら無かったのですから。
一つ一つ、多くの人にとっては無機質な数字、番号でしかなかった様々な天体が、「形」として明確なイメージを提供してくれているのです。

イメージの多くは
DSSから。(他にもこんなサイトがあります)
写真乾板からのデジタイズなので、画像にムラが生じますし、シャープでないものもありますが、本書では見やすく修正されています。


…どのページを開いても、様々な天体の形、種類に本当に圧倒されてしまいます。

著者である沼澤茂美、脇屋奈々代だけでなく、本書の出版を決めた誠文堂新光社さんにも心から感謝、感謝です☆

2009年8月22日 (土)

『眠られぬ夜のために 第一部』8月22日 より

特定の事柄について十分に熟考し、かつ賛否の理由をのこらず検討することによってーなお一層よいのは、自分の生活経験を通じて、ー一旦はっきりした見解に達したならば、その問題はそれで片づけてしまい、それ以上の検討を一切やめなければならない。
疑いはどんなことに対しても起りうるもので、とっくに片づいてしまった事柄についてさえそれは起る。
人間の心の最も不幸な状態は、いわゆる懐疑主義であって、これは結局、一切のものを疑うようになるのである。



『眠られぬ夜のために 第一部』(ヒルティ 著/岩波文庫)

2009年8月21日 (金)

『詩人リュスティック』39 より

彼は微笑む。
そして霊感を与えられたよろこびのなかに、ピンクの花が咲き誇るマルメロの木と、柳の木にとまっている小鳥たちを見つめる。
微風が吹きはじめる。
いちばん小さな女の子が腕に風の気配を感じてそれをつかまえ、一緒に飛んでいこうとする。
遠くで吹き荒れ、平和になってもまだ吹きやまない戦いの嵐に追われて、彼はどこに行くべきか知らない。
ただ、数多くの一族を引きつれた族長のように、神の加護を求めるだけだ。
彼は口笛を吹いて、犬を呼ぶ。




『三人の乙女たち』(フランシス・ジャム 著/手塚伸一 訳/青土社)収録

2009年8月20日 (木)

近頃の報道を見ていて…

芸能界の麻薬・覚醒剤問題。
新聞、テレビ、各種雑誌で同じような文字が躍っていますが…

一昔前に比べれば言及はあるものの、やはり、麻薬・覚醒剤で「どんな状態になるのか」を具体的に、真剣に取り上げて報道しているものは少ないですね。
背景や今後の捜査の行方のような比較的刺激的な内容ばかりが、どうしても目に留まります。


昭和9年。
寺田寅彦は記しています。(『寺田寅彦随筆集 第4巻』(岩波文庫)収録「藤棚の陰から」)



自殺の増加の幾割かはたしかに新聞の暗示的、ないし挑発的記事の影響に因るものであろうと思われるが、右の新聞の社説にはこのことについては一言も触れてない。
触れないのは当然であろうがちょっとおかしい。

「自殺の報道記事は十行を超ゆべからず」という取締規則でも設けたら、それだけでも自殺者の数が二割や三割は減るのではないかという気がする。



この言葉は、今でも生きていると思いますね。

2009年8月19日 (水)

夕暮れ時…マチャードの詩を☆

側面から射し込む光が
柔らかくて
甘くて…
マーマレードのように
ふんわりと地面を覆っています。

……何だか、光の中にも秋の気配が感じられます。


ぼくは夢心地で夕暮れの道を行く


聞こえてくるのは、今読んでいる『概説スペイン文学史』(佐竹謙一 著/研究社)のページから。



金色に染まった丘、緑の松、
埃をかぶった樫
この道はどこへ続くのか



秋の気配は、心を、足を、旅へと、彷徨へと誘います。



旅を続けるぼくはうたいながら
この道を歩いて行く……



宵の青い漣が、少し早くなってきた気がします。


ー夕日が沈む


この詩はアントニオ・マチャードのもの。
彼はヒメネスと親交を深め、ヒメネスは彼から多大な影響を受けました。
詩集『プラテーロとわたし』の中には、そんなマチャードの言葉からの残響も見られるのでしょう。
残念ながら、マチャードの詩をまるで読んだことがありません。
でも、『プラテーロとわたし』が書かれる直前に親交があったようですから、その影響は少なくないはずです。
『マチャード/アルベルティ詩集』(世界現代詩文庫 24)が土曜美術社から出ていますが、全集内のものを除けば、これが殆ど唯一の邦訳のようです。
大好きなヒメネスに影響を与えた詩人。(ちなみに本書では、これも大のお気に入りのベッケルからも、ヒメネスは影響を受けていたと記されています)
ぜひ一度、その詩集を読んでみたいですね☆

2009年8月18日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.30

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.30  2009.8.4

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    “古い事ほど新しく、
     いちばん古いことが結局いちばん新しい”

    そう書いたのは寺田寅彦ですが(『読書の今昔』)

    古典と呼ばれる作品を好んで読み続けていると
    確かに、そんな気持ちになることがあります。

    …でも

    それは、悲観すべきことなのでしょうか

    それとも、楽観すべきことなのでしょうか

    そんな風に考えることもまた
    古くて新しい
    新しくて古い
    人の心だからなのかも知れません。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、7月21日以後の新刊です。

 ☆『水とはなにか 新装版』(上平恒 著/講談社)
    1979年出版の新装版。
    帯にあるように、水は
    “いちばん身近で、いちばん不思議。”なものですよね☆

 ☆『やさしい悪性リンパ腫外来治療の自己管理』
   (飛内賢正 著/医薬ジャーナル社)
    著者は国立がんセンター中央病院第一領域外来部の部長です。

 ☆『おくのほそ道大全』(楠元六男 編集/笠間書院)
    それぞれの章ごとに、研究史を踏まえて読み込んでいく
    文字通りの大全☆

 ☆『暁の群像』(南條範夫 著/作品社)
    1989年に、富士見書房から
    時代小説文庫として出ていたものの復刊です。
    副題にある岩崎弥太郎は、三菱財閥の礎を築いた人。

 ☆『ブラックホールを見つけた男』(アーサーI.ミラー 著/草思社)
    ブラックホールの研究に携わった人々の
    数奇なドラマを描き出したもの。

 ☆『サイバービア』(ジェイムス・ハーキン 著/日本放送出版協会)
    インターネット利用者の裾野が広がり、依存度が増すことを
    “ネット社会の郊外化”と称するのであれば…
    携帯電話(&メール)はどうなのでしょうね?
    大切なのは、その“郊外”での過ごし方なのでしょうけれど…
    既に、自宅に帰らない人も多いのでは(笑)

 ☆『コーパスへの道』(デニス・ルヘイン 著/早川書房)
    全10巻の新シリーズが始まりました☆
    本書はその新シリーズ、「現代短篇の名手たち」の1冊目。
    HPによれば“ミステリの神髄は、短篇にあり。
    現代ミステリの短篇の名手たちの短篇集を一堂に集める画期的全集”
    とのこと。
    …早川書房さんらしいものになりそうですね! 期待しています。
    ラインナップを含めた記事は、こちら → http://www.hayakawa-online.co.jp/news/detail_news.php?news_id=00000264

 ☆『星雲・星団観察ガイドブック』(大野裕明 著/誠文堂新光社)
    『見ておもしろい星雲・星団案内』の改題改訂版です☆
    天体観測初心者には非常に分かりやすいものなので、ぜひ♪

 ☆『NGC・IC天体写真総カタログ』(沼澤茂美 著/誠文堂新光社)
    値段もビックリ(税込12,600円!)ですが、当然、その価値はあります。
    何しろ、NGCを始めとして
    13,000あまりの天体が全て写真付きで紹介されているのですから。

 ☆『技術と時間 1』(ベルナール・スティグレール 著/法政大学出版局)
    「哲学」からは見下されてきた「技術」。
    著者はその「技術」を哲学的に捉え直している、フランスの哲学者。

 ☆『ロボトミスト』(ジャック・エル・ハイ 著/ランダムハウス講談社)
    アメリカの医師ウォルター・フリーマンと
    彼が行ったロボトミー手術について描いたもの。
    医療ジャーナリスト協会の最優秀作品賞を受賞したそうです。

 ☆『非破壊検査工学最前線』(川嶋紘一郎 著/共立出版)
    見えない不具合を、壊さずに探る非破壊検査。
    その技術の発展は、今後も重要になってくるでしょう。

