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時の流れを忘れずに☆

2010年3月16日 (火)

『明るい部屋』と『喪の日記』と…

「温室」の写真。
わたしは狂ったように、明白な意味を語ろうとしている。



ロラン・バルトがカードにそう記したのは1978年7月24日。
この苦しみから生まれたのが『明るい部屋』です。

先日来、ロラン・バルトの2著、みすず書房さんから出ている『明るい部屋』と『喪の日記』とを続けて読んでいます。

プルーストが好きなチョコちょこからすれば、とても共感出来る内容が続きます。

…ですが、このすぐ傍に感じる「これ」は何でしょうか。
傍? …いいえ。
「これ」は、皮膚にピッタリと張り付き、肌を滑り、内部に喰い込もうとますます密着してきます。

死…? いいえ。そんな、はっきりと形あるものではありません。
空隙、空…いえいえ、それそら何かが詰まっているものであり、「これ」ではありません。

ロラン・バルトの文章を読むにつれ、「これ」はますます強く貼りついてきます。
…当て嵌まる言葉が見付かりません。
それは、何でもないもの。何かではないもの。
存在ですらないもの。なのに、確かにそこに存在しているもの。
その不気味な「これ」がいつも、常に、傍らで寄り添うのです。
喪…? いえ、喪ですらない気がします。
…そうですね。「虚」…が、まだ近しいものかも知れません。
無…いえ、「無」は「有」と等しいものです。違いますね。
やはり、虚ろ…それが最も相応しいでしょうか。

そんな温かく、恐ろしい「これ」と共に、もう少し、『喪の日記』を読み終えるには時間がかかりそうです。
…とても、一気には読めませんので。

『喪の日記』の表紙のバルト。
……本書にこれほど相応しい写真は無い気がします。

人間、バルトをもう少し、追い掛けてみましょうか……

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.45

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   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.45  2010.3.2

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      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    先日、朝の出勤時に
    懐かしい囀りが聞えてきました。

    遥かな頭上から。
    青空を背にした、小さく黒い羽ばたきから。

    今迄、すっかり忘れていた、愛らしい声。

    ヒバリの囀り。

    ……もうすぐ、春なんですね☆
    

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 ★・・・今日のお届けもの・・・★

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    今日お届けするのは、2月16日以後の新刊です。

 ☆『魚を水に入れましょう』(P.D.イーストマン 画/すずき出版)
    “英語を楽しむバイリンガル絵本”シリーズの1冊です。
    このシリーズは、英語初級者向けBeginner Books(R)シリーズから
    5冊を選んで日本語を併記したもの。

 ☆『聞き方の技術』(山田一成 著/日本経済新聞出版社)
    調査票の作成を、具体的な事例と共に解説したもの。

 ☆『ドキドキしちゃう』(小学館クリエイティブ)
    岡本太郎が遺した「書」に彼の言葉を添えたもの。
    これは字なのでしょうか。それとも絵なのでしょうか。

 ☆『ウルトライスモ』(坂田幸子 著/国書刊行会)
    スペインの前衛文学運動、ウルトライスモ。
    あまり知られていない、20世紀初頭の文学運動についての本です。

 ☆『農業普及指導論』(藤田康樹 著/東京農業大学出版会)
    農業普及の現場で役立つ実践書。

 ☆『視覚科学』(横澤一彦 著/勁草書房)
    あまり日本では紹介されてこなかった
    視覚の高次過程を重点的に紹介しているもの。

 ☆『まよけの民俗誌』(斎藤たま 著/論創社)
    斎藤たまが集めた各地の魔よけ風習の記録。
    まだ新刊が出るんですね!

 ☆『昆虫食古今東西』(三橋淳 著/工業調査会)
    各国の昆虫食の歴史や調理法をコンパクトに纏めたもの。

 ☆『京大坂の文人 続々々』(管宗次 著/和泉書院)
    もう4作目になりますね。
    残念ながら第1巻(上方文庫11)は品切れになっています。
    幕末から明治にかけて活躍していた文人の姿を取り上げたもの。

 ☆『中世の幽霊』(ジャン・クロード・シュミット 著/みすず書房)
    死者の記憶か、忘却か。どこから、どんな姿で訪れるのか。
    中世における幽霊の歴史とは。

 ☆『摸擬と新製』(前坊洋 著/慶応義塾大学出版会)
    “アカルチュレーションの明治日本”とは副題ですが…
    アカルチュレーションなんて言葉は
    文化人類学でも知らなければ分からないですよね。
    異文化の模擬から、新たな姿への変化を追ったもの。

 ☆『王国と栄光』(ジョルジョ・アガンベン 著/青土社)
    権力による統治と、栄光の意義。
    アガンベンによる政治哲学論です。

 ☆『眼の神殿』(北澤憲昭 著/ブリュッケ)
    1990年度芸術・文学部門のサントリー学芸賞を
    受賞したものの復刊ですね。
    明治期の美術について綴ったもの。
    当時の論評が
    こちら → http://www.suntory.co.jp/sfnd/gakugei/gei_bun0032.html

 ☆『廷臣詩人サー・フィリップ・シドニー』
   (キャサリン・ダンカン・ジョーンズ 著/九州大学出版会)
    豊富な一次資料から読み解く、フィリップ・シドニーの実像とは。

 ☆『ミクロコスモス』(平井浩 編集/月曜社)
    シリーズ「古典転生」の第2回配本で
    別巻1に当たる第1集です。(ややこしいですが(苦笑))
    15-18世紀の精神史に関する研究・学術誌。
    詳細は
    こちら → http://urag.exblog.jp/10022875/
    と
    こちら → http://d.hatena.ne.jp/microcosmos2010/
    にあります。

 ☆『「死の舞踏」への旅』(小池寿子 著/中央公論新社)
    版元のHPを読む限り、1年かけて行った
    新たな旅の模様を書き綴ったもののようです。

 ☆『スターリン』(サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ 著/白水社)
    副題は“青春と革命の時代”です。
    1月に出た『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち 上・下』の続刊。

 ☆『機械仕掛けの歌姫』(フェリシア・ミラー・フランク 著/東洋書林)
    女性と人造とその「声」と。
    ヴェルヌの『カルパチアの城』やホフマンの『砂男』などが
    取り上げられています。

