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時の流れを忘れずに☆

2010年2月 8日 (月)

ジョージ四世と大英図書館と☆

居間のカーテン越しに、青空が見えています。
疲れ方がひどかったので今迄横になっていましたが、何だか明るい陽射しに心が和みます。
柔らかく優しい光ほど、心を安らかにしてくれるものはありませんね…

近頃は、随分と気ままな更新になってきました。
ずっと読んでくださっている皆さんには申し訳なく思っていますが、どうぞお許しください。


今日は、珍しくジョージ四世を取り上げた本を。
『ジョージ四世の夢のあと』(君塚直隆 著/中央公論新社)。

彼は仕方が無い面はあるものの、歴史上も文学史上もあまりいい印象は持たれていません。
放蕩三昧と離婚騒動。
本書のトップにも、当時の『タイムズ』の酷評から始まっています。



どの目が彼のために涙を流そうか?

……………

わがままな奴に人々は同情など寄せはしない。



…随分とストレートな表現です(笑)

そんな彼は、先王ジョージ三世が集めさせた貴重な蔵書6万5千冊をそっくり大英博物館に寄贈したい、そう政府に申し入れたそうです。
時は1823年。



私はこの書物を国民への贈り物として考えてもらえればと切に望んでいる。
さらにこれが結果的には、国家による業務となってくれることを。



本心かどうかは別として、彼はこのように首相に伝えたそうです。
つまり、国王が本を蒐集するのではなく、政府が国費を投じて大規模に本を集めていくべきだと、そう言っているのです。
イギリスの納本制度や公共の手による国立図書館の建設などの理念が、この瞬間から実際的に流れ始めたといってもいいでしょう。
大英博物館は、当時改築の計画があった部分に新しく図書室を設けることになりました。やがてそれは更に増築され、有名なあの円形の閲覧室(Reading Room)が姿を現します。
その過程については、大英博物館(The British Museum)の
サイトにも載っています。
何度見ても、この閲覧室のパノラマは素晴らしいですね!
画像もWeb上に沢山ありますので、ぜひご覧になってみてください。

一方、ジョージ四世が寄贈した本については、現在、新しい大英図書館(The british Library)に移されています。
こちらは1998年に新設された、まだまだ新しい図書館。

トップページも、あまり気取らない雰囲気です。
そうそう、ここには
オンラインショップまであります!
…日本では考えられませんね(笑)
この大英図書館の中に、吹き抜けの中にタワーとなって国王図書室(The King's Library)の貴重な蔵書は収められています。
これもまた、一度見たら忘れられない光景です。
よろしければ、この画像も検索してみてくださいね☆


ジョージ四世と言えば、国王即位と同時に王立文芸家協会(The Royal Society of Literature)も創設しています。

今迄あまり知らなかったことばかり、本書では教えられています。
知らないことは、特定の人物に対する評価までを誤ってしまう…そんなことも考えさせてくれる1冊でした。

2010年2月 4日 (木)

漸く3巻目です! 『ヘイムスクリングラ』のこと

…寒いですね。
明け方も夕方も、随分と明るくなったと思っているのですが、やはり、まだまだ寒い日が続きます。
その寒さのためもあるのでしょうか、近頃、体のあちこちが軋み始めています。
相変わらず耳の調子も悪く、背や肩、腕の痛みなど、年齢やストレスもあるのでしょうがお仕事の集中も妨げるので困っています。
このブログも、少し控え気味になるかも知れません。
どうぞ、気長にお付き合いくださいね。


待ちに待ったスノッリ・ストゥルルソンの『ヘイムスクリングラ』第3巻が発売されました。
発売日を過ぎても、なかなかオンライン書店で購入が出来ず、苦悩する日々が続きましたが、それも漸く終わりです。
小さな版元さんは、本当に大変ですね。例えHPに掲載されていても、その本が日付どおりに流通するとは限らないのですから。
…まぁ、まさか邦訳されるとは思ってもいなかった名著ですから(笑)、気長に待っています。
最終の第4巻は3月下旬とのこと。年度明けには、全巻が揃うことでしょう。

第3巻は、オーラヴ聖王のサガのクライマックス、『ヘイムスクリングラ』の山場です。
大切に読ませていただきます。

…次は、何を出してくれるのでしょうか。楽しみな版元さんです☆

2010年2月 2日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.42

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   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.42  2010.1.19