 ☆『ナチスの女たち第三帝国への飛翔』
  『ナチスの女たち秘められた愛』
   (アンナ・マリア・ジークムント 著/東洋書林)
    著者 Anna Maria Sigmund の初めての邦訳になるはずです。
    いずれも、ナチス政権下の女性について描いたもの。

 ☆『哲学する色彩』(相原美紗 著/New York Art)
    油彩の抽象絵画の画集です。
    エスペラント語を話す著者のサイトのトップは、ステキですね☆
    (こちら → http://www5d.biglobe.ne.jp/~uam53283/

 ☆『文化の社会学』(井上俊 編集/世界思想社)
    世界思想社の創業60周年記念企画
    「社会学ベーシックス」の第3巻です。
    文化、技術、芸術まで、26冊をそれぞれ10ページでガイドしています。

 ☆『ヒーリー精神科治療薬ガイド 第5版』
   (デイヴィッド・ヒーリー 著/みすず書房)
    特に副作用についての説明が詳しい、治療薬ガイド。

 ☆『ヨーロッパに架ける橋 上』
   (ティモシー・ガートン・アッシュ 著/みすず書房)
    ドイツ統一を目指して奮闘する、旧西ドイツの政治家たちの姿。

 ☆『質問応答システム』(磯崎秀樹 著/コロナ社)
    コンピュータと人間がやりとりする自然言語処理において
    その処理の1つである
    質問応答システムの基礎と応用について解説しています。

 ☆『日本の職業教育』(寺田盛紀 著/晃洋書房)
    職業教育…知っているようで
    実はその全体像や特徴は殆ど知られていないのではないでしょうか。

 ☆『黄砂』(岩坂泰信 編集/古今書院)
    HPによれば“韓国、中国、アメリカの研究者も加わった
    総勢約80名の黄砂研究者が総力を挙げてまとめたテキスト”だそうです!

 ☆『アメリカの地下経済』
   (スディール・アラディ・ヴェンカテッシュ 著/日経BP社)
    シカゴの黒人貧民街での調査研究レポート。
    アメリカの闇の実態を赤裸々に描いたもの。

 ☆『日本人最初の先端技術者辰巳一造船大監』(小野雄司 著/研成社)
    日本海軍造船史に足跡を残す、金沢藩士辰巳一。
    彼は日本三景から名をとった通称「三景艦」と呼ばれる
    軍艦を設計したことで知られています。
    本書はその業績を記したもの。

 ☆『書棚と平台』(柴野京子 著/弘文堂)
    思わず目が留まってしまう、2つの単語が並んでいますね(笑)
    内容は出版流通について、です。

 ☆『専門知と政治』(久米郁男 編集/早稲田大学出版部)
    政策形成過程における、専門的知識の役割と意義。

 ☆『差異』(ミシェル・ヴィヴィオルカ 著/法政大学出版局)
    多文化社会における文化的差異。古くて新しい問題ですよね…

 ☆『ルポ資源大陸アフリカ』(白戸圭一 著/東洋経済新報社)
    貴重な資源が眠る大陸、アフリカ。
    なぜ、成長は暴力を伴うのでしょうか…

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『黄砂』(岩坂泰信 ほか編/古今書院/7月発売)

    創業が1922年ですから、老舗の出版社ですよね。
    古今書院さんの得意分野は、やっぱり地理関係でしょう。
    HPにある地図や地理に関する各種学会・団体へのリンク集は
    とっても便利なものです。
    (こちら → http://www.kokon.co.jp/ の「関連リンク」)

    そんな古今書院さんから出たのが
    本書『黄砂』です。
    本体価格9,500円(!)と、ビックリする値段なのですが
    身近な現象である黄砂をこれだけの規模でまとめたものは
    今迄に無かったでしょう。
    高額なのも仕方が無いかも知れません。
    何しろ、先にも書いたように
    各国の黄砂研究者、総勢およそ80名がまとめたテキストです。
    これ以上のものも、今後なかなか出ることは無いでしょうね。
    内容も黄砂の発生から動き、予報、観測方法まで。
    勿論、黄砂によって運ばれるものについても触れています。

    すぐそばにある
    当たり前のように訪れる黄砂の季節。
    そのメカニズムや全体像を語るだけでも
    これだけの人と技術が必要なのです。

    …自然は本当に、人間には大きすぎますよね。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『眠られぬ夜のために 第一部』(ヒルティ 著/岩波文庫)

    8月4日

    「私は一人でさらに歩みつづけたとき、身ぶるいを覚えた。
     そののち、まもなく病気になった。
     いや病気以上であった。
     つまり疲れきったのだ。…(略)…」(ニーチェ)

    ……………

    教養はあるがすべての信仰からとき放たれた階級の人間の姿が、
    われわれの目の前にまざまざと浮び出る。
    さて、われわれはこれらの指導者になお従って行くべきであろうか、
    おそらく彼らが生涯の終りに行きついたところ(つまり狂気)までも?

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年8月17日 (月)

クララ…『三人の乙女たち』のこと

美しい季節が終ろうとしている。
その後の日々は、秋の淋しい風に一日ごとに木の葉を落とし、雨のひびきのなかに眠りこむ。



日中は暑いものの、木陰に入ると、心なしか穏やかさを覚える日が続いています。
夜更けには虫の音も…

…夏の日々に溶け込む秋の気配。


極端に単純化された言葉。
短いフレーズが、タン、タン、タンと。
詩人特有の表現もそちこちに。

フランシス・ジャムの『三人の乙女たち』(手塚伸一 訳/青土社)は、そんな本。

最初にあるのは、ジャムの最初の小説、『クララ・デレブーズ』。
三人の乙女たちの一人目。

昔の少女。あまりに純粋。
夢を見る。夢に憧れる。
だが、その夢が何かは知らない。ただ、焦がれる。
無知は苦悩。
その純粋さ故に、錯乱。わが身を、心を責め苛む。
ふと現われる。夢想の一コマ。
愛すべき少女。愛されるべき少女。
三月の十日。十七歳。
晴れ渡った空。美しい。


彼女のために祈りたまえ。

2009年8月16日 (日)

『緑の葉』より

夏の日の木の葉ひとひら
旅の空から持って帰った、
小夜啼鳥が鳴きしきる
緑の森を歩いたことを
いつかその葉が語るようにと。



『シュトルム全集 第二巻』(柴田斎 訳/村松書館)収録

2009年8月14日 (金)

『ユトリロの生涯』第5章 シャイロックのような画商たち より

ユトリロは古い家々の亀裂の生じた壁を描くのが巧みである。
それらの家は白粉を下手に塗りたくったピエロたちのように青ざめた顔をして、両腕を切り落された死体のように、街路の端によろめき、押し合いながら並んでいる。
彼の画布にとらえられると、惨めで極めてちっぽけな建物の正面ですら、異常に力強い色彩と生命力を帯びてくるのである。

彼は痩せた樹木やちっぽけな雑草の混在している通俗的な景色を愛する“郊外の画家”である。
通行人が無関心に通り過ぎる壁の前で、ユトリロは立ち止り、汚点の色合いをじっくりと眺め、それを肝に銘じ、そして描く。

……………

極めて粗末な家にも惹きつけられる彼は、鍵盤のように立ち並んだ建物の正面を、あらゆる階調の白で奏でるのである。

                リボード(ペンネーム:ルイ・ルールメル)



『ユトリロの生涯』(J.P.クレスペル/美術公論社)

2009年8月13日 (木)

面白いエピソードばかり☆『フランス中世史夜話』のこと

ただし、よく知られたエピソードも多いので、初心者向きです(笑)

『フランス中世史夜話』(渡邊昌美 著/白水社)。

26の短いエピソードが含まれているのですが、そのうちの12編は白水社の雑誌『ふらんす』に連載されていたもの。
(今はUブックスにもなっていますよね。…ちなみに、手元のものは勿論、固い表紙です(笑))



フランスにはこんな話もあるんだよ、
こんな本もあるんだよ、
と話すつもりで書いた。

……………

こういう話を喜んで聞いてくれる学生諸君と無駄話をするつもりで書き加えた。



そんな言葉が「あとがき」にありますが、その想いがよく分かる内容の選び方になっています。
軽く興味深いものから、さり気なく古典的・基本的な知識に誘うところが、なかなか。
本当に楽しくフランスを知ることが出来る1冊です。
この本のそれぞれのエピソードから、次々と興味が広がれば、きっと素晴らしい知識を豊かに得ることが出来るでしょうね。