 ☆『老いの心と臨床』(竹中星郎 著/みすず書房)
    老年期の精神的問題に踏み込んだもの。1983年刊の復刊です。

 ☆『歪み真珠』(山尾悠子 著/国書刊行会)
    『ラピスラズリ』の著者による、最新短篇集。

 ☆『フーコー』(ポール・ヴェーヌ 著/筑摩書房)
    友人である歴史学者による、遺されたフーコーの著作の分析。
    そこから見えてくるもの。
    “現代思想の稀有なドキュメント”とは、HPにある言葉。

 ☆『ローマが風景になったとき』(小針由紀隆 著/春秋社)
    西洋各地に広まった油彩スケッチから、印象派へ。
    風景画が戸外の芸術になったいきさつとは。

 ☆『ユイスマンスとオカルティズム』(大野英士 著/新評論)
    ユイスマンスの作品と人生に迫る1冊です。

 ☆『龍となれ雲自ずと来る』(武者小路実篤 画/清流出版)
    単行本未収録の作品を中心とした、実篤の画と画讃を掲載したもの。

 ☆『神話論理 4ー2 裸の人 2』
   (クロード・レヴィ=ストロース 著/みすず書房)
    …漸く、といった感じでしょうか。最終巻です。

 ☆『声と文字』(大黒俊二 著/岩波書店)
    声から文字へ。その歴史を俯瞰したもの。

 ☆『奴隷制を生きた男たち』(ジェームズ・ウォルヴィン 著/水声社)
    奴隷商人、奴隷所有者、奴隷…
    3者の人生を、日記や手紙をもとに描き出すドキュメンタリー。

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 ★・・・気になる1冊・・・★

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 『ミクロコスモス』(平井浩 編集/月曜社/2月刊行)

    あちらこちらで期待され
    紹介もされているので
    今更ながらなのですが…

    本書は、西洋の近代前史における
    「個人」を中心とした思想、哲学を集めたものです。

    当時の、とりわけ自然哲学は
    「個人」でありながら
    その影響は、時代や社会に及ぼし、及ぼされ
    決して「個人」に収めることができないものです。
    今迄は興味本位で見られることが多かった潮流を
    こうして纏められたことは素晴らしい成果です。
   
    近代の西洋的な理解からは外され
    消えかけているものも
    かつては人々の思想の中心であり
    それは社会が求めていたものでもあったことでしょう。

    日本において、こうした形で
    こうした内容のものが纏められる…
    そのことがとても誇らしくなる
    そんな1冊です。

    前述のリンク以外にも
    こちら → http://steenstrup.blog.so-net.ne.jp/2010-02-11
    でも紹介されていますし
    編者のサイトも
    こちら → http://www.geocities.co.jp/Technopolis/9866/bh.html
    にあります。
    よろしければ、ご一読を☆

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 ★・・・今日のひとこと・・・★

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 『明るい部屋』(ロラン・バルト 著/みすず書房)
     

    世界中を駆けめぐって、
    今日的問題をとらえることに余念のない、
    あの若い写真家たちは、
    みな、
    自分が「死」の代理人であることを知っていない。
    われわれの時代は、
    そうしたやり方によって「死」を引き受けるのである。

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    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

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 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

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    ○ご意見・ご感想をお待ちしています♪
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2010年3月15日 (月)

漸く読了です…『春の祭典』のこと

『春の祭典』(モードリス・エクスタインズ 著/みすず書房)。
ここ数週間、チョコちょこの心から離れなかった本です。
本書には副題があります。
「第一次世界大戦とモダン・エイジの誕生」。
この『春の祭典』を読むまで、チョコちょこはまるで第一次世界大戦のことを知りませんでした。
…いえ、勿論、読んだことはあります。
一般的なことであれば、知っていると言ってもいいでしょう。
でも、本当にはどんなものだったのか。西部戦線で「何」が起きていたのかを本当には知っていませんでした。
本書には、戦線からの手紙や日記、詩文も多く引用されています。
その一言一言が、生きた声を届けてくれます。
戦争を取り扱った本で、この『春の祭典』ほど、グイグイと引き込まれ、魅せられたものはありません。
戦争とは。
道徳とは。
社会とは。
個人とは。
目的とは。
義務とは。
赤裸々に伝えられる言葉は、数字や統計とは異なります。
そこには著者の意図もあるかも知れません。
今、某出版社から出てよく売れているニーチェについてなど、ドイツで、ナチスでどう扱われたのか何度も触れられています。
多くの文学者、哲学者がどのように扱われ、どのように振る舞ったのか。
ただ、それもまた事実でしょう。
客観的な歴史が無いように、本書もまた主観的な歴史の書、文化を綴る1冊です。
ですが、そうであったとしても、人の心を打ち、事実の一部を伝えてくれる大切な1冊であることに変わりはありません。
本書を読まなくては知らなかったことがある以上、そこに価値はあります。

…まだ、あまり上手く言葉に出来ません。
この本から得られたものを消化して血肉とするには、まだ暫く時間が必要でしょう。
それは生涯をかけて行うものかも知れません。
更に多くの書物に、記録に触れながら…

2010年3月 9日 (火)

気が付けば…

1週間も何も書いていませんね(苦笑)
忙しかったのは事実ですし、体調が良くないのも事実ですが、書けない程のものではありません。
…気の緩みですね。
その分、読書する時間が増えているのは皮肉でしょうか(笑)

クロッカスが庭先で咲き始め
ユキヤナギも一輪だけ、開いてくれています。
冷たい雨が降りしきる中
愛らしいイオノプシディウムがあちこちに見られます。

それら花々の写真をupすることも、今はまだ出来そうにありません。

久し振りに、今日は図書館にも行きました。
少しずつ、少しずつ…
年度が変われば、調子も戻るでしょうか。

ほぼ毎日の箍を自ら緩めたことを、ただ、悔やむつもりはありません。
自分なりのやり方で、自分なりの雑記を綴っていけるのなら…今は、そう思っています。

孤憤もまた、時間が癒してくれること…
少なくとも、弱めてくれることを実感しながら…
…それがいいことなのかどうかも分からないまま、悩みながら……

……5年目を生きていきましょう。

2010年3月 2日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.44

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   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.44  2010.2.16