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      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    寒い日が続きますね。
    関西の平野部でも、先日は雪になりました。
    皆さん、お身体は大丈夫でしょうか。

    海の向こうでは、ハイチが大変な状況になっています。
    関西で震災を体験した一人としては
    我が身のことのように思えて仕方がありません…

    少しでも、少しでも早く、日常が戻りますように……
    

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 ★・・・今日のお届けもの・・・★

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    今日お届けするのは、1月5日以後の新刊です。

 ☆『漢籍伝来』(静永健 著/勉誠出版)
    漢籍は、『白氏文集』は
    どのように日本や東アジアで読まれてきたのでしょうか。

 ☆『マイケル・ポランニー「暗黙知」と自由の哲学』(佐藤光 著/講談社)
    “本邦初の本格紹介”と帯にはありますが
    少しだけ、違和感を覚えますね。
    科学哲学者ポランニーの全体像を、ということであれば
    確かに出版数は少ないのですが…

 ☆『ヒンドゥー教の〈人間学〉』(マドレーヌ・ビアルドー 著/講談社)
    ヴェーダや、『ラーマーヤナ』に『マハーバーラタ』。
    古代のバラモン教から、現代のヒンドゥー教まで。
    多彩なインドの宗教哲学を見通す1冊です。

 ☆『フォークの歯はなぜ四本になったか』
   (ヘンリー・ペトロスキー 著/平凡社)
    身の回りの実用品は、どのようにして形が決まってきたのでしょうか。
    ペトロスキーと言えば、『本棚の歴史』もすぐに思い出しますね。
    平凡社ライブラリーで復刊です。

 ☆『純粋理性批判 1』(カント 著/光文社)
    中山元による、全7巻の新訳ですね。
    “分かりやすさを徹底した”本書がいいのかどうかは
    意見が分かれるかも知れませんが…
    これを機会に、もっと身近になって欲しい1冊です。

 ☆『叢書グローバル・ディアスポラ 6』(中川文雄 編著/明石書店)
    第4巻の「ヨーロッパ・ロシア・アメリカ」に続いて2回目の配本。
    移民を含めた、人の移動から見た「世界」とは
    どんな姿をしているのでしょうか。

 ☆『立本倫子colobockle apartment』
   (Pooka編集部 編集/学研教育出版)
    立本倫子のサイトがこちら → http://www.colobockle.jp/index.html
    絵本も出しておられましたよね。

 ☆『メフィス』(フロラ・トリスタン 著/水声社)
    作家としてよりも、女性社会主義者として知られているかも知れません。
    19世紀パリの貴族社会を舞台としたプロレタリア文学。

 ☆『切手帖とピンセット』(加藤郁美 著/国書刊行会)
    オールカラーで184ページ!
    “グラシン紙のポケットが切手の背景に写っている、
     ちょっと古くて懐かしい切手帖そのものを思わせる、
     祖父江慎氏によるブックデザイン”
    …これはもう、ぜひ見てみなくては。

 ☆『数学はいかにして創られたか』(Luke Hodgkin 著/共立出版)
    ヨーロッパ以外の原典資料も駆使した広域的な数学史。

 ☆『民主主義がアフリカ経済を殺す』(ポール・コリアー 著/日経BP社)
    民主主義がもたらす深刻な危機。疲弊するアフリカ社会の実態とは。

 ☆『変容する中国の労働法』(山下昇 編著/九州大学出版会)
    「世界の工場」中国の労働事情とは。
    労働者の権益保護が強化された、最新の労働法を解説したもの。

 ☆『アメリカの医療保障』(長谷川千春 著/昭和堂)
    シリーズ「アメリカ・モデル経済社会」全10巻の6巻目です。
    オバマ政権になって再び新聞紙上に見られるようになった
    アメリカの医療保障について知るにはいいものでしょう。

 ☆『現代人口辞典』(人口学研究会 編集/原書房)
    人口問題の言葉や概念を解説したハンディな用語辞典です。

 ☆『ハンナ・アレント』(亀喜信 著/世界思想社教学社)
    つい先日も、勁草書房さんから『公共性への冒険』が出ていましたね。
    彼女の思想は死後35年が過ぎても
    途切れることなく続いていきますね…