今ぱらぱらと再読すると、チョコちょこ自身も、まだまだ知らなかったことがありますね。
例えばメリュジーヌ。彼女との繋がりが強いリュジニャン家の城は、かつてベリー公ジャンが改修したそうですが、その時の城の偉容が絵で見られるそうです。
それが『絢爛極まりなき時禱書』の三月の場面。

塔の上には、有翼、金色の龍が飛翔しているそうです。
これはぜひ、確認しなくては。

「きっかけ」って、こんなものですし、それで十分ですよね☆

2009年8月12日 (水)

『錯覚数題』三 捜すものは無い より

大きな書店の陳列棚をひやかしていると、実にたくさんの本がある。
俳句の本、山登りの本、唯物論的弁証法の本、ゴルフの本、なんでも無いものはないように見える。
ところが、何かしらある些細な題目についてやや確実詳細な具体的知識を得たいと思って参考書を捜すとなってみると、さて、なかなか容易に自分の要求に適応する本は見つからないものである。

……………

同じことを書いた本が幾種類もあるより、まだ本になっていないことを書いた本が一つでも多く出たほうが読者には便利であるが、著者ならびに出版社にとっては、やはり類型主義のほうが便利であると見える。

……………

結局自分に入用なものは、品物でも知識でも、自分で骨折って掘り出すよりほかに道はない。
本屋にあまりたくさんいろいろな本があるので、ついついだまされて本さえ見れば学者になれるというような錯覚にとらわれるのである。


『寺田寅彦随筆集 第四巻』(岩波文庫)収録

2009年8月11日 (火)

『朝のコント』…

雨や地震の被害が、これ以上広がりませんように…


36歳で亡くなったシャルル=ルイ・フィリップ。
今年は彼の没後100年に当たります。

『朝のコント』(淀野隆三 訳/岩波文庫)、何度目の読み返しになるでしょう。
今は、こうして手元に置くことになりました。

『ル・マタン』紙上に掲載された短い話。
そのうちの28篇が『小さき町にて』(岩波文庫ほか)と題され、別の24篇が本書の形に死後纏められて出版されました。
彼の故郷の町に取材した『小さき町にて』の方が、日本人にはより好まれてきたかも知れません。
どちらかと比較をするのであれば、心に残るのは確かに『小さき町にて』の方でしょう。

心に残る…

…本当は、心に残らないものこそが、フィリップの作品の真髄なのかも知れません。

あまりにも淡々と、あっさりと筆は市井の情景を描き出しています。
時に美しく、時に硬く。
悲しい、美しい、恐ろしい…いえ、そんな単純なものではありません。
短い文章なのに、そこには人間が持つあらゆる感情が込められています。
丁度、生きている人間が、同時にあらゆる感情を抱いているのと同じように。
だからこそ、でしょうか。
生々しい人間がそこに存在しているからこそ、日常の一コマを通り過ぎて眺めるようで、記憶から消えてしまう作品も多いのです。
でも、そういった一コマに触れ続けることこそが、生きていくこと、人生であり経験でもあるのです。
その人生に再度触れるために、何度もフィリップの作品を繙くことになります。
そこにいるのは、「人間」です。
剥き出しになった、ありのままの「人間」。
100年前のものであれ、フランスのものであれ、関係がありません。
そこに「人間」が描かれている…それこそが、フィリップの作品が持っている力だと思います。

2009年8月10日 (月)

世界図書館…『ムンダネウム』のこと

19世紀から20世紀初頭にかけて、国際書誌学会によって集められた1600万枚のカード。
欧米全域に及ぶ書誌編纂事業。
…以前、岩波の『国書総目録』についても触れましたが、こういった事業を実行するパワーって、本当にスゴイですよね。

いえ、実行されなくても、構想し、訴えていくことだけでもスゴイのかも知れません。

先の国際書誌学会。その設立者の一人がポール・オトレ。国際十進分類法の考案者の一人でもあります。
彼が提唱し、ル・コルビュジエが設計した国際的な理想都市がムンダネウム。
残念ながら実現は成りませんでしたが、その理念の欠片はあちこちで育まれ、建造物に入り込み、形を変えて続いているようにも思えます。


今度、筑摩書房さんから『ムンダネウム』(ル・コルビュジエ,ポール・オトレ 著)が出ました。
ムンダネウム。それは、国際団体、世界美術館、世界図書館、世界大学、世界研究所を基幹とし、植物園・鉱物園、スタジアム等までを備えた“世界と人類についての最新の展示施設”です。

ポール・オトレがイメージしている世界図書館。
破損や発禁処分などから守られる、巨大な国境無き書庫。
彼の思想は単純明快です。



普遍的思想がひとつの全体であるのと同様、その普遍的思想が表明されているすべての書物は、普遍的で理想的なひとつの偉大な書物を構成する諸要素だといえる。
そうした書物を保管している個々の図書館はみな、わたしたちが頭のなかで、同じく普遍的だと思い描くことのできるひとつの図書館の諸部分をなすのである。



全ての書物は1冊の書物の部分である。
全ての図書館は一つの図書館の部分である。

非常に分かりやすいですね。

物理的にもデータ的にも実現は非常に困難でしょうが…

……目の前に、googleの文字がちらつくのは、さて、何故でしょう(笑)

2009年8月 8日 (土)

『夢は書物にあり』大学生諸君! より

図書館に、一定時間、身を置くことで、図書の「気」を取り込む。
これを「図書館浴」と称している知人がおります。

本を読むわけでない。
書棚の本を、漫然とながめている。
ただ、それだけ。

いらいらした気分が、いつのまにか、雲と散り、霧と消えていくそうです。
心がうっくつしている時は、本を読む気になれません。

しかし、本をながめることはできる。
背文字を読んでいるだけで、ふしぎに、心がなごむそうです。

本というものは、実に妙な力を持っております。
内容だけが、本の取り得ではありません。
姿や形もまた、何らかの意味を持ち、私たちに訴えているのです。

図書館浴、お試しあれ。



『夢は書物にあり』(出久根達郎 著/平凡社)

2009年8月 7日 (金)

バーコードを貼る場所のこと☆

今日は、珍しくお休みです。
一度は起きたのですが、昼過ぎまでぐっすりと二度寝していました(笑)
まるで、学生時代のような一日です。

タイトルは、そんなフレーズで、このブログを訪れた方がおられるようなので。
残念ながら、そのフレーズに合った内容の記事は無いはずなので、ここで書いてみようと思っただけです。
…でも、そんなに大したことではありません(笑)

バーコードは大きく分けて2箇所しか貼る場所はありません。
一つは、背を左にしたとき、地から1~2㎝、背から1~2㎝の所をバーコードの左下の角に合わせる貼り方。
もう一つは、今度は背を右にしたとき、同じように地から1~2㎝、背から1~2㎝の所をバーコードの右下の角に合わせた貼り方です。

先の場所なら、小説などでは裏表紙にバーコードがくるでしょうか。
後の場所なら、絵本などでは裏表紙にバーコードがくるでしょうか。
いずれも、一長一短あるでしょう。

先の場所なら、カウンターで貸出処理のためにバーコードを読む際、右利きの人なら左手で(多くの場合)背を持つことになります。
後の場所なら、左手で小口を持つことになります。
この時に「違和感」があれば、先の貼り場所の方がいいでしょうか。(当然のことですが、リーダーのタイプにもよります)

先の場所なら、蔵書点検で1冊ずつ書架から本を引き出し、バーコードリーダーで読む際、右利きの人なら左手で引き出して右手で読ませることが出来ます。
後の場所なら、左手にリーダーを持つことになります。或いは、本を棚から出してしまって積み上げる方法になるでしょうか。
これはバーコードを貼る場所の検討の前に、蔵書点検の方法論があるはずなので、それに従うことになるでしょう。

先の場所では、小説などの裏表紙にある印刷された各種バーコードを間違って読み込んでしまう恐れがあります。
後の場所では、絵本などで同じ危険があります。
通常の図書館であれば、蔵書冊数の構成からして後の場所の方が間違う確率は低くなるでしょう。