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      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    南向きの暖かなお庭では
    もう白梅が陽射しを受けて輝いています。
    タゲリがその奇妙な声を鳴き交わし
    降る雨の冷たさも、心なしか緩んでいるようです。

    …何となく、冬の老婆のその指の隙間から
    春の気配が垣間見えた気がする、今日この頃……

    とは言え、暖かな日和と寒さ厳しい朝とが
    交互に訪れる日々は、もう暫くの間続きそうです。

    皆さんも、体調管理には十分気を付けてくださいね☆
    

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 ★・・・今日のお届けもの・・・★

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    今日お届けするのは、2月2日以後の新刊です。

 ☆『茶室手づくりハンドブック』(岡本浩一 著/淡交社)
    マンションにも茶の湯空間を、というのは非常に魅力的ですね☆
    淡交社さんのHPには
    「茶室をつくろう!」というメニューもありますので
    ぜひご覧ください。
    (こちら → http://www.tankosha.co.jp/chashitsu/index.html

 ☆『琉球文学の中世・近世』(小峯和明 編/三弥井書店)
    税込み15,750円! ですが、これは貴重な1冊ですね。
    古代に偏った琉球ではない
    知られていない中世から近世に到るまでの琉球文学の歴史。

 ☆『夜 新版』(エリ・ヴィーゼル 著/みすず書房)
    15歳の少年が見たアウシュビッツ…
    新しく訳された、ノーベル平和賞を受賞した著者による
    自伝的小説です。

 ☆『文楽二十世紀後期の輝き』(内山美樹子 著/早稲田大学出版部)
    文楽の「今」を描いた、論考をまとめたもの。

 ☆『細川ガラシャ』(田端泰子 著/みすず書房)
    ガラシャについての本は幾つかあるかも知れませんね。
    “散りぬべき時知りてこそ”…この言葉が副題になっています。

 ☆『近世の僧と文学』(西田耕三 著/ぺりかん社)
    近世の僧について、それも文学からの考察とは珍しいでしょう。

 ☆『西洋の教育の歴史』(山崎英則 編著/ミネルヴァ書房)
    “シリーズ現代の教職”とはなっていますが
    一般の方にも読める内容でしょう。
    古代から現代に至るまでの、西洋の教育について
    分かりやすくまとめたもの。

 ☆『語る老女語られる老女』(倉田容子 著/学芸書林)
    文学作品の中の年老いた女性はどのように描かれてきたのか。

 ☆『王朝摂関期の「妻」たち』(園明美 著/新典社)
    平安時代の正妻とは。多妻の中の序列とは。

 ☆『文学全集を立ちあげる』(丸谷才一 著/文藝春秋)
    文庫になりましたね。
    日本と世界、合わせて300篇を取り上げています。

 ☆『「お客様」がやかましい』(森真一 著/筑摩書房)
    お客さまは神様か? 増大するばかりの要求とその問題点。
    …それにしても、ちくまプリマー新書の対象年齢は上がる一方ですね。

 ☆『近代大阪の出版』(吉川登 編集/創元社)
    江戸時代から近代にいたるまでの大阪の出版史。
    在阪の創元社さんならではですね!

 ☆『言論の自由』(エリック・バレント 著/雄松堂出版)
    言論について、多国間を比較研究したもの。
    …いいものだとは思いますが、いつもの通り
    高額ですね…雄松堂出版さん(苦笑)

 ☆『ラディカル構成主義』
   (エルンスト・フォン・グレーザーズフェルド 著/エヌティティ出版)
    まだ殆ど日本では知られていないのではないでしょうか。
    ピアジェの再解釈も踏まえた
    ラディカル構造主義の本格的なテキストです。

 ☆『呪術意識と現代社会』(竹内郁郎 編著/青弓社)
    東京23区民と呪術との組み合わせはユニークですね。
    現代の都心における、呪術行為の意識とは。

 ☆『中世への旅騎士と城』(ハインリヒ・プレティヒャ 著/白水社)
    Uブックスになりましたね。
    生き生きとした中世への旅の始まりです。

 ☆『貧者の領域』(西澤晃彦 著/河出書房新社)
    貧者とは。その現実とは。その排除と隠蔽の実際とは。

 ☆『杉村顕道怪談全集』(杉村顕道 著/荒蝦夷)
    出版社さんは「あらえみし」と読みます。
    仙台の文人による怪談話。あちこちで紹介されているようですね。

 ☆『「象徴天皇」の戦後史』(河西秀哉 著/講談社)
    戦後、天皇像はどのように造り上げられてきたのか。

 ☆『日本砕石業史研究』(石田真人 著/出版文化社)
    業種のイメージは、その実態を知らずに
    推測と想像で成り立っていることが多いものです。
    その意味で、本書のようなものは貴重でしょうね。

 ☆『経済戦争の理論』(中山智香子 著/勁草書房)
    経済戦争とは、平時の戦争であり
    常に臨戦態勢でいなくてはならないもの。
    本書では、そんな経済思想と戦争との結びつきを考察しています。

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 ★・・・気になる1冊・・・★

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 『近代大阪の出版』(吉川登 編集/創元社/2月刊行)

    創元社さんを検索した時に表示される文章は
    次のようなものです。

    “カーネギーシリーズ、「知の再発見」シリーズをはじめ、
     主に心理学、歴史学を中心に出版。
     大阪、関西にかかわる書籍も手がける。
     ベストセラーよりロングセラーを。
     関西から文化の香り高い出版を目指しています。”

    公平に見れば、もともと東京の支店であり、後に独立した
    東京創元社さんの方が、今では有名になっているでしょうね。
    
    ですが、今でも大阪のど真ん中。
    本町を拠点にしている関西の出版社さんとして
    活躍しておられます。

    創元社さんのホームページには
    創業時からのエピソードが「創元社の歩み」と題されて
    掲載されています。
    (こちら → http://www.sogensha.co.jp/com_history/index.html
    とても面白いので、是非一度、読んでみてください。

    
    そんな在阪の創元社さんから出る『近代大阪の出版』。
    これはもう、期待せずにはいられません。

    ちなみに、創元社さんのサイトには
    大阪の出版事情や古書について書かれた
    「古書往来」というコラムもあります。
    こちらも、読んで楽しい連載になっていますので
    よろしければ読んでみてくださいね。
    (こちら → http://www.sogensha.co.jp/page03/a_rensai/kosho/kosho_top.html