 ☆『病院で聞くことば辞典 新版』(浜六郎 著/岩波書店)
    四六版で並製。手軽に持ち運び出来るサイズで
    病院でよく聞く言葉を解説してくれるもの。

 ☆『今すぐ弾けるやさしい大正琴入門 改訂版』
   (泉田由美子 編著/自由現代社)
    まだまだ人気ありますよね、大正琴。
    楽器の教本で知られる自由現代社さんから出ているものです。

 ☆『文化史とは何か 増補改訂版』(ピーター・バーク 著/法政大学出版局)
    増補改訂版の表紙はフェルメールなんですね。
    初版とどちらがいいかは好みが分かれるかも知れません。
    原著第二版の完訳、文化史研究を網羅した格好の入門書です。

 ☆『夜食の文化誌』(西村大志 編著/青弓社)
    夜食…確かに、新しい文化かも知れませんね。

 ☆『集団人間破壊の時代』(サマンサ・パワー 著/ミネルヴァ書房)
    2003年にピューリッツアー賞(ノンフィクション)を受賞した
    “A Problem from Hell”の翻訳です。
    紛争、迫害、虐殺…国家や社会の失敗とこれからと。

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 ★・・・気になる1冊・・・★

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 『切手帖とピンセット』(加藤郁美 著/国書刊行会)

    副題は
    “1960年代グラフィック切手蒐集の愉しみ”です。

    国書刊行会さんのHPでは
    この1960年代を

    “一般の人々が海外旅行をすることがまだ難しく、
     夢のように思われた1960年代”

    と紹介されていますね。
    

    少しお話は変わりますが
    先日、彰国社さんから
    『Showa Style 再編建築写真文庫』という本が出ました。
    1953年から1970年まで出版された
    北尾春道の写真による『建築写真文庫』を再編集したものです。
    無名の建物。無名の人々。
    1960年代の「リアル」が写し込まれています。

    『切手帖とピンセット』は
    この『Showa Style 再編建築写真文庫』と同じ懐かしい時代の切手を
    1154枚(!)も詰め込んだ
    オールカラー184ページの素晴らしい1冊です。

    どちらの本も
    詰め込まれたその「空気」を
    愛おしく思う方は多いのではないでしょうか…

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 ★・・・今日のひとこと・・・★

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 『レクイエム』(アントニオ・タブッキ 著/白水Uブックス)
     

    こんな物語を書いてはいけないのだと、
    なんとなく察しはついていた。
    なぜなら、
    虚構を模倣して、
    それを真実に変えてしまうだれかが、
    かならずどこかにいるものだから。

    ……………

    わたしはそのできそこないの物語をもう一度生きなければならなかった。
    ただし、
    今度は、
    ほんとうの意味で。

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    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

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 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

    ○編集 ・ 発行  チョコちょこ

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2010年1月31日 (日)

雨ですね…アジェからシミック、コーネルへ

朝から薄暗く、昼には小雨になりました。
日も射さず、周囲の声も稀な午後…

ふと、思い出したのはチャールズ・シミックの文章です。



六月の日曜の早朝。
真夜中過ぎに雨が降ったが、大気も空も奇跡のように澄みわたった。
大通りに人けはなく、店はどこも閉まっている。
まだ人間に見られる前の、物たちのつかのまの姿。



『コーネルの箱』(チャールズ・シミック 著/文藝春秋)の中の一節。
訳者柴田元幸も書いているように、この言葉はパリの写真家アジェを念頭に置いたも
のでしょう。

コーネルは箱に様々な事物を閉じ込めた芸術家。
彼の作品には、パリの商店のウィンドウを写したアジェの影響があるとする説もあるようです。
また彼はアメリカの詩人エミリー・ディキンソンを最も愛していたとも。
お気に入りの二人と関わるから…ではありませんが、コーネルが創る世界には、惹かれるものがあります。

シミックは書いています。


ディキンソンの詩を読むこと、コーネルの箱を見ることは、アメリカの文学と美術を新しい考え方で考えはじめることだ。


…と。

2010年1月27日 (水)

写真が一杯☆ 『エッフェル塔』のこと

晴れていても、雨が降っていても。
風が吹いていても、雪が舞い降りていても。

その鉄塔は窓の向こう側。
今は暗闇を背に、小さな灯りを瞬かせています。

…いえ、残念ながらエッフェル塔ではありません。
でも、あの鉄塔もまた、何かを表しているのでしょうか。


塔の隠喩の只中で、ロラン・バルトがエッフェル塔に見た、人間への最後の変身は…



この塔は、この姿によって、守護の役割をあらわに示している。
エッフェル塔は、パリを見守る女性、足下に身をよせるパリをいたわる女性なのである。



女性ではありませんが、この『エッフェル塔』(ちくま学芸文庫)の一節を読んだ時に思い出したのは、佐藤さとるの『ジュンと秘密の友だち』です。
あの中のダイちゃんこそ、「守護」でなくて何なのでしょう。
ジュンを見守る、いたわる少年の姿をした鉄の塔……