…とまぁ、思いつくままに書いてみましたが、どれも決定的な要素にはなりません。
チョコちょこが利用している図書館でも、どちらのパターンもあります。
個人的な意見を書かせてもらえれば、今後も今迄同様のバーコード管理をするような小さな図書館や地方の図書館は、先の場所にバーコードを貼る方がいいでしょうか。理由は蔵書点検の方法だけなのですが。
人数が今後も少なくなるような図書館では、蔵書点検時に棚から全ての本を出すようなことは出来ないでしょう。書架から本を引き出してリーダーで読み込むのなら、(左利きの方には申し訳ないのですが)先の場所にバーコードを張った方が効率的です。
背や地からどれだけ離して貼るのかは、本当に一長一短です。それでも、ミゾを考えると背からは離れていた方がいいでしょうし、地からあまり離れていると、貸出時に本をずらして読み込む際に不便かも知れません。
背からは2㎝、地からは1㎝…1.5㎝といったところでしょうか。


記事を探しておられた方は、こんなもので満足していただけるでしょうか(笑)
再訪があるとも思えませんが…
それにしても、検索フレーズって、見ていると面白いものですね☆

2009年8月 6日 (木)

こんな読書もいいですね☆

出久根達郎の『夢は書物にあり』(平凡社)に「買うのも読書」と題した1篇が入っています。

その中に、彼の古本屋に来た大学の先生と学生たちのエピソードがありました。

先生と学生は30分ほどの間、店内を漁り、各自が2、3冊ずつ本を選んで買っていったそうです。
その先生と学生は何軒かの古本屋を回った後、駅前の喫茶店でコーヒーを飲みながら、その日の「収穫」について各自発表していました。



読むだけが読書ではない。
いかなる理由で、自分がこの本を求めたか。
一人ずつ、語る。
恐らく、本の内容も話し合っていたに違いない。
彼らには至福の「読書時間」であったろう。



本を選ぶこと。
その迷い。
本を買うこと。
その決心。

いずれもが出久根の言うとおり、「読書」ですよね。
失敗したって構いません。それで、「匂い」が分かってくるのですから。


本の良しあしは、身銭を切って覚えるものだ。


それこそが、本当の読書の楽しみを知る第一歩でしょう。

2009年8月 5日 (水)

青い、青い、青い…「ブルゴスの夜」

今夜は、雨は降らないのでしょうか。

本当なら、明日は満月。眩い月の光が照り輝く頃。

そして明後日には、もう立秋です。


…何だか、久し振りに「夜」に目を向けている気がします。

家の中の暗がりに。
窓の外の暗がりに。


ヴィエイユ・カスティユのこの街に、青い夜が降りてくる。


そう書き出しているのは、フランシス・ジャム。
『夜の歌』(三好達治 訳/岩波文庫)の中の1篇「ブルゴスの夜」です。
ヴィエイユ・カスティユ…これは、「旧カスティーリヤ地方」のことでしょう。スペインはカスティーリヤ王国の都が、ブルゴスです。

大きな地図で見る

川の面の、もの影がみな青くなる。
歩道も青い。
竝樹も青い。
散歩者たちもみな青い、一人の娘の、ただその高笑ひの、眞赤なのを別にして。



その青い世界は地上ではない。


私は月の世界にゐる。


全ては青い虚無ばかり…



ブルゴスのサンタ・マリア大聖堂は、世界遺産にもなったもの。
虚無や朧とは掛け離れた、巨大なゴシック建築…のはずです。
でも…それは巨大な「石」を思わせます。
月の表面の石…乾き切った、枯れた石材…
青い闇の中で漂いながら、この大聖堂を見上げたら…人はこの世と思うのでしょうか。
それとも、月の世界の…生命の欠片も無い、石の世界を思うのでしょうか…

大きな地図で見る

2009年8月 4日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.29

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.29  2009.7.21

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    明日は、いよいよ皆既日食ですね♪

    大阪では、11:05に
    太陽の8割以上が月に隠されます。

    でも、天気予報は非常に怪しく…

    …折角の大イベントも、雲の向こう側かも知れません(泣)

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、7月7日以後の新刊です。

 ☆『ALMA電波望遠鏡 カラー版』(石黒正人 著/筑摩書房)
    南米チリに設置された80台のパラボラ・アンテナ。
    それがALMAです。
    ALMA計画については、HPがあります。
    (こちら → http://www.nro.nao.ac.jp/alma/J/index.html

 ☆『図解屋内配線図の設計と製作』(佐藤一郎 著/日本理工出版会)
    初心者向けの屋内配線の本。
    製図道具から始まって、配線用の図記号の解説
    電力使用の申込まで記されています。

 ☆『修験道教団成立史』(関口真規子 著/勉誠出版)
    サブタイトルに“当山派を通して”とあるように
    本山派ではなく、醍醐寺三宝院を本山とした当山派について
    考察したものです。
    …ただし、当然(?)ながら高価です(本体9,500円!)

 ☆『最後のユニコーン 完全版』(ピーターS.ビーグル 著/学習研究社)
    後日譚『ふたつの心』(2006年にヒューゴー賞とネビュラ賞を受賞)
    を収録した完全版です☆

 ☆『太古の光景』(マーティンJ.S.ラドウィック 著/新評論)
    “「人間が存在しない時代の光景」はいかに描かれてきたか”
    とは、帯の言葉。
    19世紀に生まれたその「太古の光景」を
    人々はどのように表現してきたのでしょうか。

 ☆『下りの船』(佐藤哲也 著/早川書房)
    「想像力の文学」も、はや5冊目です。
    今回は、第5回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作家によるもの。

 ☆『ムンダネウム』(ル・コルビュジエ 著/筑摩書房)
    これは…日本語で出るとは思いませんでした(笑)
    ル・コルビュジエが設計した幻の都市
    「ムンダネウム」(世界文化センター)。
    知的・文化的なある種の理想郷を創ろうとしたプロジェクトです。
    札幌市立大学附属図書館のサイトに
    こんなコラムも見つけましたので、どうぞ。
    (こちら → http://www.lib.scu.ac.jp/column/index.html

 ☆『古代の船と航海 新装版』(ジャン・ルージェ 著/法政大学出版局)
    古代の諸民族国家による海運、海賊行為から、船の各部分の考察まで。
    1982年版の新装版です。

 ☆『闊歩するゲーテ』(柴田翔 著/筑摩書房)
    ゲーテについては、類書が幾つあっても論じきれない気がします。

 ☆『イブン・ジュバイルの旅行記』(イブン・ジュバイル 著/講談社)
    1992年に関西大学出版部から出た『旅行記』の改題、文庫化。
    12世紀のメッカ巡礼の旅☆

 ☆『ミンスキー博士の脳の探険』(MarvinMinsky 著/共立出版)
    著者はインテリジェント・ロボット研究の先駆者の一人。
    早稲田大学での講演会がニュースになっています。
    (こちら → http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20090625_296271.html

 ☆『草双紙の世界』(木村八重子 著/ぺりかん社)
    草双紙は、漫画の源流でしょうか、絵本の源流でしょうか。
    220ページの中に、章立てが53もあるので…
    図版は小さいか、少ないかも知れません。

 ☆『食品偽装の歴史』(ビー・ウィルソン 著/白水社)
    “英国最高のフードライターによる警世の書”とは、帯の言葉。
    多くの図版で語られる、食品の暗黒史です。

 ☆『自然界の秘められたデザイン』(イアン・スチュアート 著/河出書房新社)
    雪の結晶から始まって
    シマウマの縞、波の形、貝殻の模様、宇宙の形まで。
    多数の図版を用いて、その数学的背景を解き明かしてくれます。
    著者は数学者。1995年には、英国王立協会から
    マイケル・ファラデー賞を贈られています。

 ☆『函館水上警察』(高城高 著/東京創元社)
    著者の生まれ故郷である函館を舞台とした、明治時代の警察物語。

 ☆『森琴石と歩く大阪』(熊田司 編集/東方出版)
    昨年の10月に民事再生手続を開始した東方出版さんの新刊です。
    明治15年の森琴石描く銅版画をもとに歩く大阪の今。
    森琴石については、こんなサイトがあります。
    (こちら → http://www.morikinseki.com/index.htm

 ☆『小林かいちの魅力』(永山多貴子 編集/清流出版)
    ここ2、3年、続けて小林かいちの本が出ていますね。
    いずれも、山田俊幸によるものですが…
    そろそろ、本を選んでいかなくてはならないでしょうか。

 ☆『Michael Jackson1958-2009』
   (1週間編集部 編集/講談社)
    追悼写真集です。約100点の写真を収録。

 ☆『輸送の経済理論』(セルヒオ・ハラ・ディアス 著/勁草書房)
    交通経済学を、より理論的に。

 ☆『死にゆく子どもを救え』(吉岡秀人 著/冨山房インターナショナル)
    乳幼児死亡率が高いミャンマーにおける
    15年間にわたる小児医療活動の記録。

 ☆『華族総覧』(千田稔 著/講談社)
    ありそうで、なさそうで…
    新書とは言え、680ページ(!)もあるので、期待は出来るのでは。

 ☆『新編音楽家の社会史』(西原稔 著/音楽之友社)
    19世紀ヨーロッパ社会における、音楽家たちの姿。
    1987年刊の改訂新版なのですが…
    この、オルフェ・ライブラリーって、どんなものでしょう?