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 ★・・・今日のひとこと・・・★

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 『子どもが描く世界』(クリスティーン・アレグザンダー ほか著/彩流社)
     

    わたしのいちばん幼いころの記憶の一つは、
    父の書斎で本を道具にして遊んだことだ。
    たとえば、何冊かの大きな辞書を使って塔や橋を作ったり、
    挿絵を眺めたり、
    読んでいるふりをしたり、
    それからペンか鉛筆を見つけたときは
    いつも空白のページに走り書きをしたりした。
    こういった、初めてもの書きを試みたものの多くが
    いまでもまだ残っている。
    この子どもの遊びがわたしの以後の人生に
    影響を及ぼしたのではないかとよく思う。

                      オールコット

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    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

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2010年2月26日 (金)

写真がいいですね☆『星明りの村』のこと

雨が降っていますね。

急に暖かな日が続くと、身体も心も何だか落ち着かず…逆に風邪をひいてしまったようです。


毎年、夏の2ヶ月間を。
約13年もかけて少しずつ。

…そんな旅の記録に憧れもあるでしょう。

ロマネスクの聖堂を33箇所。
フランス国内を少しずつ。

…羨むと同時に感心もしてしまいます。

積み重ねられた歳月の記録は、例え平易な言葉と素朴なスナップで組み上げられていたとしても、それだけで人の心を惹き付ける力を持っています。

『星明りの村』(西出真一郎 著/作品社)は、作者も書いているように“聖堂の見える土地に暮らす人々の点景を描き出そうとした”ものです。
それは本当に、個人的な経験、印象であり、ガイドブックや建築の資料とはまるで異なる朴訥とした旅の記録です。
その旅を切り取る、一枚のスナップ写真。それがとても「その土地」を身近に感じさせてくれます。
飾り気の無い、何処にでもあるような風景。それが、あの有名な聖堂の足下だとは思えないほど、あまりにも親近感の強い点描。
そこにも、当然ながら存在している「普通の生活」を垣間見せてくれるスナップばかりです。
居丈高なものではなく、時にこうした身近で親しみの湧く旅行記をぱらぱらと捲るのもステキな時間です☆

何気無く。
さり気なく。
こつこつと。
少しずつ。

そうして、何かを残し、積み上げ、気楽に誰かの時間に溶け込むことが出来るものを生み出せたら…それはとても素晴らしいことだと思います。

2010年2月21日 (日)

シャルル五世とフランス国立図書館と☆

今日のお昼は、随分と温かい日和でしたね☆
柔らかな陽射しの下で、愛犬とヌクヌクしていました。

先日、イギリスの事例を出したので、次はフランスで…という訳ではありません(笑)
たまたま、白水Uブックスになった『フランス中世歴史散歩』(レジーヌ・ぺルヌー,ジョルジュ・ぺルヌー 著/白水社)を読んでいると、シャルル五世についての記述が出てきたので。

賢明王と名付けられたシャルル五世は、読書家として知られていました。
そんな王が建てたヴァンセンヌ城。
この中に、彼は王立図書館 La bibliothèque du roi を整備しました。
今のフランス国立図書館 Bibliothèque Nationale de France (BnF) は、この王立図書館を起源としています。
BnFのサイトは
こちら

…それにしても思うのですが、海外の国立図書館のサイトはどれも素晴らしい出来栄えですよね。日本のものが、少し恥ずかしくなってしまうくらいです…


さて、本書について。
昨年2009年は、著者のレジーヌ・ぺルヌー生誕百年の年でした。
訳者あとがきでは、彼女のことを“世界に名だたる「中世の貴婦人」”と書いていますね。
彼女はジャンヌ・ダルクの研究者として知られています。
同じくあとがきによれば「あちらの世界の人々に会いに行く。ジャンヌ・ダルクにも」と言って昏睡状態に入り、その三日後に亡くなられたそうです。
フランス中世の第一人者と辿る、歴史散歩。
読みやすく、持ち運びもしやすいUブックスで、ぜひ一度ご一読ください☆

2010年2月16日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.43

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   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.43  2010.2.2

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      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    今年に入ってから
    作品で親しんできた方々の
    訃報が次々と目に留まります。

    電子だ、紙だと
    様々な噂と憶測が飛び交う中で…

    …そんな騒動に巻き込まれることの無い

    そんな「作品」が、確かに存在するのだと

    遺されたものを見ながら
    思う…信じる…

    …いいえ。
    
    知る、そんな日が続いています。
    

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 ★・・・今日のお届けもの・・・★

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    今日お届けするのは、1月19日以後の新刊です。

 ☆『フランス中世歴史散歩』(レジーヌ・ペルヌー 著/白水社)
    7年目にして白水Uブックスになりましたね。
    帯にあるように“中世史の大家とともに巡る歴史の旅”を
    ぜひ手軽なサイズで。

 ☆『明治留守政府』(笠原英彦 著/慶応義塾大学出版会)
    岩倉使節団を派遣していた最中の政府について書かれたもの。

 ☆『考古学のあゆみ』(BRIANM.FAGAN 著/朝倉書店)
    理論だけではない、読みやすい一般向けの概説書です。

 ☆『大聖堂』(パトリック・ドゥムイ 著/白水社)
    文庫クセジュです。
    大聖堂の建築から管理運営、その役割から中の暮らしまでを
    多面的に描いたもの。

 ☆『ストーリー・ガール』(モンゴメリ 著/角川書店)
    角川文庫。
    かつてNHKでも放映された、世界中で大人気のドラマ
    『アヴォンリーへの道』の原作の一つです。

 ☆『ガリレオ』(アンニバレ・ファントリ 著/みすず書房)
    ガリレオ裁判からその名誉回復までを描いたもの。
    12,600円(!)ですが、HPにあるように
    “ガリレオ裁判をめぐる関連書の中でも最も正確にして、
     最も詳細かつバランスのとれた書として
     国際的にきわめて高い評価を得ている”ものでしょう。