…我が家の窓から見上げる鉄塔。
いつも見守ってくれるその塔を、我が家ではダイちゃんと呼んでいます。
彼こそ、彼女こそ、我が家の守護を表したもの。


『エッフェル塔』の中には数多くの写真が添えられていますが、うちの一枚にパリの観光絵葉書(99ページ)があります。
エッフェル塔のすぐ足下を写したもの。
重なり合う家並みの間から、立ち上がる美しくしなやかな足首。
こんなにも傍で見守られている…パリの街並みが包み込まれている…その優しさと力強さが感じられる一枚です。

…いつか、我が家のダイちゃんも、我が家と共に、この町と共に、こんな風に写し、残してあげたいものです。

2010年1月26日 (火)

一冊の書物から…ローウェルのエピソード☆

一冊の書物との出会いによって、人生が変わることもある。


そう書いているのは、昨日も触れた『アリの背中に乗った甲虫を探して』(ロブ・ダン 著/ウェッジ)です。
火星観測で知られるローウェルが、フランマリオンの『火星とその居住可能性の諸条件』という本と出会うところ。


どうやらフラマリオンの本は、ローウェルの心の奥底にある何かを呼び覚ましたらしい。


日本や韓国の神秘的な異文化よりも、更に遠方にある、見知らぬ文明の可能性。



ローウェルはそれまでの人生の大半を異文化研究に費やし、それに必要な調査と旅行に生き甲斐を見いだしてきた。
そしていま、新たな可能性ー別の惑星に文明が存在する可能性ーが彼の手のなかにあるのだ。



そして、彼はその瞬間を形に残すのです。


天命が下ったと感じたローウェルは、本の余白に「直ちに行動せよ」と書きこみ、さっそく準備に取りかかった。


一冊の本と出会い、何かが変わり、その変わったことを本に対して宣言する…

結果はどうであれ。

……そんな瞬間に出会えることは、きっと幸せなことでしょうね☆

2010年1月25日 (月)

こんなところに、フェルメールですか…

近頃、更新が滞っているのは、慣れないお仕事ばかりが山のようにある為で…
特定個人をターゲットにした、強気のクレームにうんざりしたりとか、しないとか…
…そんな感じで、厭世的になっている今日この頃だからなのです。

それでも時間は知らずに流れ、あっと言う間にもう1月も最後の週です。
困りましたね(苦笑)
あれやこれやと、課題ばかりが時間に皺寄せられて、壁のように目の前に立ち上がっています。
そんな時でも、面白そうな本には手が伸びてしまいます。
『アリの背中に乗った甲虫を探して』(ロブ・ダン 著/ウェッジ)。
タイトルからして、興味津々でした☆
あのウェッジからの出版でしたし。
…で、実際に読み始めたら、もう止まりません。
リンネから始まって、生物学者達が次々と。

その中に、レーウェンフックが挙げられていました。
自作の顕微鏡で、当時はまだ誰も見たことが無かった微生物の世界を世に知らしめた人。
彼はデルフトに住んでいました。
そして同じ時代、その小さな町にいたのがフェルメールです。
本書によれば、フェルメールの作品『地理学者』は、レーウェンフックをモデルにした説もあるそうだとか。
なら、コンパスと地図ではなく、レンズを手にしていて欲しかったですね。

彼の優れた(恐らく当時、世界一優れた)顕微鏡を、レーウェンフックは死ぬまで自宅から外に出すことはありませんでした。
後には家族にさえ殆ど見せなかった、自分だけの顕微鏡。
自分だけが知る世界。
自分だけが愛した世界。

……オブライエンの『金剛石のレンズ』(創元推理文庫)が思い出されます。

彼はそこに、アニミュラを認めたのでしょうか…
…リンネが湿原で、ヒメシャクナゲに美しいアンドロメダを認めたように。

2010年1月22日 (金)

翻訳3種…

『エミリ・ディキンスン家のネズミ』(エリザベス・スパイアーズ 著/みすず書房)の翻訳は、長田弘でした。
もう一度、“I’m Nobody! Who are you?”の彼の訳を載せましょう。



わたしは誰でもない!-あなたは誰?
あなたも-誰でもない-のね?
二人は、おなじね! でも、話しかけないで!
きっと追いだされるから-わかってるでしょ?