 ☆『宗教と心理学の対話』(P.ティリッヒ 著/教文館)
    ドイツの神学者(哲学者と言ってもいいでしょう)
    パウル・ティリッヒが語る、癒しとは。

 ☆『プラスチック成形技術の要点』(高野菊雄 著/工業調査会)
    樹脂製品の様々な成形不良から見た、原因改善とその実例。

 ☆『気象と大気のレーダーリモートセンシング 改訂第2版』
   (深尾昌一郎 著/京都大学学術出版会)
    2006年度に大川出版賞を受賞したものの、改訂第2版です。
    大川出版賞とは“情報・通信分野に関する優れた図書”を表彰するもの。
    大気科学の必携書です。

 ☆『ペスト』(ダニエル・デフォー 著/中央公論新社)
    極限状況下のロンドンにいた人々の声を、デフォーが実際に集めたもの。
    完訳。

 ☆『〈プリミティヴィスム〉と〈プリミティヴィズム〉』
   (大久保恭子 著/三元社)
    非ヨーロッパの美術は、ヨーロッパでどのように受け入れられてきたのか。
    プリミティヴィズムが示すもの。

 ☆『グリーン・ニューディール』(ヴァン・ジョーンズ 著/東洋経済新報社)
    著者は、タイム誌の最も影響力ある100人の1人にも選ばれた
    環境活動家。

 ☆『旧制高等学校教育の成立』(筧田知義 著/ミネルヴァ書房)
    生徒生活から、その指導まで。
    旧制高等教育の成立、構造をまとめた労作の復刻版です。

 ☆『天体写真を撮るための冷却CCDカメラテクニック講座』
   (岡野邦彦 著/誠文堂新光社)
    冷却CCDカメラも、今では当たり前のように使われていますねぇ…

 ☆『藍から青へ』(石田紀佳 著/建築資料研究社)
    以前、雑誌『コンフォルト』に連載されていたものです。
    植物、動物、鉱物の素材が手工芸品へと変わる工程を
    ビジュアルで紹介したもの。

 ☆『一七世紀の光』(持田季未子 著/岩波書店)
    ピーテル・ヤンス・サーンレダムは、17世紀オランダの画家。
    その美しく繊細な教会画には、心奪われます。

 ☆『絵金』(パルコ)
    幕末、高知で活躍した絵師、絵金(えきん)。
    血みどろの芝居絵で知られます。
    監修をしている絵金蔵のサイトがあります。
    (こちら → http://ekingura.com/

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『気象と大気のレーダーリモートセンシング 改訂第2版』
  (深尾昌一郎 著/京都大学学術出版会/7月発売)

    本の内容が気になるというよりも
    2006年度に初版が受賞した大川出版賞が気になりますね。

    大川出版賞は
    通称大川財団(財団法人大川情報通信基金)が行っている
    顕彰事業の1つです。
    概要はこちら → http://www.okawa-foundation.or.jp/okasyu/index.html

    この「大川」とは、大川功の名を冠したもの。
    彼は大阪出身で、現在のCSKホールディングスの創業者です。
    かつては、本社も大阪にありました。
    いわゆるシステムエンジニアリングの会社です。
    創業者である大川の経営思想は今も残り
    関西文化学術研究都市の中にある
    「大川センター」と名付けられた
    CSKホールディングスの社会貢献活動の一環
    CAMP(Children's Art Museum & Park)などもその反映です。
    (こちら → http://www.camp-k.com/otona/home/
    

    …と、まぁ、ユニークな背景を持った賞ではあるでしょう。
    でも、選ばれている図書は高度な内容のものです。

    本書もその1つ。

    内容的には、学生・学院生、専門家を対象にしたものでしょうか。
    それでも選んだのは、電波工学から大気科学にいたるまで
    このレベルで1冊にまとめられている本が殆ど無いということ。
    しかも、天気予報で非常に身近な
    気象レーダー等の背景・基礎にあたるものです。

    言葉で「気象レーダー」とよく耳にしても
    さて
    一体、どれだけの人が
    何故レーダーで雨雲が観測出来るのか、理解しているのでしょう。

    ブラックボックスのように見えてしまう科学技術にも
    当然ながら基礎理論があります。
    分からないまま利用する…では
    科学技術にも、社会生活にも発展はありません。

    図書館であれば、当然揃えるべき内容だと思うのです。

    何も高尚な専門書を揃える必要はありません。
    でも、ここまで身近な技術については
    最低でも基本書となるものは並べておくべきです。

    理解出来ないから購入しない、選ばない…は論外です。

    基礎的な技術や理論を、「専門」と冠して排除する行為は
    公的な情報収集・保存機関としては致命的でしょう。
    市立レベルの図書館でも、そうです。
    貸本屋などと揶揄されることを望まないのであれば
    本書のようなものにも目を向けていただければ…そう願います。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『湯賓尹と明末の商業出版』(金文京 著/平凡社『中華文人の生活』収録)

    屋号は二酉堂
    万巻の書 売らんかな
    棟に充ち牛も汗かく文庫に
    書物の香 銅の臭みをこき混ぜて
    商売かたての儒者稼業 商人の秀才
    それにつけてもおそろしや
    秦の始皇帝の大捕り物  

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年8月 3日 (月)

『彼女のいる背表紙』から…筆写のこと

『彼女のいる背表紙』(マガジンハウス)の1篇「きみはきみのつめたい春でぼくの頬を打った」で、堀江は筆写について触れています。


書き抜く、筆写する、という作業が、日常から少しずつ消えていく。


…えぇ、最近では全くと言っていいほど、しなくなりましたね。
コピー機の普及や、こうしてキーボードを使っての打ち込み。スキャナーの利用。
それでも、かつては机に座って、蛍光灯で手元を照らしながら写していた記憶はあります。



すぐれた才能が残してくれた文章を鉛筆で写していたときの、カリカリカリカリ紙をひっかく音と手首の張りだけは、いまも呼び覚ますことができる。
それは声に出して読んだり、キーボードを叩いてハードディスクに保存したりするのとは異質の対話だった。



そう、対話、でしたね。



流れ、立ち止まり、消され、ふたたび流れていく言葉の群れ。
その群れが徐々にふくらみ、形をなしていくにつれて、紙のうえから書いた人の気配が濃厚に漂い出す。



さて、この書いた人は、著者か筆写した者か。
或いは、そのどちらもか。
紙の上に鉛筆で書き記した時、その文章は既に書き写している人のものになりつつある…そんな気がしたものです。
そこに描かれた想いは、この自分の中に取り込まれ、自分の声になり、そして自分自身となる。
文章と筆写している者との対話は、次第に著者と筆写している者との対話に変わり、やがては自分自身との対話へと昇華していく……

そして同時に、筆写は、文章とそれを生み出した著者との対話をも感じることが出来る手段です。


筆写とは、だから原著者と彼が創り出した世界への愛のつよさを、みずから確かめてみることにほかならないのだ。


筆写。
それは、作品との本当に濃密で豊かな関わりあい…

2009年8月 2日 (日)

綺麗な本ですね☆『彼女のいる背表紙』のこと

あまりの忙しさで疲れがヒドク…思わず3日目の今日も更新が出来そうになかったものを、かろうじて踏みとどまっているような状態です。
『図書館に、あったらいいな☆』の1行紹介(それすら昨日は無理でした…)や小さな変更は可能なのですが、ここに並ぶ記事程度の長さのものでも、難しい日はあるものです。