 ☆『鳥を探しに』(平出隆 著/双葉社)
    多くの「祖父」と出会う旅へ…
    表紙の絵にも、著者の祖父、平出種作の作品を使用しています。

 ☆『バーチャルリアリティ学』
   (日本バーチャルリアリティ学会 編集/工業調査会)
    バーチャルリアリティのシステムや原理を学べるテキスト。

 ☆『中世の狂気』(ミュリエル・ラアリー 著/人文書院)
    中世の狂気について、社会・文化的側面も含めながら
    精神医学的に分析を試みたもの。

 ☆『孤独の科学』(ジョンT.カシオポ 著/河出書房新社)
    様々な角度から、孤独とは何かを解明しようとするもの。

 ☆『自在置物』(原田一敏 著/マリア書房)
    龍や昆虫などの手足を実際に動かせる、自在置物。
    殆ど観賞されることが無かった作品、およそ70点が載せられています。

 ☆『ナノマテリアルの安全管理』(オーム社)
    ナノ材料の製造における注意や、リスク管理について
    基本的な知識をまとめたもの。

 ☆『明治維新と史料学』(明治維新史学会 編集/吉川弘文館)
    明治維新史研究の9巻目。
    諸史料がどのように蒐集・編纂されたかを論じたもの。
    「『日本史籍協会叢書』稿本の伝存と構成」といった目次には
    惹かれますね☆

 ☆『未完のフィヒテ』(石崎宏平 著/丸善プラネット)
    『イエナの悲劇』の著者による、その続きのフィヒテ
    と言ってもいいでしょうか。

 ☆『クロード・カーアン』(永井敦子 著/水声社)
    シュルレアリスムの25時の1冊。
    Claude Cahunは、仮面や鏡を使ったセルフポートレイトで知られる
    写真家です。

 ☆『とざされた時間のかなた』(ロイス・ダンカン 作/評論社)
    「海外ミステリーBOX」という新しいシリーズが出るようですね。
    その内の1冊。
    かつて「児童図書館・文学の部屋」シリーズにあったものの
    改訂新版ですが、この表紙は…大人を意識しているのでしょうか。

 ☆『コナン・ドイル伝』(ダニエル・スタシャワー 著/東洋書林)
    2000年、MWA(アメリカ探偵作家クラブ賞)の
    幾つか部門で候補になったり、受賞を果たした作品です。

 ☆『デザイン事典|文字・フォント』
   (モリサワ 編集/毎日コミュニケーションズ)
    モリサワのOpenType全書体を完全網羅!
    モリサワについてはこちら → http://www.morisawa.co.jp/

 ☆『オイラーの贈物 新装版』(吉田武 著/東海大学出版会)
    版元を変えて、3度目になりますね。
    オイラーの公式を知るために、一歩ずつ学ぶ数学の基礎。

 ☆『法と経済学』(スティーブン・シャベル 著/日本経済新聞出版社)
    “米国のロースクールのスタンダードテキストを完訳”とはHPから。
    法と経済学を学ぶ上で基本となる教科書です。

 ☆『サンスクリット語・その形と心』(上村勝彦 著/三省堂)
    上村勝彦と言えば、ちくま学芸文庫で未完となっている
    『マハーバーラタ』が思い出されます。
    本書もまた、その上村勝彦の遺稿を柱としたもの。
    帯にある“最新・最高のサンスクリット語入門”という言葉に
    相応しい1冊でしょう。

 ☆『漱石の「猫」とニーチェ』(杉田弘子 著/白水社)
    ニーチェの思想が、日本の近代知識人に与えたその衝撃の大きさ。
    そこに、彼らは何を見たのでしょうか。

 ☆『アガンベン入門』(エファ・ゴイレン 著/岩波書店)
    イタリアの哲学者、アガンベンの初期から現在にいたるまでの
    思索の全貌を解説したもの。

 ☆『異説・日本近代文学』(出原隆俊 著/大阪大学出版会)
    作家どうしの作品の「借用」と「典拠」から見る近代文学史です。

 ☆『ビジュアルで学ぶ動物看護学』(『CAP』編集部 編集/チクサン出版社)
    『CAP』は獣医師の為の総合誌です。
    動物介護師向けのテキストですが
    一般の方も興味はあるのではないでしょうか。

 ☆『読書雑志』(吉川忠夫 著/岩波書店)
    中国文学・思想の第一人者による中国古典世界への招待。

 ☆『現代イスラーム哲学』
   (ムハンマド・アッ=タバータバーイー 著/書肆心水)
    シーア派で、20世紀最高位の哲学者とされる
    タバータバーイーによる、現代イスラーム哲学の成果。

 ☆『超音波技術入門』(宇田川義夫 編著/日刊工業新聞社)
    幅広く、超音波の基礎と応用を解説したもの。

 ☆『天啓を受けた者ども』(マルコス・アギニス 著/作品社)
    『マラーノの武勲』の著者による、現代の南米を舞台とした
    麻薬とカルト集団をテーマとした巨編。

 ☆『イギリスの野の花えほん』(シャーロット・ヴォーク 画/あすなろ書房)
    『ねこのジンジャー』やファージョンの絵本も出している
    シャーロット・ヴォークによる、96種の野の花の絵本☆

 ☆『漬けもの博物誌』(小川敏男 著/八坂書房)
    漬物と言えば、この著者でしょう。
    『つけ物風土記』の改題、復刊です。

 ☆『古代宮廷の知と遊戯』(猪股ときわ 著/森話社)
    古代の楽書から物語、説話までを読み解き
    宮廷の遊戯の現場を考察したもの。

 ☆『フランツ・ローゼンツヴァイク』(佐藤貴史 著/知泉書館)
    ローゼンツヴァイクについては
    去年『救済の星』がみすず書房さんから出ましたね。
    本書はその『救済の星』を中心に彼の思考を読み解いていくもの。

 ☆『オルティス 変奏論』
   (ディエゴ・オルティス 著/アルテスパブリッシング)
    ルネサンス音楽を知るには貴重な邦訳。
    …ですが、本体価格7,600円は辛いかも知れません(苦笑)

 ☆『スターリン 上』(サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ 著/白水社)
    英国文学賞の受賞作品。
    白水社さんからは、若きスターリンを描いた
    続篇も来月に刊行予定です。