つまらないことよ-誰か-であることなんて!
蛙みたいに-おおっぴらに-
ひっきりなしに-相手の名を呼びつづけたって
耳を傾けてくれるのは-泥の沼だけ!



では、続けて。
岩波文庫の『対訳 ディキンソン詩集』から亀井俊介の訳で。



わたしは誰でもない人! あなたは誰?
あなたも-また-誰でもない人?
それならわたし達お似合いね?
だまってて! ばれちゃうわ-いいこと!

まっぴらね-誰かである-なんてこと!
ひと騒がせね-蛙のように-
聞きほれてくれる沼地に向かって-六月じゅう-
自分の名前を唱えるなんて!



最後に、国文社の『続自然と愛と孤独と』から中島完の訳で。



私は名前なし あなたはだれ?
あなたも名前なし?
じゃ二人は同じね だれにも名前など言わないで!
みんなは私たちを追い出してしまう

有名になるなんてほんとにつまらないこと
讃美者の泥沼に向かって 蛙が六月のあいだながながと
自分の名前を呼んで聞かせている
名を広めるなんてそんなこと!



……随分と違いますよね!
興味を持っていただけたら、ぜひ、原文を探してみてください☆

2010年1月20日 (水)

ジャコメッリとエミリー・ディキンソンと…

…何だか昨日の方が暖かく感じられたのは、陽の光が今日は少なかったからでしょうか。
明日はまた雨だそうです。
陽光に焦がれる冬の日々…


青幻舎から、マリオ・ジャコメッリの写真集が出ましたね。
『MARIO GIACOMELLI』(アレッサンドラ・マウロ 編)。
彼の息子による年表や、各氏による評論も交えながら…白と黒の世界が目の前で躍ります。

その作られた表現から、迫ってくるもの…それはジャコメッリが描く「物語」でしょうか。
彼が伝えたかったもの、語りたかったもの。
その言葉、感情、想い…
それらが写真となって、目の前に広げられています。
何を読み取るのかは、こちらに全て任されたまま…

ジャコメッリは、幾つかの写真のシリーズを詩に捧げていました。
その中の一つが「私は誰でもない!」“IO SONO NESSUNO!”。
…すぐに分かりますね。



わたしは誰でもない!-あなたは誰?
あなたも-誰でもない-のね?
二人は、おなじね! でも、話しかけないで!
きっと追いだされるから-わかってるでしょ?

つまらないことよ-誰か-であることなんて!
蛙みたいに-おおっぴらに-
ひっきりなしに-相手の名を呼びつづけたって
耳を傾けてくれるのは-泥の沼だけ!



緑の地に白抜きで並べられた言葉。
『エミリ・ディキンスン家のネズミ』(エリザベス・スパイアーズ 著/みすず書房)の裏表紙に描かれた言葉です。
作中では白ネズミのエマラインの詩への返事として、取り上げられています。


ジャコメッリが写真のシリーズのタイトルとして選んだのは、このエミリー・ディキンソンの詩でした。
見るものを不安にさせるような…重ねて焼かれた写真が、どれも一斉に問い掛けてきます。

…ここに誰かがいる。
だがそれは、誰でもない。
だが、それはお前だ。
ここにはいない、お前だ。
お前もまた、誰でもない。
追い出されたりはしない。
ただ塗り込められる。
泥の中に埋められたもの、それがお前。
聞こえるだろう、騒がしい声が。
蛙の声が。
お前を呼ぶ声が。
誰でもない、お前を呼ぶ声が……

2010年1月19日 (火)

CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~ No.41

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   ♪♪ CHOKO-CHOKO
           ~本の森からお手紙を~ ♪♪  No.41  2010.1.5

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      皆さんにとって、ステキな日々が続きますように…

    明けまして
    おめでとうございます。

    2010年、一番最初のお手紙を差し上げますが
    新しい本のお届けものは少なめです。

    お正月の疲れも残る中
    さらさらとでも、目を通していただければ嬉しいです☆
    

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 ★・・・今日のお届けもの・・・★

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    今日お届けするのは、12月22日以後の新刊です。