……やれやれ。


そんな状態で手元にあるのは、堀江敏幸の『彼女のいる背表紙』(マガジンハウス)です。
綺麗な装丁ですね☆
表紙の写真も、装丁も著者の手によるものです。
中はかつて、雑誌『クロワッサン』に連載していたもの。
過去の本の中で出会った、印象深い女性との再会を綴ったものです。
こんな企画も、ステキですよね。
本当に大事な女性には、生活し、成長する過程において何度か再会を果たすのですが、心の中にはあるものの、日頃に再会を望むほどではない知り合いも多いものです。
そんな彼女たちに、会いに行く…
新しい翻訳や版型の中の彼女たちではなく、最初の出会いの中の彼女たちへ。
勿論、そうなのです。
新しい本の中の彼女たちは、姿は似ていても見知らぬ女性です。
本の中の文章は、会話は、行為は、読む者の心の中で息衝き、声をあげ、動くのです。文章が変われば、その姿は変わるもの。それはかつての彼女の、新しくても「影」なのです。
本当の彼女たちは、かつての姿のまま、かつての本の中にのみ永遠の時を刻み込んでいます。
本書では、そんな彼女たちを訪ね、およそ5ページ程度でその再会シーンを綴ってくれています。

疲れた時には、短篇は有り難いものです。
ぱらぱらと…気になる女性の名を見つけては指を止め、その再会の場面に心を添わせる…
…そんな時間が、今、辛うじて読書と呼べる…確保出来る時間です。
でも、それもまた、本から受け取ることが出来る素晴らしい時間。
時間の長さや、心の落着きが問題なのではなく、その行為そのものと…そして、そこから得られるもの、与えてもらえるものこそが「読書」なのかも知れません。

2009年7月30日 (木)

サガの中の人狼…

今、ベアリング=グールドの『人狼伝説』(人文書院)を読み始めています。

本書でも取り上げられていますが、サガの中には人狼についての描写が幾つか出てきます。

その中の一つ。
谷口幸男による『アイスランドサガ』(新潮社)を開いた、本当に最初のページ。
『エギルのサガ』の第1章からしてが、人狼のお話なのです。

主人公エギルの祖父、ウールヴ。
彼はいつも、夕方になると不機嫌になるので、彼と言葉を交わせる者は少なかったそうです。
その上、ウールヴは宵になるとすぐに眠ってしまいます。


人の噂では彼は姿を変えることができるということだった。


そこで、彼はクヴェルドウールヴ(宵の狼)と呼ばれていました。
谷口の注釈によると、俗信では宵に早く眠るのは、夜に姿を変えて出歩くためなのだそうです。
勿論、名前の如く、狼に姿を変えて。

後の記述(第27章)で、クヴェルドウールヴは、ベルセルクでもあることが描かれています。
そのため、ベアリング=グールドは先の「姿を変える」の語意は文字通りではなく、「憑きもの」(狼憑き)の意ではないかと書いています。
ただ、他のサガでも本物の狼に姿を変える描写は幾らでもあるので、実際には分かりません。谷口の俗信が広く知られていたのであれば、逆に、本当に姿を変えることが出来たことを強調するために、「宵になるとすぐに眠った」などと敢えて加えているようにも受け止められます。
或いは、ベルセルクの俗信的起源には狼への変身がある…と、『エギルのサガ』の作者は言いたかったのかも知れません。
「狼のような」人は、その血の中に「狼にもなった」人を継いでいる。
そう伝えることで、ベルセルクの発作や憑きものを説明しようとしたのでしょうか。


…何とはなしに、トールキンの『ホビットの冒険』を思い出していました。
「からだの皮をとりかえる」ビヨルンが登場していましたよね。
その名の通り、熊に姿を変える大男。


これも「その時」なのでしょう。
久し振りに、ビルボやガンダルフに会いに行くのもいいかも知れません。

2009年7月29日 (水)

『告白』第11巻第20章 より

未来も過去も存在せず、また三つの時間すなわち、過去、現在、未来が存在するということもまた正しくない。
それよりはむしろ、三つの時間、すなわち過去のものの現在、現在のものの現在、未来のものの現在が存在するというほうがおそらく正しいであろう。
じっさい、これらのものは心のうちにいわば三つのものとして存在し、心以外にわたしはそれらのものを認めないのである。
すなわち過去のものの現在は記憶であり、現在のものの現在は直覚であり、未来のものの現在は期待である。



『告白 下』(聖アウグスティヌス 著/服部英次郎 訳/岩波文庫)

2009年7月28日 (火)

とってもカワイイ絵本が出ます!

カラーフィールドの出版部、カラーフィールド・パブリケーションズからとってもカワイイ絵本が出ます☆

タイトルは『ヌーヌーとフローレンス』。

くまのぬいぐるみヌーヌーと、小さな女の子フローレンスが出てくる写真絵本です。


カラーフィールドのサイトは
こちら
Amazonでは
こちら


ぜひ一度、表紙をご覧になってみてください!
一目惚れ、間違いなし、です☆

マルクスとヒルティと…

昨日から、気分的に随分と落ち込んでしまっています…

こんなときに手が伸びるのは、友達のように慣れ親しんだ作品か、古典と決まっています。

千年近くも前に、今の自分と同じ「自分」を見つけることの、半ば乾いた可笑しみと諦め…
…でも、それもまた古典の力であり、それが人間の営みなのでしょう。


マルクス・アウレーリウスの『自省録』には、様々な言葉…剥き出しになり、宗教も哲学も超えたところにある、人間としての根源的な言葉が幾つも刻み込まれています。

例えば第9巻の42。
“人に善くしてやったとき、それ以上のなにを君は望むのか。君が自己の自然に従って何事かおこなったということで充分ではないのか。その報酬を求めるのか。”(訳は岩波文庫版から)

そう、本当に、出来るだけのことを人々のためにしなくては。
そしてその時には、決して自分自身のためだったり、或いは多くを求めたり、期待してはいけない。

……マルクスが語る言葉の多くは、そこで終わっています。

確かにそうです。
こうしていれば、裏切りのような大きな苦痛は逃れることが出来るでしょう。


でも、ヒルティは続けるのです。
下の文章は『眠られぬ夜のために 第1部』(岩波文庫)の今日、7月28日から。



こうすれば、人生の大きな苦痛を最もたやすくのがれることができるが、ただし、また大きな喜びをのがすことにもなろう。
あなたが、大きな喜びを得たいと思うなら、もちろん、全くこの通りに行動することはできない。
もっとも、だれでもそういう喜びを得るにふさわしいとは限らない。



誰もがその苦痛に耐えられるものではない。つまり、相応しいとは限らない。
…でも。
大きな喜びを得るには、やはり何かを望み、求め、期待をしなくては。
リスクがあってこそ、大きな喜びは得られるもの。

ヒルティは、そう言っているのです。



121年生まれのマルクスと、1833年生まれのヒルティ。

宗教的背景や、二人の職業的地位の差なども勿論ありますが、でも。

1700年の時間にうまれたこの言葉の僅かな差異を、皆さんはどう思われるのでしょうか。
そして、どちらを自分自身の言葉とするのでしょうか。


多様な意見を、時間の流れなどは無視して、比べ、選ぶことが出来るのもまた古典が持つ力です。

2009年7月27日 (月)

『自省録』第7巻8 より

未来のことで心を悩ますな。
必要ならば君は今現在のことに用いているのと同じ理性をたずさえて未来のことに立ち向かうであろう。




『自省録』(マルクス・アウレーリウス 著/神谷美恵子 訳/岩波文庫)

2009年7月26日 (日)

ギュスターヴ・ドレの『神曲』…

裏読書日記でちらっと触れましたが、ドレの「さまよえるユダヤ人」を、チョコちょこはその大半を見たことがありません。
バリング=グールドが『ヨーロッパをさすらう異形の物語 上』(柏書房)で、あそこまで褒めるのですから、きっと素晴らしいのでしょう。

講談社からドレの画集が出ていたことがあるようですが、今では絶版になっています。

…こうなると、どうにかしてでも見たくなってきてしまいます(笑)

聖書や神曲、失楽園、ペローにラ・フォンテーヌなどは、意外と簡単に手に入るのですが…

例えば、翻訳は子ども向けになっていますが、『絵で読むダンテ「神曲」地獄篇』(論創社)なんてものもあります。
ドレの絵が、55枚。
文章は…まぁ、読まなくてもいいかも知れません(笑)
あえて本書を引いたのは、『神曲』はやはり、寿岳文章のものが素晴らしいと思うからで、他の訳文を読むくらいなら、素直にこのような本で挿絵だけを楽しんでもらった方が…と思ったからです。
タイトルにあるように、本当に絵だけで読んでいくことが出来ます。

ギュスターヴ・ドレの挿絵は、…どうして、ここまで心をとらえて離さないのでしょう。
不思議な魅力に満ちた絵の数々。


雨音が激しくなってきました。

壁に、窓に音を立ててぶつかる水の嘆きを背景に、今しばらく、地獄を経巡りましょうか…

2009年7月25日 (土)

誠文堂新光社さん、スゴイですね!