 ☆『出版界おもしろ豆事典』(塩澤実信 著/北辰堂出版)
    何かと興味を持たれる事が多くなった出版界。
    塩澤実信の文章は読みやすいですよね。

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 ★・・・気になる1冊・・・★

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 『現代イスラーム哲学』
   (ムハンマド・アッ=タバータバーイー 著/書肆心水/1月30日刊行)

    今回は書肆心水さん。
    「心水」は「しんすい」と読みます。
    社名からは想像出来ないのですが
    2004年創業のまだまだ新しい出版社さんです。

    …それにしても、いつもいつもあまり売れなさそうなものを(苦笑)
    と思ってしまうのですが

    “新事物よりも、百年後にも意味をもち続ける根本的な本を”

    という理念にはとても共感してしまいます。

    既刊本を眺める限り、この理念を今も持ち続けておられるのでしょう。

    そんな流れの中で選ばれたのが本書。
    イスラームの哲学とは言え
    生きる上で、様々な、幅広い思想・哲学に触れることは
    決して無駄なことではありません。
    恐らく、本書もそんな1冊になることでしょう。

    2004年の創業当時の記事ですが
    訳者の黒田壽郎へのインタビューが書肆心水のHPにあります。
    こちら → http://www.shoshi-shinsui.com/author-kuroda.htm

    また、本書の紹介もこちらになります。
    → http://www.shoshi-shinsui.com/book-hikmah.htm

    これからも見守っていきたい、頑張ってもらいたい
    出版社さんの一つです☆

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 ★・・・今日のひとこと・・・★

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 『写真的思考』(飯沢耕太郎 著/河出ブックス)
     

    三枚の写真が、
    カメラアングルまでほぼ一致していることを、
    偶然と見るにはあまりにも話ができ過ぎている。
    むしろ優れた写真(たち)には、
    時空を飛び越えて、
    過去・現在・未来を一挙に繋いでしまうような力が
    含まれていると考えた方がいいのではないだろうか。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

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2010年2月13日 (土)

コーネルに似て非なるもの…『Scope』のこと☆

ただただ、時間だけが流れていく毎日。
気が付けば、月曜日以来の更新です。
地に足が着いておらず、しっかりと「自分」を確保することが出来ていません。
数日前の自分と、今の自分との間の時間的な距離を把握することが出来ず、昨日と今の区別すら曖昧になっている気がします。
あちこちに自分の「欠片」を残しながら、自分の手の中にはもう何も残っていない感覚は、「我」を形作る境界が溶けて失われるようなもの。

…こんな気分の時ほど、このようなオブジェに滑り込んでしまいます。

先日、コーネルの箱に触れましたが、その箱を閉じてしまい、ただ穴から覗くことで違う空間へと引き摺り込まれていく作品があります。
それが桑原弘明の『Scope』(平凡社)。
小さな箱の小さなレンズ。
覗くその先には部屋があり、窓があり、庭が広がっています。
その奥行きの素晴らしいこと! この小さな箱から、全く別の世界へと入り込めるような気がします。
コーネルと違い、桑原は自らの手でオブジェを創っていきます。
それは指先が大きく思えるほどに微小なもの。
その美しさは、一度でも見てしまえば、あらゆる人を虜にしてしまうでしょう。
この箱の中に…いいえ、その奥に、その向こう側に、新しい物語があります。
扉の脇に、ほら影が…
…その奥へと行かなくては。
そこには間違いなく、違う世界があります。その一部が見えるのです。

……そこには、「自分」すら見付かるかも知れません。

2010年2月 8日 (月)

ジョージ四世と大英図書館と☆

居間のカーテン越しに、青空が見えています。
疲れ方がひどかったので今迄横になっていましたが、何だか明るい陽射しに心が和みます。
柔らかく優しい光ほど、心を安らかにしてくれるものはありませんね…

近頃は、随分と気ままな更新になってきました。
ずっと読んでくださっている皆さんには申し訳なく思っていますが、どうぞお許しください。


今日は、珍しくジョージ四世を取り上げた本を。
『ジョージ四世の夢のあと』(君塚直隆 著/中央公論新社)。

彼は仕方が無い面はあるものの、歴史上も文学史上もあまりいい印象は持たれていません。
放蕩三昧と離婚騒動。
本書のトップにも、当時の『タイムズ』の酷評から始まっています。



どの目が彼のために涙を流そうか?

……………

わがままな奴に人々は同情など寄せはしない。



…随分とストレートな表現です(笑)

そんな彼は、先王ジョージ三世が集めさせた貴重な蔵書6万5千冊をそっくり大英博物館に寄贈したい、そう政府に申し入れたそうです。
時は1823年。



私はこの書物を国民への贈り物として考えてもらえればと切に望んでいる。
さらにこれが結果的には、国家による業務となってくれることを。



本心かどうかは別として、彼はこのように首相に伝えたそうです。
つまり、国王が本を蒐集するのではなく、政府が国費を投じて大規模に本を集めていくべきだと、そう言っているのです。
イギリスの納本制度や公共の手による国立図書館の建設などの理念が、この瞬間から実際的に流れ始めたといってもいいでしょう。
大英博物館は、当時改築の計画があった部分に新しく図書室を設けることになりました。やがてそれは更に増築され、有名なあの円形の閲覧室(Reading Room)が姿を現します。
その過程については、大英博物館(The British Museum)の
サイトにも載っています。
何度見ても、この閲覧室のパノラマは素晴らしいですね!
画像もWeb上に沢山ありますので、ぜひご覧になってみてください。

一方、ジョージ四世が寄贈した本については、現在、新しい大英図書館(The british Library)に移されています。
こちらは1998年に新設された、まだまだ新しい図書館。

トップページも、あまり気取らない雰囲気です。
そうそう、ここには
オンラインショップまであります!
…日本では考えられませんね(笑)
この大英図書館の中に、吹き抜けの中にタワーとなって国王図書室(The King's Library)の貴重な蔵書は収められています。
これもまた、一度見たら忘れられない光景です。
よろしければ、この画像も検索してみてくださいね☆


ジョージ四世と言えば、国王即位と同時に王立文芸家協会(The Royal Society of Literature)も創設しています。

今迄あまり知らなかったことばかり、本書では教えられています。
知らないことは、特定の人物に対する評価までを誤ってしまう…そんなことも考えさせてくれる1冊でした。

2010年2月 4日 (木)