 ☆『マネーの進化史』(ニーアル・ファーガソン 著/早川書房)
    現代の金融システムについての、難解な経済書も多いので…
    こんな入門書も必要ですよね。

 ☆『春雨物語論』(高田衛 著/岩波書店)
    著者の専門である上田秋成の作品『春雨物語』についての論考。
    カバーが美しいですね☆

 ☆『科学と価値』(ラリー・ラウダン 著/勁草書房)
    近頃、科学哲学の本が散見しますね。
    科学が哲学を求めているのでしょうか
    それとも哲学が科学を侵食しているのでしょうか…

 ☆『人種主義の歴史』(ジョージ・M.フレドリクソン 著/みすず書房)
    そもそも「人種」とは何なのか。
    その名の下に権力が行使してきた
    人種主義の歴史を簡明に描いたもの。

 ☆『明治国家と雅楽』(塚原康子 著/有志舎)
    ブログによれば、“十数年間、地道に研究されてきた結晶”だそうです。
    近代国家の国づくりと伝統音楽の関係を描いたもの。
    ちなみに、ブログはこちら → http://yushisha.blog.ocn.ne.jp/blog/

 ☆『Scope』(桑原弘明 著/平凡社)
    幻想的な風景を、小さな箱の中に閉じ込めた
    ミニアチュール作品の写真集です。
    装丁に期待大、です☆

 ☆『ロマン語』(W.D.エルコック 著/学術出版会)
    ラテン語から生まれた全ロマン語の生成と進化を
    実例により解説したもの。
    “20世紀中葉における斯界の研究成果の集大成をなすとともに
    西洋中世の言語文化の総覧である”とは、HPにある言葉。

 ☆『喪の日記』(ロラン・バルト 著/みすず書房)
    表紙の写真がいいですね…
    母の死から始まる、カードに書かれた日記。

 ☆『紙の本が亡びるとき?』(前田塁 著/青土社)
    “「めくらない世代」 がやってくる!”とは帯の言葉。
    賛否はともかく、一つの傾向ですよね。

 ☆『中世の書物と学問』(小川剛生 著/山川出版社)
    日本において
    中世の人々はどのように書物を利用していたのでしょうか。

 ☆『赤いゲッベルス』(星乃治彦 著/岩波書店)
    名は知られていながらも、意外に本にはなっていないと思います。

 ☆『フェアトレード』(アレックス・ニコルズ 編著/岩波書店)
    フェアトレードのビジネスとしての実際を、豊富な事例から。

 ☆『海を渡る日本現代美術』(光山清子 著/勁草書房)
    欧米で開催された、主な日本現代美術の展覧会を巡って
    その受容と評価を論じたもの。

 ☆『言葉は社会を動かすか』(松永澄夫 編集/東信堂)
    言葉を取り扱ってきた編者が、言葉と社会の関わりを纏め論じたもの。

 ☆『読書と読者』(京都大学図書館情報学研究会)
    読書とリテラシーについての最新の研究成果です。

 ☆『タロット象徴事典』(井上教子 著/国書刊行会)
    そのシンボルや図像を読み解き、より深くタロットを知るための事典。

 ☆『クルアーン』(小杉泰 著/岩波書店)
    「書物誕生」の1冊。『コーラン』のことです。

 ☆『マドゥモァゼル・ルウルウ』(ジィップ 著/河出書房新社)
    森茉莉初の訳書のようですね。
    初版は1973年、薔薇十字社から出ていたものの新装復刊です。

 ☆『絵具の辞典 新装普及版』
   (ホルベイン工業技術部 編集/中央公論美術出版)
    各種絵の具の定義から歴史、使用上のポイントまで。
    絵の具という製品そのものを解説してくれるもの。

 ☆『子どもが描く世界』(クリスティーン・アレグザンダー 編著/彩流社)
    作家が子ども時代に生み出した
    「子どもによる文学」を取り上げた新しい視点の本。
    子どもの作家による、模倣や創造の過程等を探るもの。

 ☆『廃校のうた』(菅谷誠 著/柏艪舎)
    北海道から消えた4つの学校…
    著者による紹介サイトが
    こちら → http://www009.upp.so-net.ne.jp/makosgy/manabiya.html

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 ★・・・気になる1冊・・・★

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 『喪の日記』(ロラン・バルト 著/みすず書房/12月22日発売)