まずは、謝らなくてはいけません(泣)
かつて、大野裕明の『見ておもしろい 星雲・星団案内』について、もうこんなアナログな本は売れないでしょうね、と書いてしまいましたが…
本当に、ビックリしました。
『星雲・星団観察ガイドブック』と改題改訂されて、今月、復刊されたんです!
本書は実際に望遠鏡を覗いた時に、どのように見えるかをスケッチで表わしたもの。
ですから、初心者の天体観測には、本当にピッタリの素晴らしい本でした。
この本がまた世に出るなんて…
誠文堂新光社さんが、ますます好きになってしまいました☆

そして、続けてこちらもビックリ♪
定価がまず12,600円(税込)とビックリなのですが、それだけの価値はあるでしょう。
何しろ、NGC天体の全てを含む、13,000あまりの星雲・星団をデータと写真(!)付きで掲載しているのですから。
タイトルは『NGC・IC天体写真総カタログ』。
沼澤茂美・脇屋奈々代のコンビですから、写真を含めて言うこと無し、です。

世界天文年の今年、これらの本で夜空を見上げる機会が増えてくれるのでしたら、どんなに嬉しいことでしょう。
余談ですが、天文部を舞台にしたアニメも始まってますね。まぁ、ラブコメなのですが、アニメの公式サイトは
こちら
どんなきっかけであろうと、きっかけには違いありません。
天体に、夜空に、宇宙に心惹かれる人がこれからも増え続けてくれますように…

2009年7月24日 (金)

『自省録』第2巻14 より

たとえ君が三千年生きるとしても、いや三万年生きるとしても、記憶すべきはなんぴとも現在生きている生涯以外の何ものをも失うことはないということ、またなんぴとも今失おうとしている生涯以外の何ものをも生きることはない、ということである。

……………

なんぴとも過去や未来を失うことはできない。
自分の持っていないものを、どうして奪われることがありえようか。

……………

人が失いうるものは現在だけなのである。



『自省録』(マルクス・アウレーリウス 著/神谷美恵子 訳/岩波文庫)

2009年7月22日 (水)

緑の扉…何もかもが美しい、その向こう側へ…

…それは、真っ赤なキヅタがからむ白い壁。
琥珀色の陽射しが降り注ぐ、十月の頃。
白い壁には…そう。

……緑の扉。


美しさ。
幸福感。
嬉しさ。
愛情。


やるせない、果てしの無い憧れ。

灰色の世界の、なんと退屈で虚しいことか。


何度も現われる。
あの扉の前を通る。

なのに……


……入れない。入れなかった。


白い壁と緑の扉。



平安の世界、
歓喜の世界、
夢もおよばない美の世界、
地上の人間には理解もできないやさしさの世界へ通じている扉



彷徨う…悲しみに暮れて。
嘆きの声を上げながら…たった一人で彷徨い続ける。

一枚の緑の扉と、その向こう側を探して…



先日引用した、寺田寅彦の文章の中に出てきた、ウェルズの短編「壁の扉」。
これは『白壁の緑の扉』(H・G・ウェルズ 著/小野寺健 訳/国書刊行会「バベルの図書館」)に収録されている、タイトルと同名の短篇のこと。
原題は“The Door in the Wall”です。



彷徨い続けた彼、ウォーレスは深い穴の底で、死体となって発見されました。
その穴まで通じていたのは、粗末な板囲いと開かれたままの扉…



板囲いは板囲い、穴は穴だとしか思わない。
われわれの白昼の基準で考えれば、彼は安全な場所から闇へ、危険の中へ、死へと転落して行ったのだ。

だが、彼はそう考えただろうか?



…作品は、そう締め括られています。

また、こうも書かれています。
その扉は、彼を裏切ったのだと。


だが、果たして裏切られたのだろうか?



……寺田は、不二家のコーヒーをかき回しながら、少女への憧れを、めぐり逢いを、どう思っていたのでしょう?

それは、彼を裏切るのでしょうか。危険の中へと引き込むのでしょうか。


…でも。


えぇ…決して、そうは思えないでしょう。



決して……

2009年7月21日 (火)

読書メーター、あれこれ☆

今年2009年の、「上半期読んだ本ランキング」が出ていますね。

ページは
こちら

『秋期限定栗きんとん事件』(米澤穂信/創元推理文庫)が上下で3、4位を占めてくれています☆
嬉しいですねぇ~

それにしても、やっぱりお若い方が多いのでしょう。
書店のランキングとは微妙にずれている気がします。

でも、本当に嬉しいのはここではなく、
こちらのページ。
今週の「読みたい本ランキング」です。
新刊がぱらぱらと見える中で、なんと、山尾悠子の『ラピスラズリ』(国書刊行会)が入ってるじゃないですか!
このページ、普段はあまり見ないのですが、思わずこれから毎日チェックしようかと思ってしまいました(笑)
本当に本当に、嬉しいですね。
ステキな本は、もっともっと読まれるべきです。
ずらりと並ぶ表紙の中でも、一番目を惹く作品です。
刻刻と変化するページなので、いつまであるかは分かりませんが…でも、この瞬間だけでも、読みたいと思ってくれる方がおられるかと思うと、嬉しくて仕方ありません。
少しでも長く、ランキングにありますように……

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.28

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.28  2009.7.7

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    今日は七夕ですね☆

    残念ながら、星空は厚い雲の向こう側になりそうですが
    年に一度の逢瀬と共に
    多くの願いごとも届けられていることでしょう。

    同時に、今日は小暑でもあります。

    そろそろ、暑中見舞いも用意しなくては…

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のお届けもの・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    今日お届けするのは、6月23日以後の新刊です。

 ☆『工部省の研究』(柏原宏紀 著/慶応義塾大学出版会)
    経済史ではない「殖産興業」。
    ヨーロッパからのお雇い外国人や、技術官僚に目を向けた論考です。

 ☆『国民国家と市民』(立石博高 編集/山川出版社)
    「市民」から「国民」へ…興味ある題材ですが、さて。
    著者はスペイン史が専門でしたよねぇ…

 ☆『近代韓国のナショナリズム』(木村幹 著/ナカニシヤ出版)
    “韓国のナショナリズムはなぜあれほどまでに強烈なのか”
    …帯の言葉ですが
    本書はその「謎」を解き明かしてくれるのでしょうか。

 ☆『学校林の研究』(竹本太郎 著/農山漁村文化協会)
    「学校林」というものがあったこと、今もあること。
    それは貴重な記憶・記録ではないでしょうか。  

 ☆『鉋大全』(大工道具研究会 編集/誠文堂新光社)
    使いこなすことは難しく、でも本当になくてはならない道具ですよね。 

 ☆『彼女のいる背表紙』(堀江敏幸 著/マガジンハウス)
    雑誌『クロワッサン』に連載していたエッセイの書籍化。
    綺麗な表紙ですね! 
    書物の中で知り合った女性(作家)の印象を綴ったもの。
    7月11日には、青山ブックセンター六本木店で
    刊行記念のイベントもありますので、お近くの方はどうぞ。
    (詳細はこちら → http://www.aoyamabc.co.jp/10/10110/ ) 

 ☆『夢は書物にあり』(出久根達郎 著/平凡社)
    “読書の作法は、身銭を切って買うことから始まる。”とはHPの紹介文。
    「今日の平凡社」にも記事がありますね。
    (こちら → http://heibonshatoday.blogspot.com/2009/06/blog-post_492.html

 ☆『概説スペイン文学史』(佐竹謙一 著/研究社)
    “日本語で書き下ろされた唯一のスペイン文学通史。”
    と、書かれてしまうと、目を惹かれますね(笑)
    確かに、「日本人による通史」は無かったかも知れません。

 ☆『1968年に日本と世界で起こったこと』(毎日新聞社 編集/毎日新聞社)
    40年前の日本。そして世界は…

 ☆『アフリカのことば』(西江雅之 著/河出書房新社)
    50年にわたる、アフリカと言語の研究。その集大成☆

 ☆『唐代の人は漢詩をどう詠んだか』(大島正二 著/岩波書店)
    唐の時代の人々は、どのような発音で漢詩を詠んでいたのでしょう?
    気になりますね。

 ☆『モサド』(小谷賢 著/新潮社)
    イスラエルの対外情報機関、モサド。
    その素顔を、どんな形でも知りたい方は多いでしょうね。

 ☆『美と破局』(辺見庸 著/毎日新聞社)
    書下ろしを含む「辺見庸コレクション」の第3巻です。
    詳しい目次は、こちら → http://yo-hemmi.net/article/119641425.html