漸く3巻目です! 『ヘイムスクリングラ』のこと

…寒いですね。
明け方も夕方も、随分と明るくなったと思っているのですが、やはり、まだまだ寒い日が続きます。
その寒さのためもあるのでしょうか、近頃、体のあちこちが軋み始めています。
相変わらず耳の調子も悪く、背や肩、腕の痛みなど、年齢やストレスもあるのでしょうがお仕事の集中も妨げるので困っています。
このブログも、少し控え気味になるかも知れません。
どうぞ、気長にお付き合いくださいね。


待ちに待ったスノッリ・ストゥルルソンの『ヘイムスクリングラ』第3巻が発売されました。
発売日を過ぎても、なかなかオンライン書店で購入が出来ず、苦悩する日々が続きましたが、それも漸く終わりです。
小さな版元さんは、本当に大変ですね。例えHPに掲載されていても、その本が日付どおりに流通するとは限らないのですから。
…まぁ、まさか邦訳されるとは思ってもいなかった名著ですから(笑)、気長に待っています。
最終の第4巻は3月下旬とのこと。年度明けには、全巻が揃うことでしょう。

第3巻は、オーラヴ聖王のサガのクライマックス、『ヘイムスクリングラ』の山場です。
大切に読ませていただきます。

…次は、何を出してくれるのでしょうか。楽しみな版元さんです☆

2010年2月 2日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.42

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   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.42  2010.1.19

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      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    寒い日が続きますね。
    関西の平野部でも、先日は雪になりました。
    皆さん、お身体は大丈夫でしょうか。

    海の向こうでは、ハイチが大変な状況になっています。
    関西で震災を体験した一人としては
    我が身のことのように思えて仕方がありません…

    少しでも、少しでも早く、日常が戻りますように……
    

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 ★・・・今日のお届けもの・・・★

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    今日お届けするのは、1月5日以後の新刊です。

 ☆『漢籍伝来』(静永健 著/勉誠出版)
    漢籍は、『白氏文集』は
    どのように日本や東アジアで読まれてきたのでしょうか。

 ☆『マイケル・ポランニー「暗黙知」と自由の哲学』(佐藤光 著/講談社)
    “本邦初の本格紹介”と帯にはありますが
    少しだけ、違和感を覚えますね。
    科学哲学者ポランニーの全体像を、ということであれば
    確かに出版数は少ないのですが…

 ☆『ヒンドゥー教の〈人間学〉』(マドレーヌ・ビアルドー 著/講談社)
    ヴェーダや、『ラーマーヤナ』に『マハーバーラタ』。
    古代のバラモン教から、現代のヒンドゥー教まで。
    多彩なインドの宗教哲学を見通す1冊です。

 ☆『フォークの歯はなぜ四本になったか』
   (ヘンリー・ペトロスキー 著/平凡社)
    身の回りの実用品は、どのようにして形が決まってきたのでしょうか。
    ペトロスキーと言えば、『本棚の歴史』もすぐに思い出しますね。
    平凡社ライブラリーで復刊です。

 ☆『純粋理性批判 1』(カント 著/光文社)
    中山元による、全7巻の新訳ですね。
    “分かりやすさを徹底した”本書がいいのかどうかは
    意見が分かれるかも知れませんが…
    これを機会に、もっと身近になって欲しい1冊です。

 ☆『叢書グローバル・ディアスポラ 6』(中川文雄 編著/明石書店)
    第4巻の「ヨーロッパ・ロシア・アメリカ」に続いて2回目の配本。
    移民を含めた、人の移動から見た「世界」とは
    どんな姿をしているのでしょうか。

 ☆『立本倫子colobockle apartment』
   (Pooka編集部 編集/学研教育出版)
    立本倫子のサイトがこちら → http://www.colobockle.jp/index.html
    絵本も出しておられましたよね。

 ☆『メフィス』(フロラ・トリスタン 著/水声社)
    作家としてよりも、女性社会主義者として知られているかも知れません。
    19世紀パリの貴族社会を舞台としたプロレタリア文学。

 ☆『切手帖とピンセット』(加藤郁美 著/国書刊行会)
    オールカラーで184ページ!
    “グラシン紙のポケットが切手の背景に写っている、
     ちょっと古くて懐かしい切手帖そのものを思わせる、
     祖父江慎氏によるブックデザイン”
    …これはもう、ぜひ見てみなくては。

 ☆『数学はいかにして創られたか』(Luke Hodgkin 著/共立出版)
    ヨーロッパ以外の原典資料も駆使した広域的な数学史。

 ☆『民主主義がアフリカ経済を殺す』(ポール・コリアー 著/日経BP社)
    民主主義がもたらす深刻な危機。疲弊するアフリカ社会の実態とは。

 ☆『変容する中国の労働法』(山下昇 編著/九州大学出版会)
    「世界の工場」中国の労働事情とは。
    労働者の権益保護が強化された、最新の労働法を解説したもの。

 ☆『アメリカの医療保障』(長谷川千春 著/昭和堂)
    シリーズ「アメリカ・モデル経済社会」全10巻の6巻目です。
    オバマ政権になって再び新聞紙上に見られるようになった
    アメリカの医療保障について知るにはいいものでしょう。

 ☆『現代人口辞典』(人口学研究会 編集/原書房)
    人口問題の言葉や概念を解説したハンディな用語辞典です。

 ☆『ハンナ・アレント』(亀喜信 著/世界思想社教学社)
    つい先日も、勁草書房さんから『公共性への冒険』が出ていましたね。
    彼女の思想は死後35年が過ぎても
    途切れることなく続いていきますね…

 ☆『病院で聞くことば辞典 新版』(浜六郎 著/岩波書店)
    四六版で並製。手軽に持ち運び出来るサイズで
    病院でよく聞く言葉を解説してくれるもの。

 ☆『今すぐ弾けるやさしい大正琴入門 改訂版』
   (泉田由美子 編著/自由現代社)
    まだまだ人気ありますよね、大正琴。
    楽器の教本で知られる自由現代社さんから出ているものです。

 ☆『文化史とは何か 増補改訂版』(ピーター・バーク 著/法政大学出版局)
    増補改訂版の表紙はフェルメールなんですね。
    初版とどちらがいいかは好みが分かれるかも知れません。
    原著第二版の完訳、文化史研究を網羅した格好の入門書です。