    今年2010年は
    ロラン・バルトが亡くなってから、30年になりますね。

    そんなこともあってか
    彼へと繋がる本が、幾つも目に留まるような気がします。
    (下の「ひとこと」に触れたトドロフも、彼に学んだ1人です)

    本書はその内の1冊。
    ずっとバルトの本を出してきた、みすず書房さんからのもの。

    表紙の写真が、本書をとてもよく表わしていますね…

    母の死が、バルトにもたらした絶望。
    その絶望の中で
    カードに記されていく
    切れ切れの言葉たち…

    それらが集まり
    更にバルト自身により分けられ、形を成したのが本書です。
    
    そして、本書はまた
    彼の『明るい部屋』へと繋がっていくもの…

    時に難解なバルトの思想を
    より身近に感じさせてくれるもの。
    「人間」バルトを感じさせてくれるもの…

    きっと、本書はそんな1冊になっていることでしょう。

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 ★・・・今日のひとこと・・・★

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 『文学が脅かされている』(ツヴェタン・トドロフ 著/法政大学出版局)
     

    文学の対象が人間の条件それ自体である以上、
    文学を読み、それを理解する者は、
    文学分析の専門家になるのではなく、
    人間存在を知る者となるだろう。

    ……………

    来るべき諸世代にこの壊れやすい遺産、
    よりよく生きる手助けをするこれらの言葉を伝えていく義務は
    われわれ大人のものである。

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    拙い文章ですが、最後まで読んでいただいて
    本当にありがとうございました。

    少しでもいいメルマガにしていけたら…そう願っていますので
    何かありましたら、お気軽にご連絡ください♪

    それでは…

      これからも、皆さんがステキな本と出逢えますように…

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 『CHOKO-CHOKO ~本の森からお手紙を~』

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2010年1月18日 (月)

ただ、確かめるだけ…それだけで満足してしまいます『ジェニーの肖像』のこと☆

今日の昼間は、薄着でも大丈夫でしたね。
天気予報では、暫く暖かな日和が続くとか。
ただ、体調管理が難しくなるかも知れません。
お身体には十分、お気を付けくださいね☆

…と書いている本人が、ここ数日、帰宅後も根を詰めて仕事を続けていたので…肩こりからでしょうか、片方の耳の聴力が弱くなってしまいました(苦笑)
今も、お薬を飲み続けています。
低音が聴こえないらしく、人の話し声が高音でリフレインしています(笑)
困ったものです。


トニー・パーカーの『アメリカの小さな町』(晶文社)。
本書には、ある月曜日の午後に行われた、高校生たちの討論会の模様が描かれています。
数人の男女が自分の意見を述べていくのですが、中に彼らが読んだ本から気に入ったものを挙げていく箇所があります。
『かもめのジョナサン』から始まるのですが…そこに、懐かしいタイトルが現れます。
それが『ジョニーの肖像』“PORTRAIT of JENNIE”。
早川文庫や創元推理文庫など、幾つかの翻訳がありますよね。
この手にあるのは、今はもう品切れになっている早川文庫版。
1993年の9刷の表紙は、福山小夜によるカバー絵。
ロマンチックで愛らしく、温かな色合いの少女の立ち姿……
……チョコちょこの少女時代のジェニーのイメージは、この絵のままですね。

福山小夜は、1951年、奈良県に生まれた画家。この表紙の絵とはまるで違う画風も多いので、初めて知る方はビックリするかも知れません。
そうそう、高倉健の版画でも知られています。

冬のある日、画家が出会った一人の少女。



どこから来たのか
だれも知らない
どこに行くのか
みな行くところ
風は吹きすさび
海はめぐる
けれどもだれも知らない



少女の歌です。

ここから、時間を越えた永遠が、真実が紡がれていきます…


とても温かな1冊。
とても美しい1冊。
とても悲しい1冊。

…そんな表現すら、どうでもよくなっていきます。

ただ、ジェニーと出会う。二人の愛情を辿っていく。
ただ、それだけ。
それだけのために、何度も捲っては二人を確かめ、そっと元に戻すのです。
ただ、それだけ。

それだけのために、今もこの文庫をパラパラと読みましょう…

2010年1月14日 (木)

生者と死者、現、夢、空白の時…

昨日は、近畿の平野部でも雪になりましたね。
風も強くて、夕方から既に氷点下。
…で、今朝になってもそのままでしたね。
寒い日が続くのも困りものですが、来週は暖かい日が続くとか。
皆さんも、体調管理には十分、気を付けてくださいね☆