 ☆『プロをめざす人のための接着技術教本』
   (日本接着学会 編集/日刊工業新聞社)
    モノづくりの基本技術の一つ、「接着」。
    本書はその基本を体系的に解説しているもの。
    ちなみに、初心者向けにはかつて『初心者のための接着技術読本』が
    同じ日刊工業新聞社から出ています。

 ☆『災害都市、トゥルーズ』(宮崎揚弘 著/岩波書店)
    カピトゥールと呼ばれる市参事の指揮の下で
    次々と襲い掛かる災害に対応した南欧の都市トゥルーズ。
    17世紀の都市世界が甦ります。

 ☆『クリムト金色の交響曲』(宮下誠 著/小学館)
    クリムトの本は多いでしょうが…
    “金色の交響曲”に惹かれてしまいました(笑)

 ☆『ブルーノート読本』(小川隆夫 著/春日出版)
    丁度100年前の1909年に生まれた
    創立者アルフレッド・ライオンの言葉で辿るブルーノートの歴史。

 ☆『人形遣いの謎』(クリスティアン・ヴァルスツェック 著/未知谷)
    ナポレオン戦争後のヨーロッパを舞台に
    実在した人物を織り交ぜながら語られる、一人の少年の旅路。

 ☆『コーギコテージの四季』
   (ターシャ・テューダー 著/メディアファクトリー)
    1986年にアメリカで発売された、ポップアップブックです☆
    ターシャの家の四季の情景が6場面、立ち上がります♪

 ☆『紙とエンピツ』(太田大八 著/ビーエル出版)
    『PeeBoo』に連載していたものを軸とした、太田大八の自叙伝。

 ☆『図解最新太陽光発電のすべて』(工業調査会)
    まさしく旬の内容でしょう。
    最先端から次世代まで、太陽光発電の解説書。

 ☆『マイクロセンサ工学』(室英夫 編集/技術評論社)
    現場の即戦力シリーズ、第3弾。
    現場の技術者が求めるテーマに絞り
    その参考となるように構成された参考書。

 ☆『海辺で拾える貝ハンドブック』(池田等 著/文一総合出版)
    これからの夏休み、とっても役立ちそうな1冊です☆

 ☆『細字の技法 新装版』(新倉禾亭 著/日貿出版社)
    硬筆にとって代わられた毛筆細字。
    でも、実際には年賀状等でまだまだ使われていますよね。
    新装版です。

 ☆『静かなる改革者』(デブラE.メイヤーソン 著/ダイヤモンド社)
    “権力はなくとも改革はできる”とは
    ダイヤモンド社HPの紹介文にある言葉。
    魅力的ですね☆ 著者の紹介はこちら → http://book.diamond.co.jp/_itemcontents/0201_biz/00612-2.html

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・気になる1冊・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 『アフリカのことば』(西江雅之 著/河出書房新社/6月発売)

    アフリカの言語学・文化人類学の分野で
    すぐに思い付く名前が本書の著者、西江雅之でしょう。
    
    本書は、その50年に渡る研究の集大成と言っても
    いいでしょうか。
    あちこちに収録されていた論文や記事が
    本書で一つにまとめられています。

    具体的な目次や、どの論文がまとめられているかは
    著者自身によるブログがありますので
    どうぞ“蝦蟇屋敷”を訪れて(笑)
    ご覧になってみてください。
    (こちら → http://nishie.jugem.jp/

    装画は、西江雅之の他の著作も手掛けたことのある藤原真希子。
    特徴のある油彩で、すぐにそれと分かります。
    でも、本書の内容と非常に合っている気がしますね。

    今回の本は、旅のエッセイとは異なりますので
    西江の他の著作に慣れ親しんだ方には難しいかも知れません。
    でも、同じ著者の手による文章なのですから
    一度、手にしてみられてはいかがでしょうか。

    新しい世界…「異郷」が広がるかも知れませんよ。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ★・・・今日のひとこと・・・★

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    
 『ボーヌで死ぬということ』(田辺保 著/みすず書房)

    もしだれかの死を目撃したら、
    自分もまた同じ道を行かねばならぬと思うがよい。

    朝のあいだは夕まで生きられないだろうと思い、
    夕が来たら翌朝のくることを保証するな。

            (『イミタチオ・クリスチ』からの引用)   

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

    ○メインブログ  『チョコちょこ読書雑記』
               http://mys-bird.blog.eonet.jp/

    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
               choko2_mag@yahoo.co.jp

    ○このメールマガジンは『まぐまぐ!』を利用して発行しています♪
      『まぐまぐ!』    http://www.mag2.com/
        登録・解除はこちら → http://www.mag2.com/m/0000266759.html

2009年7月20日 (月)

夏で不二家で寺田寅彦で…

このところ、ずっと寺田寅彦のエッセイをぱらぱらと読み直しています。
理由は分からないのですが…何か、安心感があるのでしょうね。

先日、近所のスーパーに不二家が入りました。
残念ながらテーブル席は無いのですが、不二家のケーキは大好き☆
既に何度も足を運んでいます(笑)


寺田寅彦、不二家と来て、プルーストのように甦る記憶となれば、もうこの『青衣童女像』(『寺田寅彦随筆集 第三巻』(岩波文庫)収録)しかありませんね。


それは、彩色石版の中の半身像。青い服を着た少女が手を合わせて聖母像を見上げる場面です。
木枯しの夜、神保町の露店でこの絵を見かけた瞬間、寺田は十四、五歳の頃に自宅にあった同じ絵を思い出すのです。



神田の夜店の木枯らしの中に認めたこの青衣少女の二重像(ドッペルゲンガー)はこのほとんど消えてしまっていた記憶を一時に燃え上がらせた。
少女は四十年前と同じ若々しさ、あどけなさをそのままに保存してエメラルド色のひとみを上げて壁間の聖母像に見入っているのである。
着物の青も豊頬の紅も昔よりもかえって新鮮なように思われるのであった。



ただ、そのまま惰性で寺田は電車の停留所まで来てしまいます。
でも、この次に見つけたら、あの絵を買って帰るのだと。

そう思うのですが…


その後おりおり神保町の夜店をひやかすようなときは、それとなく気をつけているが、この青衣少女にはめぐり会わない。


そのうちに、



夏がやって来た。
夕方浴後の涼風を求めて神田の街路をそぞろ歩きするたびにはこの「初恋」の少女の姿を物色する五十四歳の自分を発見して微笑する。
そうしてウェルズの短編「壁の扉」の幻覚を思い出しながら、この次にいついかなる思いもかけぬ時と場所で再びこの童女像にめぐり会うであろうかという可能性を、さじの先でかき回しながら一杯の不二家のコーヒーをすするのである。




そんな「初恋」とのめぐり逢いに、思いを馳せながら…
コーヒーでも淹れて、一休みしましょうか。

…不二家のケーキが欲しいな☆

2009年7月19日 (日)

最近、気になるのですが…

ブックトークのシナリオを、直接ネット上で検索している方が多いですね。
殆どは教師の皆さんでしょうか。
『チョコちょこ読書雑記』にも、毎日のように「ブックトーク シナリオ 例」「ブックトーク シナリオ ○○」のような検索フレーズで辿り着いている方々がおられます。

……情けないですよね。

本来、ブックトークは自分で読んで、本と本を繋げていくものです。
商品の売込みとは違い、本や読書に興味を持ってもらうことが目的です。
自分で読んでもいないものを、紹介して、それで興味を持ってもらおうなんて虫がよすぎます。
シナリオを組み立てること、そのものが勉強です。
教師が勉強を放棄してどうするのでしょう。
忙しいから、は理由になりません。
忙しいから、工事マンが現場を放棄しては工事は進みません。
安易にネットを検索し、結果を得ようとする教師の存在は、それだけでこれからの教育について暗澹たる気持ちにさせます。
本のリストを検索することは構わないでしょう。
でも、シナリオそのものは、やはり個人の経験・体験です。
自ら喜びを感じたものであるからこそ、他人に喜んで紹介出来るのです。


繰り返します。
……本当に、情けない気持ちで一杯です。