 ☆『夜食の文化誌』(西村大志 編著/青弓社)
    夜食…確かに、新しい文化かも知れませんね。

 ☆『集団人間破壊の時代』(サマンサ・パワー 著/ミネルヴァ書房)
    2003年にピューリッツアー賞(ノンフィクション)を受賞した
    “A Problem from Hell”の翻訳です。
    紛争、迫害、虐殺…国家や社会の失敗とこれからと。

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 ★・・・気になる1冊・・・★

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 『切手帖とピンセット』(加藤郁美 著/国書刊行会)

    副題は
    “1960年代グラフィック切手蒐集の愉しみ”です。

    国書刊行会さんのHPでは
    この1960年代を

    “一般の人々が海外旅行をすることがまだ難しく、
     夢のように思われた1960年代”

    と紹介されていますね。
    

    少しお話は変わりますが
    先日、彰国社さんから
    『Showa Style 再編建築写真文庫』という本が出ました。
    1953年から1970年まで出版された
    北尾春道の写真による『建築写真文庫』を再編集したものです。
    無名の建物。無名の人々。
    1960年代の「リアル」が写し込まれています。

    『切手帖とピンセット』は
    この『Showa Style 再編建築写真文庫』と同じ懐かしい時代の切手を
    1154枚(!)も詰め込んだ
    オールカラー184ページの素晴らしい1冊です。

    どちらの本も
    詰め込まれたその「空気」を
    愛おしく思う方は多いのではないでしょうか…

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 ★・・・今日のひとこと・・・★

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 『レクイエム』(アントニオ・タブッキ 著/白水Uブックス)
     

    こんな物語を書いてはいけないのだと、
    なんとなく察しはついていた。
    なぜなら、
    虚構を模倣して、
    それを真実に変えてしまうだれかが、
    かならずどこかにいるものだから。

    ……………

    わたしはそのできそこないの物語をもう一度生きなければならなかった。
    ただし、
    今度は、
    ほんとうの意味で。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

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2010年1月31日 (日)

雨ですね…アジェからシミック、コーネルへ

朝から薄暗く、昼には小雨になりました。
日も射さず、周囲の声も稀な午後…

ふと、思い出したのはチャールズ・シミックの文章です。



六月の日曜の早朝。
真夜中過ぎに雨が降ったが、大気も空も奇跡のように澄みわたった。
大通りに人けはなく、店はどこも閉まっている。
まだ人間に見られる前の、物たちのつかのまの姿。



『コーネルの箱』(チャールズ・シミック 著/文藝春秋)の中の一節。
訳者柴田元幸も書いているように、この言葉はパリの写真家アジェを念頭に置いたも
のでしょう。

コーネルは箱に様々な事物を閉じ込めた芸術家。
彼の作品には、パリの商店のウィンドウを写したアジェの影響があるとする説もあるようです。
また彼はアメリカの詩人エミリー・ディキンソンを最も愛していたとも。
お気に入りの二人と関わるから…ではありませんが、コーネルが創る世界には、惹かれるものがあります。

シミックは書いています。


ディキンソンの詩を読むこと、コーネルの箱を見ることは、アメリカの文学と美術を新しい考え方で考えはじめることだ。


…と。

2010年1月27日 (水)

写真が一杯☆ 『エッフェル塔』のこと

晴れていても、雨が降っていても。
風が吹いていても、雪が舞い降りていても。

その鉄塔は窓の向こう側。
今は暗闇を背に、小さな灯りを瞬かせています。

…いえ、残念ながらエッフェル塔ではありません。
でも、あの鉄塔もまた、何かを表しているのでしょうか。


塔の隠喩の只中で、ロラン・バルトがエッフェル塔に見た、人間への最後の変身は…



この塔は、この姿によって、守護の役割をあらわに示している。
エッフェル塔は、パリを見守る女性、足下に身をよせるパリをいたわる女性なのである。



女性ではありませんが、この『エッフェル塔』(ちくま学芸文庫)の一節を読んだ時に思い出したのは、佐藤さとるの『ジュンと秘密の友だち』です。
あの中のダイちゃんこそ、「守護」でなくて何なのでしょう。
ジュンを見守る、いたわる少年の姿をした鉄の塔……


…我が家の窓から見上げる鉄塔。
いつも見守ってくれるその塔を、我が家ではダイちゃんと呼んでいます。
彼こそ、彼女こそ、我が家の守護を表したもの。


『エッフェル塔』の中には数多くの写真が添えられていますが、うちの一枚にパリの観光絵葉書(99ページ)があります。
エッフェル塔のすぐ足下を写したもの。
重なり合う家並みの間から、立ち上がる美しくしなやかな足首。
こんなにも傍で見守られている…パリの街並みが包み込まれている…その優しさと力強さが感じられる一枚です。

…いつか、我が家のダイちゃんも、我が家と共に、この町と共に、こんな風に写し、残してあげたいものです。

2010年1月26日 (火)

一冊の書物から…ローウェルのエピソード☆

一冊の書物との出会いによって、人生が変わることもある。


そう書いているのは、昨日も触れた『アリの背中に乗った甲虫を探して』(ロブ・ダン 著/ウェッジ)です。
火星観測で知られるローウェルが、フランマリオンの『火星とその居住可能性の諸条件』という本と出会うところ。


どうやらフラマリオンの本は、ローウェルの心の奥底にある何かを呼び覚ましたらしい。


日本や韓国の神秘的な異文化よりも、更に遠方にある、見知らぬ文明の可能性。



ローウェルはそれまでの人生の大半を異文化研究に費やし、それに必要な調査と旅行に生き甲斐を見いだしてきた。
そしていま、新たな可能性ー別の惑星に文明が存在する可能性ーが彼の手のなかにあるのだ。



そして、彼はその瞬間を形に残すのです。


天命が下ったと感じたローウェルは、本の余白に「直ちに行動せよ」と書きこみ、さっそく準備に取りかかった。


一冊の本と出会い、何かが変わり、その変わったことを本に対して宣言する…

結果はどうであれ。

……そんな瞬間に出会えることは、きっと幸せなことでしょうね☆