温かなお部屋の中で。
日がな一日、横になって、本を読んでいました。

時にうつらうつらと、夢見に陥り…
目を覚ましては、物語の続きを追いかけ…

麻薬中毒の青年と会話をしては、宝くじ売りと何処かで…そう、別の本の中で出会っていたことを思い出す。


夢を見ている最中なのに、それが現実のようにも思えてくる。


“わたし”と共に記憶の中を彷徨い続けます……

白水Uブックスなので、薄いものです。
こんな疲れた日の読書には…夢と現を往き来する日にはまさにピッタリの1冊。
アントニオ・タブッキの『レクイエム』。
副題は「ある幻覚」。

この本を、この幻覚を、このリスボンの逍遥を、以前にも経験したような、していないような…それすらも曖昧なまま、作中の“わたし”と同じ1日を巡り続けます。

…そして、また、恐らく、次に読む時も思うのでしょう。

この“わたし”に、かつて出会ったことがある。
記憶の中で、夢の中で、共に歩んだことがある……

……と。

2010年1月12日 (火)

『庭園の歓び』より

 収穫の後で

死んだと言われる園に行って眺めるがよい、
遠くに微笑む岸辺の仄かな光と
清らかな雲の思いもかけぬ青さが
池と色とりどりの小道を明るくしているのを。

             シュテファン・ゲオルゲ



『庭園の歓び』(高木昌史 編訳/三交社)

2010年1月11日 (月)

…それでは、庭園など巡りましょうか☆

…世の中は三連休だったんですよね。
今日は、成人式だったとか。


……すっかり、世間の流れから取り残されて、お仕事を
していました(苦笑)


明日はお休み。
ゆっくりと、気になる本を彷徨うことが出来ればいいのですが…絵に描いた何とやらになりそうです。

ですが、今だけでも、気分を切り替えて西欧の庭園を巡ってみましょうか。

…いえいえ、写真や絵画ではありません。
文学作品やエッセイ、詩に描かれている庭園です。

『庭園の歓び』(高木昌史 編訳/三交社)は、そんな詩文が並ぶ1冊です。
200ページばかりのものですが、手軽に各地の、各時代の庭園を散策することが出来ます。

珍しいのは、中に、お気に入りのシュティフターが取り上げられていること。
『晩夏』から、薔薇に触れる部分を抜き出しています。
『晩夏』そのものを味わうものではありませんが、主人公たちが愛する庭園がこのような書物に取り上げれらていることこそが、何だか嬉しくて仕方ありません。

他にもウェルギリウスやゲーテ、フォンターネといった名前が見られます。

どれも、ほんの数頁だけの描写なのですが、だからこそ気軽に、庭の中を彷徨うことが出来てしまいます。


ページが開くところから。
次々と。
蜜蜂が花から花を辿るように。

…いざ、花の香りと美しい風景との出会い求めて。

2010年1月 7日 (木)

お月さまは、こんなお顔です…『月のかぐや』☆

本当に寒いですねぇ…

あまりに冷え込むと、身を縮めてしまうからでしょうか、肩こりや頭痛がヒドクなります。
そんな日は無理をせずに、お薬を飲んで、難しいお話にも目を閉じてしまいましょう。

表紙のクレーターもスゴイですが、扉のピコ山もソフトな感じが名前の印象もあって可愛らしいですね☆
『月のかぐや』(JAXA 編/新潮社)は、衛星「かぐや」が撮ってくれた素晴らしい写真でいっぱいの本。
Web上で見るよりも、キレイですね!
じっと眺めていると、ずっとずっと細かいところまで、見えてくる気がします。

謎だったティコの光条。カルシウムやアルミニウム、ケイ素、酸素で出来た斜長岩の白い欠片が飛んで生まれたんですね。

想像していたよりも、ずっと滑らかな表面が次々と現れます。

アルプス谷も、直線崖も、まるで作り物みたいで…かぐやの写真で見ても、やっぱり不思議。


…見飽きることがありません。


かぐやの写真は勿論、Web上でも見られます。
それが
こちら
ただ、じっくり堪能される方には、やっぱり紙の本がオススメです☆

では、ぬくぬくとしたお家の中で、もう少し、お月さまをお散歩してから眠りましょう……